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報告書&レポート

2006年12月28日 金属資源開発調査企画グループ 白鳥智裕 e-mail:shiratori-tomohiro@jogmec.go.jp
2006年106号

JOGMEC金属資源開発調査企画グループが選んだ2006年金属鉱業分野10大ニュース

 JOGMEC金属資源開発調査企画グループでは、金属鉱業分野における情報収集、分析、発信業務を行っているが、それらの2006年の業務の成果から、2006年の10大ニュースを以下のとおり選定した。
 1. 金属価格の高騰
 2. 非鉄メジャー、日本の資源関連企業も史上最高の収益
 3. 中南米における資源ナショナリズムの台頭
 4. 非鉄メジャーの大型買収
 5. 相次ぐ鉱山ストライキ
 6. 鉱山と地域住民との紛争
 7. 難航した銅買鉱交渉
 8. 日本企業による海外鉱山開発の進展
 9. 日本の資源安定確保に向けた戦略構築
 10. 中国の資源外交と輸出入統制



1. 金属価格の高騰



 2006年の非鉄金属価格は、2005年の史上最高の価格の高騰にも関わらず、2005年とは比較にならないほどの上昇を見せた。
<銅価格>
 4,537$/t(LME価格。以下同じ。)でスタートし、価格の上昇、下落を繰り返しつつも、2月には、5,000$/tを突破した。その後、3月の上旬から、急激に価格が高騰し、5月12日には、2006年最高の8,788$/tにまで達した。その後、6月23日は、6,710$/tまで下落しつつも、再び上昇、8,233$/tに達した。その後は、7,500$/t周辺を上下に動き、10月に入ってから、価格が少しずつ下落。11月には入ってから、7,000$/t周辺を推移している。
<亜鉛価格>
 1,912US$/tでスタートし、2月3日には2,355$/tにまで達した。その後、いったん下落したものの、急激に価格が上昇し、5月11日の3,990$/tまで達した。その後、いったんは、2,984$/tにまで下落したものの、3,300$/t前後を推移した。10月に入ってから、再び急激に上昇。11月9日には、4580.50$/tにまで達した。その後、下落したものの12月5日には、今年最高の4,600$/tの値を付けた。
<ニッケル価格>
 13,505US$/tでスタートし、1月中には、15,000$/tを突破したものの、その後15,000$/t前後で価格が推移した。価格が上昇し始めたのは、3月末からだった。5月31日には、23,100$/tに達し、その後一度落ち込んだものの、7月17日の29,850.00$/tまで上昇した。その後、18,600$/tまで下落したものの、再び上昇、7月17日の29,850$/tまで上昇し、更に8月24日の34,750$/tまで上昇した。その後、大きく価格が上下しつつも、12月に入ってから、35,000$/tを突破した。
<鉛価格>
 銅、亜鉛、ニッケルと比較するとそれほど激しい価格の上昇は見せていない。1,101$/tでスタートした価格は、2月2日の1,415$/tまで上昇したものの、6月20日の914.50$/tまで下落した。その後、価格が12月4日の1,800$/tまで上昇した。
 
 ロイターが行った各社に対するアンケートによれば2006年の平均予想価格は、銅3,748$/t、亜鉛1,742$/t、ニッケル13,036$/t、鉛926$/tであったが、12月21日までの2006年までの平均価格は、銅6,737$/t、亜鉛3,256 $/t、ニッケル24,124$/t、鉛1,281$/tと予想はことごとく外れた。実際、アナリスト等による価格の予想は、年間を通して、価格上昇へと修正しており、これほどまでの価格の上昇を予測できたアナリストはなかった。

