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報告書&レポート

2008年8月14日 久保田博志※1、栗原政臣※1、鈴木哲夫※2、沼田安功※2報告
2008年59号

セミナー報告「ボツワナ鉱業大会」


  2008年7月23日、24日の両日、ボツワナ共和国の首都Gaborone(ハボロネ)市内において、ボツワナ鉱業大会「Botswana Resource Sector Conference」が、国内外の鉱業関係者約300名が参加者して開催された。本稿では、ボツワナ鉱業大会の非鉄金属関連事項について報告する。

1. はじめに
 今回のボツワナ鉱業大会には、豪州・カナダ・英国などから同国に進出している鉱山会社、探鉱ジュニア企業のほか、探鉱開発及び鉱山周りの各種サービスを行うコンサルタント企業やマイニング・サービス企業、リスク保険、投資ファイナンス企業など約300名が参加した。大会は、7月23日、24日の二日間にわたって開催され、初日は銅・ニッケルなどの非鉄金属と石炭・エネルギーを、2日目はダイヤモンドを中心にした講演が行われた。
 以下、ボツワナ鉱業大会に関して非鉄金属関連の講演を中心に報告する。

2. ボツワナ共和国の鉱業
ボツワナ鉱業は、国内総生産(GDP)の40.7%(2006/07年度)(1966年の独立当時はわずか1%)を占める同国経済の中心的存在である。その中でも同国輸出額の70%以上をダイヤモンドが占めている。2007年の銅-ニッケルマットの生産量は54,000tであった。1)
 ダイヤモンドの探鉱ライセンス数は2006年が342件、2007年が358件と微増であったのに対し、ダイヤモンドを除く鉱物資源の探鉱ライセンス数は、2006年が212件、2007年が340件と大きくその数を増やしており、銅・ニッケル・コバルト・金、更には石炭、ウランの開発・探査が活発化している。1)
 ボツワナのダイヤモンドは、1967年にOrapa鉱床が発見されて以来、品質・量ともに世界トップクラスで、De Beers(南ア資本)と同国政府との協力*1のもと生産が行われている。現在の主要鉱山は、Jwaneng、Lethlakane、Orapa*2の3鉱山である。2)
 一方、ベースメタルは、同国東部Selebi-Phikwe鉱山において1971年よりBCL社(Bamangwato Concessions Ltd.)がニッケル鉱石の採掘を開始、併設する製錬所では銅・コバルトを含有するニッケルマットを年間約70,000t(68,637t/年(2005年))を生産しているが、マインライフは2011~12年頃までとされている。3)

3. ボツワナ鉱業大会の概要
 今回のボツワナ鉱業大会の講演件数は約40件であり、その内、銅・ニッケルなど非鉄金属関係(ウランを含む)9件、ダイヤモンド関係10件、石炭・エネルギー関係6件、市況・経済状況・金融・保険等7件、その他4件と、同国の主要産業であるダイヤモンド及び銅・ニッケルなどの非鉄金属に関する講演、鉱業及び経済発展に不可欠な電力をはじめとするエネルギーに関する講演が多かった。
 展示ブースは、同国で活動する豪州やカナダの探鉱ジュニア企業のほか、分析機器メーカー、リスク保険、プロジェクト管理企業などから約20件が出展された。
また、大会初日には、Ponatshego H.K. Kedikilwe鉱物エネルギー水資源大臣が講演を行うなど、同国の輸出額の約8割を占める主要産業である鉱業とそれに対する海外投資への期待の高さを示している。

4. ボツワナ共和国で活動する鉱山会社・探鉱ジュニア企業
 今回の鉱業大会の講演及び展示ブース発表から、ボツワナ共和国における鉱山会社・探鉱ジュニア企業の活動を紹介する。

(1)Norilsk Nickel(本社:モスクワ)
 Norilsk Nickelは、Tati Nickel Mining Company(同社権益85%、政府15%、以下Tati鉱山)を経営。同社は、ボツワナで2番目の大都市Francistown市の東15kmにPhoenix露天掘硫化ニッケル鉱山、Selkirkニッケル鉱山、Densen Media Separation(DMS)プラント(12百万t/年)、選鉱場(5百万t/年)を操業している。4)
Selkirk鉱山は1989~2002年間に坑内掘で100万t以上の鉱石が採掘された。2006年からは露天掘によって鉱柱回収が進められており、同資源量は230.6万t、品位Ni 0.24%である。4)
 Tati鉱山のニッケル精鉱は、同鉱山の南200kmのSelebi-Phikwe製錬所(BCL社)で製錬されJinchuan社(中国)へ輸出される。また、ニッケルマットは、Empress精錬所(Rio Tinto、ジンバブエ)とNikkelverk精錬所(Xstrata、ノルウェー)で精練される。4)
 同鉱山では、現在、より付加価値の高いニッケル地金を生産するため620百万US$を投資して、湿式精錬技術“Activox”によるニッケル精錬所Botswana Metals Refineryの建設が2009年の操業開始を目標に進められている。生産計画量は、現在の14,500tから22,000t規模(精鉱中のニッケル金属含有量)へと倍増、同国のGDP1%増加、輸出額2.5%増加に貢献すると言われている。2),5)

