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報告書&レポート

2007年8月2日 企画調査部担当審議役 澤田賢治 Tel:044-520-8590 e-mail:sawada-kenji@jogmec.go.jp
2007年73号

第40回ウラングループ会議について

 はじめに
 経済協力開発機構(OECD)と国際原子力機関(IAEA)のジョイントによる第40回ウラングループ会議がパリにおいて6月25日(月)~27日(木)に開催された。今回の会議の主たる目的は、2年に1度出版しているレッドブック(世界のウラン需給の現状と展望)の2007年版作成に関する協議と最近の各国におけるウランに関する探査・開発情報の交換にある。ウラン(U3O8)価格が2000年の7.1$/£(0.454kg)から2007年6月28日には136$/£と約20倍に高騰している。2006年に比較しても過去1年間で3倍に高騰している。このような環境下において、ウラングループ会議が開催され、各国からの情報が提供された。なお、OECD/NEA事務局より、本会議で提供された情報はウラングループメンバー限りとされたため、コストに係る情報は削除している。また、ウラングループ会議で得た情報にインターネットで集めた情報の分析も示している。

(1) 主催者:
OECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関、30か国加盟)IAEA(国際原子力機関、加盟国140か国)、パリのOECD/NEA事務所で開催。
(2) 出席者:
前回のカザフスタンで開催された第39回ウラングループ会議の17か国23名から増加し、今回、19か国の代表者、EC代表者、OECDやIAEA事務局から総勢30名が参加した。参加国は、アルジェリア・アルゼンチン・豪州・ベルギー・ブラジル・ブルガリア・カナダ・中国・チェコ・エジプト・フランス・ドイツ・インド・日本・ルーマニア・ロシア・ウクライナ・英国・米国であった。 ウラン供給国として重要な地位にあるカザフスタンやウズベキスタンからの代表者は今回欠席であった。
(3) 事務局:

Mr. Robert Vance
Nuclear Development Division
OECD Nuclear Energy Agency
Tel: 33 1 4524 1063
E-mail: robert.vance@oecd.org

Mr. Jan Slezak
IAEA Uranium Group Secretariat
Div. of Nuclear Fuel Cycle and
Tel: 43 1 2600 ext: 22757
E-mail: j.slezak@iaea.org

1. 第40回ウラングループ会議
 レッドブック原稿提出国は6月末現在、日本を含む27か国に過ぎず、2005年レッドブック作成時の43か国程度の報告に基づき作成するため、スケジュールを次のように遅らせた。原稿提出と事務局からの質問状の回答期限(7月31日)、最終原稿の締め切り(10月1日)、ウイーンにおけるウラン会議でレビュー(10月29-31日)、最終原稿(11月15日)、印刷(12月15日)。また、レッドブックの内容に関する議論として、(1)ウラン価格高騰に伴うウラン生産コスト区分(40$/kgU.80$/kgU,130$/kgU)の見直し、(2)確認資源量(RAR: Reasonably Assured Resources)、予測資源量(Inferred Resources)、未発見資源量(Undiscovered Resources)の定義の見直し、の2点が議論された。(1)については、2007年までは従来どおりとして、今後の価格動向を見守ることとし、(2)に関しては、W/Gに委任することにした。

2. 各国からのカントリーレポート
 19か国からの報告があったが、各国のウラン生産状況が明らかにされるとともに、ウラン価格高騰に関連した報告があった。カナダからの報告によると、2005-2006年のウラン探鉱費が急激に増加しており、ジュニア企業による貢献も指摘された。日本からのレポートは当職から行い、最近の商社によるウラン探鉱の意欲、JOGMECの役割につき紹介するとともに日本企業によるウラン探鉱費は今後JOGMECで把握されることを宣伝した。
 その他の議題として、英国Rio Tinto社のKeith Welhamによるウランの最新マーケットが紹介され、モリブデンや銅価格との比較が行われた。豪州からの報告として、放射性物質を輸送する場合の問題点が指摘された。豪州からのウラン精鉱の海上輸送について、船舶が通過する沿岸国の許可が求められており、本件に関する非営利組織として、ICRP(International Comission on Radiological Protection)による厳しい勧告が紹介された。
 チェコやIAEA事務局より紹介された人材育成のためのWNU School of Uranium Productionの概要は以下のとおり。

目的:
ウラン探鉱・鉱山開発・ウラン生産・廃棄物処理・汚染除去のための国際的訓練センターをめざす。2006年に設立され、実際の運営はチェコのウラン会社DIAMOにより行われる。ウラン需要の拡大が予想される中、ウラン産業の専門家の育成や、新たな人材確保を強化する。2006年は中国やインドの研修員を受け入れたようである。
場所:
チェコは欧州でも中央に位置し、世界各国からのアクセスも容易である。さらに、物価的にも生活が容易であり、過去40年、ウラン鉱業の歴史があるDIAMOの本社がある。
科目:
現在検討中のコースは以下のとおり。経費は4週間コースで6,500$程度。
– In-Situ Leaching (Operating course, Executive course, Regulators course)
– Alkaline Milling
– Heap Leaching
– Exploration for Uranium
– Underground Mining
連絡:
Jan Trojacek (Director, WNU School of Uranium Production)DIAMO,s.p. Machova 201,
471 27 Straz pod Ralskem, Czech Republic
E-mail : wnusup@diamo.cz, trojacek@diamo.cz
Tel : 420 487 851 671, 420 487 894 156

3. カントリーレポートから推定されるウラン産業の展望
 2005年における世界のウラン探鉱費は196百万$(約215億円)であったが、ウラン価格高騰に伴い各国のウラン探鉱費は増加傾向が認められる。2005年に比較して2006年の探鉱費は、カナダで1.7倍の325百万C$(約390億円)、豪州では1.3倍の13.789百万A$(約14億円)、フランスでは3.3倍の50百万€(約83億円)となっている。
 ウラン生産に関しては、2005年に比べて減産したものの、カナダが9,862tUと世界生産の25%を占めている。豪州における2006年ウラン生産は8,950tUと世界の19%を占めており、Olympic Dam(2,867tU)、Ranger(4,026tU)、Beverley(696tU)の3鉱山が生産の主体となっている。中国のウラン生産能力は1,040tUであり、Qinglong坑内掘り鉱山とYining ISL鉱山の2鉱山に依存している。2006年CNNCはニジェール政府とウラン鉱山開発に関する合意に達しており、原子力発電に必要なウラン鉱山開発を国内と海外で推進している。フランスのアレバは日本円で1兆円を投じて、2012年には天然ウランと六フッ化ウランの生産量を現在の2倍に引き上げるとの情報もある。
 原子力発電に関する情報としては、米国は現在104基の商業用原子炉を有している一方で、1979年のスリーマイル島の原発事故以来原発の必要性が薄れていたが、近い将来、16社により30基の新たな原子炉の稼動が予想される。

図 2007 年のウラン価格(U3 O8)
図 2006 年における世界のウラン生産量
図 2007 年のウラン価格(U3O8)
(出典: Ux Consulting Website)
図 2006 年における世界のウラン生産量
(出典:WNA Website 2007)

図 世界の主要ウラン生産企業(2006年)

図 世界の主要ウラン生産企業(2006年)
(出典:World Uranium Mining 2007, %は世界生産シェアを示す)

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