2006年銅地金価格(LME)の推移
2006年亜鉛地金価格(LME)の推移
2006年ニッケル地金価格(LME)の推移
2006年鉛地金価格(LME)の推移

2. 非鉄メジャー、日本の資源関連企業も史上最高の収益



 2005年の決算は、海外非鉄メジャー、日本の資源関連企業も2004年と比較して、軒並み高収益を上げた。ほとんどが、金属価格の上昇及び生産の増加によるものである。Rio Tintoが前年比85.4%増、Xstrataが59.9%増、CODELCO が57.0%増、Phelps Dodgeが53.5%と大きな伸びを示した。2006年になっても、金属価格の記録的な高騰を受けて、四半期毎の報告書で発表される収益は、前年同期と比較して圧倒的な収益を上げており、また、CVRDやCODELCO等既に第3四半期までの決算で2005年の収益に匹敵するか、上回っている非鉄メジャーもあり、2006年の収益は更なる収益の拡大が見込まれる。
 日本の資源関連企業についても、2005年3月の決算では、各社とも大きな収益の伸びを示している。2006年の決算においても既に9月の中間決算で前年度通年の収益に匹敵している企業もあり、2007年3月決算でも海外の非鉄メジャー同様、大きな収益伸びが予想される。

非鉄メジャー、日本の資源関連企業の純利益連(結決算ベース)




3. 中南米における資源ナショナリズムの台頭



 1990年代初頭に南米に導入された米国主導の大幅な規制緩和や市場原理の重視を重視する新自由主義は、貧富の格差や犯罪の増加、経済の危機を南米にもたらしたといわれている。これに対する形で、2006年は国内の天然資源を貧困対策等に利用する等自国の資源を自国に還元することを目的とした公約を掲げた左派政権が誕生した。
<ボリビア>
 2005年12月の大統領選で当選を果たし、1月に就任したボリビアのモラレス大統領は、5月に石油・天然ガスの国有化を宣言し、11月には、Glencore社(スイス)の資産の一部を国有化する宣言を行っている。10月発表予定だったボリビアの鉱業再生計画(COMIBOLの再建等)は2007年に延期される一方、同時期にモラレス大統領は「鉱業の国営化を実施するための資金がない」などと発言している。また、現在策定中の新鉱業法では、課税強化が大きな変更点となっている。一方、JOGMECリマ事務所のボリビア政府関係者へのインタビュー等によると、ボリビア政府は、外国からの投資を必要としており、国営企業(COMIBOL)の再建と民間企業による鉱山開発の実施の2つを柱に据えることによって、富の公平な再分配を行い、貧困の撲滅を目指しているとしている。
<ペルー>
 4月に行われたペルーの大統領選挙では、急進的な資源の国家管理強化を訴えたウマラ元陸軍中佐がトップの得票率を得たものの、過半数に達せず、その後の決選投票では穏健左派のガルシア政権が誕生した。7月のガルシア大統領の就任演説では、鉱山会社に対し、現在の金属価格高騰に伴う余剰利益の一部を鉱山地域の社会事業に振り向け、貧困問題の解決に一層の貢献を求める発言を行った。その後、税安定化契約を締結している企業も含めたロイヤルティの徴税強化、鉱山会社による自発的な拠出金制度、ウマラ候補のUPP党による金属価格の高騰による余剰利益税の提案、カノン税の地域還元率の変更等による貧困問題対策の議論が活発に行われている。
(JOGMECカレントトピックス 06-51号、06-61号、06-95号等参照)