表1. Tati鉱山の生産量(2007年)
鉱種 生産量
ニッケル(t) 15,129
銅(t) 11,395
白金(t) 0.3
パラジウム(t) 1.7
出典)Norilsk Nickel Web-site(http://www.nornik.ru/)に加筆
表2. Tati鉱山の埋蔵量・資源量
出典)Norilsk Nickel Web-site(http://www.nornik.ru/)
埋蔵量 鉱量(百万t) 品位Ni(%) Ni金属量(t) 品位Cu(%)
Phoenix 106.0 0.28 296,900 0.21
Selkirk 184.7 0.25 453,300 0.22
資源量        
Phoenix 106.2 0.30 315,400 0.22
Selkirk 230.6 0.24 553,400 0.21

(2)African Copper社(本社:ロンドン、上場*3:AIM、TSX、BSE)
 African Copper plc社は、ボツワナ第二の都市Francistownの北西120kmにおいてMowana銅鉱山(Dukwe銅プロジェクトを2007年に改名)を開発中。建設工事は2008年7月にほぼ完了、2008年第3四半期には商業生産開始を予定している。6)
 同鉱山は、埋蔵量14.8百万t、品位Cu 1.11%。露天掘、年間100万tの鉱石を処理(200万tまで拡張予定)、銅生産量は当初5,500t(2008年)から29,000t(2012年)に拡張予定。操業期間は7年7)(周辺探鉱による新たな鉱量獲得により20年を目指す)8)。生産コストは1.49~2.48US$/tである。7)
 Dukwe地区では400年前から採掘がされていたが、近代的な探査は1950年代に入ってから行われ、1977年にはFalconbridge Explorations (Botswana) Ltd.(現Xstrata)が権益を取得、プレFSまで実施したが、1991年に失効、その後、何社かを経て2004年にAfrican Copper plcが権益を取得した。
 同鉱床は、同国西部カラハリ銅鉱地帯(Kalahari Copper Belt)の原生代の堆積岩起源の変成岩類(Matsitama Supergroup)を母岩とした後成的な石英-炭酸塩脈中に胚胎する銅鉱床である。6)

(3)ACAP社(本社:メルボルン、上場*3:ASX、BSE)
 ACAP社は、Seroweの北西150kmにおいてLetlhakaneウラン鉱床を探鉱開発中で、2008年第3四半期に予察評価(Scoping Study)を完了し、2011年の生産を目標としている。9)
 同鉱床は、Limpopo mobile beltに位置し、原生代の基盤を不整合に覆うKaroo Supergroupの細粒砂岩に胚胎する。鉱床の胚胎層準は地表下15~50m。資源量280百万t、ウラン品位(U3O8)158ppm、含有量(U3O8)44,690t。
 ウラン鉱床がナミビア、南ア、最近ではザンビア、タンザニア、マラウィなどでも発見されており、同社は、同様の地質が分布するボツワナにおいてウラン鉱床が存在するとして、カルクリート型、砂岩型(古河川等)をターゲットとして、同国北西部、Sua、Mea、Makgadigadi地区などにおいて探査を実施している。10),11),12),13)

(4)Discovery Metals社(本社:ブリスベン、上場*3:ASX、AIM、BSE)
 Discovery Metals社は、同国西部カラハリ銅鉱床帯(Kalahari Copper Belt)において、Boseto銅鉱山(旧称:Maun)開発を実施中。2008年にはプレFSを完了し、2009年にはバンカブルFSを開始、18か月間の建設工事を経て、2011年の操業開始を計画している。14)
 同鉱床は、予想・概測鉱物資源量49.0百万t、品位Cu 1.2%+Ag 16.4g/t(Zeta、Plutus、Petra各鉱体の計:カットオフCu 0.6%)、露天掘で計画されており、鉱石処理量2百万t/年の選鉱場がほぼ完成している。14),15)
 同社は、同鉱床帯において銅・銀鉱化作用が期待される延長300kmにわたって連続する範囲に、総面積12,100km2に及ぶ14鉱区を保有し、更なる資源量獲得のための探査を継続中である。14)
 また、同社は、同国東部においてDikoloki硫化ニッケル鉱床探査(鉱区面積612km2、資源量4.1百万t、品位Ni 0.7%、Cu 0.5%、PGE 1.5g/t(カットオフNi 0.5%))も実施している。14)

