報告書&レポート
モンゴル・オユトルゴイ(Oyu Tolgoi)銅鉱山の開発状況
1. はじめに
世界の銅地金消費量は、中国を中心としたBRICs諸国による経済発展に伴い、過去5年間では年率2%程度で増加している。この傾向は今後も続くと考えられており、銅地金消費は、2005-2010年の5ヵ年で年率4%程度増加すると専門家筋は予想している。その結果、銅地金消費は2005年の16,431千tから2010年までは、さらに3,560千t程度の銅地金が必要となる。
一方、供給サイドにおいては、既存鉱山の拡張計画が多くみられる。年産200千t以上の拡張計画として、豪州のOlympic Dam(225千t)・チリのAndina(350千t)やChuquicamata(355千t)があげられる。年産200千tを越える新規鉱山開発としては、モンゴルのOyu Tolgoi(410千t)・ペルーのLa Granja(285千t)やLas Bambas(250千t)・アルゼンチンのEl Pachon(250千t)等と数は少ない。
本レポートは、世界的な大規模銅鉱山開発として期待されるOyu Tolgoiプロジェクトの概要をIvanhoe Mines社のプレスリリースに基づき明らかにするとともに、鉱山開発によるモンゴル経済へのインパクトや供給先と考えられる中国への影響についても論じてみたい。
2. Oyu Tolgoiプロジェクトの概要
Oyu Tolgoi地域における銅鉱床の発見の歴史は古く、青銅器時代にさかのぼる。近年に一般的な調査は行われたものの、現在の規模を想定させる兆候は確認できず、本格的な探査の推移は以下のとおり。
| 1996年 | : | Magma Copper社の地質技師がポーフィリーカッパーの存在を明らかにした。Magma Copperはその後BHPに吸収。 |
| 1997-1998年 | : | BHPはOyu Tolgoiで本格的探査活動を開始した。地質・地化学・物理探鉱・ボーリング(23孔)の結果、地下20~70mのところで銅と金を捕捉。 |
| 1999年 | : | 探鉱予算の制約のため、BHPは共同探鉱を模索。Ivanhoe Mines社は、2%のNet Smelter Royalty(NSR)を支払う条件で、Oyu Tolgoiの100%権益を取得。 |
| 2000-2002年 | : | 112孔のボーリングを実施するとともに、Oyu Tolgoi鉱床の北部でのボーリングも有望であることを示す結果となった。 |
| 2003年 | : | vanhoe Mines社は、2%のNSR権利を取得するため、BHPに37百万$を支払った。 |
| 2004-2005年 | : | Ivanhoe社は、2004年に100百万$、2005年に95百万$とOyu TolgoiプロジェクトのF/S調査を主体とした探鉱を行い、総括的開発計画書を作成。 |
開発計画書による、Oyu Tolgoiプロジェクトの概要は以下のとおり。
| (1) 位置 | : | 中国国境から約80Km、首都ウランバートルから南南東約580Km。 |
| (2) 鉱床 | : | ポーフィリーカッパー。 |
| (3) 埋蔵量 | : | カットオフ品位露天掘り0.3%(銅換算)、坑内掘り0.6%の場合次のとおり。 Southern Oyu鉱床:確定・推定埋蔵量(917百万t)、銅品位(0.50%)、金品位(0.36 g/t) Hugo Dummet鉱床:確定・推定埋蔵量(582百万t)、銅品位(1.89%)、金品位(0.41 g/t) プロジェクト計 :確定・推定埋蔵量(1,499百万t)、銅品位(1.30%)、金品位(0.47 g/t) |
| (4) 生産計画 | : | 露天掘りにて2009年より生産開始。2011年より坑内掘りによる生産開始を予定しており、開始より4-5年にてフル生産体制となる予定。 |
| (5) 生産規模 | : | フェイズ1(露天掘り)、2(坑内掘り)の合計年間平均は、銅200~550千t/年、35年間で銅15百万tと金340tを生産。 |
| (6) 初期投資額 | : | 1,327百万$ |
| (7) 生産コスト | : | 40¢/Lb(平均キャッシュコスト) |
3. Oyu Tolgoi開発によるモンゴル経済への影響
Ivanhoe Mines社の2005年9月末における発表によると、2000-2005年までの探鉱活動による経済効果とOyu Tolgoiプロジェクト開発に伴う経済効果を次のように明らかにしている。
(1)探鉱活動(2000-2005年)による経済効果
| ・ | モンゴルでの2005年9月末まで268百万$の探鉱を実施。 | |
| ・ | 2005年4月までに、所得税として5百万$以上をモンゴル政府に支払い。 | |
| ・ | 2005年3月までに、ライセンス料として6百万$以上をモンゴル当局に支払い。 | |