この1年中南米の大統領選挙結果


4. 非鉄メジャーの大型買収



 2006年における非鉄メジャー間での買収合戦は、買収する側がされる側の立場にたったり、複数の企業が買収に名乗りを挙げる等、複雑な様相を示した。
 2005年10月、カナダの大手鉱山会社Inco社がカナダのニッケル生産の大手であるFalconbridge社を128億C$で友好的に買収すると発表された。合意の中には、Xstrata社による敵対的買収を牽制する条件も含まれていた。この合併によって、世界最大のニッケル生産企業が登場することになるため、米国、カナダ、EUの独禁法当局の審査による結論がでず、当初2月に合併する予定が、合併時期は延期されていった。2006年5月に、TeckCominco社が、Inco社のFalconbridgeの買収取り止めを条件に、買収する側のInco社を買収することを発表。更に5月17日にXtrata社が、Falconbridge社を買収することを発表した。その後は、Xstrata社の買収が進み、11月に完全FalconbridgeはXstrataに買収された。
 一方、買収する立場にあったInco社に対して、更に2006年6月にPhelps Dodgeが買収をオファーし、8月にはブラジル鉄鋼大手のCVRD社が買収をオファーした。結局は、Teck Comincoが8月にPhelps Dodgeが9月にInco社の買収を断念し、10月にCVRDがInco社を買収した。
 その他にも、2006年11月、突如Freeport McMoranが、Phelps dodgeを買収することを発表し、また、12月には、亜鉛生産量世界3位のZinifex社と第4位のUmicore社の合併が発表された。
 こうした買収合戦によって、非鉄金属の生産がより大規模で多角化された大企業に集約されていく傾向にある。
(JOGMECカレントトピックス 06-49号、06-64号等参照)

2006年主な非鉄企業関連の買収



5. 相次ぐ鉱山ストライキ


 2006年では、非鉄金属の価格の高騰、それに伴う企業収益の拡大に伴い、利益配分を巡って、各地の鉱山等でストライキが発生した。

 メキシコのGrupo・Mexico(以下、GM)社のサンマルチン亜鉛鉱山では、2月28日にストライキに突入、3月2日には、ラカリダ銅鉱山、カネチア銅鉱山が全国鉱業ストライキに突入した。サンマルチン亜鉛鉱山では、5月16日にストライキが終結し、ラカリダ銅鉱山は8月30日より徐々にではあるものの操業再開、カネチア銅鉱山は7月17日より平常操業を再開した。
 一連のストライキは、(1) 組合保有株式の売却代金を横領したとして、政府に訴追・罷免されたメキシコ全国鉱夫冶金組合(STMMRM)ナポレオン・ゴメス(Napoleon Gomez Urrutia)委員長を支持する組合員による違法ストライキ、(2) 労働協約の改定交渉に伴う合法的なストライキ、の二つの性格を有していた。また、組合側の要求内容には、1月に発生したGM社パスタ・デ・ロス・コンチェス炭鉱でのガス爆発事故(65名死亡)に対する遺族補償や労働安全確保等が含まれていた。
 エスコンディーダ鉱山では、労使双方は6月19日からの労働協約の改定交渉において、組合側が13%の給与ベースアップと特別手当16,000,000ペソ(約30,000US$)の支給を柱とした要求書を会社に提出。これに対し会社側は7月5日、2003年の労働協約改定時の妥結内容と同水準のベースアップ 1.5%、特別手当1,600,000ペソの支給を回答したが、話し合いは決裂した。その後、会社側は8月1日に第2次回答案、8月2日に第3次回答案を提示し、続いて8月4日にも小幅な条件改定を提示したが、組合側はこれを何れも拒否 。8月7日からストライキを決行した。ストライキの決行後、一時組合員と警官との衝突も見られたが、ストの早期解決を図るため、会社側は組合幹部と非公式会談を行い、第6次回答案(労働協約期間40か月、ベースアップ5%、ボーナス9,000,000ペソ〔約17,000US$〕)を提示。8月31日に組合総会で会社回答案が可決されたため、労使間で完全な合意が成立、9月1日から操業を再開した。ストライキ突入後25日目であった。
 ペルー第4位のセロ ベルデ銅鉱山の労働者組合は、賃上げを求めて11月27日から48時間の時限ストライキを開始した。組合側は、同鉱山の月給は1,850ソーレス(572$)だが、他の大規模鉱山の平均月給は2,000ソーレスを越えていると主張し、鉱山側が他の大規模鉱山と同等の賃金を支払うとした協定事項を守っていないことがストライキの理由であるとし、11%の賃上げと7,000ソーレスの一時支給を要求した。一方、鉱山側は、労働者に対して10.72%の賃上げ並びに4,000ソーレスの一時金支給を提示した。
(JOGMECカレントトピックス 06-51号、06-60号等参照)

