報告書&レポート
Mining Journal社「Uranium Day」セミナー参加報告

Mining Journal社が主催する「20:20 Investor Series」と称されるセミナーシリーズの一環として、「Uranium Day」が5月30日、ロンドンで開催された。同シリーズは主に欧州の投資家向けに、各金属、あるいは国ごとのテーマにより、年間4、5回程度、開催されている。各セミナーの共通テーマは、金属の需給・価格動向、各国の鉱業法規、探鉱・生産動向、そして、関連企業の事業内容・展望・投資ポテンシャルなどである。今回のセミナーでは、ウランにスポットを当て、需給動向等に関する講演が1件、豪州、北米などの探鉱企業による自社プロジェクトの概況についての講演が11件行われた。以下その概要を報告する。 |
1. ウラン市場の状況と展望
Mr. Steve Kidd, Director of Strategy & Research, World Nuclear Association |
講演は世界原子力協会(WNA)のKidd氏による。同氏は、International Association for Energy Economicsのメンバーでもあり、原子力エネルギーと経済に関する講演を定期的に行っている。今回の講演内容は以下のとおり。
原子力発電の燃料であるウランの価格が、2003年から高騰している。アジアを中心とした人口急増や経済成長により、世界のエネルギー需要量は増加の一途を辿っている。ここ数年で、化石燃料発電に伴うCO2排出が及ぼす地球温暖化への危機感などから、クリーンなエネルギーとされる、ウランを燃料とする原子力発電を見直す動きが、世界的に広がっている。
WNAによると、2005年(2006年7月の資料)の全世界の電力供給の16%が原子力発電によって賄われた。現在、世界では、442基の原子炉が稼動し、発電設備容量は約370GWe、ウランの年間需要量は約65,000tとなる。原子力発電所は、米国、カナダ、旧ソ連諸国、日本、韓国、台湾、中国、ヨーロッパ諸国など、主に北半球に分布する。中国は、2020年までに27の原子力発電所の建設を計画し、インドでは最大24基の建設を予定している。さらに、マレーシア、インドネシア、ベトナムにも建設計画がある。また、米国政府は25年振りに、原子炉建設計画に積極的で、2020年までに50基の建設を予定している。WNAでは、これら全ての計画が実行された場合の、2030年時のウランの最大需要を、約160,000tと見込んでいる。このような積極的な原子炉建設計画がある反面、ドイツなどでは、原子力エネルギーの段階的削減計画により、ウラン需要の減少が見込まれている。
現在、世界のウラン供給は、2/3が鉱山からの一次供給によるもので、残り1/3は二次供給(備蓄在庫、余剰核兵器解体高濃縮ウラン、再処理したリサイクル燃料)により賄われている。主なウラン生産国(一次供給国)は、上位から、カナダ、豪州、カザフスタンとなり、次いでロシア、アフリカ諸国などとなる。
WNAでは、2015年までの供給に関しては、既存鉱山の生産能力の拡大、新たな鉱山開発が計画通りに進み、二次供給をプラスすることにより、比較的安定した供給があるものと見込んでいる。しかし、2015年以降のウラン供給は、様々な要素から、懸念材料も多いとしている。二次供給源である備蓄在庫、余剰核兵器解体高濃縮ウランが減少し始めていることもその一つで、今後、ますます、探鉱活動による新たな一次供給源を開発することが重要となる。
しかし、ウラン鉱山の開発には時間を要するため、はっきりとした供給量の予測は難しい。こういった曖昧な状況も価格高騰に影響している。この曖昧な状況が続き、ヘッジファンドを始めとする投資関係者による高い関心、中国・インドにおける劇的なエネルギー需要の高まりがある限り、ウランの高価格は続くものと見られている。
2. 探鉱企業による講演
2-1. BlueRock Resources社(加、TSX-V上場)
Mr. Michael Collins, President & CEO |
同社は2年前に設立された、バンクーバーを本拠地とするウラン専門の探鉱会社。米国(コロラド州、ユタ州)とモンゴルで、初期の探鉱プロジェクトを実施中。
・米国コロラド州におけるウラン・プロジェクト
Tramp Mineプロジェクト、Skull Creekプロジェクトを実施中している。 Tramp Mineプロジェクトは、1947年に発見されたUrvanウラン・バナジウムMineral Beltに位置する。過去のデータによるウラン(U3O8)品位は0.28%~0.32%、バナジウム(V2O5)は1.5%~1.75%。現在、50孔のボーリング調査を実施中である。 Skull Creekプロジェクトは、Energy Metals社とのJVによる初期段階のプロジェクトであり、2006/2007の探鉱計画は、物理探査、ボーリング調査などを実施予定である。 |
