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オーストラリア「鉱山会社の研究」(1)中堅企業編-大躍進を続けるOxiana社の場合-

Oxiana Limited(本社メルボルン、以下Oxiana社)は、オーストラリア証券取引所に上場する中堅鉱山会社であったが、ラオスでの銅・金鉱山開発の成功を足がかりに、オーストラリア国内でもベースメタル鉱山、銅・金鉱山の開発に次々に成功させ、今や「中堅」鉱山会社から大手鉱山会社へと大きく変貌を遂げようとしている。 本稿では、この大躍進を続けるOxiana社の概要について紹介する。 |
1. はじめに
Oxiana社は、当初は金を生産するだけであったが、現在では、Sepon金・銅鉱山(ラオス)、Golden Grove亜鉛・銅・金・銀鉱山(西オーストラリア州)など、金に加え銅・亜鉛などを生産する鉱山会社に成長している。更に、Prominent Hill銅・金鉱山(南オーストラリア州)の開発、Toro Energy Limited(本社アデレード、24.74%)やNova Energy Limited(本社アデレード、57%)などのウラン探査ジュニアへの資本参加など事業規模の拡大を進めている。
Oxiana社の2006年度税引き後純利益*は553百万A$、株式時価総額は55.6億A$、総収入**は1,485百万A$あった。*1総収入の内訳は、Sepon金鉱山の生産が全体の10%、Sepon銅鉱山が39%、Golden Grove亜鉛・銅・金・銀鉱山が51%となっている。*2また、生産物の販売先は、タイが17%、韓国17%、マレーシア16%、オーストラリア16%、中国9%などとアジア諸国で占められている。*3
* | Net profit attributable to Oxiana Limited |
** | Geoss sales revenue |
*1 | Oxiana Limited, Financial Results 31 December 2006 |
*2 | Oxiana Limited ASX and Media Release, “Oxiana Limited Annual General meeting – Record Year for Oxiana”, 2 May 2007 |
*3 | Oxiana Limited社 2006 Sustainability Report |
図1.Oxiana社の総収入*・純利益の推移**
* Geoss sales revenue, ** Net profit attributable to Oxiana Limited 出典)Oxiana Limited, inancial Results 31 December 2006, 2005, 2004, 2003, Webサイト |
図2.Oxiana社の株価の推移(ASX)
出典)Oxiana社Webサイト http://www.oxiana.com.au/SharePrice.asp
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図3.Oxiana社の収入内訳
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図4.Oxiana社の国別生産物販売 |
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出典)Oxiana Limited ASX and Media Release, 2 May 2007 "Oxiana Limited Annual General meeting – Record Year for Oxiana" |
出典)Oxiana Limited社2006 Sustainability Report |
2. Oxiana社、発展の歴史
Oxiana社は、1932年にGolden Plateau NL社として設立、オーストラリア証券取引所に上場している。長年、Cracow地域(クィーンズランド州)で金の採掘を行っていたが業績は芳しくなく、1980年代には金の採掘から探鉱に重心を移すようになる。1996年にはOxiana Resources NLと社名変更している。
Oxiana社の成長の契機となったのは、1995年にOwen Hegarty 氏が社長(Managing Director/CEO)に就任したことであると言われている。同氏は、30年を越える鉱山業界での経験を有するが、そのうち20数年間はRio Tinto社に在籍し、1988年~1993年まで間は同社の銅・金部門の責任者(Managing Director of copper and gold mining and smelting business unit)を務めた人物である。
Oxiana社の発展の原動力ともなったSepon金・銅プロジェクトは、2000年にRio Tinto社から取得したものである*。
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Oxiana 社が、 詳細調査段階 (Due Diligence) で 4 百万 US$ 、鉱山開発決定・資金調達段階で 8 百万 A$ 、鉱山が商業生産を開始した後に毎年 2 百万 A$ を 5 年間にわたって Rio Tinto 社に支払う条件で当初権益の 80% を、後に残りの 20% を取得して Sepon 銅・金プロジェクトの全ての権益を取得した。 |
表1.Oxiana社の発展の経緯 |