2006年の主な鉱業会のストライキ


6. 鉱山と地域住民との紛争




 世界的な環境意識の高まり、地元住民とのコミュニケーション不足、政府や企業等による強硬姿勢等に対して鉱山側と地域住民との間で紛争が発生した。

<インドネシアのグラスベルグ鉱山>
  2006年2月21日、鉱山側が従来から鉱山周辺で同鉱山が排出するテーリングから金を採取していた地元先住民の行為を不法採掘とし鉱山地内での採取作業を規制したことが発端となった。これに対して不法採掘者約400名はこの規制に抗議し、鉱山に通じる道路を封鎖した。不法採掘者たちは同鉱山の警備員や警察官と衝突し、双方6名の重軽傷者が出た。これにより鉱山側は翌22日から操業を一時停止すると発表。鉱山会社側は先住民側からの基金に関する配分の増額要求を受け入れ、先住民側は抗議活動を停止し、会社側は2月26日18時にグラスベルグ鉱山の操業を再開(22日から4日間の操業停止後の再開)した。3月16日になって、パプア州の州都のジャヤプラで数百人の学生がグラスベルグ鉱山の閉鎖を求めデモが発生、警察官3名、空軍軍人1名が死亡する事態となった。その後、ユドヨノ大統領がFreePort社の調査を命じた。また、6月には、鉱山周辺住民がFreeport社に、土地使用の補償、環境修復プログラム、地域代表者の参画、地方産業の育成、法規制の強化などを要求している。
<ペルーのヤナコチャ鉱山>
 鉱山の近隣にあるコンバヨ村の一部の住民グループが、8月2日に河川の水質汚染対策や地域住民の雇用拡大などを求めて抗議デモを強行したことが発端となった。その際、それを阻止しようとした警察や警備員と衝突し、住民側に死傷者が出たことで、その責任などを巡って住民側の態度が硬化し、8月23日には、鉱山へのアクセス道路の封鎖に至った。鉱山側は解決の見通しが立たないことから、8月28日に鉱山操業の全面的な停止を発表、その後、政府の調停による話し合いが進み、鉱山側が環境対策や公共事業推進を約束したことで、双方が合意、8月30日に、1週間ぶりに道路封鎖が解除され、8月31日に鉱山生産が再開された。

(JOGMECカレントトピックス 06-27号、06-68号等参照)

7. 難航した銅買鉱交渉



 世界最大の銅鉱山であるエスコンディーダ鉱山(実質的な交渉相手は、BHPB Billiton)と日本の製錬会社であるパンパシフィックカッパー社との間で行われた2006~2007年に関わる銅買鉱交渉は、2005年末から行われていたが、銅鉱石需給のタイト化の見通し、鉱石中の銅純分の品位が高いこと等からエスコンディーダ鉱山が強気の姿勢に出た。TC(製錬費)トン当たり92$、RC(溶錬費)£あたり、9.2¢を要求。1月に交渉が決裂し、交渉は第3者調停に委ねられた。
 更に6月の年央交渉では、TCトン当たり80$、RCボンド当たり80¢、また、LME価格が90¢/lb以上になった場合、超えた分の10%がTC/RCに加算されるプライスパーティシペーション(PP)の廃止をエスコンディーダ鉱山が主張した。最終的にはTCトン当り60$、RCポンド当り60¢で、PPは、基準価格が120¢/lb以上に引き上げられ(ただし、上限が180¢/lb)、鉱山側に有利な条件となった。

