報告書&レポート
中国政府、インジウム・モリブデンの輸出申告制に

中国商務部は3月9日に、レアメタルの輸出管理を一層強化し、輸出経営の秩序を規範化するため、「中華人民共和国対外貿易法」、「中華人民共和国貨物輸出入管理条例」に基づき、商務部公告2007年第25号「インジウム・モリブデンの輸出許可証の申告受領基準と申告手順」を公布した。 この公告は2006年9月の輸出増値税還付の撤廃、2006年10月の委託加工貿易の禁止、2006年11月、2007年1月の相次ぐ輸出課税に続くレアメタル輸出規制の流れであり、今後は希土類、タングステン、アンチモン、錫と同様にインジウム、モリブデンにも輸出許可枠(E/L制度)が導入される可能性が高い。 申告及び審査・認定手続きは次のとおりである。各地のインジウム・モリブデン輸出企業は、この公告に基づき所在地の省級商務主管部門に申告し、省級商務部主管部は受領基準に基づき一次審査を行い、2007年3月16日までに一次審査の意見を商務部に上申し、同時に中国五鉱化学工業輸出入商会、中国有色金属工業協会に一次審査の意見を転送する。中国五鉱化学工業輸出入商会、中国有色金属工業協会は再調査を行い、2007年3月20日までに商務部に上申する。商務部は、再調査意見に基づき輸出を申告する企業に対し検定を行い、申告基準に合致する企業を対外的に公表する。このインジウム・モリブデンの新しい輸出申告制の申告受理基準に環境保護基準が導入された結果、遼寧省の一部モリブデン生産企業は省級商務部主管部の1次審査に合格していない状況が続いている。 本稿では、今回商務部が公布した「インジウム・モリブデンの輸出許可証の申告受領基準と申告手順」についてその要点を紹介する。 |
1. インジウム
1.1 生産企業の輸出許可証申告受領基準
(1) 輸出規制対象
インジウムの純度が99.993%以上で塊、棒、条、線、箔、粒、粉などの製品も含む。税関のコード番号8112923000、811299300に含まれる製品である。
(2) 生産企業と生産量
ⅰ 鉛、亜鉛、銅、錫、アンチモンの製錬企業は直近3年間で年平均4t以上(4tを含む。以下同様)の生産企業
ⅱ 亜鉛化学工業の企業は直近3年間で年平均10t以上の生産企業
ⅲ インジウムの回収加工企業は直近3年間で年平均15t以上の生産企業
以上の3種企業で直近3年間に国家統計局及び税関総署の統計データに基づく輸出実績を有する企業。
(3) 製品の品質
製品の品質は、現在実施している業界基準に合致し、ISO9000、ISO14001を生産企業は取得していること。また、取得中の企業は関連の証明資料を提出しなければならない。
(4) 環境保全
固形廃棄物、廃水、廃ガスの排出については国の環境基準を遵守し、輸出該当年の省級環境保護部門による検査報告を提出しなければならない。検査報告には以下の内容を含む。
ⅰ 製錬プロセスによる廃水の排出はゼロで、SO2、AsH3の排出量は国家1級環境基準を満足する。
ⅱ 製錬スラグ処理の総合回収システムを設置し、「廃ガス、廃水、固形廃棄物」の排出をゼロにする。
ⅲ 製錬企業は第3者にインジウムを含む廃水、スラグを移転してはならない。
(5) 資源の有効利用
製錬スラグからインジウムを抽出する場合は、その実収率は80%以上とする。
(6) 生産・環境保全のプロセス及び設備
先進的で主要設備、機器、計器は1990年代以降製造したもの。
1.2 流通企業の輸出許可証申告受領基準
(1) 登録資本金
登録資本金が7,000万元以上であること。
(2) 輸出実績
直近3年間に税関総署の統計データに基づいた輸出実績があること。
(3) 輸出製品の調達
流通企業は輸出許可証申告受領基準に合致した生産企業から製品を調達しなければならない。
(4) 輸出製品の品質
流通企業はISO9000を取得していること。取得中の流通企業は関連の証明資料を提出しなければならない。
2. モリブデン
2.1 生産企業の輸出許可証申告受領基準
(1) 生産企業と生産量
ⅰ 直近3年間でフェロモリブデン、モリブデン焙焼鉱の合計年平均生産量が3,000t以上、輸出量が300t以上の企業。フェロモリブデンのモリブデン純度は55%以上、モリブデン焙焼鉱のモリブデン純度は51%以上。
ⅱ 直近3年間でモリブデン酸塩の年平均生産量が800t以上、輸出量が80t以上の企業。
ⅲ 直近3年間でモリブデン粉末、モリブデン金属製品の合計年平均生産量が300t以上、輸出量20t以上の企業。
但し、同一条件の場合は高度加工製品の割合が高く採掘・選鉱・製錬・加工を総合的に行っている生産企業を優先する。
(2) 製品の品質
生産企業は国のISO9000を取得していること。また、取得中の企業は関連の証明資料を提出しなければならない。
(3) 資源の有効利用
モリブデン焙焼鉱の実収率は96%以上、フェロモリブデンの実収率は98%以上、モリブデン酸アンモニウムの実収率は95%以上、モリブデン粉末の実収率は98%以上とする。
(4) 省エネルギー
モリブデン焙焼鉱精製工程のエネルギー原単位は1t当たり標準炭0.4t以下とする。フェロモリブデンの生産工程では直接的に石炭、電気、ガスを消費しない。モリブデン酸アンモニウムの生産工程では、抽出プロセスを採用しエネルギー消費を少なくする。モリブデン粉末生産工程のエネルギー原単位は1t当たり標準炭0.4tとする。
(5) 環境保全
ⅰ 国の環境保護部門発行の排出基準達成許可書を取得し、省級環境保護部門発行の2007年排出基準達成に関する環境観測報告書を提出しなければならない。
ⅱ モリブデン焙焼鉱プロセスにおいては、亜硫酸ガス回収用の溶脱設備等を設置する。また、回収した亜硫酸ガスから硫酸を製造する設備を導入する。モリブデン酸アンモニウムプロセスにおいては中和塔により廃ガスを処理し、キレート樹脂槽、濾過設備等により廃水を処理する。
2.2 流通企業の輸出許可申告受領基準
(1) 登録資本金
登録資本金は3,000万元以上であること。
(2) 輸出実績
税関総署の統計データに基づく直近3年間の年平均輸出量がモリブデン焙焼鉱又はフェロモリブデン600t以上(実物量、以下同様)、モリブデン酸塩150t以上、モリブデン粉末とモリブデン金属製品200t以上とする。
(3 )輸出製品の調達
流通企業は輸出許可証申告受領基準に合致した生産企業から製品を調達しなければならない。
(4) 輸出製品の品質
流通企業は国のISO9000、又は他のシステムの認証を取得していること。また、取得中の企業は関連の証明資料を提出しなければならない。

