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2005年好業績にみる豪州2大鉱山会社の経営比較-Rio Tinto社 vs BHP Billiton社-
2006年2月、Rio Tinto社の2005年の年間収益が発表され、税引き前純利益(Net Profit Before Tax)69.1億豪$に上るオーストラリア史上歴代2位の収益を上げる好業績であった。オーストラリア史上歴代1位は、2005年6月決算でBHP Billiton社があげた84.8億豪ドルであった。 本稿は、2005年に史上最高の好業績をあげたオーストラリアの2大鉱山会社Rio Tinto社とBHP Billiton社を比較し、その共通点と相違点について考える。 |
1. はじめに -Rio Tinto社の2005年度事業結果-
Rio Tinto社(本社メルボルン/ロンドン)は、2月2日、2005年度(1月~12月)、純利益69.1億豪$(52.2億US$)*1を記録すると発表。これは2004/2005年度にBHP Billiton社があげた84.9億豪$(60.1億US$)*2に次ぐオーストラリア史上歴代2位の記録であった。
Rio Tinto社の好業績の要因は、中国向けの鉄鉱石、銅、アルミニウム等の需要の伸びと金属価格の高騰にある。
各鉱種別収益は、鉄鉱石が200%増加の17億US$(鉄鉱石価格は71.5%上昇)、銅が135%増加の20億US$(銅価格は28%増加)、アルミニウムが18%増加の3.9億US$(アルミニウム価格は10%増加)となっており、銅と鉄鉱石ビジネスが収益を大きく伸ばし、2005年度の好業績に貢献したことがうかがえる。
一方のBHP Billiton社は、2月15日、2005/2006年度12月末の半期報告で、税引き後純利益44億US$(59.6億豪$)を上げたと発表した。これは、オーストラリア史上最高の中間利益となっている。
Rio Tinto
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BHP Billiton
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会計年度 |
1/Jan/2005-31/Dec/2005
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1/Jul/2004-
30/Jun/2005 |
売上げ(Revenue (Operating)) |
207億US$
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311億US$
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対前年度比(%) |
81%増
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32%増
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純利益(Net earnings/Net Profit) |
52.2億US$
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60.1億US$
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対前年度比(%) |
57.6%増
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76.6%増
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キャッシュ・フロー(Cash Flow from operations) |
82.6億US$
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89.3億US$
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対前年度比(%) |
85%増
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72%増
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探鉱費(Exploration expenditure) |
2.64億US $
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5.33億US $
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対前年度比(%) |
39%増
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17%増
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*1 | Net earnings (after tax) |
*2 | Net profit attributable to members (after tax) |
2. 事業分野別収益
収益に占める各鉱種の割合は、2005年度のRio Tinto社の場合、銅部門の税引き後利益*3が20億US$で38%、鉄鉱石部門が17億US$で32%であり、銅と鉄鉱石の合計で全体の約70%を占めている。
一方、2004/2005年度のBHP Billiton社の場合、銅を含むベースメタル部門の税引き前利益*4が18億US$で21%、ニッケル・レアメタルを含むステンレス材料部門が8億US$で9%、鉄鉱石部門が23億US$で27%であり、メタル全体で収益の50%以上を占めている。
