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ペルー、Michiquillay銅探鉱開発プロジェクト入札の最新動向-最大1年間探鉱期間凍結で予定通り入札を強行-

地域住民との合意形成のない状況下でのMichiquillay銅探鉱開発プロジェクト入札の行方が懸念されていたが、投資促進庁(Proinversion)は、落札企業による探鉱活動を最大1年間凍結し、その間に住民との合意に向けた交渉期間を設けることで、予定通り4月30日に入札を実施することを明らかにした。本稿では、投資促進庁から、直接入手した情報をもとに、本入札を巡る最新動向を報告する。 |
1. ベース価格の発表
3月30日、投資促進庁は、Michiquillayプロジェクトの最低入札価格と最低探鉱投資額(F/S含む)を発表した。これによると、最低入札価格は44百万$で、これらは、地域社会振興基金として充当されることになっている。なお、この金額は、最近のLas BambasやLa Granjaなどの入札事例の鉱量や当時の銅価格を勘案すると妥当な金額であると言える。
表 最近の民営化案件の入札結果
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また、最低探鉱投資額は4年間で総額3,900万$で、1年間の延長が可能(延長分の最低投資額は300万$)となっている。さらに、最低開発投資額は7億$、銅の生産規模は、4万t/日以上(年産銅量10万t以上)で、F/S結果は、この2つの条件のいずれかとなるよう定められている。
以下に、それぞれの段階の最低投資額とその支払い条件を記す。
(1) 最低入札価格 4,400万US$
ⅰ Suspension期間の終了時 700万US$
ⅱ 初期段階2年目の開始時 入札額の20%
ⅲ 初期段階3年目の開始時 入札額の20%
ⅳ 初期段階4年目の開始時 入札額の20%
ⅴ 開発段階開始時 残高から700万US$を差し引いたもの
(2) 最低初期投資額(CII) 3,900万US$
ⅰ Suspnsion期間 100万US$
ⅱ 初期段階1年目 300万US$
ⅲ 初期段階2年目 500万US$
ⅳ 初期段階3年目 1,000万US$
ⅴ 初期段階4年目 2,000万US$
(3)延長料金
(3)-1初期段階延長料金
ⅰ 初期段階5年目上半期 100万US$
ⅱ 初期段階5年目下半期 200万US$
(3)-2開発段階延長料金
ⅰ 開発段階4年目上半期 100万US$
ⅱ 開発段階4年目下半期 200万US$
(4)プロジェクト規模
ⅰ プロジェクト最低投資額 7億US$
ⅱ プロジェクト最低規模 4万t/日
2. 探鉱中断期間の設定
投資促進庁によると、Michiquillay入札を予定通り4月30日に実施するとともに、現在、コミュニティの一部のグループと合意が得られておらず、当初予定していた事前のサイト視察が行える状況にないことを認め、そのための対処の方法として、「社会的理由による契約中断期間」(Suspension Social)を設けることを明らかにした。
これは、落札企業が、まず社会開発プロジェク基金として100万$を拠出し、落札後最大1年間にわたって政府と共に地域社会との友好関係の構築を図り、探査活動が行える社会的環境を整えるというもの。このため、落札企業は、最大1年間落札額の支払いを凍結でき、社会的環境が整ったと判断された時点で、落札金額の支払いが開始される。従って、最長で1年後に、探査活動の開始となるが、落札企業がプロジェクトの開始を不適切であると判断すれば撤退することもできるという(撤退した場合は落札金額の支払いも不要となる)。
なお、投資促進庁は、中断期間中、落札企業とともにコミュニティ指導層との合意をとりつけるために積極的な役割を果たしていくことを強調している。また、資格審査をパスした19企業に対し、本措置の説明をすでに行っており、この措置は、投資を行う企業のリスクを軽減するものとして、入札予定企業のうち少なくても5企業から賛同を得ていると説明している。
3. 今後の見通し
投資促進庁の説明によると、今回の措置に至った背景として、2006年10月に一旦政府と地元指導者との合意が得られたが、その後、2006年11月に行われた地方選挙で指導者が変わり、一部に鉱山開発に反対するグループが出現したことによるものであるとしている。但し、地元指導者側からの申し入れにより、4月中にも、政府と地元指導者と交渉を予定しており、今後の地元対策や環境対策など合意に向けた道筋は整っており、6か月以内に合意できるとの見通しを示した。また、3月下旬には、ペルー政府による環境修復作業(※)について地元住民による受け入れがなされており、住民側の態度も軟化しつつあるとしている。
一方、サイト訪問が実現できない理由について、同庁のコルネホ長官は、一部の犯罪グループによるサイトの違法占拠や麻薬製造の疑いがあるなど、現地の治安が保証できないためで、基本的に一般住民との対立問題は存在しないとの立場を強調している。
当事務所の報告の通り(3月29日付けカレントトピックス07-28号)、現在、実権を握っているのは穏健反対派であり、政府と穏健派との合意形成は円滑に進む可能性がある。しかしながら、強硬反対派がその勢力を拡大しているとの情報もあり、また地元住民に影響力を持つとされる国際NGOのアラナ神父の動向を含め、地元住民との最終的な合意形成に向けて必ずしも楽観視できる状況ではないものと見られる。
いずれにしても、入札実施の前提である地域住民との合意のないまま、見切り発車をすることになったMichiquillayプロジェクトについて、世界の非鉄企業がどのような判断を下すのか4月30日の入札結果が注目される。
※Activo Minerasによる環境修復事業の内容
(1) 調査内容
・探鉱坑道の一時的或いは完全な閉鎖
・酸性排水の浄化
・尾鉱堆積場と滑走路の土地修復
・廃棄物処理場及び坑口の土地修復
・ボーリング跡の修復
(2) 予算:1,093,983US$
(3) 事業実施機関:2007年4月~10月

