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報告書&レポート

2008年4月3日 ロンドン事務所 竹谷正彦、オーウェン溝口佳美
2008年30号

INDABA 2008 (第13回アフリカ鉱山投資会議)報告

2008MINING INDABA カンファレンスガイド表紙
2008MINING INDABA
カンファレンスガイド表紙

 今年で第13回目の開催を迎える本会議は、2月3日から7日まで、通常より一日長い4日間で、例年どおり南アフリカ共和国ケープタウンで開催された。
 本年のINDABAは例年と違い、1日目の午後からCommoditiesに関する講演が始まり、2日目の朝から大会議場でGeneral Sessionが始まるという変則的な日程であったが、初日から、Commoditiesに関するセミナーについては、最近、鉱産物が高騰していることもあり、非常に参加者も多く、講演会場に入れない人であふれるほどの盛況さであった。これと同時に、近年注目されてきている鉱物生産国おけるCSR(Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任)や環境対策について、ICMM(国際金属・鉱業評議会)、世銀、環境コンサル、英国政府等による講演があった。
 また、本会議3日目に、JOGMECの森脇久光資源探査部長(現理事)による講演も行われ、その講演に関する記事が地元新聞に掲載された。
 また、今年度は中国によるアフリカへの投資が注目を集めており、カンファレンスガイドには時勢を物語るイラストが掲載された。講演内容も中国の動向、アメリカのサブプライム問題が市況に及ぼす影響を取り上げた講演が多かったほか、今回はアフリカ諸国の鉱業大臣による講演が昨年よりも充実しており、参加者の数も多かった。とりわけ会議参加者から多くの脚光を浴びていたのは、内戦前後の混乱期に締結された外国企業との鉱業協定の見直し問題などに直面しているコンゴ民主共和国であった。
 以上、参加者数、出展ブース数ともに過去最大規模となった今回のINDABA 2008について、以下のとおり、報告する。

1. INDABA2008 会議概要
 今回は、金融機関、鉱山企業(ベースメタル、レアメタル、金、白金族、産業鉱物、ウラン等)、重機メーカー、政府関係機関等からのスポンサー件数は、昨年の150社から248社へと増加し、最も企業数が多かった国は、南アフリカ共和国、豪州、加、英国の順で、29カ国となった。政府からの参加は23カ国となり、本会議では、大臣または副大臣からの講演が昨年よりも増加し、ザンビア、赤道ギニア、中央アフリカ、タンザニア、リベリア、ガーナ、エリトリア、ボツワナ、シエラレオーネ、ブルンジ、モザンビーク、南スーダン、カメルーン、コンゴ民主共和国、による鉱業大臣(副大臣)による講演が行われた。中でも、コンゴ民主共和国の鉱業大臣のスピーチには、多くの聴衆が集まり会場に入れないほどであった。なお、日本企業の参加は、昨年4社であったのに対し、商社・非鉄金属・日本政府機関を併せ9社となった。
 参加者数は、主催者発表で、約5,500人、これは同会議が始まって以来最高記録の参加数となり、3年前の参加者の5倍である。
 今回もJOGMECはブースを出展した。今回はJOGMECのJV事業への関心が非常に高く、ブースに展示したポスターに目を止めている人も多く、中にはブースへ相談を持ちかける人もいた。