| ・ | 2000年以来、4,000人以上のモンゴル人に雇用機会を創設。モンゴルにおける新規雇用に対して、Ivanhoe Mines社の貢献は91%を占めている。 | |
| ・ | Ivanhoe Mines社は現在、正規職員として350名のモンゴル職員を、臨時職員として140名のモンゴル職員を雇用している。 | |
| ・ | 雇用職員の51%は南ゴビの出身者で占められている。 | |
| ・ | 地域住民や地域社会における教育・医療等に貢献し、10百万$でOyu Tolgoi開発基金の設立を計画中。 |
(2)鉱山開発による経済効果
Oyu Tolgoi開発計画に基づいて、2002-2043年までの間にモンゴル経済にもたらす経済効果は次のように推定される。
| ・ | 実質GDPを平均34.3%引き上げる。 | |
| ・ | 正規及び臨時職員を含めて(直接的、間接的に)117,000名の雇用機会を創設。平均10.3%の雇用を増加。 | |
| ・ | 一人当たりの実質収入を11.5%増加。 | |
| ・ | モンゴル政府に対し79億$の税収と、累積、540億$に及ぶ輸出増加。 |
4. 銅精鉱の輸出先
2000-2005年、モンゴルにおける銅鉱山生産においては含有銅量ベースで129~135千で推移しており、その全量がモンゴルの北方に位置するErdenet鉱山からである。Erdenet鉱山は1978年にロシアと合弁で生産が開始されており、1996年からはSX-EWによる銅地金生産も行っているが、生産量は1.5千t/年と小規模であり、大半は銅精鉱の形で生産している。Erdenet鉱山産の銅精鉱の全量は中国に輸出されている。
2005年における中国の銅精鉱輸入量は1,009千tと日本に次いで世界第2位の輸入国である。その輸入相手国は、第1位チリ(輸入量の40%)・第2位ペルー(同16%)・第3位モンゴル(同13%)・第4位豪州(同12%)・第5位カナダ(同4%)となっており、モンゴルは重要な銅精鉱輸入の相手国となっている。
中国における銅地金消費量は、2005年の3,652千tから2010年にかけて年率8~9%程度で増加すると予想されている。消費量の拡大に対応して、中国では2010年までに銅製錬所の拡張計画が発表されている。2005-2010年の主な拡張計画は、金川集団有限公司(156から400千t)・金隆有色金属公司(185から400千t)・江西銅業集団公司(452から700千t)・銅陵有色金属公司(125から155千t)等である。
Oyu Tolgoiプロジェクトが開発されると、最盛期には410千tの銅精鉱生産が予定されており、本プロジェクトはモンゴル国内にて製錬所が建設されることを想定している。ただし、中国では全量引き取るだけの製錬所能力は有しているだけでなく、中国にとっては重要な供給源となると思われる。モンゴルのOyu Tolgoiから中国北部を結ぶ道路や鉄道のルートも検討されており、Oyu Tolgoi鉱山生産の銅精鉱が全量中国に向かう準備が進められている。
5. Oyu Tolgoiプロジェクトの今後の展開
2006年3月に、Ivanhoe Mines社はモンゴル新政府とOyu Tolgoi鉱山開発に向けたスタビリテイー・アグリーメントの締結に向けた枠組み作りに関して進展があった。この進展は、モンゴル首相がモンゴル側交渉相手として、財務大臣と通産大臣を任命したとのことである。このIvanhoe Mines社提示によるイニシアチブの政府受諾の発表は、同社のFriedland会長に率いられた代表団が3月にモンゴルを訪問された際に行われた。モンゴルのOyu Tolgoi鉱床は、一部北端の鉱区を除き、鉱床の形状・品位・埋蔵量の確認を終了しており、Ivanhoe Mines社はモンゴル政府の今回のイニシアチブを開発に向けた前進として歓迎している。今後のモンゴル側の合意書締結に向けた動きとして、以下の点が指摘される。
(1) スタビリテイ・アグリーメントの交渉に向けたワーキンググループ(W/G)の設置。本W/Gは、今春の国会で予定されている税制と鉱業法の改正と調和するアグリーメントにすることを義務づけ。
(2) モンゴル人の雇用・最低賃金・技術訓練の他、電力供給や製錬所の建設の可能性について相互利益の観点からアグリーメントを締結。
(3) モンゴル国民がIvanhoe Mines社の株所有を可能にするため、同社のモンゴル証券取引所への登録。
Oyu Tolgoi鉱床が分布する地域はゴビ砂漠が広がり、道路・鉄道・電力といったインフラも未整備であり、開発にあたっては巨額の資金の投入が必要である。Ivanhoe Mines社は鉱山産業をモンゴル政府が育成するにあたり、政府による同地域のインフラ整備等の総合的な貢献が不可欠と考えている。日本も30万kw規模の火力発電の建設支援を提案している。
![]() |
|
モンゴルのOyu Tolgoiプロジェクトの位置と中国国境関係図
|
![]() |
|
モンゴルOyu Tolgoi鉱床の平面図と断面図
|