両者とも、鉄鉱原料と銅をはじめとするベースメタルが収益の過半数を占めるという同様の収益構造となっている。BHP Billiton社は、これらに加えさらに石油部門が加わる。
2005年12月末半期の生産状況は、BHP Billiton社の銅637.3千t(2005年6月末半期は519.4千t)、鉄鉱石48,211千t(49,294千t)に対し、Rio Tinto社は銅406.1千t(378.3千t)、鉄鉱石64,709千t(59,784千t)と拮抗している。また、BHP Billiton社は、2005年6月にWMC社を買収して取得したOlympic Dam鉱山の効果が現れ、ウラン生産で2,158t(415t)とRio Tinto社の3,532t(2,945t)に迫る勢いである。
図2 BHP Billiton社とRio Tinto社との比較(その2 事業分野別収益) *3 Net earnings *4 Profit from ordinary activities before income tax |
3. 生産拠点
BHP Billiton社は、1999/2000年度から2004/2005年度までの6年間に、売上*5に占める割合が60%を越えていたオーストラリアは40%以下に、北米は10数%から数%台へと大幅に割合を減らしている。それとは反対に、南米は数%から10数%台へ、南アフリカも10数%台、欧州は数%から20%を越え、その占める割合が急増した。これは、1996年に米国Magma Copper社を買収したものの、その後の銅価格の下落などで収益をあげられなかった米国内の資産の整理を進めたこと、2001年6月末にBilliton社と合併したことでそれまで手薄だった南アフリカ及び欧州の生産拠点が加わったこと、チリのEscondida銅鉱山の開発・生産が順調であったことなどによるものと考えられる。
一方、Rio Tinto社は、RTZ社とCRA社との1996年の合併から相当時間経過していることから合併による顕著な変化は見られないが、2000年度から2005年度までの6年間に、売上*6に占めるオーストラリアの割合は徐々に上昇して50%を超え、また、北米も30%台を維持している。他方、南米・アフリカ・インドネシアの占める割合が減少している。
このように、両者は、1980年台、1990年台、ともに米国進出を行ったが、進出に成功したRio Tinto社と失敗したBHP Billiton社とで収益構造に大きな違いとなって現れている。
図3 BHP Billiton社とRio Tinto社との比較(その3 生産地域別売上)
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*5 Turnover (by original) *6 Gross turnover (by original) |
なお、2006年1月に、米国アリゾナ州でMagma Copper社とのResolutionプロジェクトにおいて高品位大規模銅鉱床を発見したとのRio Tinto社の発表があったが、同プロジェクトは銅価格が下落した1998年に、BHP Billiton社がRio Tinto社に売却したものである。
4. 販売地域
販売地域では、両社とも、日本の占める割合は10~10数%と安定しているが、ここ数年、中国の占める割合が日本を凌ぐほどに増加し、全体的にはアジア向けが増加傾向にある。
BHP Billiton社は、合併を境にオーストラリアと欧州の割合が逆転し、欧州の割合が増加傾向にあったが、中国市場の伸びによって欧州の増加傾向も反転、中国が同社にとって最も重要な取引相手であることを示している。一方のRio Tinto社は、欧州・北米・日本・その他アジアとその割合は比較的安定していたが、近年、中国が割って入った形となり、遠くない将来、同社最大の取引相手国となることも十分に考えられる。
図4 BHP Billiton社とRio Tinto社との比較 (その4販売地域別売上) |
5. おわりに
BHP Billiton社は、生粋のオーストラリア企業として発展し、海外進出を試みるもMagma Copper社の買収後の北米戦略に失敗、その後、Billiton社との合併を経て「オーストラリア企業から多国籍企業へ躍進」した。
一方、Rio Tinto社は、北米進出に成功し、また、RTZ社の「オーストラリア子会社」的存在であるCRA社を設立し、RTZ-CRA社(現在のRio Tinto社)として統合を果たし現在の姿となったと見ることが出来よう。
両社は合併・統合によって、それぞれ国際競争力を強化し総合資源企業としての地位を築いてきた。昨今の資源ブーム、新たな市場である中国へ需要が見込まれる中、その需要を満たす資源量の確保が巨大企業の「持続可能な発展」のための重要課題である。
参考文献等
The Australian Financial Review, 3/Feb/2006, “Rio shareholders extract $5.3bn from resources boom”
The Australian, 3/Feb/2006, “Rio splashes $5.3bn on shareholders”
The Australian, 3/Feb/2006, “Rio grand $5.3bn cashback”
Rio Tinto Media Release, 6/Feb/2006:
BHP Billiton Internal Report, 15/Feb/2006
http://www.riotinto.com/media/downloads/pressreleases/PR458%20FY2005.pdf
BHP Billiton website: 2005 Annual Report http://www.bhpbilliton.com/bbContentRepository/Reports/bhpb_ltd_concise_ar05.pdf