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報告書&レポート

2007年8月30日 シドニー事務所 久保田博志、研究スタッフ:Walker Ayako Tel:+61-2-9264-2493 e-mail:kubota-hiroshi_1@jogmec.go.jp
2007年81号

深海底鉱物資源開発最前線(2)-深海底鉱物資源探査企業Neptune Minerals社CEO、Simon McDonald氏への「独占インタビュー」-

 Neptune Minerals plc社(ロンドン証券取引所AIM上場、以下Neptune)は、6月18日、世界最大の産金企業であるNewmont Mining Corporation社(米国資本、以下Newmont社)が、Neptune社に資本参加することを明らかにした。
 本稿では、8月8日、Neptuneが拠点を置くシドニー市内において、同社の最高経営責任者(CEO)のSimon McDonald氏への経営戦略等に関するインタビューについて紹介する。

1. はじめに
 PNG沖において世界で「最初の」深海底鉱物資源の商業目的の開発を進めるNautilus Minerals Inc社(本社バンクーバー、以下Nautilus)と並んで、現在、ニュージーランド沖において深海底鉱物資源を探査中のNeptune社の最高経営責任者Simon McDonald氏に「独占インタビュー」を行った。
 インタビューでは、同社が最近発表したNewmont社の資本参加と業務提携についてのほか、同社の経営戦略と今後の事業計画、深海底鉱物資源開発に対する考え、ライバル企業との関係などについて聞いた。

2. Neptune Minerals社CEO、Simon McDonald氏への「独占インタビュー」
(1) Newmontの資本参加について
-6月にNewmontの資本参加が発表されましたが、いつ頃から話が進められたのですか。
 

  「Newmont社の当社への資本参加については1年程前から話し合いが行われた。Newmont社にとっては比較的安価な投資先ではなかったろうかと思われる。」

-Newmont社は、今後、どのようにNeptune社のプロジェクトに関わっていくのでしょうか。資本参加と業務提携の内容について教えてください。
 

 

「資本参加については、Newmont社は当初5百万US$でNeptuneの株式10.8%を取得し、更に、10%の権益を取得できることになっている。」
「業務提携については、Newmont社の施設を利用した冶金試験、技術スタッフの派遣、ニュージーランド・日本・PNGでの競業避止などが含まれている。」

-今後、Newmont社のような大手鉱山会社から資本参加のオファーがあった場合、受け入れていくつもりですか。
 

  「現在の主要株主中、鉱山会社はNewmont社だけだが、日系企業も含めて他の非鉄企業との提携もありえると考えている。」

 
(2) 経営戦略について
-Neptuneの最終的なゴールはどこにあるのですか。
 

  「Neptune社は、現時点では探鉱会社であるが、将来的には採掘活動も当社が行える様に考慮中でもある。」

 
-ニュージーランド沖以外にもPNG、イタリア、日本など世界中の海域で鉱区の申請を実施・計画されているようですが、最も注目している海域はどこですか。その理由は。
 

  「既に鉱区を取得したのは、ニュージーランド・PNG・ミクロネシアで、その他にパラオ・PNG(追加分)・マリアナ・日本・イタリアでも取得に向けて動いている。特にPNGでは、(金鉱山のある)Lihir島周辺に鉱区を設定しており、高品位の金鉱床が期待でき産金企業であるNewmontにとっては魅力的な鉱区である。」

-採掘した鉱石販売のマーケティングのイメージはありますか。
 

  「(探鉱段階の)現段階ではマーケティング戦略は考えていない。」

 
-ジュニア探査会社の多くは、トロントやシドニーに上場していますが、Neptune社はなぜロンドンに上場しているのですか。
 

  「ロンドン証券市場が、当社の様なフロンティア企業や特殊プロジェクトへの受け入れが盛んで寛容であることから。」

 
(3) 今後の事業計画について
-ニュージーランドKermadecプロジェクトは、2007年には資源量の確定、2010年には生産開始とありますが、現実の可能性はどの程度だと考えていますか。
 

