報告書&レポート
第6回国際銅大会(Cu2007)報告

平成19年8月25日から30日までの6日間、カナダのトロント市内Fairmont Royal Yorkホテルにおいて、第6回国際銅大会(the International Copper Conference: Cu2007)が、カナダ冶金学会(Canadian Institute of Mining, Metallurgy and Petroleum-CIM)主催の冶金大会(COM2007)と併せて開催された。この大会は乾式製錬、湿式製錬、電解等冶金分野に限定されているため、参加者は当初800名程度と見られていたが、結果的には1,000名を超えた模様である。Trade Showには、製錬、電解の設計施工、プロセス、サービスエンジニアリング、部品供給会社等34社がブース展示していた。以下、Cu2007の概要について報告する。 |
1. Cu2007の概要
(1)大会の概要
Cu2007は、6つの国際的な学会(カナダのMetSoc※1、チリのIIMCh※2、ドイツの GDMB※3、日本の資源・素材学会(MMIJ)、米国のTMS※4、SME※5)で構成されており、4年に1回開催されるユニークなフォーラムである。全体の構成は、国際的な有力企業による基調講演に加え、技術分野では、経済・市場、選鉱、乾式製錬、湿式製錬、電解・電気精錬、加工、工程管理、持続的開発・安全衛生・リサイクル部門に別れて、8月27日から29日の3日間にわたり発表が行われた。全体の論文発表数は330件、そのうち、日本からの発表は26件となっている。その他、Short Courses、Industrial Tours、ポスターセッション、Trade Showも併せて開催された。
※1 CIM下の治金学会Metallurgical Society、
※2 チリ鉱山技師協会:Institutos de Ingenieros de Minas de Chile
※3 ドイツ鉱山治金学会:Gesellschaft Deutscher Metallhü tten- und Bergleute、
※4 米国資源材料協会:The Minerals, Metals & Materials Society、
※5 米国鉱山治金探査学会:Society of Manufacturing Engineers
JOGMECはCu2007にブース展示するとともに、持続的開発・安全衛生・リサイクル部門では賀川鐵一氏(JOGMEC業務評価委員、日鉱金属特別顧問)及び不破章雄氏(早稲田大学教授)との連名で「非鉄金属生産技術における持続可能な開発」、湿式製錬部門では「製錬所煙灰の無害化有価金属回収技術の開発」と題し、銅製錬所から発生する砒素含有煙灰の無害化、並びに湿式処理による煙灰中の銅・亜鉛等有価金属回収に関する成果発表を行った。
また、日本からMMIJ会員を中心に京都大学、九州大学、東北大学、秋田大学、大阪大学、名古屋大学、北海道大学、早稲田大学、岩手大学、産業総合技術研究所、住友金属鉱山(株)、日鉱金属(株)、日々共同製錬(株)、三菱マテリアル(株)等からの投稿、参加、発表が行われている。
総会における基調演説並びに専門分野での日本からの発表論文数は以下の通り。
(総会における基調演説) | |||
「アジアにおける銅の需給、技術開発、将来展望」として1件 | |||
全体では毎日2件ずつ計6件あり、Xstrata社、Norddeutche社、日鉱金属(株)、FCX社(旧Phelps Dodge社)、Teck Cominco社、Institutos de Ingenieros de Minas de Chile(IIMCh)の社長、技術担当役員より発表が行われた。 | |||
(技術分野) | |||
経済・市場———————
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1件 | ||
乾式製錬———————-
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8件 | ||
湿式製錬———————-
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4件 | ||
持続的開発・安全衛生・リサイクル—
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3件 | ||
選鉱————————-
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1件 | ||
電解・電気精錬—————–
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8件 |
(2)展示について
Trade Show展示は34社で、製錬、電解の設計施工、プロセス開発、サービスエンジニアリング、部品供給会社が大宗を占めた。国別では、カナダ企業からの出展が半数を占め、米国がそれに次ぐ。その他、豪州、オーストリア、フィンランド、チリ等からの出展があった。政府関係機関の出展はJOGMECのみであった。
2. 感想
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展示ブース前にて |
当該大会が技術、特に冶金に焦点を絞ったものであったことから、Trade Showを訪れる面々は、冶金関係の大学、企業の研究者が主体であり、多数の政府系機関、小規模探鉱会社、大手鉱山会社が出展し、自国、自社への探鉱投資をアピールするカナダ探鉱・開発協会総会(PDAC)、ROUNDUPとはかなり趣を異にしている。
その意味では、探鉱開発支援を主要業務とするJOGMECのブース展示は異質な存在と写ったかもしれない。しかしながら、JOGMECの鉱害防止にも言及した持続的開発・安全衛生・リサイクル部門での講演を聴いた後に、カナダNational Research Council Canada、ポーランドInstitute of Non-ferrous Metals、ルーマニアR&D National Institute for Non-ferrous and Rare Metals、ノバスコッチア州Dalhousie大学、ケベック州Laval大学等研究機関、選鉱・製錬のエンジニアリング・建設をも手がけるHATCH社、SNC・LAVALIN社、廃水処理、貴金属回収技術を持つIBC Advanced Technologies社等がJOGMECに関心を持ちブースを訪れている。鉱害対策先進国である日本が、環境保全のために、如何に技術開発・維持に尽力してきたかに興味を抱いたのであろう。
JOGMECは、資源外交の一環として、資源確保の一翼を担うであろう環境保全、環境調和型技術についても、これから外に向かってアピールしていく機会を増やしていく必要があるかもしれない。

