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報告書&レポート

2006年2月9日 ロンドン事務所 嘉村 潤 e-mail:kamura@jogmec.org.uk
2006年08号

ベースメタルの国際市場と需給動向(2005年12月)


1. 国際市場

 12月のLME(London Metal Exchange)の月平均価格は、銅が7か月連続で上昇し7.2%増の4,576.78USドル/t、ニッケルは2か月ぶりに上昇し10.8%増の13,429.25USドル/t、亜鉛は5か月連続で上昇し13.1%増の1,821.83USドル/tとなった。
 銅は、増加傾向にあるものの依然歴史的な低レベルにあるLME在庫、チリ等において依然として伸び悩む生産という環境が継続する中、過去2か月にわたる中国国家備蓄局(SRB)の約12万tの銅放出にもかかわらず、投機資金流入により銅価格の記録更新がなされる等価格上昇傾向が継続している。ニッケルは、主要ステンレスメーカーの生産削減継続による需要減、LME在庫増加により価格低迷が継続していたが、投機資金による買いにより価格が回復してきている。亜鉛は、LME在庫が減少、中長期的に需給逼迫が継続するとの見通しから、市場の買い圧力が強い状態が継続している。非鉄金属市場全般としては、全面高の様相を示してきており、特に銅などいくつかの金属では、ファンド資金の動きや中国の動向等により急変する可能性も指摘されており、この強気相場がどこまで継続するかさらに読みにくい状況にある。

LME平均価格と在庫

平均価格(cash settlement,US$/t)

在庫(t)

2005年11月

2005年12月

前月比

2005.11.30

2005.12.30

増減

Cu

4,269.34

4,576.78

+7.2%

71,175

89,575

+18,400

Ni

12,115.68

13,429.25

+10.8%

23,016

35,742

+12,726

Zn

1,610.93

1,821.83

+13.1%

439,525

394,125

-45,400

LME月平均価格の推移

2. 需給動向

2005年1~10月の需給状況
(出典:国際銅・ニッケル・鉛亜鉛研究会)

 

鉱山生産

地金生産

地金消費

需給バランス
(t)

1~10月(t)

前年同期比

1~10月(t)

前年同期比

1~10月(t)

前年同期比

Cu

12,180,800

+2.5%

13,580,900

+3.7%

13,783,800

-1.2%

-202,900

Ni

1,126,600

+3.1%

1,060,500

+2.7%

1,025,000

-1.4%

+35,500

Zn

8,350,000

+4.0%

8,476,000

+0.5%

8,809,000

+0.5%

-333,000

2・1 銅
【需要】
 国別の2005年1~10月の消費量は、最大消費国中国が前年同期比10.5%増となる一方、その他主要国では2位米国6.0%減、3位日本6.0%減、4位ドイツ6.8%減、5位韓国8.5%減となり、世界計では1.2%減の13,783.8千tであった。世界の消費を月別に見ると、2005年6月に1,412.4千tとなった後、7月1,393.6千t、8月1,307.7千tと減少、9月は1,447.6千tと増加し、2005年最高の月別消費量となっていたが、10月は若干減少して1,401.7千tとなった。注目の中国の消費動向は、2005年6月に338.2千tと月別で2005年最大の消費量を記録した後、7月300.6千t、8月308.2千tと減少、9月は330.4千tと回復していたが、10月は269.4千tと減少した。国際銅研究会は世界の銅地金消費を2005年1.4%減の16,450千t、2006年5.5%増の17,355千tと予測している。

【供給】
 2005年1~10月の鉱山生産は前年同期比2.5%増の12,180.8千tであった。月別の鉱山生産を見ると、2005年6月1,186.4千t、7月1,211.3千t、8月1,269.8千tと増加、9月は1,244.6千tと若干減少していたが、10月は1,273.8千tと増加している。鉱山の設備稼働率は、2004年後半の90%超から2005年に入り80%後半に下落、その後の下落傾向から8月は88.9%、9月89.9%と回復してきていたが、10月は88.9%とまた若干下落した。2005年1~10月の国別生産量は、最大生産国チリが前年同期比3.3%減、3位ペルーが1.3%減となる一方、2位米国が2.4%増、4位豪州が8.3%増、5位インドネシアがGrasberg鉱山の事故からの回復により30.8%増と大幅に増加した。国際銅研究会は世界の銅鉱山生産を2005年3.1%増の14,983千t、2006年5.1%増の15,743千tと予測している。
 2005年1~10月の地金生産は前年同期比3.7%増の13,580.9千tであった。月別の地金生産は2005年6月1,350.2千t、7月1,379.2千t、8月1,384.3千tと増加傾向で、9月は1,382.7千tと若干減少したものの、10月は1,396.0千tと増加している。精錬所稼働率は、2004年12月以降伸び悩み80~81%で低迷、7~8月79.6%とさらに下落した後、9月は81.8%まで回復していたが、10月はまた79.6%に下落している。2005年1~10月の国別生産量は、最大生産国のチリ(EW生産を含む、以下同様)が0.2%減、4位米国5.0%減、6位ドイツ1.6%減となる一方、2位中国が14.0%増、3位日本0.5%増、5位ロシア4.4%増となり、全体では増加した。国際銅研究会は世界の銅地金生産を2005年3.1%増の16,328千t、2006年8.1%増の17,650千tと予測している。

