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オーストラリア 2005探鉱状況-「Australian Mineral Exploration,A review of Exploration for the Year 2005」より-
オーストラリア地球科学機構(Geoscience Australia)は、2005年のオーストラリアにおける探鉱活動状況を記したレポート「Australian Minerals Exploration, A review of Exploration for the year 2005」を発表した。 本稿では、同レポートをもとに、2005年のオーストラリアにおける探鉱活動状況を報告する。 |
1. はじめに
2004/2005年度のオーストラリアの探鉱支出は、対前年度比31%増加の1,028.3百万A$に達し、その内、新規鉱床探査は39.3%を占めた。金探鉱が主たる対象鉱種であることに変わりはなかったが、ニッケル、銅、鉄鉱石、石炭、ウランへの探鉱支出が増加している。
2. オーストラリアの2005年の探鉱活動の概要
2004/2005年度のオーストラリアの探鉱支出は、対前年度比31%増加の1,028.3百万A$に達し、その内、初期鉱床探査(Greenfield)は全探鉱支出の39.3%を占め、世界平均37.0%(Metal Economic Group)をわずかながら上回った。州別では、西オーストラリア州で最高の46.8%、ビクトリア州で最低の19.0%を初期鉱床探査支出が占めた。
ビクトリア州を除き、全ての州で探鉱支出が増加している。西オーストラリア州は前年度比30%増加の606百万A$、クィーンズランド州は同32.9%増加の166.4百万A$、ニューサウスウェルズ州は45.7%増加の73.6百万A$、南オーストラリア州は60.4%増加の66.9百万A$、北部準州は30.8%増加の55.6百万A$、タスマニア州は10.7%増加の8.5百万A$、ビクトリア州は3.7%減少の51.5百万A$となっている。
2004/2005年度のボーリング総延長は前年度比19%増加の6.78百万m、その内、初期鉱床探査ボーリングは、2.78百万mで全体の41%を占めた。
3. 鉱種別の探鉱活動
金及び非鉄金属探査は探鉱活動の重要な部分を占めているが、鉄鉱石とウラン探鉱支出が大きく伸びている。各鉱種の探鉱状況は次のとおり。
(1) 金
2004/2005年度の金探鉱支出は、対前年度比5.4百万A$減少の391.7百万A$となった。ニューサウスウェルズ州、クィーンズランド州、北部準州で探鉱支出が増加したが、他州の減少を相殺することができなかった。金探鉱は、西オーストラリア州に集中しており、探鉱支出は259.6百万A$であった。
(2) 銅・亜鉛・鉛
2004/2005年度の銅・亜鉛・鉛探鉱支出は、対前年度比89%増加の71.3百万A$となった。南オーストラリア州は銅探鉱を中心に探鉱支出は139%増加の32.7百万A$、クィーンズランド州は24.8百万A$で、銅探鉱支出の81%が南オーストラリア州とクィーンズランド州で支出された。
一方、亜鉛・鉛・銀探鉱支出は、クィーンズランド州に集中しているが、探鉱支出はわずかに1.5百万A$増加の31.2百万A$にとどまった。
(3) ニッケル
2004/2005年度のニッケル探鉱支出は、対前年度比88%増加の158.6百万A$となった。ニッケル探鉱は、西オーストラリア州に集中しており、対象は硫化ニッケルである。また、タスマニア州でも、探鉱が実施されている。
(4) 鉄鉱石
2004/2005年度の鉄鉱石探鉱支出は、対前年度のほぼ倍増の138百万A$となった。そのうち、西オーストラリア州で136.9百万A$が支出されるなど同州に集中している。
4. 連邦政府・各州の2005年の探鉱活動
(1) 連邦政府
オーストラリア地球科学機構(Geoscience Australia)は、ニューサウスウェルズ州、クィーンズランド州、タスマニア州、ビクトリア州の10万分の1地質図を作成。西オーストラリア州政府、北部準州政府、Newmont社、Tanami Gold NL社等と総延長700kmに及ぶ地下深部構造解析を目的としてTanami Gold Provinceでの地震探査を実施。
(2) ニューサウスウェルズ州
7年間、30百万A$の予算で、州の80%をカバーする高解像度(測線間隔400m以下)の空中磁気・放射能等の地球物理探査、3次元モデル解析を実施中。
(3) 北部準州
Tanami地域で、2km間隔で3,700点の新たな重力データを取得。Tanami地域における主要探査レポート及び北部準州における錫-タンタル・ペグマタイト鉱化作用に関するデータを公開。
(4) クィーンズランド州
Mount Isa、Drummond Basin、Mount Rawdon、Bowen及びSurat Basins地域を中心に地球科学データ取得を加速させるために20百万A$の追加予算を計上。
(5) 南オーストラリア州
探鉱促進プログラム(Plan for Accelerating Exploration:PACE)に106件が応募、6.1百万A$を支出。Central Gawler Craton、Northern Curnamona地域で探鉱鉱区カバー範囲が22%増加。
(6) タスマニア州
西部広域調査、3次元モデル、2.5万分の1地質図のデジタル化等を実施。オーストラリア地球科学機構と共同で古生代花崗岩に伴う鉱化作用評価のための地化学データベースを完成。
(7) ビクトリア州
探鉱鉱区レポート、地球科学データセット公開。Webサイト地図データシステムに新たな情報(Layers)を追加。
(8) 西オーストラリア州
探鉱促進予算3百万A$を用い、オーストラリア地球科学機構と共同でSouthern Yilgarn、Albany-Fraster Orogen、Paterson地域、Telfer鉱山北方、Tanami地域で地球物理探査実施。3年間以上にわたり1.2百万A$の探鉱促進予算を確保。7,000件の探鉱レポートの電子化を実施(更に14,000件のデータを電子化予定)。
5. おわりに
資源ブームが好材料となり、オーストラリアの2004/2005年度探鉱支出は増加したが、鉱床の深部化・潜頭化への対応等の技術的な課題、投資意欲を引き出す諸制度・優遇税制の検討など、資源ブームの間に取り組まなければならない課題は残されている。
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参考文献
Geoscience Australia, Australian Minerals Exploration, A review of Exploration for the year 2005
オーストラリアの探鉱費の推移
出典:Australian Mineral Explorations(Feb 2006) |