 11月になって新たに交渉が始まったが、エスコンディーダ鉱山が再びPP廃止を主張するなど、交渉が難航している。

銅買鉱交渉による鉱山生産者と精錬所側の取り分の変化

8. 日本企業による海外鉱山開発の進展



 本年は、日本企業による海外鉱山での操業開始や権益取得が目立った年でもあった。

 2月、住友金属鉱山と住友商事はポゴ金鉱山(米国アラスカ州)の生産を開始した。同鉱山の埋蔵金量は152t、マインライフは10年とされている。同鉱山の権益は、住友金属鉱山が51%、住友商事が9%、Teck Cominco社(カナダ)が40%の権益を保有しており、住友金属鉱山にとっては、主導権を握る初の海外鉱山開発プロジェクトであり、また住友商事にとっては最初の金鉱山開発プロジェクトへの投資案件となる。平成6年度から平成13年度にかけて、ポゴ地区を含むストーンボーイ地域の海外地質構造調査を金属鉱業事業団(現JOGMEC)が行っており、その結果に基づき、住友金属鉱山等の企業探鉱に引き継がれた。
 3月、ペルーにおいて、1968年以来サンタルイサ鉱業(三井金属鉱業株式会社70%、三井物産30%)が操業しているワンサラ鉱山の近傍に新たな亜鉛鉱山(パルカ鉱山)が誕生した。同鉱山では、年間31,400t(地金換算約16,000t/年)の亜鉛精鉱の生産が見込まれ、ほぼ全量を日本に輸入するとしている。
 パンパシフィック・カッパー社(PPC)は3月14日、カナダのレガリート・カッパー社の全株式を公開買い付けで取得することに成功、買収契約を締結した。レガリート社はチリ北部第3州に銅鉱床権益を持っており、これによってPPCはレガリート銅鉱床を確保したことになる。PPCはレガリート社を完全子会社化することとしており、その場合の約1億3,700万$である。開発が計画通り進めば、日本企業の権益100%の海外銅鉱山が誕生することになる。
 住友商事は、サン・クリストバル鉱山(ボリビア)の権益を100%保有するミネラ・サン・クリストバル社の株式及び親会社からの融資債券等35%を同社親会社であるエイペックス・シルバー社より買い取った。また、2005年8月の合意でDynatec社(加)等が実施しているマダガスカルのAmbatovyニッケル・プロジェクトに住友商事が事業参加していたが、10月における韓国企業コンソーシアム(Korea Resources社が主幹会社)参入後のプロジェクト権益は、Dynatec社が45%、住友商事及び韓国企業コンソーシアムが各27.5%となっている。


9. 日本の資源安定確保に向けた戦略構築




 数年来高騰を続けている金属価格は、特に2006年に入ってからは、大規模な投機資金の流入により、ファンダメンタルズを反映した価格水準を大幅に上回る価格水準となっている。
 また、非鉄金属資源の消費量は世界的に拡大を続けており、中国、インド、ロシア等においても、金属消費は拡大傾向にあり、非鉄金属の需給構造の変化が進展する中で、国際的な資源獲得競争が激化するに至っている。
 このような状況を受けて、平成17年12月に資源エネルギー庁に設置された「資源戦略研究会」では、平成18年6月に下記のとおり「非鉄金属資源の安定供給確保に向けた戦略」を報告した。

(1) 探査開発の推進
 激化する資源獲得競争の中で、資源確保に向けた、総合的・多面的な対策を強化する。

  ・アフリカなどリスクの高い地域における探鉱開発に対する融資等を積極的に実施。
・偏在の著しいレアメタルの供給源多様化に向け、JOGMECによる海外資源開発調査を推進。
・我が国企業の資源権益確保上の交渉力向上に向け、鉱山における低コスト・高効率な資源採算技術を開発。
・資源国における投資環境改善のため、APEC等のマルチ会合のほか、EPA等の政策協議の場を積極的に活用。

