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中国・国家発展改革委員会、銅製錬産業への参入条件を公告

中国・国家発展改革委員会は国の関連法律・法規及び産業政策に基づき、関連部門と合同で中華人民共和国発展改革委員会公告2006年第40号「銅製錬産業への参入条件」を制定し、公告した。 公告は2005年11月3日付で国務院が過当競争の抑制と環境規制強化策として発布した通知「銅製錬業への盲目的投資抑制に対する若干の意見」の意向を受けたものであり、銅産業構造調整の加速化、銅産業の持続的かつバランスのとれた発展、環境保全の強化、資源の総合利用、銅製錬産業への投資行為の規範化、盲目的な投資と低レベルの重複する製錬所建設を防止することを目的としている。今後、関連する政府関係機関、省、自治区、直轄市の銅製錬プロジェクトに対する投資届出管理、土地供給、環境アセスメント、融資等の業務を行うに当たっては、この「銅製錬産業への参入条件」が基準となる。本稿では公告の詳細について紹介する。 |
1. 企業の配置・規模・外部条件
国の法律・法規・行政規則・計画で確定しているか、又は、県級以上の人民政府が認可した飲料水水源保護区、自然保護区、景勝地、生態機能保護区などの特別な保護を必要とする区域、大中都市及びその近郊、住宅地、療養地、病院、食品・薬品・電子部品など環境品質に対する要求が高い企業の周辺1km以内に、新規に銅製錬所を建設してはならない。
新規又は改善銅製錬プロジェクトは環境保全、省エネ、資源管理の法律・法規、国の産業政策と計画、土地全体利用計画、土地供給政策、土地使用基準の規定に適合していなければならない。
銅製錬能力は10万t/年以上で、交通輸送などの外部条件が整備され、自己所有鉱山からの原料供給量が25%以上(或いは自己所有鉱山からの原料供給量と合弁方式によって確保した5年以上の長期購入契約による原料供給量が総原料供給量の40%以上に達している場合)、銅製錬プロジェクトの資本金比率が35%以上であること。
2. 技術と設備
製錬技術は、自溶炉法、ISA法(旧MIMが開発したISAプロセス)、ノランダ法及び独自の知的財産権を持ち、生産性が高く、エネルギー消費が少なく、環境保護基準を満たし、資源の総合利用効率の高い先進的なプロセスを採用する。
製錬所は、硫酸製造設備、集塵設備、廃熱回収設備及び公害防止設備を必ず備えなければならない。硫酸製造プロセスは、希釈酸洗浄化、二重接触式又は三重接触式プロセスを採用するものとし、高温硫酸洗浄プロセスは厳禁とする。採用する廃熱回収及び集塵プロセスは国の「省エネ法」、「クリーン生産促進法」、「環境保護法」などの法律・法規の要求を満足しなければならない。
溶錬プロセスや設備面では、直ちに1.5m2以下の溶鉱炉を廃棄する。2006年末までに反射炉、電気炉、1.5~10m2(10m2は含まない)の溶鉱炉を閉鎖し、2007年末までには全ての溶鉱炉を閉鎖する。
3. エネルギー原単位
(1) 新設銅製錬企業
溶錬工程のエネルギー原単位は粗銅1トン当たり石炭550kg以下とする。精錬工程のエネルギー原単位は銅1トン当たり石炭250kg以下とする。電解工程においては電気銅1トン当たり電力量285kWh/t以下とする。
(2) 既存銅製錬企業
溶錬工程のエネルギー原単位は粗銅1トン当たり石炭900kg以下とする。電解工程においては電気銅1トン当たり電力量310kWh/t以下とする。既存製錬企業は技術改善によって省エネ及びエネルギー原単位の低減を図り、参入条件発表後2年以内に新設銅製錬企業のエネルギー消費レベルまで下げる。
4. 資源の総合利用
(1) 新設銅製錬企業
銅製錬の総合実収率は97%以上とし、溶錬工程の実収率は98%以上とする。水の循環利用率は95%以上とする。銅1トン当たりの水使用量は25t以下とする。敷地面積は銅1トン当たり4m2以下とする。溶錬工程の硫黄の実収率は98%以上、硫黄の総合実収率は96%以上とする。
(2) 既存銅製錬企業
銅製錬の総実収率は96%以上とし、溶錬工程の実収率は97%とする。水の循環利用率は90%以上とする。銅1トン当たりの水使用量は28t以下とする。溶錬工程の硫黄実収率は98%以上とし、硫黄の総合実収率は95%以上とする。技術改善によって資源消費を低減し、参入条件発表後2年以内に新設銅製錬企業の消費レベルまで下げる。
5. 環境保護
「中華人民共和国環境保護法」などの関連法律・法規に基づき、すべての新設及び改善プロジェクトは環境アセスメントを厳
格に行い、汚染物質排出許可証に基づき汚染物質(汚染物質排出許可証制度を実行していない地域は除く)を排出し、排出基
準を達成しなければならない。環境保護部門は既存銅製錬企業の環境保護基準の実施状況を監督検査し、環境保護基準を達
