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2005年中国国土資源公報紹介

中国国土資源部は2005年の事業成果として「2005年中国国土資源公報」を発表した。国土資源関連事業は党中央と国務院の指導の下、科学的発展観を堅持して、中央共産党第十六期五中全会の精神を徹底させつつ、「体制を整備し、資質を強化する」活動を展開してきたとし、資源保護、発展の確保、権益の擁護、社会サービスの各分野で新たな成果を収めたと報じている。土地資源調査、鉱物資源調査、海洋資源調査、国土資源調査、地質環境と地質災害対策、国土資源の科学技術と情報化、国土資源管理、測量の管理とサービスの8項目において、2005年の成果を公表しているが、本稿では「2005年中国国土資源公報」の中の鉱物資源分野について紹介する。なお、「2005年中国国土資源公報」抄訳は金属資源レポート7月号に掲載することを申し添える。 |
1. 鉱物資源調査
・新鉱床
2005年の地質調査と鉱物資源調査では169の大中規模鉱床が発見された。その内訳は以下のとおり。エネルギー鉱床40、黒色金属鉱床3、非鉄金属鉱床44、貴金属鉱床11、冶金補助原料鉱床7、化学工業原料鉱床5、建材非金属鉱床52、水・ガス鉱床(訳注:ミネラルウォーター、地下水、二酸化炭素ガス、硫化水素ガス、ヘリウムガス、ラドンガス)7(図1)。主要鉱物資源のうちの石油、天然ガス、石炭、鉄、マンガン、ボーキサイト、鉛、金の埋蔵量が増加しているが、クロム、銅、亜鉛、硫鉄鉱、燐、カリウムの埋蔵量は逆に減少傾向にある。
・試掘権と採掘権
2005年末現在、地質調査許可証21,824件(新規発行件数は9,282件)、採掘許可証92,582件(新期発行件数は16,820件)が発行された。また、20の省(自治区、直轄市)で入札・競売・公示による試掘権の払い下げを実施したが、払い下げ試掘権は554件、金額は10.43億元であった。また28の省(自治区、直轄市)で入札・競売・公示による採掘権の払い下げを実施し、払い下げ採掘権は13,227件、金額は39.49億元であった。
・外資状況
雲南、内モンゴル、新疆、四川、甘粛、青海等の省(自治区)が、外国企業を誘致した地質調査で新たな成果を収めた。河南省洛寧沙溝西の銀/鉛/亜鉛鉱山、貴州省錦豊の金鉱山プロジェクトで外国企業による地質調査と開発が行われ、大きな成果を収めた。現在、中国で鉱物資源の地質調査と開発に携わっている外国鉱山企業は80社あり、同時に世界の30以上の国で中国企業が鉱物資源の地質調査と開発を行っている。
・鉱産生産量と貿易額
2005年は鉱産品の生産量が急増し、その内訳は次のとおり。原炭21.9億t、原油1.81億t、鉄鉱石4.21億t、粗鋼3.52億t、10種類非鉄金属1,635万t、燐鉱石3,044万t、原塩4,454万t、セメント10.60億t。西部の石油天然ガスの生産量が増加し、石炭ガスの大規模な開発利用が進められている。2005年の鉱産品の貿易総額は3,000億$を超え、不足している鉱産品の輸入が急増している。その内訳は次の通り。原油輸入量12,682万t、鉄鉱石輸入量27,523万t、マンガン鉱石輸入量458万t、クロム鉄鉱石輸入量302万t、銅鉱石輸入量406万t、カリ肥料輸入量917万t。
2. 国土資源調査(基礎地質調査)
・基礎地質調査の成果