(2) リサイクルの増進
 使用済製品等からの非鉄金属資源の再利用を促進する。

  ・製品中のレアメタル含有情報の提供
・活用方策につき見当。
・リサイクルコストを低減するため、最終製品から金属資源をリサイクルするための技術開発を推進。
・民間企業が行う製品開発において、リサイクルが容易となる材料・構造の工夫を促進。
・リサイクル原料の輸入円滑化のため、輸入手続の運用改善等につき検討。

(3)代替材料の開発
 レアメタルの機能を代替する新材料の開発を拡大する。

  ・タングステン、レアアース、インジウムの機能を代替する材料開発に向け、ナノテクの応用技術など、革新的基盤的研究開発に着手。
・民間企業においては、性能向上、省使用化のための技術開発を推進。

(4) レアメタルの備蓄
 官民協調によるレアメタル備蓄について、備蓄物資の機動的な保有・売却を実施していく。
(現在の保有日数は35日分(備蓄目標は60日分))

  ・レアメタル備蓄制度(国家備蓄、民間備蓄)における官民の役割分担について検討。
・対象鉱種、機動的な備蓄物資の放出手順等につき検討。

(5) その他の取組み

  ・マテリアル・フロー調査により、国内におけるレアメタルの詳細な流れを把握する。
・レアメタルの需給動向等に関する調査・統計を充実させる。
・海外で資源開発に従事する人材を育成するため、JOGMEC、国際資源大学校等における研修関連事業を強化する。

 詳細については、経済産業省HP
http://www.meti.go.jp/press/20060614003/20060614003.html


10. 中国の資源外交と輸出入統制



 中国においては、1990年代以後の経済発展に伴い、非鉄金属需要量が増加し、銅、鉛、ニッケル、錫、亜鉛、アルミ、プラチナ、鉄のそれぞれの需要量は世界第一位と世界をリードする水準に達し、中国の非鉄金属消費動向が世界の非鉄金属価格を左右するまでになっている。対外的な戦略として、「走出法(海外進出、対外投資)」戦略を積極的に推し進めている。また、3月に開催された第10期全国人民代表大会第4回会議で承認された「中華人民共和国第11次国民経済・社会発展5か年長期計画要綱」では、鉱物資源の管理・備蓄の強化、海外での資源共同開発の拡大を強調した。
 中国の資源外交は活発化しており、4月にはオーストラリアとの二国間協定により、ウランのオーストラリアから中国への輸入を可能とし、また、7月には中国の国営企業「中国核工業集団」傘下の関連企業3社がニジェールのウラン鉱区での開発権を取得した。11月には、中国・アフリカ協力フォーラムを開催し、アフリカとの関係を強化している。一方、中国は、対象国の人権弾圧等に対し、内政不干渉の立場をとっており、欧米諸国の非難を浴びている。7月のザンビア・チャンビシ鉱山での落石事故や労働者による暴動など、必ずしも、地域住民との良好な関係を築くには至っていないケースもある。
 国内の資源を確保するため、10月1日から輸出増値税還付の段階的廃止、11月1日には一部の非鉄金属製品の輸出税を10~15%に上げる等資源の確保に向けた政策を実行している。

2006年中国政府・企業による主な対外活動
2006年の中国政府による主な輸出措置等

おわりに



 2006年の非鉄金属鉱業界においては、非鉄金属の価格の高騰、M&A、資源ナショナリズムの台頭、大規模鉱山でのストライキ、地域住民との紛争、中国の資源外交など、ある特定の地域、企業だけに収まるものではなく、世界的に影響を及ぼす出来事が多く発生した年であった。それらの出来事は、ばらばらに発生したのではなく、銅を始めとした非鉄金属の価格の高騰を中心に発生したと思われる。2007年の各社、各アナリストの価格予想では、価格の上下はあるものの現在の高水準レベルを維持していくとされている。一方、12月に入ってから銅の価格等は低下する傾向にある。2007年に入っても、非鉄金属の価格動向は注視していく必要がある。


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