報告書&レポート
チリ「EXPOMIN2006」報告

2006年5月23~27日の5日間にわたり、チリ・サンティアゴ市において鉱業見本市“EXPOMIN2006”が開催された。JOGMECサンティアゴ事務所もブース出展を行いJOGMECの活動を紹介した。以下にその概要を報告する。 |
1. “EXPOMIN2006”の概況
“EXPOMIN”は1990年から隔年で開催され、2006年で9回を数える。チリで“EXPOMIN”が開催されない年は隣のアルゼンチンで“ARMINERA”が開催されることになっている。こちらは“EXPOMIN”に比べるとぐっと小規模である。
会場は、一昨年APEC首脳会議の開催されたサンティアゴ市郊外のRiescoコンベンションセンターで面積は46,000m2を超える広さを誇る。事務局の発表によると、2,300法人の出展、36か国から58,000人が参加した。
5月23日には、Bachelet大統領、Poniactik鉱業エネルギー大臣をはじめチリ鉱業協会(SONAMI)会長等チリの鉱業関係者を迎え盛大な開会式が行われた。前回(2004年)は、鉱業ロイヤルティ議論の最中、業界と政府が対立し緊張した雰囲気の中で行われたのに比べ、今回は和やかな雰囲気で行われた。
展示の主体は鉱業関連機械で、チリ国内外のメーカーが参加した。鉱山会社は、Xstrata、Barrick Goldが出展したに過ぎず、鉱山や案件紹介はなく、鉱山会社もコーポレートイメージのPRを狙ったものであった。これらに混じって、CODELCO(チリ銅公社)、チリ鉱業協会(SONAMI)、チリ鉱業協議会(CONSEJO MINERO)も出展した。特に今回初めて中国コーナーが設けられ、中国の鉱山機械メーカー14社が参加した。日本からの出展はJOGMECを除けば1社のみで、KomatsuとBridgestoneは現地法人が出展した。“EXPOMIN”事務局によると具体化した商談は1,300百万US$に上るだろうとのこと。
展示と平行して地元出版会社Editec主催の「第9回ラテンアメリカ鉱業のための世界会議」が開催され、(1) 南米各国およびカナダ、メキシコの鉱業協会もしくは政府代表による自国鉱業の紹介、(2) 非鉄メジャー各社によるチリで鉱業活動の概要紹介、(3) 持続可能な開発にかかる様々な活動紹介がなされた。その他4つの会場で各社主催の技術トークが開催された。
また“EXPOMIN2006”に併せてチリ大学、サンティアゴ大学およびカトリック大学のチリ3大学鉱山関係学部共催で“MININ2006”と称する最新の鉱山技術に関するセミナーがサンティアゴ市内のホテルで23~26日にかけて開催され約400人が参加した。
2. 来賓挨拶から
来賓有力者の挨拶が注目されるところであるが、以下幾つかの話題を紹介する。
・Bachelet大統領
チリ経済における鉱業の重要性と官―民の更なる協力促進の必要性を強調した。金属価格高騰は一時的であり、これに安閑としてはいけない。更なる革新と新技術適用を刺激する計画が必要である。世界の銅生産国のリーダーとして、鉱業活動で蓄積された知的財産である鉱業関係ソフトウエア、鉱業技術ノウハウ、鉱山管理運営ノウハウの輸出を促進しなければならない。
また政府鉱業組織の近代化、生産助成政策の再検討、鉱業セクターの戦略的ニーズを発掘するための中小鉱山会社の従業員調査、鉱業保安の強化、探鉱促進のための鉱区入札に付随する情報提供の改善、国際基準での鉱業投資促進、環境保全等の施策案を提起した。
・Ovalle チリ鉱業協会(SONAMI)会長
鉱業特別税で徴収された資金の配分に対して助言を与え、更にチリ鉱業の競争力強化のための革新審議会に業界からも参加出来るよう大統領に要請した。「我々はこの税金を通じて、セクターから得られる資金の一部が、新技術、調査、革新開発に充当されることを期待している。さらに、何らかの措置で、それらの資金が鉱業地域共同体の支援をももたらし、そこに獲得資金が充当することを提起したい」と述べた。またチリ経済・社会開発における鉱業界の貢献を強調し、鉱業セクターの輸出額は全輸出額の55%以上にあたると付け加えた。投資は競争であり、チリ鉱業およびテンアメリカ鉱業の競争力を引き上げる努力を強化していく必要があることを主張した。