国土資源調査で重要な成果があった。青蔵(チベット)高原空白区における縮尺25万分の1の区域地質調査が全て終了し、1999年から2005年にかけて、合計110枚・面積152㎞2の基準図を完成させたが、これにより中国の陸域の縮尺区域地質調査が全て終了したことになる。青蔵高原の岩石、構造、地層、古生物等の多くの貴重な資料が得られ、一連の最先端科学の認識が改められた。また10余りの相当規模の鉄、銅、ホウ素の鉱山帯が発見された。2005年には縮尺25万分の1の区域地質調査11.0万㎞2が終了し、その修正面積は41.9万㎞2に及んだ。縮尺100万分の1の区域重力調査27.8万㎞2及び縮尺20万分の1の区域重力調査3.4万㎞2が終了した。また縮尺20万分の1の区域化学探査1.1万㎞2と縮尺5万分の1の航空リモート・センシング調査2.62万㎞2が終了した。海洋地質調査ではマルチチャンネル地震測量3,776㎞、重力測量2,076㎞、マルチビーム測量5,528㎞を完了させた。
・リモートセンシング情報サービス
全国の省級国土資源リモート・センシング総合調査が全て終了したが、これで全国の陸域面積をカバーした調査が終了したことになる。土地資源、鉱物資源、水資源、観光資源、森林資源、地質災害、地質構造と地域の安定性、生態環境等の分野で多大な成果を収めた。省級国土資源リモート・センシング総合調査成果の管理サービスシステムが確立されたことで、国と地域の経済社会計画、国土資源管理、社会の持続可能な発展のために詳細かつ正確な基礎データが提供できるようになった。
・新規鉱徴地調査
固体鉱物資源の地質調査で、雲南シャングリラ県の斑岩銅富鉱エリアで目下35の鉱徴地が発見された。同地域の長期的な資源量は500万t超が見込まれ、既に開発に至っている普朗(Pulang)銅鉱山と周辺の銅鉱徴地の地質調査と開発の進捗によって、当該地域の経済発展が大幅に促進されるものと思われる。普朗(Pulang)銅鉱山だけで15億元の地質調査と開発資金が注入された。チベット墨竹工卡(Mozhugongka)県駆龍銅鉱区の鉱床探査で大きな進展があり、100万t超の銅資源が確認されているが、周辺で更に鉱床が見つかる可能性もある。チベットの多不雑銅(Dobusa)鉱床は大型鉱床と期待され銅200万tの資源規模が見込まれ、周辺の塞角(SaiJao)と鉄格隆(Tiegelong)鉱区でも斑岩銅鉱床が見つかる可能性を有する。湖南省錫田地区で30本余りの錫鉱脈(脈の規模不明)が見つかり、長期的な資源量として錫50万t、タングステン30万t超が見込まれている。湖北省西部の層準規制型鉛/亜鉛鉱徴地ではこれまでに130余りの鉱物露出が発見され、500万t以上の鉛と亜鉛が見込まれている。新疆白干湖のタングステン/錫鉱徴地では3か所の鉱床エリアを囲い込み、鉱脈29本(脈の規模不明)を確保し、30万t以上のタングステンが見込まれている。
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図1 2005年発見した大中規模鉱床(169鉱床)
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3. まとめ
中国国土資源部は毎年4月中旬に中国国土全体の土地利用の管理及び鉱産資源の現状等の評価と新たな知見に関し一般国民に開示するため、「2005年中国国土資源公報」を作成している。同公報中に、国内の一斉鉱物資源調査により大中規模鉱床169か所(2004年は205ヶ所)を新たに発見したとある。また、国土基礎調査の鉱徴地調査による鉱床胚胎期待地域の割り出しなど、国内の鉱物資源埋蔵量確保を急ぐ理由に、中国の急激な経済発展による鉱物資源の需要増を賄う必要がある。特に、非鉄では銅、亜鉛、ニッケルがその対象の中心となっている。これらの鉱物資源は年々自給率を下げており、海外への依存度を増加させている。過去には銅鉱石の高値買いにより、国際市場を混乱させた経験もあり、国内の鉱物資源埋蔵量を確保していくことが急務であるとの認識があると言える。中国政府は海外での調達を増やすことを奨励してきたが、それだけでは国際市場への影響も懸念されるとし、国内での資源確保を見直す方向に有るとの見方が強い。ただ、銅、亜鉛といった重要な金属鉱物資源の埋蔵鉱量は増加させるには至っていないのが現状である。