成していない企業のリストを定期的に公表する。排出基準を達成していないか、または排出総量の基準を上回っている企業
に対しては期限を決めてその処理に当たらせ、不合格の場合は、地方・人民政府は法律に従って操業停止または閉鎖処分に
する。
銅製錬による汚染物質の排出は、国の「工業炉大気汚染物質排出基準」(GB9078-1996)、「汚水総合排出基準」(GB8978-1996)
と関係する地方基準に適合していなければならない。
6. 安全生産と労働衛生
国の安全生産関連の法律・法規及び部門の規則や基準で定めている安全生産のための条件を備え、安全生産責任制を確立し
、それを健全化しなければならない。新設及び改善プロジェクトの安全施設は本体工事と同時に設計、施工、使用を開始す
るものとする。また、硫酸製造・酸素製造設備及び安全施設は設計・生産開始前に、法律に従って安全生産管理部門の審査
と検収を受けなければならない。労働保護及び工業衛生関連の施設を建設し、関連制度を確立し、地方の行政主管部門が組
織する検収に合格しなければならない。
7. 監督管理
新設及び改善銅製錬プロジェクトは上記の参入条件を満たしていなければならない。銅製錬プロジェクトの投資管理、土
地供給、資金調達、環境アセスメントなどの手続きは、参入条件の規定に従って行なうものとする。銅製錬所建設業者は国
家環境保護総局が各級ごとに審査・承認した関連規定に基づき、環境アセスメント報告書を国家環境保護総局に提出して許
可を求めなければならない。産業政策に合致している既存銅製錬企業は、技術改善によって新設銅製錬企業に課せられた資
源の総合利用、エネルギー原単位、環境保全面における参入条件を満たさなければならない。
新設又は改善銅製錬プロジェクトは生産を開始する前に、省級以上の投資、土地、環境保全、安全生産、労働衛生、品質
検査などの行政主管部門と専門家で構成された合同検査チームの検査を受けなければならない。検査業務は参入条件の要件
に従って行なう。検査の結果、参入条件を満たしていないことが認められた場合は、投資主管部門は銅製錬所建設業者に対
して設計に基づき期限内に建設内容を整備するように命じるものとする。また環境保全の要件に合致していない場合は、環
境保全主管部門は関連の法律・法規に従って処罰し、期限内に改善させなければならない。法律に従って土地を取得してい
ないか、又は、土地利用が関連規定に合致していない場合は、土地管理法規または土地使用契約の約定に従って処罰し、期
限内に改善しなければ、土地使用権証明書は発行してはならない。
新規の銅製錬所については、関連部門の検収に合格した後、関連規定に基づき「汚染物質排出許可証」(汚染物質排出許可証
制度を実行していない地域は除く)を取得した後、企業は生産及び販売などの事業活動を行なうことが出来る。硫酸製造・酸
素製造設備については、関連規定に基づき「危険化学品生産企業安全生産許可証」を取得するものとする。既存銅製錬企業の
改善生産能力及び拡張生産能力についても、省級の関連部門の検収に合格した後、規定に従って「汚染物質排出許可証」と「危
険化学品生産企業安全生産許可証」の関連手続きを行なわなければならない。
各地区の発展改革委員会、経済貿易委員会、工業弁公室、環境保全、工商、安全生産、労働衛生などの関連管理部門及び
法律執行部門は、地元銅製錬企業の参入条件の実行状況について定期的に監督検査しなければならない。中国有色金属工業
協会は関連部門の追跡監督活動に協力する。
産業政策及び参入条件に合致していない新設及び改善銅製錬プロジェクトについては、投資管理部門はその届出を受理し
てはならない。土地行政主管部門は土地供給手続きを行なってはならない。環境保護部門は環境アセスメント報告書を承認
してはならない。金融機関は与信してはならない。電力部門は法律に従って電力の供給を停止しなければならない。法律に
従ってプロジェクトの登記を抹消するか、または閉鎖を命じられた企業は、速やかに工商行政管理部門で登記変更または登
記抹消を行なわなければならない。
国家発展改革委員会は参入条件を満たしている銅製錬企業のリストを定期的に公告し、社会による監督・管理を行なう。
8. 付則
本参入条件は中華人民共和国領内(香港・マカオ・台湾地区は除く)のあらゆる所有形態の銅製錬企業に適用される。
本参入条件は他の装置を銅製錬装置に改造して実施する銅製錬事業にも適用される。
本参入条件で言及されている国家基準が修正された場合は、修正後の新基準に基づいて行なうものとする。
本参入条件は2006年7月1日から実施し、国家発展改革委員会がその解釈に責任を負い、業界の発展状況とマクロコントロ
ール上の要求に基づき修正する。