・米国ユタ州におけるウラン・プロジェクト
PSCプロジェクトを実施する。PSCプロジェクトは、Silver Bell鉱山とAndrew Lloyd鉱山の跡地で実施中のプロジェクトで、過去のデータによるU3O8品位はそれぞれ、0.40%と、0.17%。40孔のボーリング調査を計画している。また、オプションで権益100%を獲得する予定である。 その他、Hidden Splendorウラン鉱山プロジェクトについて、現在のオーナー、Randy Mecham氏とのオプション合意について検討中である。 |
・モンゴルにおけるプロジェクト
8地区からなる4プロジェクトを実施中。いずれもUranerz Energy社(30%)とのJVプロジェクトであり、全プロジェクトの総面積は28万ha。 そのうち、Khavtsalプロジェクトはモンゴルのほぼ中央に位置し、同社のモンゴル・プロジェクトの中では最も進んだ段階のもので、インフラにも恵まれている。ウラン(U3O8)のサンプルグレードは0.23%。他に、Central Gobiプロジェクト、The East Gobi/Tamtsagプロジェクト、The Western Highlandsプロジェクトがある。いずれも初期の調査段階にある。 |
2-2. Ur-Energy社(加、TSX上場)
Mr. Jeffrey T. Klenda, Chairman & Director |
同社は、ワイオミング・ウラン盆地(Wyoming Uranium Basins)に、9鉱区を保有するが、その中のLost Creekプロジェクト、Lost Soldierプロジェクトの2つが、最も進行している。Lost Creekプロジェクトの概測鉱物資源量ベースでのウラン(U3O8)含有量は9.8百万lbs(平均品位0.058%)、一方、Lost Soldierプロジェクトの概測+精測鉱物資源量ベースで、同含有量12.2百万lbs(平均品位0.065%)となっている(いずれも、カナダNI43-101規準による)。現在、プレFSなどを実施中であり、レポートは2007年第3四半期に完成する見通し。それぞれのプロジェクトの生産開始は、Lost Creekが2009年第3四半期、Lost Soldierが2010年後半を見込んでおり、同社のウラン生産規模は、2009年に30万lbs、2011年には200万lbsを計画している。低コスト化を可能にするIn-Situ Leaching(ISL)回収法での操業を予定している。
2-3. Solex Resources社(加、TSX-V上場)
Mr. Jonathan Challis, President & CEO |
同社は、同社の主要ウラン・プロジェクトとして、ペルーのMacusani Uranium Districtで、Macusani Eastプロジェクト、Macusani Westプロジェクトの2つのウラン探鉱プロジェクトを実施中。
・Macusani Eastウラン・プロジェクト
総面積は49,700ha、73鉱区を所有し、その内、53か所で、露出部分にウランの鉱化が確認されている。2007年においては、8つの地区で、500孔、総掘進長約2万mのボーリング調査を予定。現時点で2地区までの調査が終了し、捕捉幅10m・ウラン品位0.102%など、多数の鉱脈が確認されている。同プロジェクトのオペレーターはFrontier Pacific Mining社となり、Frontier社は4百万US$の探鉱費負担により、50%の権益を獲得する。2007年後半には詳しい調査結果が出る予定となっている。 |
・Macusani Westウラン・プロジェクト
総面積43,500ha、Solex社が権益100%所有する。2006年の地質調査で、5地区のウラン有望地が確認された。引き続き地質調査を実施し、ボーリング候補地を抽出後、2007年後半からボーリング調査を開始する予定としている。 |
2-4. Monaro Mining社(豪、ASX及びFrankfurt SE上場)
Mr Warwick Grigor, Chairman |
同社は、主に、豪州及びキルギス共和国において、ウラン探鉱プロジェクトを手がけている。キルギスにおいては、7件の初期のウラン探鉱プロジェクトを実施し、いずれも旧ソ連時代の鉱山地域、あるいは探鉱が実施された地域となる。キルギスでのプロジェクト概要は以下のとおりである。
・Aramsuプロジェクト(キルギス中西部、首都Bishkekから車で3時間)
総面積756km2。1950年代と1960年代に探鉱がなされ、当時の資料では、旧ソ連の資源量基準C1+C2で、ウラン含有量が326t、平均品位が0.167%であり、小規模高品位の鉱床と示されている。電力、道路などのインフラ環境は良好である。 |
・Narynプロジェクト(キルギス西部ウズベキスタン国境付近)
総面積520km2。1960年代から1970年代初頭まで地下採掘が行われた。主なウラン鉱石は瀝青ウラン鉱となり、ウラン品位は0.057%~0.96%。すぐ近くに炭鉱があることから、労働力などのインフラに恵まれている。 |
