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オーストラリアの「探鉱戦略」(1)連邦政府編-セミナー報告「2007 AMEC National Congress」-
| 2007年6月7日、8日の両日、パース市内において、鉱業投資セミナー「2007 AMEC National Congress」が開催された。セミナーには、連邦政府の資源関係機関、各州・準州政府、大手鉱山会社、ジュニア探査会社ら約300名が参加、約50件の講演が行われ、40の展示ブースが出展された。 本稿では、「2007 AMEC National Congress」の講演から、オーストラリア連邦政府の探鉱戦略について紹介する。 |
1. はじめに
「2007 AMEC*1 National Congress」に、連邦政府からはCSIRO:The Commonwealth Scientific and Industrial Research Organization(連邦科学産業研究機構)とGeoscience Australia (オーストラリア地球科学機構)らが参加、セミナー両日、それぞれの機関が独自に或は、州・準州政府その他関係機関と共同で取組んでいるテーマについて講演し、参加者の関心を集めた。
| *1 | The Association of Mining and Exploration Companies Inc. (AMEC)は、オーストラリアにおける主に中小企業の探鉱・採掘活動を大企業からの独立性を保ちつつサポートすることを目的に1981年に設立された団体。会員制で会員企業はAMECからのサポートを受けることができる。 |
2. CSIROを中心にした技術開発
(1) 「HyLogging」を用いたコア鑑定自動化システム*1
「HyLogging」とは、ハイパースペクトルを用いたコア鑑定システム(Hyperspectral Logging)である。ボーリングコア・RCボーリングの岩石チップなどを鑑定対象とし、非接触・非破壊・前処理なしで高解像度デジタルデータをコア箱単位で連続的に取得できる。また、このシステムは熟練技術を要するコア鑑定をサポートし、人材育成にも役立つと期待されている。
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表1.HyLoggingシステムの概要 |
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出典)Dr. John Huntinton, CSIRO, “The HyLoggingTM Automated Core Logging System”(2007 AMEC National Congress)をもとに作表 |

(2) 被覆地帯における植物地化学探査*2
Moolart Well金鉱床(North Yilgarn地域)は、玄武岩・閃緑岩・超塩基性岩中に胚胎されるが、その上をSaproliteと異地性堆積物が覆っている。同地域に分布するアカシアの樹皮・仮葉・落葉落枝・土壌中を分析すると鉱床付近で金異常が得られた。また、Jaguar亜鉛・鉛・銅鉱床(同地域)では、Mulga(アカシアの一種)でも葉・枝・根・細根等に金属異常が得られている。
植物地化学探査は、異地性堆積物に覆われた場所での鉱化作用の探査において土壌地化学探査よりも好結果が得られ、乾燥地域での初期探鉱において有効な手段である。

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表2.Jaguar亜鉛・鉛・銅鉱床 |
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出典)Dr. Ravi Anand, CSIRO, “Living Detectors – Biogeochemical Exploration through Cover”(2007 AMEC National Congress)をもとに作表 |
(3) 地下水地球化学探査による探査地域選定*3
Yilgarn地域(西オーストラリア州南西部)における地下水地球化学探査の事例(始生代の金、硫化ニッケル、火山性塊状硫化物鉱床:VMS、ウラン鉱床)が紹介された。この探査手法は、サンプル密度がkmオーダーの初期探鉱における地区選定に有効で、環境事前調査(ベースライン調査)と合わせた実施も考えられている。地下水は地域・深度等によって成分元素のほか塩分濃度・酸性度などが異なっているなど考慮すべき要素がある。
調査結果では、硫化ニッケルや火山性塊状硫化物鉱床等のベースメタルの場合、バックグラウンドの影響も低くコントラストが明確であること、硫化物との反応による地下水中のSO42-やNO3–濃度変化が広域的な探査指標になること、親銅元素(As,Ab,I,Tl,Bi,Mo,W)が鉱化作用の上部で濃集していることがあることなど探査に有効な知見を得ている。
(4) 電磁気探査(EM)による硫化物鉱床特定の技術*4
電磁気探査(EM)は、空中、地上、ボーリング孔を利用したものがあり、塊状硫化物鉱床・鉱化変質帯・古河川(ウラン、鉄鉱石)などの特定に効果を発揮してきた。それは、機器や解析モデル、解析ソフトウェアの開発によるところも大きい。CSIROでは下表に示すEMデータ解析ソフトウェアを開発している。
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表3.CSIROのEMデータ解析ソフトウェア |
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出典)Dr. Andrew Fitspatrick, CSIRO, “Sulfide Detection using EM technologies”(2007 AMEC National Congress)をもとに作表 |
3. オーストラリア地球科学機構等を中心にした全国規模の地球科学データの取得
(1) 主要原生代鉱床区の地質構造解析・鉱床成因解明の新たな試み*5,*6,*7,*8
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ⅰ Galwer Craton プロジェクト ( 南オーストラリア州 ) |
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ⅱ Tanami プロジェクト ( 北部準州 ) |
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ⅲ Paterson プロジェクト ( 北部準州 ) |



