報告書&レポート
第39回 ウラングループ会議について

カザフスタンの旧都アルマティにおいて、2006年8月28-29日に第39回ウラングループ会合が、8月30-31日にウラン鉱床のIn-Situ Leachingに係る技術会合が開催された。筆者は、(独)日本原子力研究開発機構の小林孝男氏とともに出席したので会合の概要を報告する。
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主催者:
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OECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関、30か国加盟) IAEA(国際原子力機関、加盟国140か国) |
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支 援:
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KAZATOMPROM(KazAtomProm社、政府所有の国営原子力企業) |
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出席者:
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17か国23名(アルゼンチン、豪州、中国、チェコ、カナダ、エジプト、フィンランド、仏、ドイツ、インド、イラン、日本、カザフスタン、パキスタン、ロシア、ウクライナ、米国) |
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事務局:
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Mr. Robert Vance Mr. Jan Slezak Nuclear Development Division IAEA Uranium Group Secretariat OECD Nuclear Energy Agency Div. of Nuclear Fuel Cycle and Le Seine St.Germain – 12 Waste Technology, A2615 IAEA Boulevard des Iles 92130 Wagramer Strasse 5, PO Box 100 Issy-Les-Moulineaux, France A-1400 Vienna, Austria Tel: 33 1 4524 1063 Tel: 43 1 2600 ext: 22757 E-mail: robert.vance@oecd.org E-mail: j.slezak@iaea.org |
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目 的:
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– Red Book 2007(ウラン資源の需給)作成に向けた質問内容検討 – 各国のウラン鉱業に関するカントリーレポート – 従来型ウラン鉱床のIn-Situ Leachingに関する技術会合 |
2. 第39回ウラングループ会合
フランスのMr. Georges Capus (AREVA)が議長に選出され、Red Book 2007作成に向けた各国あての質問内容の検討と参加国メンバーによる最近のウラン動向のカントリーレポートが行われた。
Red Book 2005はOECD/NEAとIAEAにより、2006年6月1日付で出版された。このRed Bookはウラン資源やウランの需給について1965年から2年毎に出版されている。今回の会合では2007年版向けに、各国から提供してもらうための、質問項目や内容について最終検討を行うことが主要な目的であった。Red Book 2007年版作成のための今後のスケジュールは、最終質問状をウラングループのWeb-siteオンラインシステムに掲載(11-12月)、2007年1月1日現在のデータに基づく回答を2007年4月1日までに作成するとともに、事務局に提出する。事務局では2007年7月31日までにデータの最終調整を行なう。
OECD/NEA及びIAEAによって準備された「Red Book Questionnaire 2007」に対して各国から指摘された点と対応は以下のとおり。
(1)ウラン鉱床は13のタイプ(1.Unconformity-related , 2.Sandstone, 3.Hematite breccia complex, 4.Quartz-pebble conglomerate, 5.Vein, 6.Intrusive, 7.Volcanic and caldera-related, 8.Metasomatic, 9.Surficial, 10.Collapse breccia pipe, 11.Phosphorite,12.Other types, 13.Rock type with elevated uranium contentに分類されているが、5のVeinと7のVolcanicについての定義を明確にすることと13についてはウラン鉱床タイプではないため削除することが提案された。しかしながら、鉱床タイプについてはサブグループで検討された結果であり、従来からこの分類に基づいているため、事務局としては表現を微調整し、最終質問状を作成することとした。
(2) 資源量(Resources)の分類のうち、Unspecified Resourcesについては、定義が曖昧過ぎるという意見もあったが、従来からの分類方法なので継続することとした。
(3) Reasonably Assured Resourcesの分類として、ウランの生産コストの程度に基づいている。例えば、$40/KgU以下、$80/KgU以下、$130/KgU以下の3区分にされている。
2003年以降のウラン価格の高騰により、この分類の見直しをすべきとの意見があった。この意見に対し、最近のウラン価格は石油危機直後の1975-1979年に最近と同程度の価格であり、実質価格(インフレ分を考慮)では現在の価格の3倍近くであり、ウラン価格の高騰による区分見直しは早計と判断されるため、少なくとも今後2年間は従来どおりとすることとした。
出席した17か国の出席者による各国の最近の報告がなされたが、全体の傾向を明らかにするため、主要国を中心として以下報告したい。
(1)探鉱活動
