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報告書&レポート

2007年9月13日 シドニー事務所 久保田博志、研究スタッフ:Catherine Young、Walker Ayako Tel:+61-2-9264-2493 e-mail:kubota-hiroshi_1@jogmec.go.jp
2007年85号

オーストラリア「JORC規程」 新たなガイドラインが追加-オーストラリア証券取引所(ASX)による「上場企業のための重要情報」より-

 オーストラリア証券取引所(ASX:Australian Securities Exchange Limited、本部シドニー)は、2007年5月3日、「上場企業のための重要情報」(Important information for ASX Listed Entities no 03/07)と題して、同取引所に上場する資源関係企業が探鉱結果や鉱物資源量の報告を行う際の基準とされている「鉱物資源量及び鉱石埋蔵量の報告に関する大洋州規程」(Joint Ore Reserves Committee Code、以下、JORC規程)に関する追加的なガイドラインを示した。
 本稿では、オーストラリア証券取引所によるJORC規程の追加ガイドラインについて紹介する。

1. はじめに-新たなガイドラインが追加の背景-
 JORC規程(2004年版)が発表されて以来、委員会「JORC」(Joint Ore Reserve Committee)には、多くの意見が寄せられた。これに対して委員会「JORC」は、2005年に予測鉱物資源量(Inferred Resources)に関する事項等を中心に見直し作業を開始、2006年8月にはJORC規程・ガイダンスの変更に関する草案「予測鉱物資源量の(JORC)規程及びガイダンスの変更に関する提案」(Inferred Mineral Resources Proposed Changes to The Code and Guidelines -4 August 2006)を作成してウェブサイトに掲示、一般からの意見収集を行った。
 これによって収集された意見を踏まえ、大洋州鉱業冶金学会(AusIMM:Australasia Institute of Mining & Metallurgy)、オーストラリア地球科学学会(AIG:Australian Institute of Geoscientists)、オーストラリア鉱業協会(MCA:Mineral Council of Australia)、委員会「JORC」及びオーストラリア証券取引所は、2007年5月3日、オーストラリア証券取引所の最新情報として「上場企業のための重要情報」(Important information for ASX Listed Entities no 03/07)と題して、鉱業関係企業が同取引所に対して探鉱結果や鉱物資源量の報告を行う際の基準を定めたJORC規程の追加的なガイドラインを示すに至った。 

2. JORC規程の追加的なガイドラインの骨子
 オーストラリア証券取引所に上場する全ての資源関係企業に対して、既存のJORC規程(2004年版)とそのガイドラインに関する解釈と運用の方法を通知した最新情報「上場企業のための重要情報」(2007年5月3日)には、以下の事項が含まれている。
 (1) 資源量(Mineral Resources)、サンプリング及び探鉱(Extrapolation)の報告
 (2) 金属換算量(Metal equivalent)による報告
 (3) 資格保有者による報告(Competent Persons’s Statement)と合意書の書式(Consent Form)
 (4) JORC規程に従わない場合のオーストラリア証券取引所による強制力 

3. JORC規程の追加的なガイドライン「上場企業のための重要情報」の内容
(1) 資源量の報告、サンプリング及び探鉱

 
1)  
資源量
     鉱物資源量(Mineral Resources)の意味について再度注意を促すとともに、予測(Inferred)・概則(Indicated)・精測(Measured)の全ての鉱物資源量の推定が、JORC規程19条を満たしていなければならないことが明示されている。
 
2)  
サンプリング
     全てのカテゴリーの鉱物資源量(Mineral Resources)はサンプリングに基づくものでなければならないと明示している。一方で、実務家の一部には、JORC規程20条の予測鉱物資源量(Inferred Mineral Resource)の規程から、「サンプル」の語句を省略したかたちで鉱物資源量を解釈している場合が見うけられることが指摘されている。
 
3)  
探鉱
     報告される鉱物資源量の多くが予測鉱物資源量(Inferred Mineral Resource)のカテゴリーのものであり、その評価がサンプルデータの範囲外に及ぶ推定(外挿)に基づくものであることから、投資家らが検証できるよう十分な補足情報を提供しなければならないことが明示されている。

(2) 金属換算値(Metal equivalent)による報告
 企業が探鉱結果の報告に金属換算値を用いる場合が増えており、報告書を読む者を誤った方向に導く危険性と、それを防ぐために報告書には、すべての金属の分析結果、予想価格(スポット価格だけでは不十分)、回収可能なことの根拠などの金属元素の回収に関する詳しい情報が含まれているべきであることが指摘されている。
 
(3) 資格保有者による報告と合意書の書式
 探査結果、鉱物資源量、埋蔵量などの情報を含む公開報告書は、JORC規程8条に従うことを再確認されているほか、それを満足するために資格保有者による合意書の書式(Competent Person Consent Form)が示されている。ただし、グッドプラクティス(“good practice”)の原則に従うものと認識から、この書式の使用を義務付けてはいない。
 
(4) JORC規程に従わない場合のオーストラリア証券取引所による強制力
 上場企業に対して、探鉱結果、鉱物資源量或は埋蔵量をJORC規程に適合したかたちで報告することを要求していることを再確認している。
 企業がこれに反すると認められた場合、オーストラリア証券取引所は書面で追加情報の提出を求めることができ、企業の規程に従わない行動が、証券取引市場を無秩序で情報の開示されないものにすると考えた場合、株式上場の停止或はオーストラリア証券投資委員会(Australian Securities & Investment Commission)への告発を行うことができるとしている。

4. おわりに
 オーストラリア証券取引所と委員会「JORC」は、資源関係企業の資源量の報告に関する最低基準とガイドラインをJORC規程として示してきた。そして、オーストラリア証券取引所の上場企業の3分の1が資源関係企業であることからもこの規程は株式市場の信頼を維持・発展させていくうえで重要な役割を果てしてきたと認識している。
 今回の追加ガイドラインは、そのことを十分に認識し、自ら証券市場にとって最も重要な「透明性」と「公正性」をより高めようとする姿勢の現われと言えよう。

図1.探査結果、鉱物資源量及び鉱石埋蔵量の関係図

図1.探査結果、鉱物資源量及び鉱石埋蔵量の関係図

参考文献等
Australasian Code for Reporting of Exploration Results, Mineral Resources and Ore Reserves – The JORC Code 2004 Edition.
 http://www.jorc.org/pdf/jorc2004print.pdf
Companies Update, Update no 03/07, 3 May 2007.
http://www.asx.com.au/resources/newsletters/companies_update/archive/CompaniesUpdate_20070503_0307_HTML.htm
JORC Code 2004 and Companies Update 03/07 Guidance for Practitioners.

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