(2) 全国的な地球科学データ取得戦略*5,*9
2006年にHoward首相は、陸上のエネルギー資源確保のための探査促進プログラム(Onshore Energy Security Program:OESP)に2007~2011年の5年間に総額59百万A$の予算を組むことを発表した。プログラムは新たなデータ取得とその解釈により、石油・ガス・ウラン・トリウム・地熱などのエネルギー資源の陸上での新たなポテンシャルを評価するもので、オーストラリア地球科学機構と各州・準州政府、民間企業などの協力関係のもと実施される。
ⅰ 空中放射能探査(地熱探査)
OESPでは、U,Th,Kは地熱のもととなる花崗岩の分布を示す指標となることから、地熱資源探査には、放射能探査(Radiometrics)が有効と考えている。既存のデータベース(National Gamma-ray Spectrometric and Magnetic databases、National Radiometric Database)よりもより価値のあるものになると期待している(既存のものはデータ取得地区ごとに諸条件が異なりデータの再調整等が必要であった)。
ⅱ 地震探査
地震探査は、地殻の深部に至るまでの情報を得ることができ、鉱物資源・石油ガスのポテンシャル評価に役立つと期待されている。OESPでは、ウランや地熱に関係する原生代初期の花崗岩類が分布するCurnamona, Gawler, Pine Creek-Rum Jungle, Capricorn, Mt Isa, Georgetownが探査対象地域として計画されており、2006年にMt Isa東部で探査を開始し、2007年にはGeorgetown地域へと探査位置を移動している。
なお、地震探査は、これまでにBroken Hill、Olympic Dam、Tanami、McArthur Riverなどの大規模鉱床が分布する地域でデータの取得が行われている。
ⅲ 空中電磁気探査(AME)
空中磁気探査では、ウラン探鉱のための古河川及び不整合の下にある片岩中の石墨頁岩層準の特定を目的としている。探査は、Western Gawler, Curnamona-Mt Painter, Rum Jungle, Mt Isa-Georgetown, Paterson, Pine Creek地域が計画されている。
ⅳ その他のデータ取得
OESPとは別に、重力、ベースライン地球化学データの取得も行われている。
重力探査データ整備として、オーストラリア地球科学機構は、文献に記載されているオーストラリア国内の約250か所900点の測点(station)をネットワーク化(Australian Fundamental Gravity Network:AFGN)して、その他全ての重力探査と関連付けを可能とするための作業を行っている。
ベースライン地球化学データ取得では、国内1,400か所の集水域でサンプル密度1件/5,000km2のレゴリス(transported regolith)のサンプリングを行い(異なる深度で地表と地下80cmの2件/地点)、60元素以上について化学分析データを取得する調査を実施中。

(3) 全国的な地球科学インフラストラクチャー*10,*11,*12
オーストラリア国内の地球科学データのデータベース化は、ボーリングコアの管理も含めて各州政府及びオーストラリア地球科学機構が探鉱促進事業の中心的な部分として取組んだこともあり、インターネットによるデータへのアクセスやダウンロードが全州・準州で可能である。
しかし、それぞれの実施主体がそれぞれのデータベース構造を持ち、異なるGIS/データベース・ソフトウェアを用いていることなどから、互換性に欠けていた。この問題を解決するためにオーストラリア地球科学機構、CSIRO、ビクトリア州地球科学研究所(GeoScience Victoria)は、Webベースのデータ提供ツール「GeoSciML」を開発した。同ソフトウェアを用いることで異なるコンピュータ環境の地球科学データへのアクセスや交換等が可能となる。オーストラリア国内だけでなく、フランス、カナダ、米国、英国、スウェーデンのデータへのアクセスが可能。
この他にも固体地球科学データベースの全国的なネットワークに連邦政府教育科学訓練省(Minister for Education, Science and Training)が中心となって進めているNational Collaborative Research Infrastructure Strategyに基づいて構築された「AuScope」などがある。
5. おわりに
オーストラリアの鉱業行政は各州・準州政府に委ねられており、それぞれが独自に、しかし、ほぼ横並びで探鉱活動に必要な地球科学データの取得やデータベース化を進めている。一方の連邦政府は、探鉱技術に関してはCSIROが、地球物理探査データ取得等に関してはオーストラリア地球科学機構が各州・準州政府やCSIRO等との協力関係のもとにその管理を行っている。
今回のセミナーにおいても連邦政府と各州・準州との連携のもと地球科学データの整備が進んでいる印象を受けた。
| 参考文献 | |
| *1 | Dr. John Huntinton, CSIRO, “The HyLoggingTM Automated Core Logging System”(2007 AMEC National Congress講演) |
| *2 | Dr. Ravi Anand, CSIRO,“Living Detectors-Biogeochemical Exploration through Cover”(2007 AMEC National Congress講演) |
| *3 | Dr. David Grey, CSIRO, “Low cost area selection using hydrogeochemistry”(2007 AMEC National Congress講演) |
| *4 | Dr. Andrew Fitspatrick, CSIRO, “Sulfide Detection using EM technologies”(2007 AMEC National Congress講演) |
| *5 | Dr. James Johnston, Geoscience Australia, “New Insight from Key Proterozoic Mineral Province”(2007 AMEC National Congress講演) |
| *6 | Patrick Lyons, Geoscience Australia, Webサイト“Iron oxide copper-gold mineral systems of the Gawler Craton”, 15 December 2006 |
| *7 | David Huston, Geoscience Australia, “Tanami -North Australia Project Wrap up-“,AUSGEO news, N0.84, Dec 2006 |
| *8 | Bruce Colegy, Patrick Lyons, David Huston, Geoscience Australia, “New model for Tanami gold mineralization, Deep Seisemic Survey establishes architecture of major Proterozoic gold province“,AUSGEO news, N0.85, March 2007 |
| *9 | Geoscience Australia, “Onshore Energy Security Program takes off”, AusGeo News June 2007 Issue No. 86 |
| *10 | Dr. John Tuttle, GGIPAC, “National Strategies for Geoscience Information Management”(2007 AMEC National Congress講演) |
| *11 | Rob Woodcock, CSIRO, “AuScope – National Earth Science Infrastracture”(2007 AMEC National Congress講演) |
| *12 | Geoscience Australia Webサイト, What’s New 〝Interoperability on the horizon”, 30 November 2006 |