2. 基調講演
 本会議冒頭には、南アフリカのソンジカ鉱物エネルギー大臣の講演が行われたほか、Anglo Americanの最高経営責任者(CEO)Cynthia Carollを招いての講演が行われた。同講演の主な内容は以下のとおり。
(1)「Republic of South Africa: Official Welcome」
  -Hon. Buyelwa Sonjica, Minister of Minerals and Energy of Republic of South Africa-
 南アフリカのアフリカ民族会議-ANC政権の成長を重視した経済戦略下、2003年からGDP成長率平均5.7%という経済成長率で推移している状況にある同国について、ソンジカ大臣は、アフリカの経済改革が良好に発展しており、鉱業分野が大きく同国の経済成長や貧困状況が改善へ大きく貢献していることに言及し、更に、同国が保有する多くの資源は未開発で、今後も鉱業への投資を歓迎すると発表した。加えて、同大臣は、今後、南アフリカの経済成長率を2009年までに6%、失業率及び貧困状況を2014年までに現在の半分までにすると発表した。
 鉱業分野は、南アフリカのGDP(国内総生産)の約16%を占めている。1980年代後半から、製造やサービス産業の成長率が大きく、鉱業分野のGDPを占める比率が低下しているが、鉱業は依然として、同国の経済成長率および雇用率に大きく貢献している。
 一方で、2004年5月に施行されたMineral and Petroleum Resources Development Act (MPRDA)の改正も続けるとし、同年に施行された鉱業憲章の影響について利害関係者を交えての見直しも2009年までに行うと発表した。
 また、ソンジカ大臣は、次の課題点についても言及した。
● REACH
 2007年6月1日に施行された欧州化学品規制REACHについて、同国政府は開発途上国が遵守しやすい規制として改正案提出を検討しており、今後もロビー活動を続ける。また、ニッケル、硫化ニッケル及びニッケル化合物の3種はCMR*1 カテゴリー1に分類され、一方、ニッケル金属はカテゴリー3という分類で、発ガン性の最も低い分類である。この分類方法は、科学的な根拠に基づいた正当な分類方法であるのか、懸念がある。また、南アでは、鉱物生産国として一次原料の生産加工作業のほか、他国から輸入した一次原料を加工し、付加価値製品の輸出増加を目指すことを検討していることから、REACH導入における悪影響の分析も積極的に行っている。
● ベネフィシエーション
 鉱物生産国として鉱物のベネフィシエーションを国内で行い、今まで以上に戦略的鉱物の付加価値を高めることは重要であり、とりわけ、金、白金族(Platinum Group Metals)、銅、鉄、マンガン、クローム等の鉱物に関するベネフィシエーションの自由化を図り、2008年後半にはベネフィシエーションに関する法律をとりまとめる。2006年の金属加工分野の実績は、前年比15.7%増の433億ランドと史上最高記録へと達した。
● 鉱物及び石油に関するロイヤルティ法案
 産業界が懸念するロイヤルティ法案は、政府がステークホルダーからの意見を盛り込んだドラフト版を2007年に公表し、2009年までに同法案を成立させる見込み。
● 電力について
 急速な経済成長に、電力供給が追いつかなかったことから、現在の電力不足は、鉱業生産へ悪影響をもたらしている。鉱山企業は、今後もエネルギー効率化対策を続け、且つ、鉱山業の革新的な取り組みを推奨し、また、長期的には、主要消費者である鉱業界と今後の電力の供給状況を改め、電力のより効率的な消費及び革新的なアプローチに取り組みたい。