  「ニュージーランドでは、2007年末までに採掘ライセンスの取得を目指し、その後、試験採掘を実施し、その中で、環境ベースライン調査などを予定。」

(4) 深海底鉱物資源開発について
-深海底鉱物資源開発に取組もうと考えたのはどうしてですか。
 

  「フロンティアとして深海底鉱物探鉱に取り組む事はリスクも大きいが、当社の探鉱権区域・申請区域はこれまでの調査により鉱床が確認されており、商業価値を確認する事により、多大なリターンを得られると考えたため。」

 
-深海底鉱物資源開発で最も重要なことは何だと思いますか。
 

  「技術と環境の2点だと考えている。」「技術面では、採掘技術や海底から鉱石を引き上げる技術などが重要。環境面では、環境への影響の軽減、環境評価(EIS)が重要と認識している。」

 
-Neptune社の他にも、Nautilus社など深海底鉱物資源開発に挑戦している企業がありますが、今後、深海底鉱物資源開発はどうなって行く、或は、どうなって行くべきだとお考えですか。
 

  「深海底鉱物資源開発を行うライバル企業が増えれば、深海底鉱物資源開発が実現可能なものと認識され、ニッチマーケットとしての認識が向上されていくと思う。」
「また、今年末までに上場を準備している企業があるらしいと聞いている。」

 
-深海底鉱物資源には陸上の資源開発では経験しなかったこと、想定されていないことが多いと思いますが、技術面、環境面、漁業補償など地域社会との関係などで不安はありませんか。
 

  「技術面では、石油・ガス、ダイアモンド採掘のテクノロジーを取り入れていき、環境面では、例えば、現在ニュージーランドで、ニュージーランド水大気研究所、海洋生物学者による深海底生物への影響調査が実施されており、また、漁業関係者とは、海域での共存者として配慮考慮し、深海底鉱物資源開発は大変肯定的だと思っている。」

 
3. おわりに
 金属価格の高騰もあって、これまで「開発コストが高く、実現しないと」思われてきた深海底鉱物資源開発は、2006年10月のAnglo Americanと2006年12月のTeck ComincoによるPNG沖で探査を進めるNautilus Minerals Inc社への資本参加(それ以前に、Barrick Gold(カナダ資本)が権益保有)により、一躍、現実味を帯びてきていた。
 更に、2007年2月には、Neptuneが日本法人を設立して、日本近海の海底熱水鉱床をターゲットにした鉱区申請を行い、2007年6月には、世界最大の産金企業であるNewmontが、Neptuneに資本参加することを明らかにするなど、深海底鉱物資源開発は「探査ジュニアの夢物語」から「非鉄メジャーを巻き込んだマイニング・ビジネス」へと一気に加速した感がある。

図1.Neptuneプロジェクト等位置関係図
図1.Neptuneプロジェクト等位置関係図
出典)Neptune Minerals plc社Webサイトをもとに作図

表1.Neptuneの概要(2007年6月末時点)
項 目 内  容 備 考
株式上場 AIM(ロンドン株式市場)
2005年10月10日上場
 
発行株式数 64.7百万株  
ワラント発行数 37.2百万(IPO時の投資家が保有、IPO時の株価の25%で5年間転換可能)  
株式時価総額 23.62百万£  
現金保有額 4.26百万£  
上位20主要株主 Chetwynd Nominees Limited(17.90%)
Ismacate Pty Ltd(12.85%)
Newmont Mineral Holding BV(10.85%)
Credit Suisse Client Nominees(UK) Limited(9.38%)
Newsmith Opportunities Private Equity Fund LP(7.42%)
JPF Energy Pty Limited(6.75%)
Morstan Nominees Limited(4.23%)
HSBC Global Custody Nominee(UK) Limited(3.09%)
Vidacos Nominees Limited(2.78%)
Morstan Nominees Limited(2.71%)
Chase Nominees Limited(2.64%)
Jeremy Attard-Manche(1.86%)
Peter Vanderspuy(1.86%)
N.Y. Nominees Limited(1.59%)
Check-Kian Low(1.24%)
Societe Generale Australia Branch Account(1.21%)
Pershing Keen Nominees Limited(1.86%)
Hoani Wiremu Hipango(1.07%)
Dartington Portfolio Nominees Limited(0.97%)
Vidacos Nominees Limited(0.77%)
 
出典)Neptune Minerals plc社Webサイト

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