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報告書&レポート

2008年6月12日 サンティアゴ事務所  平井浩二、企画調査部 白鳥智裕
2008年45号

ブラジルCarajás鉄鉱山、Sossego銅鉱山 現地調査報告


2008年3月1日~9日に世界最大の鉄鉱生産会社Vale(Companhia Vale do Rio Doce S.A)の代表的な鉱山であるCarajás鉄鉱山及びSossego銅鉱山、CBMM社のAraxaニオブ鉱山にて、「ブラジル現地調査」を実施した。同ツアーには、JOGMEC3名(本部2名、サンティアゴ事務所1名)の他に日本の商社や鉱山会社から合計5名が参加した。本稿では、Valeのブラジル北部システムとして機能するCarajás鉄鉱山とSossego銅鉱山について紹介する。なお、Araxaニオブ鉱山については、別報告にて紹介する。

1. Carajás地域
 Para州Carájas地域は、Brasiliaの北北東約1,100km、Belemの南南西約600kmに位置しており、もともとはブラジル中央部アマゾンのジャングル地帯であったが、金属鉱物資源の探査、開発によって開けた。
 なお、Carajás地域の地質などの詳細については、カレントトピックス「世界の金属鉱物資源開発ホットリージョン「ブラジル・Carajás地域」の現況」
(2007年第39号平成19年4月26日発行、http://www.jogmec.go.jp/mric_web/current/07_39.html)を参照。

Carajas鉄鉱山、Sossego銅鉱山位置図 (出典:Vale資料)
図1. Carajás鉄鉱山、Sossego銅鉱山位置図 (出典:Vale資料)

Carajas鉄鉱山及びSossego銅鉱山の位置 (出典:Vale資料)
写真1. Carajás鉄鉱山及びSossego銅鉱山の位置 (出典:Vale資料)

2. Carajás鉄鉱山
 鉱床は、27.5億年前に形成された始生代の火山岩-堆積岩シーケンスから構成されるItacaiunas超層群中(層厚計400m)の縞状鉄鉱層(BIF)であり、採掘は露天掘による。
 1967年にUS Steel社のブラジル子会社であるCompanhia Meridional de Mineracaoがヘリコプターで上空から探査中、森林の中にむき出しになっていた表土が発見に繋がった。生産は、1985年から開始し、2007年の鉄鉱石生産量は91.7百万t(Vale全体では、295.9百万t)である。2007年までの生産量累計は約10億tである。
 Carajás鉄鉱山からの鉄鉱石の販売量は2007年は87百万tである。販売先は、2004年までは、日本が最大の供給先であったが、2005年以降は中国が最大の販売先(30%)となっている。

図2. Carajas鉄鉱石の販売先 2007年

合計販売量:87百万t

図2. Carajás鉄鉱石の販売先 2007年

 銅鉱山の従業員数は、Vale正職員が約3,000人、請負職員が約10,000人である。365日24時間操業で、4グループ3シフト制(0:00~06:00、06:00~15:00、15:00~12:00)をとっている。また、鉱山内でのダンプトラックやイン・ピット・クラッシャー等の設備類は、中央管理室からコントロールされている。

写真2. Carajas鉄鉱山の中央管理室
写真2. Carajás鉄鉱山の中央管理室

3. Sossego銅鉱山
 Sossego銅鉱山は、Phelps Dodge社とのJVで、1996年に発見された。鉱床は、Itacaiunas超層群分布域に産する酸化鉄銅金鉱床(IOCG)で、採鉱法は露天採掘である。採掘の際には、岩盤が固いため、発破にはコストのかかるダイナマイトを使用している。
 Sossego銅鉱山の生産開始は、2004年4月であり、マインライフは17年で、埋蔵量は208.4万t(金属純分)、銅品位 約1%である。ブラジル全体の2007年の銅鉱石生産量(金属純分)は198.8千tであるところ、Sossego鉱山の2007年の銅鉱石生産量(金属純分)は118,000t(Vale全体の生産量は、284,000t)である。また、WBMSの資料によると、2003年のブラジルの銅生産量が26.3千tに対して、2004年の銅生産量が103.2千tと急激に伸びており、この年のSossego銅鉱山の生産量が73千であったことから、Sossego銅鉱山のインパクトが大きいことがうかがえる。
 Sossego銅鉱山は、アジア、欧州、ブラジルにある製錬所と長期契約を締結している。また、Sossego銅鉱山の操業開始により、2004年からブラジルは銅輸出国(2004年銅精鉱輸出量57.3千t(金属純分)(WBMS))となった。
SossegoのVale職員は約550人、請負職員は約1,800人である。