・Utorプロジェクト(Choy準州、首都Bishkekの北50km)
総面積936km2。In-Situリーチングによるウラン回収が可能な砂岩型鉱床。母岩となる砂岩は層厚約20mで、10kmに及ぶ。ウラン平均品位は0.08%だが、一部で1%、2.14%という調査結果が残っている。 |
・Sumsarプロジェクト(キルギス西部ウズベキスタン国境付近)
総面積392km2。山岳地帯だが、道路アクセスは良好。ウラン鉱床は砂質石灰岩を母岩とする。鉱石分析結果では、ウラン品位0.077%~0.165%となっている。1950年代に一時、生産した模様であるが、記録はほとんど残っていない。 |
・Sogulプロジェクト(キルギス南西部タジキスタン国境付近の山岳地帯)
総面積683km2。ウズベキスタンのKoscheka、Djantuar、Rudnoe、Althntan鉱区に類似。現在、総掘進長2,100mのボーリング調査を実施中。これまでの地質調査、トレンチ調査及び予察ボーリングの結果では、ウランの鉱徴が約1,300mに亘り拡がっていることが示されている。1980年代に行われた探鉱によるウラン(U3O8)品位は0.06%~0.132%。 |
・Djurasay、Hodjaachkanプロジェクト(キルギス南西部タジキスタン国境付近の山岳地帯)
現時点で、ウラン鉱化は確認出来ていないが、同社では、地質学的にSogulプロジェクトの鉱床タイプに類似しているものとみている。 |
2-5. Tournigan Gold社(加、TSX-V及びFrankfurt SE上場)
Mr. Michael Mracek, Chief Operating Officer |
同社は、主に、米国でウラン、金の探鉱、開発プロジェクトを展開しているが、スロバキアにおいて、Kuriskova、Novoveska Huta他2件、計4つのウラン探鉱プロジェクトを手がけていることで、特徴付けられる。以下、スロバキアにおけるプロジェクトの概要である。
Kuriskovaウラン鉱床(旧Johodna鉱床)は1985年に発見された。2006年に総掘進長6,200mのボーリング調査が完了しており、新たな鉱床の拡がりの可能性も確認されている。また、鉱床にはモリブデンの含有も確認されている。2006年のボーリング調査により2007年3月になされた鉱量再計算の結果、予測鉱物資源量8.98百万t、ウラン品位0.255%、ウラン含有量50.5百万lbsであった。2007年においては、総掘進長8,000mのインフィル・ボーリング、総掘進長2,500mの深部域へのボーリングなどが計画され、第4四半期から鉱床の予備評価も実施する予定である。
Novoveska Hutaウラン鉱床は、過去にウランと銅が生産された。1992年に算定された、スロバキアのZ-3カテゴリー(概ねInferred Resourcesに相当)での同鉱床の資源量は、12百万t、ウラン品位0.075%となっている。2007年の調査計画では、坑道調査などを実施し、第4四半期に鉱量計算が開始される予定。
両ウラン鉱床とも、電気・ガス・鉄道などのインフラストラクチャーに恵まれている。
上記プロジェクトの他、スロバキアにおいて、2つの初期探鉱プロジェクトを保有しており、2007年においては、空中探査を実施する計画である。
2-6. CanAlaska Uranium社(加、TSX-V及びFrankfurt SE上場)
Mr Emil Fung, Vice President |
同社は、高品位で、世界の一次ウラン生産量の約30%を産出する、カナダ北西部サスカチュワン州アサバスカ盆地に、19のプロジェクトを所有し、その総面積は約4千平方マイルに及ぶ。2004年から現在までに、18百万C$を投じ、8プロジェクトでのボーリング調査を行い、いくつかのウラン鉱床を確認している。同社の探鉱チームには、アサバスカ盆地Cigar Lakeウラン鉱山を発見・開発したDr Karl Schimann氏も参加している。
2007年4月、同社のWest McArthurプロジェクトに、三菱デベロップメント社(三菱商事100%子会社)が参入することとなった。三菱デベロップメント社、3.5年間に亘り、同プロジェクトへの探鉱費11百万C$を負担することにより、プロジェクト権益50%を獲得する権利を保有することとなる。さらに韓国のHanwha社も同社のウラン探鉱プロジェクトに参入を予定している。2007年においては、探鉱費予算13百万C$を投じ、積極的な調査を計画している。
セミナーでは、以上の各社の他、Cash Minerals社(加社、TSX-V)、VANE Minerals社(米・英社、AIM)、Forum Uranium社(加社、TSX-V)、Laramide Resources社(加社、TSX)、Pele Mountain Resources社(加社、TSX-V)の講演が行われた。

