報告書&レポート
ROUNDUP2007報告
1984年に始まったROUNDUPは、2007年で24回目を迎え、2006年に続きバンクーバーのベイショアWestin Hotelにて開催された。ROUNDUPは、探鉱に的を絞った鉱業大会である。主催者によると年々盛況となっており、本年は世界28か国から約5,000人が集うという。 JOGMECバンクーバー事務所は過去から本大会に参加しているが、筆者自身は初めてこの大会に参加した。本大会の印象を要約すると、以下のとおりである。 ・原子力見直しを反映し、ウラン探鉱ジュニアが多数参加した。 ・探鉱ジュニア、メジャー企業以外に、物理探査、ボーリング、分析、環境等調査会社の展示ブースが多数参加していた。 ・展示ブース以外にも、屋外テントで、地図による鉱山地質、BC州地質等の説明、話題プロジェクトのコア展示が行われていた。 ・カナダ先住民(ファーストネーション)の組織も参加した。 ・BC州、アルバータ州、ユーコン州、オンタリオ州等の多数の地質関連研究機関に加え、税務当局も参加し、カナダの投資環境をアピールした。 ・連日、州政府主催の晩餐会が開催され、関係者はこの機会を利用し意見交換できた。 ・子供ツアー、パンニングによる砂金取り等のイベント企画も行われた。 |
1. ROUNDUP2007の概要
(1) 概要
ROUNDUPは1月29日から2月1日の4日間、バンクーバーにおいて盛大に開催された。オープニングでは、主催者の挨拶に続き、地元Squamishの先住民(ファーストネーション)による歓迎の挨拶並びに太鼓と歌が披露された。その後、ビデオによるGary Lunn 連邦政府天然資源省大臣挨拶、Bill Bennett BC州鉱業大臣、Rob Peace BC州鉱業協会会長による最近の鉱業趨勢の説明が続いた。
初日は、政府系機関のポスターセッションが会場の半分を占めたが、2日目からは鉱業関連会社の展示ブースが並び、多数の来場者とブース展示者との意見交換が行なわれていた。ブース展示者は2004年頃までは200社に満たない程度であったが、2005年頃より200社を超え、2006年、本年とも会場並びに屋外にテントを張るほどの盛況となっている。
(2) 講演
初日は、地域社会の支援をどのようにして得るかとの題目で、Aboriginal Relation and ReconciliationのBC代表、Canadian Aboriginal Mineral Association代表、Nunavut州代表からの発表とともに、Sherwood Mining社のMintoプロジェクト、NovaGold社のGalore Creekプロジェクトと先住民(ファーストネーション)との関係について発表が行われた。
2日目は、地球科学関連10件、新探査技術等について7件、3日目は、Teck Cominco社等からBC州の探鉱ハイライト10件、世界における探査の成功例7件、最終日は、BHP Billiton、Almaden Minerals等からグラスルーツ探査関連として10件、ニッケル、亜鉛、ウラニウムの金属価格の今後等について6件の発表が行われた。
2. 講演の中から
(1) BC州探鉱開発2006年レビュー
2006年のBC州の鉱業分野の売り上げ見込みは60億$となっており、そのうち、石炭が40%、銅が25%を占めた。
620に及ぶ探鉱案件があり、2006年の総探鉱費は220百万$を超え、ボーリング総延長は660,000mにまで及んだ。具体的には、探鉱費1百万$以上のプロジェクトが72件、対前年比+67%で、総探鉱費の78%を占めた。なお、探鉱費0.1百万$以上のプロジェクトは240件、対前年比+20%となっている。
BC州では、今まで8件の金属鉱山、11件の石炭鉱山、32件の石灰石、ドロマイト、石膏、ゼオライト、重晶石等工業鉱物の鉱山が稼働していたが、2006年には新たに2つの石炭鉱山(TrendとWolverine)が開山し、Table Mountain(金)鉱山が再開した。2007年の前半には、Max(モリブデン)鉱山が開山する予定である。その他、20件以上のプロジェクトが許可待ちの状態となっている。
トピックとして、Artlin近くのRuby Creek(モリブデン)は、環境許可待ち、BCmetal社が推進するRed Chrisプロジェクト(銅-金)は開発待機中である。Nova Gold社のGalore Creek(金)は2006年10月に企業化調査が終了、Schaft Creekは予備的企業化調査並びに許可手続きを開始した。