4. 輸送
 輸送は、Carajás鉄鉱山で産出された鉄鉱石は、山元にある破砕処理施設(一次~三次の破砕処理からなる。)を経由してシッピングヤードに運ばれる。そこから、Valeが管理・運営しているCarajás鉄道を利用して、大西洋岸のPonta da Madeira港まで輸送される。
 一方、Sossego銅鉱山で産出された銅鉱石は、4kmに及ぶベルトコンベヤで選鉱場まで運ばれ、そこで生産された銅精鉱は45tトラックを利用してParauapebasまで鉄道輸送される。その後、ParauapebasでCarajás鉄道に積み替え、Ponta da Madeira港まで輸送される。
 Carajás鉄道は、全長892kmの単線である。列車は、3つの機関車と220の貨車から成り、1列車当りの積載量は22,000tである。74時間で1往復により、Carajás鉄道は、1日に鉄鉱石255,000tを輸送する能力を有する。
 Ponta da Madeira積出港の諸元については、下表のとおりである。

表1. Ponta da Madeira積出港の諸元
  桟橋1 桟橋2 桟橋3
接岸可能な船の規模(重量千t) 420 155 250
最小喫水(m) 23 18 21
エアドラフト(m) 22.40 18 22
全長(m) 490 280 571
積込速度(t/h) 16,000 8,000 3×8,000
※船高(水面から船体構造物最先端までの高さ)

鉱山採掘からPonta da Madeira積出港までの流れ
写真3. 鉱山採掘からPonta da Madeira積出港までの流れ

5. 鉱業周辺環境整備
 Carajás地域での鉱山活動を行うに当たって、大気環境や水質のモニタリング、環境保護の支援、廃棄物管理、環境教育、現地コミュニティの支援等を行っている。
 具体的には、周辺にあるCarajás国立公園をブラジル環境庁Ibamaと共同での管理を行っていることや、Carajás鉄鉱山の関係者の居住地であるParauapebas市では警察以外ほとんどがValeによって運営、管理されている。また、Sossego銅鉱山の労働者の居住地Canaã dos Carajásは、もともとは寒村であったが、Valeによって大きく発展した町で人口は1万5,035人(2006年推定)である。また、Sossegoで働くVale社員の70%が、地元出身である。
 一方、過去には、Carájas鉄鉱山近くのXikrin先住民居住区から、約300人の先住民がCarajás鉱山区域内に侵入し、航空機や車両を要求したり(2005年11月)、非土地所有者活動グループがCarajás鉄道を7時間にわたって封鎖する(2008年4月)などにより鉱山生産活動や輸送がストップしたこともあった。

6. その他
 2008年、Valeは、Fazendão(ブラジル、鉄鉱石、年間生産量15.8百万t/年)、Itabiritos(ブラジル、ペレット、年間生産量7.0万t/年)、Samarcoの拡張(ブラジル、ペレット、年間生産量7.6t/年)、Goro(ニューカレドニア、年間生産量ニッケル6万t/年、コバルト4.6千t/年)、Paragominas Ⅱ(ブラジル、ボーキサイト、年間生産量4.5百万t/年) 、Alunorte 6 & 7(ブラジル、アルミナ、年間生産量1.9百万t/年)等のプロジェクトの操業開始、Sossegoの新湿式製錬プラント(年産カソード銅量1万t/年)等が予定されている。また、Valeの生産する鉄鉱石、ペレット、ニッケル、銅、アルミナ、石炭を2012年までに年間生産量を2007年の1.5倍から3倍にまで増産する計画である。
 ValeのHPでの資料から、中国の進出及び世界で原料消費における存在感を認識しつつも、今回の現地調査で応対してくれたValeの専門家によれば、中国は鉱石を買うに過ぎないビジネス相手でしかないと語った一方、Joint Venture等で共同で事業を行おうとすると51%の権益を確保する事などによって、オペレーターになろうとする傾向があると述べた。
 今回の現地調査で対応してくれたValeの担当者によれば、Valeは今後アフリカなど含め、世界各地へ進出していく方針と語り、今後更に多角化、多国籍化を図りつつ、発展していくものと考えられる。

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