2005年のRed Bookでは、世界の2004年のウラン探鉱規模は133$百万であり、2004年に比べて約40%の増加となっている。対象鉱床としては、不整合関連型とIn-Situ Leachingによるウラン回収が可能な砂岩型に集中しているが、ウラン価格の高騰に伴いグラスルーツ探鉱の増加も指摘された。
今回の報告では、探鉱活動が盛んなフランスのAREVAは、フランス国内の探鉱はほとんどされていないが、海外(豪州・カナダ・フィンランド・カザフスタン・モンゴル・ニジェール・ロシア)での探鉱活動は極めて旺盛であり、2006年は2004年の2倍以上と指摘した。2005年の世界探鉱費の合計は196$百万と推定されるが、フランスの海外探鉱費は127$百万と世界探鉱の65%を占めることになる。
豪州国内におけるウラン探鉱活動も2005年は前年比3倍の31$百万と過去最高額を記録した。主要探鉱地域として、南豪州・北部準州・クイーンズランド州が挙げられた。探鉱活動には豪州やカナダのジュニアも関与しているようである。
ロシアの2006年探鉱費は、約26$百万であり、前年比1.5倍となっている。探鉱費の全額は政府から支出され、探鉱は国営企業のUrangeologorazvedkaで実施されている。探鉱の方針は、既存ウラン鉱山の周辺探鉱、不整合関連型と砂岩型に重点が置かれている。
米国におけるウラン探鉱は、ウラン価格が高騰した2003-2005年の間で上昇傾向にあるが、金額的には報告されなかった。
(2) ウランの生産
2005年のRed Bookによると、2004年の世界ウラン生産量は、40,253tUであり、2003年に比べて13%の増加となっている。2005年の生産は41,250tUと推定され、2004年に比べて微増である。国別の2004年生産量は、第1位カナダ(世界生産の29%)、第2位豪州(22%)、第3位カザフスタン(9%)、第4位ロシア・ニジェール・ナミビア(各国8%程度)等となっている。ウランの採掘方法としては、坑内掘り(世界生産の39%)、露天掘り(28%)、In-Situ Leaching(20%)、副産物(10%)、その他(3%)となっている。
豪州からは、2005年のウラン生産が、Ranger(5,008tU)・Olympic Dam(3,676tU)・Beverley In-Situ Leaching(828tU)の3鉱山から行われており、生産量は、9,512tUに達することが報告された。この生産量は、2004年生産に比べて6%増となっている。
カザフスタン代表からの報告によると、2005年の生産量は4,300tUと前年比16%の伸びを記録した。ウラン生産量は将来的に増加傾向にあり、2010年までには12,000tUに達することが指摘された。カザフスタンにおけるマイナス要因としては、環境問題や地域住民のウランに対する理解不足などがあげられ、未着手の有望ウラン鉱床もあることが報告された。また、人材育成についても懸念材料として紹介された。
ロシアのウラン生産量は、2005年に3,286tU、2006年には微減の3,205tUと予想されることが報告された。生産の中心は、シベリアのPriargusky鉱山であり、2005年ロシア生産の93%を占めている。
(3) ウランの需給
各国からの報告は供給サイドが大半であり、需要サイドの情報はほとんどなかった。2005年のRed Bookが事務局より紹介されたが、需給については以下のとおり。
2004年、原子力発電需要67,320tUに対して世界のウラン生産は40,261tUと需要の約60%であり、残りは西側在庫、ロシアの兵器解体高濃縮ウラン、使用済みウランからの回収等の二次供給である。
2010年までの供給は、既存、新規鉱山開発(ウラン生産コスト80$/KgU以下)によって供給可能であろうが、2010年以降、西側在庫や解体ウランの減少により供給不足が予想される。
中国やインドの新興消費国の台頭により、将来的にはウランの大幅な需要が見込まれる。中国における2020年の原子力発電は36,000MWと予想され、そのためには2004年のウラン需要(1,260tU)から2020年には5,400~7,200tUに拡大。インドにおける2020年の原子力発電は20,000MWと予想され、2004年の240tUから2020年には1,460~2,825tUと大幅にウラン需要は増加する。
2025年までに、原子力発電能力は449GW~533GW程度まで伸びる可能性があり、そのために必要なウラン量は82,000tU~101,000tUとなる。
3. IAEAによるIn-Situ Leachingに関する技術会合
ウラングループ会合に引き続き、標記会合が開催された。In-Situ Leachingは砂岩型ウラン鉱床に適用されており、2004年ウラン生産の20%に達する。In-Situ Leachingのケーススタディーとして、米国・中国・インド・アルゼンチン・豪州・カザフスタンから報告された。将来、ウラン増産が予想されるカザフスタンについては4名の講演があった。
また、IAEA事務局より人材育成のためのWNU School of Uranium Productionが紹介された。その概要は以下のとおり。
名称: | WNU(World Nuclear University) School of Uranium Production | ||||||
目的: | ウラン探鉱・鉱山開発・ウラン生産・廃棄物処理・汚染除去のための国際的訓練センターをめざす。2006年に設立され、実際の運営はチェコのウラン会社DIAMOにより行われる。ウラン需要の拡大が予想される中、過去20年間ウラン産業が低迷していたため、ウラン産業の専門家が減少したり、老齢化しているため、新たな人材育成を強化する。 | ||||||
場所: | チェコは世界でも中央に位置し、世界各国からのアクセスも容易である。さらに、物価的にも生活が容易であり、過去40年ウラン鉱業の歴史があるDIAMOの本社がある。 | ||||||
科目: | 現在検討中のコースは以下のとおり。経費は4週間コースで7,500$程度。 - In-Situ Leaching (Operating course, Executive course, Regulators course) - Alkaline Milling - Heap Leaching - Exploration for Uranium - Underground Mining |
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連絡: |
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出典:小林孝男(2006年)レッドブック2005年版の概要 |

