報告書&レポート
BHP Billiton社、オーストラリア史上最高の純利益
BHP Billiton社(本社メルボルン/ロンドン)は、8月23日、2005/2006年度の純利益が105億US$(137億A$)に達する財務報告内容を発表した。これは、昨年度に同社が記録した64億US$(87億A$)を大きく上回り、オーストラリア史上最高の純利益の記録を更新する好業績となった。 本稿は、同社レポート等を元にBHP Billiton社の2005/2006年度の財務・生産結果について報告する。 |
1. 2005/2006年度財務結果の概要
2005/2006年度の部分権益保有分を含めた総収入(Revenue)は391億US$(対前年度25.5%増加)、税引き前利益(EBIT)は153億US$(同54.0%増加で2002年の約5倍)、税引き後純利益(Attributable Profit)は105億US$(同63.4%増加)、キャッシュ・フロー(Net operating cash flow)は105億US$(同25.1%増加)、総資産(Net asset)は245億US$であった。
BHP Billiton社は、好業績の要因は中国を中心とした需要の伸びに対応したアルミニウム・銅・鉄鉱石・ニッケル・天然ガスの記録的な生産と銅・鉄鉱石・石炭・石油の価格の高騰にあるとしている。
(図1 オーストラリア企業の純利益歴代上位10社)
(出典;The Australian 2006/8/24より作図) |
(図2 BHP Billiton社の業績の推移)
(出典;BHP Billiton社 News Release 2006/8/23、 The Australian Financial Review 2006/8/24より作図) |
(図3 2005/2006年度BHP Billiton社の収益構造)
(出典;BHP Billiton社 News Release 2006/8/23、 The Australian 2006/8/24より作図) |
2. 事業分野別の業績
原料炭・鉄鉱石・ベースメタル・アルミニウム・石油価格の高騰が大きく影響して、売上では、ベースメタル事業が103億US$(対前年度104.1%増加)、ニッケル等(ステンレス材料事業)が30億US$(同29.9%増加)、鉄鉱石事業が98億US$(同28.5%増加)、アルミニウム事業が51億US$(同9.3%増加)と大きく増加した。
また、税引き前利益では、ベースメタル事業が45億US$(対前年度148.7%増加)、鉄鉱石事業の45億US$(同60.8%増加)、ニッケル等(ステンレス材料事業)が9億US$(同26.5%増加)、アルミニウム事業の12億US$(同24.2%増加)、石油事業の30億US$(同23.9%増加)が大幅に伸びた。
一方で、ダイヤモンド事業と燃料炭事業は売上(対前年度2.0%減少、同16.3%減少)、税引き前利益(同38.4減少%、同44.3%減少)とも減少している。
業績には銅を中心とするベースメタル事業と鉄鉱石事業の貢献度が高い。
生産量では、ベースメタル事業の銅が127万t(対前年23%度増加)、亜鉛が11万t(同4%増加)、ウランが3,936tU3O8(純増)と増加したが、鉛、銀は減少。ステンレス材料事業のニッケルが17.5万t(同90%増加)で増加。アルミニウム事業のアルミナ419万t・アルミニウム136万t(いずれも昨年度並)、鉄鉱石事業の鉄鉱石9,707万t(昨年度並)・原料炭3,564万t(同4%減少)は昨年度並。石油事業では天然ガス360bcf(同4%増加)・石油4,587万bbl(同10%減少)、その他の燃料炭・ダイヤモンドは大幅な減少となった。
生産量で増加した鉱種は、銅、亜鉛、ニッケル、ウラン、天然ガス、金、モリブデンなどで、その他は前年度並みか生産減少となっており、業績が鉱物資源価格の影響を強く受けていることがわかる。
売上(US$m) 税引き前利益(US$m)
(図4 2005/2006年度 BHP Billiton社の事業分野別収益構造) (出典:BHP Billiton社 News Release 2006/8/23より作図) |
(図5 2005/2006年度 BHP Billiton社の鉱種別収益の増減)
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(図6 2005/2006年度 BHP Billiton社の鉱種別生産量の増減)
出典:BHP Billiton社 News Release 2006/8/23より作図) |
3. 国・地域別売上げ
国・地域別では、中国向けの売上高が前年度比64.1%増の65億5,700万$となり、総売上げに占めるシェアは前年度の12.8%から16.8%に上昇した。中国とともに成長著しいインドは2.9倍の12億4,100万$(シェア3.2%)に急増した。
(図7 総収入に占める中国・インドの割合)
出典:BHP Billiton社 各年度年次報告書、 2006/8/23 Preliminary Result 30 June 2006より作図) |
4. Rio Tinto社との比較
BHP Billiton社とRio Tinto社とは会計年度が異なる(前社は7月から翌年6月末、後者は1月から同年12月末)ため、一概に比較はできないが、ここではRio Tinto社の半期報告と年間報告をもとにBHP Billiton社の会計年度にあたる2005年7月から2006年6月末の期間の財務・生産状況を比較した。
両社ともに生産量では銅・アルミニウムが伸び、税引き前利益では銅・ウランなどを含むベースメタルと鉄鉱石が好業績の牽引役となっている。