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* | Prominent Hillプロジェクト以外の(探鉱)資産を引継いでMinotaur Exploration Limitedが設立された。Oxiana社とMinotaur Exploration Limitedは、プロジェクト形成・探査で業務提携している。また、両社のウラン資産をもとにToro Energy Limitedを設立している。 |
出典)Oxiana社Webサイトhttp://www.oxiana.com.au |
3. Oxiana社の主要プロジェクト
(1) Sepon銅・金鉱山プロジェクト(ラオス)
Sepon銅・金鉱山プロジェクトは、1993年にRio Tinto社が探査を開始し、その後6年間にわたる探査の結果、鉱化作用が確認されていた。Oxiana社は、2000年に同プロジェクトの権益をRio Tinto社から取得した。
Oxiana社は、金鉱山の開発(投資額50百万A$)から着手、2002年に生産開始、2004年には生産規模を拡張している。金鉱山に引き続いて2005年には銅鉱山も生産を開始した(投資額250百万A$)。Sepon銅・金鉱山プロジェクトは、現地雇用3,500名、2005年輸出額の25%を占めるなど、ラオス経済に大きく貢献している。
図5.Sepon鉱山の生産量推移
出典)Oxiana社アニュアルレポート
(2) Golden Grove亜鉛・銅・金・銀鉱山プロジェクト(西オーストラリア州)
Golden Groveプロジェクトは、坑内採掘のScuddlesとGossan Hillの亜鉛・銅鉱山とScuddles選鉱場から成る。1971年にGossan Hill鉱床が、1978年にScuddles選鉱場の近傍で亜鉛・銅鉱床が発見され、Gossan Hill鉱床が1990年から、Scuddles鉱床が1998年から生産を開始している。選鉱場の処理能力は1.3百万t/年、亜鉛精鉱、銅精鉱、金・銀・鉛を含む貴金属精鉱を生産している。従業員は約500名。同鉱床は、多金属の火山性塊状硫化物鉱床(VMS)である。
図6.Golden Grove鉱山の生産量推移 ベースメタル(左)、貴金属(右)
出典)Oxiana社アニュアルレポート、MINMETデータベース
(3) Prominent Hill銅・金鉱山プロジェクト(南オーストラリア州)
Prominet Hill鉱山の開発は、2006年8月にOxiana社の役員会で決定され、2008年下半期の生産開始を目標に現在建設中である。同鉱床は、Olympic Dam(南オーストラリア州)、Ernest HenryやOsborne(クィーンズランド州)、La Candelaria(チリ)などと同じIOCGタイプの銅・金鉱床で、鉱床は地表下約100mにあり、鉱化は赤鉄鉱角礫岩層中に走向方向に1,000m・深さ方向に500mに及んでいる。
表2.Oxiana社主要プロジェクトの概要 |
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* | 含有金属純分量 |
** | Total Cash Cost |
出典)Oxiana Limited 2006年アニュアルレポート |
(4)その他の探査プロジェクト
Oxiana社は、ラオス・オーストラリアでの探鉱・開発の成功をもとに両国における同社の優位性を活かし、アジア地域(ラオス、タイ、カンボジア、インドネシア、中国等)において、鉱化を確認するためのボーリングを中心とした探査を展開する方針を示している。2007年の探鉱予算は78百万A$、プロジェクト件数は20件、ボーリング総延長250,000mを予定。
図7.Oxiana社のプロジェクト位置図
出典)同社2006年年次報告書
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図8.Oxiana社の鉱種別探鉱費内訳
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図9.Oxiana社の国別探鉱費内訳 |
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出典) | Oxiana Limited ASX and Media Release, Oxiana Limited Annual General meeting -Record Year for Oxiana, 2 May 2007 |
出典) | Oxiana Limited社 2006 Sustainability Report |
表3.Oxiana社の主なJVプロジェクト |
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出典)Oxiana Limited 2006年アニュアルレポート |
4. おわりに
Oxiana社は、5月2日、メルボルンで開催した株主総会において、Owen Hegarty社長が、「資本を株式時価総額100億A$から150億A$規模へ増強し、オーストラリア上場企業上位20社に名を連ねる、2010年までにベースメタルを年間50万t、金を50万oz(15.6t)生産する企業に成長する」など、向こう3年間の企業目標を示した。また、この目標を達成するために既存プロジェクトに加え探鉱活動による新たな開発の機会創出や積極的な買収・合併も行うとの企業戦略も明らかにしている。
Oxiana社は、ここまでの成功を踏まえ積極的に事業拡大路線を進んでいる。一方で、急成長を続ける同社は、非鉄メジャーによる買収ターゲットとして、中堅企業同士の合併候補として、市場関係者やメディアからその名前をあげられることも少なくない。
参考文献等 | |
Oxiana Limited 2007年株主総会プレゼンテーション資料 |