・Costabaチリ鉱業協議会(Consejo Minero)会長
最近承認された労働下請け契約法について、本法は鉱業界にとって決して後退を意味するものではなく、特に中小企業の参加により、その意義は大きくなる。銅価格高騰に関して、鉱業は非常に周期的であり、リスクが高く、長期で機能する業界だということを考慮しなければならないと警告した。鉱業特別税は慎重な管理が必要である。また、銅価格高騰による最大の懸念は、世界市場での代替品の出現と、銅のリサイクルであり、この状況が続くなら、銅のユーザーは、銅の使用頻度を引き下げ、銅に代わる素材開発促進を加速するだろうと懸念を述べた。
環境影響評価と鉱山開発への市民参加は、今後非常に重要であり、行政サイドの決定に影響を与えたり、審査に余計な時間をかけたりすることは認められない。鉱業セクターの多額の投資を実現するため、「明確で、タイムリーな決定」が必要であると、最近の環境団体の行動に対する政府の確固たる態度を訴えた。
3. 「第9回ラテンアメリカ鉱業のための世界会議」セミナー
(1) アメリカ鉱業-挑戦と機会
チリ、アルゼンティン、カナダ、ペルー、メキシコ、ブラジル各国政府もしくは業界代表による自国鉱業の紹介が行われた。
(2) 南米の主要鉱山会社
CODELCO、BHP Billiton、Barrick Gold、Xstrata、Anglo American、Antofagasta Minerals、CVRDの7社が自社活動の紹介をおこなった。各社ともに社会と調和した開発を行っていることを強調した。
CODELCO Arellano総裁は「CODELCO強化とチャンスおよび銅生産者の挑戦」というタイトルで講演を行った。
現在のような金属価格高騰時期に、ユーザーは必ず代替品を求めるので、生産者として、自ら市場を守り、銅需要を引き上げるよう努力を怠ってはいけない。そのため、CODELCOは、大型投資により、増産を行うとともに、自社の大規模な鉱業基盤を最大限活用し、企業運営の強化と近代化を推し進めて行く方針である。鉱山会社は、開発規模の大型化、鉱石品位の低下、深部化に対処しなければならない。CODELCOでは、生産減少傾向が現れてきており、2007年にそのピークを迎え、生産量が一時的に1,652千tに落ち込む。新規プロジェクト開始により、2008年には回復し始めることになる。現在の年産1.728千tから2020年には2,300~2,500千tになる見込みである。
(3) 持続可能な開発 -探査から閉山まで-
シンクタンク、大学研究者、鉱山企業から次のテーマの講演が行われた。
・鉱業のための環境規制
・社会的責任と持続可能な開発
・環境マネージメント
・鉱山閉山の経験
・鉱業の危機管理
・新技術導入における鉱山業者の役割
これらの講演ではプロジェクトから操業までのリスク、自然リスクおよび地質技術的な不明確さ、金融リスクコントロール、社会リスク等「鉱業におけるリスク管理」モデルに関する講演が多数を占めた。
おわりに
近年にはない金属価格高騰と世界的な資源供給不安、非鉄メジャーの相次ぐ買収合戦と世界の鉱業界が大きく変動するなかチリ・サンティアゴで開催された“EXPOMIN2006”はこれまでにない盛況であったとの評価であった。入場料は無料ということもあって、鉱業関係者による商談のみならず多くの市民が参加し、高度化する鉱山機械やソフトウエアを身近に眺め、触れながら見本市を楽しんだ。また開会式には大統領をはじめとする政府および鉱業界幹部が参列し、彼らの演説が注目された。鉱業展示と並行して各種セミナーでは、鉱業と社会の関係を意識した講演が目立ったこと、各鉱山会社の開発計画紹介の中にも必ず「地域社会と調和および環境への配慮」の部分が含まれていたことは、最近の鉱業を取巻く環境、とりわけ地域社会環境への配慮なしに鉱山開発は在り得ないということを如実に表していた。
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“EXPOMIN2006”の風景 |
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JOGMECブース |