【需給バランス】
 2005年1~10月は203千tの供給不足(季節調整後は86千tの供給不足)であった。2005年1~7月は供給不足が継続していたが、8月に2005年初めて77千tの供給超過を記録、9月は再び65千tの供給不足、10月も6千tの供給不足となった。季節調整後の需給バランスでは、2005年6月に供給超過を記録した後、7月47千t、8月5千t、9月54千tの供給不足となっていたが、10月は20千tの供給超過となった。国際銅研究会は世界の銅地金需給を2005年122千tの供給不足、2006年は295千tの供給超過になると予測している。

【価格】
 スタート時から最高値更新となる4,465USドル/tを記録してスタートした12月のLME銅価格は更に上昇し、常に11月までの最高値より高いレベルで推移する高値基調が継続した。12月2日に4,500USドル台を突破した後も上昇、週末と週明け(12月9日と12日、16日と19日)に4,600USドル台を記録して4,500USドル台に戻るという周期で、4,500USドル台後半を中心に推移した。クリスマス明けの12月28日には12月最高値で史上最高値の4,650USドルを記録し、取引最終日の12月30日は4,584.50USドルで終了した。
 
2・2 ニッケル
【需要】
 2005年1~10月の消費量は、前年同期比1.4%減の1,025.0千tであった。最大消費国の日本が12.1%減、4位韓国8.1%減、5位ドイツ3.0%減、6位台湾16.5%減となり、2位中国が32.8%増と大幅増、3位米国が5.8%増となったものの、全体では若干減少した。国際ニッケル研究会は、世界のニッケル地金消費を2005年0.8%増の125万t、2006年6.3%増の134万tと予測している。

【供給】
 2005年1~10月の鉱山生産は、前年同期比3.1%増の1,126.6千tであった。2位カナダが5.8%減、4位インドネシアも3.6%減、5位ニューカレドニアが3.2%減となったものの、最大生産国のロシアが2.3%増、3位豪州が18.2%増となり、全体としては増加した。
 2005年1~10月の一次地金生産は、前年同期比2.7%増の1,060.5千tであった。2位日本が2.8%減、3位カナダ7.5%減となったものの、最大生産国のロシアが0.5%増、4位豪州が7.6%増、5位中国が18.7%増、6位ノルウェーが25.0%増となり、全体としては増加となった。国際ニッケル研究会は、世界のニッケル一次地金生産を2005年3.2%増の129万t、2006年4.7%増の135万tと予測している。

【需給バランス】
 2005年1~10月の需給は、35,500tの供給超過となった。LMEの在庫量は、12月30日現在35,742tと前月末から約13,000t増加している。国際ニッケル研究会は、世界のニッケル地金需給を2005年4万tの供給過剰、2006年1万tの供給過剰と予測している。

【価格】
 12,680USドル/tでスタートした12月のLMEニッケル価格は、月前半は先月からの上昇傾向が継続した後、月後半は安定した値動きとなった。月前半は12月5日に13,525USドルと13,000USドル台に突入、12月9日に14,025USドル、12月12日に14,120USドルと14,000USドルまで上昇した後若干下落し、その後の月後半は13,000USドル台で安定して推移。取引最終日の12月30日には13,380USドルで終了した。
 
2・3 亜鉛
【需要】
 2005年1~10月の消費量は前年同期比0.5%増の8,809千tであった。2位米国が14.3%減、3位日本が2.9%減、4位ドイツが9.8%減となったが、最大消費国の中国が14.5%増、5位韓国が3.8%増となり、全体としては微増となった。国際鉛亜鉛研究会は、世界の亜鉛地金消費を2005年0.2%増の10,523千t、2006年5.7%増の11,124千tと予測している。

【供給】
 2005年1~10月の鉱山生産は、4位カナダが前年同期比15.6%減、5位米国が0.2%減、6位メキシコ5.2%減となる一方、最大生産国の中国が11.3%増、2位豪州2.5%増、3位ペルー0.8%増となり、世界合計では4.0%増の8,350千tとなった。国際鉛亜鉛研究会は、世界の亜鉛鉱山生産を2005年3.6%増の10,054千t、2006年4.2%増の10,474千tと予測している。
 2005年1~10月の地金生産は、最大生産国の中国が前年同期比5.9%増、4位日本1.1%増となり、2位カナダ10.9%減、3位韓国2.2%減、5位スペインが3.2%減、6位豪州が4.3%減となったものの、全体では0.5%増の8,476千tとなった。国際鉛亜鉛研究会は、世界の亜鉛地金生産を2005年1.5%増の10,289千t、2006年3.5%増の10,650千tと予測している。

【需給バランス】
 2005年1~10月の需給バランスは333千tの供給不足となった。LMEの在庫量は、12月30日現在394.1千tとなり、前月末から更に45.4千t減少している。国際鉛亜鉛研究会は、亜鉛地金需給を西側世界で2005年272千tの供給不足、2006年430千tの供給不足、世界全体では2005年234千tの供給不足、2006年474千tの供給不足と予測している。

【価格】
 1,732USドル/tでスタートした12月のLME亜鉛価格は、月後半により一層の強気の価格推移となった。上昇が続く亜鉛価格は、12月7日には1,800USドル台に突入した後1,800USドル台前半で推移、12月15日に一旦1,700USドル台を記録した後、再び上昇傾向となり、クリスマス前後には1,800USドル台後半まで上昇、取引最終日の12月30日に1,915USドルまで上昇して終了した。

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