南アフリカ共和国鉱業・エネルギー省
ソンジカ大臣による講演


(2)「Opportunities in Africa」
  -Cynthia Carroll, Chief Executive, Anglo American plc-
 Anglo AmericanのCEOとして、2年前に就任したCynthia Caroll氏より、同社のアフリカにおける鉱業活動とその将来についての講演が行われた。
 同社の従業員は、世界全体で15万人、このうち11万人はアフリカにおけるオペレーションに携わっている。 また、同社の資産の4割強はアフリカが占め、同社では120億USDもの資金がプロジェクトに投入されており、そのうち、45億USD相当のプロジェクトは、アフリカで行われている。また、アフリカにおける探鉱費は、年々増加傾向にあり、2007年は50百万USD (2006年は38百万USD)、2008年には65百万USDを予想している。また、2007年下半期には、コンゴ民主共和国にキンシャサ及びルブンバシ探鉱事務所を開設した。
 加えて、アフリカは地球の陸地のたった2割を占める一方で、未開発で且つ高品質の鉱物資源が埋蔵しているとし、世界における鉱物資源の埋蔵量のうち白金族8割、ボーキサイト3割、金4割、マンガン及びコバルト6割、そしてダイヤモンド7割を占めている。アフリカは鉱業及び採掘産業にとって、比類のない資源豊富な土地(「Africa as a land of unparalleled opportunity for the mining」)であるとしている。
 また、同氏は、アフリカは投資リスクが高いという、アフリカ投資に対する消極的な見方「Afro Pessimism」を否定した。現在の南アの電力不足問題やジンバブエ、ケニア、ソマリア等における地政学的な問題が、全てのアフリカ大陸にあてはまると認識するのは間違いであるとも語った。
 同社は、このほかBEE(ブラック・エコノミック・エンパワーメント)政策、すなわち、2009年までの5年間に15%、2014年までの10年間に26%の資産権益を黒人資本化する政策について、今までに約600億ランドのBEE取引を成功させていることや、Exxaro Resource社やムベラファンダ社*2 のように、100%BEE所有の鉱山企業の誕生を大いに歓迎している。
 最後に、同氏は、鉱山企業は、発展途上国開発機関とは言えないとしても、地域開発や貧困改善分野で大きな役割を果たしており、今後もアフリカにおけるポテンシャルを高く評価し、現在でも続く堅調な需要と世界経済の構造に変化が起こる中で、同社は伸び続ける需要を低コストで満たさなければならないと語り、それには、アフリカ諸国における統治の改善、インフラへの更なる投資等に共に取り組んで行く事が重要であると語った。また、同社では、2004-2015年の間に、全グループのエネルギー効率を15%高めることを目標としていることをつけ加えた。
 講演の最後に同氏は、「Africa’s time has come!」と閉めくくった。


アングロアメリカンCEO
シンシア キャロル氏による講演

3. おわりに
 森脇部長の講演の後には、地元新聞記者からのインタビューを受けたり、講演の評判を聞いた人たちがブースを訪れるなど、INDABAにおける講演発表はアフリカでのJOGMEC広報に一役買ったのではないかと思われる。その後も、INDABAで名刺交換した方からの問い合わせが続いている。
 また、今大会では各国の鉱業大臣の講演が行われ、各国要人も多数参加しており、初日にモーリタニアの石油・鉱業大臣Mohamed El Hacen氏がブースを訪れるなどJOGMECの活動がアフリカに徐々に浸透しつつあることが感じられた。


JOGMEC森脇部長による講演

JOGMECのブース

会場エントランス

*1 CMRとは、発がん性、変異原生、生殖毒性があるとされる物質
*2 同社は、平成19年11月16日、伊藤忠(株)と資源の研究・開発についての包括的戦略提携の覚書を結んだ。


ロイター記事:
Japan metals firm eyes joint ventures in Africa
Wed 6 Feb 2008, 11:14 GMT

CAPE TOWN, Feb 6 (Reuters) – Japan’s state-run oil and metals firm is looking for joint ventures in Africa, with South Africa and Botswana being key to its bid to diversify imports of copper and other metals, an official said on Wednesday

Japan, which is almost totally dependent on imports of copper, zinc and other metals, has taken stakes in a handful of projects in sub-Saharan Africa through its Japan, Oil, Gas and Metals National Corp. (JOGMEC).

“We are looking for joint venture partners for projects in Africa,” Hisamitsu Moriwaki, director general of JOGMEC’s metals exploration department, told Reuters on the sidelines of the Indaba African mining conference in Cape Town.

Moriwaki added that the Japanese firm was especially interested in mining-related investments in politically stable countries, including South Africa and Botswana.

JOGMEC is helping to spearhead Japan’s push into Africa, which is increasingly seen by the energy-hungry Asian nation as well as its rival, China, as an important supplier of natural resources.

(Reporting by Paul Simao, Editing by Michael Roddy)

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