地域別では、北西地域は最も探鉱活動が活発な地域であり、Huckleberry、Endako、Eskay Creek等既存鉱山の他、Ruby Creek、Kutcho Creek、Red Chris、Galore Creek等開発中のプロジェクトが多数存在。その他、石炭鉱山の多いKootenays地域、新規石炭鉱山、Gibraltar、Mount Polly、Kemess Southのある北東部地域、Highland Valley Copperのある南央地域、バンクーバー島を含む南西地域毎に探鉱開発状況を説明。
(2) アラスカ州探鉱開発レビュー
2006年のアラスカ州の鉱業収入は25億US$以上となった。また総探鉱費は163百万US$で2005年の104百万US$と比べ57%の増となった。規模別では0.1百万US$以上の探鉱プロジェクトが60件、探鉱費1百万US$以上のプロジェクトが20件であった。ボーリングの総延長は194,342mに及び、70%以上の資金がカナダから調達された。個別案件としては、28百万ozの埋蔵が期待されるDonlin Creek(金)、アラスカ最大の探鉱案件で金64.2百万oz、銅22百万t(490億lb)、モリブデン126万t(29億lb)を埋蔵するPebbleで積極的な探鉱が行われた。更に、MANプロジェクトが西部アラスカでプラチナの探鉱を行っている他、各地でウラン、ダイヤモンド、スズの探鉱も行われている。2007年にはアラスカ全体で2億$の探鉱投資が期待される。
生産操業に係るアラスカ州のトピックとして、まず、第一に挙げられるのが、住友金属鉱山(株)とTeck Cominco社によるポゴ(金)鉱山の開山であり、2007年の第2四半期には本格生産となる。その他、Teck Cominco社とNANA社(先住民系)が共同運営するRed Dog鉱山(亜鉛)はアラスカ州での鉱業収入の50%を占め、フェアバンクス近くのKinross社のFort Knox鉱山は0.31百万ozの金を生産した。
開発中の案件について、Kensington(金、坑内堀)は現在建設中だが、NGOによる訴訟問題で遅延している。St. Andrew Goldfield社のNixon Fork(金-銅)鉱山は2007年早期の操業が見込まれる。またSeward半島に位置するNovaGold社のRock Creek(金)プロジェクトは、2007年後半からの生産を目指し2006年8月から建設工事を開始した。
雇用面に目を移すと、鉱業分野は直接的に3,000人、間接的に6,300人の雇用を創出した。
(3) ユーコン州探鉱開発レビュー
2006年のユーコン州における探鉱は、80百万C$を超えるほど盛況であった。鉱種別では、金の探鉱が最も多く全体の35%、その次が亜鉛で22%、ウラニウムが15%、銅12%、銀7%、モリブデン6%と続く。また、鉱山開発関連経費も飛躍的に増加しており、Sherwood Copper社はMinto(銅-金)鉱山建設に既に50百万$を投じており、2007年第2四半期からの生産を計画している。同銅山の総開発費は107百万C$を見込んでいる。
探鉱案件150件のうち、70件が探鉱費0.1百万C$以上、その中の21件が探鉱費1百万C$以上となっている。そのうち最も大規模なものは、Howard PassにおいてPacifica Resources社が探鉱しているSelwynプロジェクト(鉛、亜鉛)であり、2006年12月からボーリングを開始し、総探鉱費は12百万C$に上っている。
3. 終わりに
会場となっているベイショアWestin Hotelでは、場所の制約からこれ以上拡張の余地がないため、数年前から同ホテル近くのPan Pacific Hotelにて、特に投資を対象としたCambridge Houseと題した準鉱業大会が開催されており、これも活況を呈している。本年は例年を大きく上回る出展となっており、Cambridge Houseにだけ参加しROUNDUPには参加しない企業も見られた。
カナダ、アラスカにおける探鉱活動、鉱山開発は、ここ数年、金属価格の高騰という外的要因のみではなく、鉱業振興制度等の充実により順調に推移している。また、バンクーバーは探鉱情報、資金調達の主要都市として、鉱業会社の注目を集めており、年々成長を遂げている。