(図8 2005/2006年度 Rio Tinto社の鉱種別収益の増減)
(出典:Rio Tinto社 Data book, News release 2006/8/3 より作図) |
(図9 2005/2006年度 Rio Tinto社の鉱種別生産量の増減)
(出典:Rio Tinto社 Data book, News release 2005/1/19, 2006/7/19, 2006/8/3より作図) |
5. おわりに
BHP Billiton社は、鉱物資源価格高騰の影響を受け歴史的好業績であった昨年度を更に大きく上回る結果となった。
既に、Worsleyアルミナ精錬所(西オーストラリア州)・Escondida Norte銅鉱山の拡張(チリ)・Escondida銅鉱山の硫化鉱リーチングプラント(チリ)・鉄鉱床No.18鉱体開発(西オーストラリア州Pilbara地域)の4プロジェクトは拡張工事が完了したほか、Spence銅プロジェクト(チリ)・Ravensthropeニッケルプロジェクト・Yabuluニッケルプロジェクトなど6プロジェクトが開発・拡張中であり、更に、Alumarアルミナ精錬所(ブラジル)など7プロジェクトの実施が決定されているなど、更なる事業拡大が見込まれている。
一方で、開発・拡張プロジェクトにおけるコスト高、Escondida銅鉱山での労働者のストライキが今後の業績に与える影響が懸念される。また、近年、記録的な好業績を続けた同社の舵取りをしてきたChip Goodyear氏退任後の社長人事など不確定要素もあり同社の動向は今後も注目される。
参考文献
The Australian Financial Review 2006/8/24, “BHP smashes record with $13.7bn”
The Australian Financial Review 2006/8/24, “Why Chip can call it a good year”
The Australian Financial Review 2006/8/24, “Runaway copper underpins big earnings jump”
The Australian Financial Review 2006/8/24, “China the game in town”
The Australian Financial Review 2006/8/24, “Rising costs still a problem”
The Australian Financial Review 2006/8/24, “Oil arm to pump up production”
The Australian Financial Review 2006/8/24, “Cashed-up for buying but also a target”
The Australian 2006/8/24, “BHP scores $14bn from China’s rise”
The Australian 2006/8/24, “$13,663,702 and counting”
The Australian 2006/8/24, “Miners striking profit records”
The Australian 2006/8/24, “Escondida manageable”
The Australian 2006/8/24, “Goodyear vows better years for oil”
The Australian 2006/8/24, “BHP: numbers are so big they boggle the mind”
The Sydney Morning Herald 2006/8/24, “BHP breaks $US10b profit mark”
The Sydney Morning Herald 2006/8/24, “Big numbers mount on the cost side too”
The Sydney Morning Herald 2006/8/24, “Asia makes it the Giant Australian”
The Sydney Morning Herald 2006/8/24, “Asia has made it the Giant Australian”
The Sydney Morning Herald 2006/8/24, “Economy surfs in BHP wake”
BHP Billiton 2006/8/23, News Release “BHP Billiton result for the year ended 30 June 2006”
BHP Billiton 2006/8/23, “Preliminary Results – 30 June 2006”
BHP Billiton Limited Annual Report 2002, 2003, 2004, 2005
BHP Billiton 2006/7/25, News Release “BHP Billiton Production Report for the Quarter ended 30 June 2006”
BHP Billiton 2006/7/25, News Release “BHP Billiton Production Report on Exploration and Development Activities April 2006 – June 2006”
BHP Billiton, “BHP Billiton A Global Perspective”