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報告書&レポート

2006年10月12日 リマ事務所 西川信康 e-mail:ommjlima@chavin.rcp.net.pe
2006年75号

ペルー、Michiquillay銅開発プロジェクト入札情報(続報)

 銅価が歴史的な高水準で推移する中、ペルーにおける2006年の大型入札案件として世界の鉱業関係者から注目されているMichiquillay銅開発プロジェクトの入札情報について、9月14日付け2006年66号のカレントトピックスにて、すでに速報したところであるが、9月22日、本件を担当する投資促進庁(ProInversion)より正式に入札要領が発表されたので、その概要を報告する。

1. 入札日程

 ・入札要領と契約書フォームの公表:2006年9月22日
 ・最低入札価格の発表:2006年11月15日
 ・入札に関する質疑応答:2006年11月7日まで
 ・上記質疑応答への最終回答と最終契約書フォームの公表:2006年11月17日
 ・企業の事前登録申請:2006年11月24日まで
 ・プロジェクトに関する情報開示とプロジェクト現場へのアクセス:2006年11月30日まで
 ・入札日:2006年12月15日
 ・契約の締結: 2007年1月31日まで
 
 なお、これら入札日程については、投資促進庁の決定に基づいて変更する可能性もあり、その場合は入札希望企業へ連絡するほか、投資促進庁ホームページにおいても発表することになっている。
 

2.入札要領の概要

(1)応札者資格
 ・財政的条件:純資産1億$以上の企業
 ・技術的条件:鉱山生産で1万t/日以上の操業実績を要する企業
(2) 入札の評価方法
 入札の評価と落札の順位は以下の式で決定され、Piの数値が最も大きい企業が落札者となる。
 
 Pi = PTi / Ptmax× (1+ 0.2×CN)
 Pi・・・   入札企業「i」社の点数
 PTi・・・   入札企業「i」社の入札額
 Ptmax・・・ 最高入札額
 CN(Componente Nacional)・・・初期(探査)段階の全投資額とペルー国内で要するコスト(資機材調達費、人件費など)の最低比率(%)。
 従って、入札時には、入札金額と併せCN(Componente Nacional)を記載することになる。
 (例)A社:入札額10 CN 0.5、B社:入札額9.5 CN 0.8の場合、
 P(A 社)= 10/10×(1+0.2×0.5) = 1.100
 P(B 社)= 9.5/10×(1+0.2×0.8) = 1.102
 となり、B社が落札業者となる。
(3) 落札額の支払い時期
 落札額のうち、調印時に一定額(数字は落札後決定)を支払い、残りの額を2年次、3年次、4年次目開始15日目までに、各20%ずつ支払う。さらに、最終的な残りの額(40%相当)は、F/S結果が承認後15日以内に支払う。なお、この資金のうち半分は地元の社会事業費に充当される。
(4) 投資義務

  4年以内(半年×2回の延長可能)に探鉱及びF/S調査を終了し、開発オプション権を行使するか否かを決定する、最低投資金額は落札後、契約書に明記する。
  開発オプション権を行使する場合、3年以内(1年延長可能)に開発工事を終了させる。最低投資額等は落札後に契約書に明記する。

(5) 撤退条件
 探鉱段階の途中で撤退する場合、落札額からそれまでの探鉱投資額を差し引いた額の30%をペナルティとして政府に支払う。また、それまでの調査結果やサンプルなどペルー政府(Centromin)に無償で提供する。
(6) 社会的義務

  環境に配慮し、周辺の植生や生物、水源などを保護しつつ生産活動を行うとともに、地元住民が通常どおりの生活や活動に必要な水質と水量の維持を保証する。また、探査や開発活動によって環境に変化が生じた場合、これを修復する責任を負うほか、環境被害に対する責任を負う。
  鉱業活動の影響下にある地域における文化や人権、習慣などを尊重し、地元住民との良好な関係を維持する。
  地方当局や自治体、地元住民や組織との間に透明かつ継続的で適切なコミュニケーションを維持し、鉱業活動に関する情報提供を行う。
  地域社会発展のための社会プログラムを策定・実施し、地元住民との間に適切かつ調和のとれた関係を築く。
  地元労働者の優先的な雇用を促進し、必要な研修などを実施する。
  鉱業活動に必要となる資材やサービスは地元から優先的に利用・購入する。

(7) その他
 

  鉱業ロイヤルティは、既に政府が定めた同法に従って支払う。
  入札時には、入札金額を担保する保証書が必要。入札に際しては、2種類の封筒を用意し、一つには、企業の財務・技術情報及び保証書等を、もう一方には、入札価格書(入札金額及びComponente Nacionalを記載したもの)を同封する。

3.おわりに

 投資額が最低でも7億$とされ、Southern Copper社など世界の有力非鉄企業が関心を寄せていると言われている本プロジェクトを巡る唯一の懸念材料は、地域住民問題であると言える。投資促進庁は、大多数のコミュニティーとの合意を取り付けているとしているが、最近発生した一部の地元住民によるキャンプ地襲撃事件(現在のところ、首謀者の逮捕には至っていない)など、地元には、依然として反鉱山勢力が存在しており、こうした課題を残した形での入札実施となる。
 現ガルシア政権は、現在、ペルーで頻発しているこのような地域住民問題に対し積極的な仲介を図り、鋭意、問題の沈静化に努めており、本プロジェクトに関しても、今後、何らかの争議が発生した場合、政府のバックアップが期待される。しかしながら、同時に、企業側は、入札要領の社会的義務に明記されているように、地域社会に対して、相応のコスト負担を求められることを十分念頭に置く必要があろう。
 なお、本入札要領及び契約書フォームは以下のサイトで閲覧できる。
 ・入札要領http://www.proinversion.gob.pe/oportunidades/SM/docs/Michiquillay/Bases_Michiquillay.pdf
 ・契約書フォーム
 http://www.proinversion.gob.pe/oportunidades/SM/docs/Michiquillay/Proyecto_Contrato_Transferencia_Michiquillay.pdf
 
<参考1>Michiquillayプロジェクトの概要

位置:ペルー北部のカハマルカ県に属し、県庁所在地カハマルカ市の東北東47km、標高3,000m~3,600m。鉱区面積は18,978ha。
鉱床タイプ鉱床:金、銀を含むポーフィリーカッパー型鉱床
鉱量・品位:鉱量5.44億t、平均銅品位0.69%、金品位0.1~0.5g/t
過去の調査:Asarco社(1958年~1969年)及びJICA/MMAJ・日本企業(1973年~1975年)による探鉱で、延べ159本のボーリング(総掘削長41,600m)、探鉱坑道2,500mを実施。その結果、4万t/日規模の露天掘り鉱山とする開発計画を策定。
その他:本サイト近傍には、同じ銅鉱山開発プロジェクトであるGalenoプロジェクト(Northern Peru Copper社)やLa Carpaプロジェクト(Newmont社)が存在し、相互で共通のインフラを活用できるというスケールメリットがある。

 
<参考2>最近の政府入札案件契約内容の概要
(1) Las Bambas

入札日:2004年8月31日
落札業者:Xstrata
落札額(最低入札価格):121百万$(40百万$)
その他条件:
 
落札額121百万$の内、半分は地元アプリマック県に配分される。この他、アプリマック県に探鉱段階で1.5百万$、鉱山の建設段階で1.5百万$、総額で62百万$が配分され、地元のインフラ整備等の社会開発、産業開発に向けられる。
開発オプション権行使までの猶予期間(探鉱期間)は4年(2年間までの延長が可能)。義務探鉱費42百万$。
開発オプション権を行使する場合は、10億$以上の開発投資か、粗鉱量5万t/日以上の処理能力を有するプラント建設の義務がある。
操業に至った場合、総販売高の3%を鉱業ロイヤルティとして徴収。

  
(2) La Granja

入札日:2005年12月16日
落札業者:Rio Tinto
落札額(最低入札価格):22百万$(22百万$)
その他条件:
 
契約締結時に応札額22百万$の内3百万$、二年次に4.4百万$、3年次に4.4百万$、残額は開発オプション権行使時に支払う。これらは全額、地元のインフラ整備等に充当するための基金となる。
3年以内(2年延長可能)にF/Sを終了し、開発オプション権を行使するか否かを決定する。これに要する投資額は60百万$以上。
開発オプション権を行使する場合、行使後5年以内に操業を開始する。これに要する実開発投資額は、F/S結果の算定額の70%を下回らず、かつ700百万$を下回らないか、あるいは35,000t/日の粗鉱処理プラントの設置が必要。
鉱業ロイヤルティは、既に政府が定めた同法に従って支払う。

   

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