表3. Boseto銅鉱床の予想・概測鉱物資源量
鉱体名称 資源量(百万t) 品位Cu(%) 品位Ag(g/t)
Petra 4.5 1.1
Plutus 14.5 1.3 12.6
Zeta 30.0 1.2 18.2
Total 49.0 1.2 16.4
出典) Discovery Metals Ltd. Web-site(http://www.discoverymetals.com.au)
  Botswana Resource Center Conference資料

(5)Albidon Ltd.(本社:パース、上場*3:ASX)
Albidon Ltd.は、ボツワナ東部のSelebi-Phikweニッケル地帯においてSunnyside硫化ニッケル鉱床の探鉱を実施中。ボーリング調査によって鉱化作用(品位Ni 1.3%、Cu 0.37%、Co 0.08%など)が走向方向400m以上に確認されており、ボーリング調査が継続されている。17)
 また、同社は、ザンビアの首都Lusakaの南60kmにおいてMunaliニッケル・銅・コバルト鉱山の生産を2008年6月に開始した。最初に開発されたEnterprise鉱体(硫化ニッケル)は、埋蔵量9.1百万t、品位Ni 1.23%、Cu 0.2%、Co 0.07%、Pd 0.9g/t、Pt 0.9g/t19)、坑内掘により粗鉱生産量120万t/年、生産量10,000~11,000t/年(精鉱中金属量)19)が予定されている。精鉱は、Jinchuan Group(中国)が引取る(Off take)。18)
 同社は、タンザニアのSongeaニッケルプロジェクト(BHP Billiton、Goldstream、LonminとのJV)、チュニジアのNefza亜鉛プロジェクト(ZinifexとのJV)などアフリカでの探鉱活動を展開している。19)

(6)Botswana Metals社(本社:メルボルン、上場*3:ASX)
Botswana Metals社は、ボツワナ東部のSelebi-Phikweニッケル地帯においてMaibele North、Mmamanaka、Sampowane、Crescent硫化ニッケル鉱床の探鉱を実施中。
 Maibele North鉱床は、1950年代にボツワナ共和国地質調査所(DGS)によって探査が行われ、1990年初頭にはFalconbridgeによるボーリング調査が行われ、硫化ニッケル・白金鉱化作用が確認されている。
 鉱床は、変形を受けた超塩基性岩及び下盤の片麻岩中に胚胎する。鉱化はSelebi-Phikwe鉱床と同様のもので、塊状・鉱染状の硫化物鉱化(Pentlandite(Ni)、Chalcopyrite(Cu)、Phyrrhotite(Fe))の双方から成る。20), 21)

4. おわりに
ボツワナ経済の中心的な存在であるダイヤモンド鉱業に加え、中国・インドなど新興国需要の急増、近年の金属価格の高騰などを背景に、豪州・カナダ・英国の探鉱ジュニア企業などによる銅、ニッケル等の非鉄金属鉱床を対象とした探鉱の活発化を印象付けるボツワナ鉱業大会であった。


図1. ボツワナ共和国の主要鉱業プロジェクト

*1 Debswana Diamond Company社(現在の権益は政府50%、De Beers社50%)
*2 1971年にOrapa鉱山が生産を開始、生産量は2003年に16.3百万カラット(3,260kg)に達している。
*3 ASX:豪州証券取引所、AIM:ロンドン証券取引所、TSX:トロント証券取引所、BSE:ボツワナ証券取引所


参考文献等
1) “Interest in Botswana minerals peaks”, Beneath Botswana, May 2008, p21
2) “The Vast wealth of Botswana”, Beneath Botswana, May 2008, p32
3) “The Mineral Industry of Botswana”, USGS, 2005 Minerals Yearbook (August 2007), p5.1
4) Norilsk Nickel Web-site, http://www.nornik.ru
5) “Norilsk gets its teeth into Activox”, Australia’s Paydirt, Volume 1, Issue 143, p46-47
6) “Mowana copper mine into the final straight”, Australia’s Paydirt, Volume 1, Issue 143, p30-34
7) African Copper plc Web-site, http://www.african copper.com
8) “African Copper Nears production”, Beneath Botswana, May 2008, p36
9) “A-Cap going for uranium tones in Botswana”, Australia’s Paydirt, Volume 1, Issue 143, p36-38
10) Quarterly Report to 30 June 2008, A-Cap Limited
11) “Botswana Resource Conference Presentation”, 22 July 2008, A-Cap Resources Limited
12) Exploration Drilling at Serule, 21 July 2008, A-Cap Resources Limited
13) A-Cap Resources Limited Corporate Profile, 4 February 2008
14) “Fast Tracking Development in the Kalahari Copper Belt”, Discovery Metals Ltd
15) “Discovery Metals Opens Office”, Beneath Botswana, May 2008, p36
16) Discovery Metals Ltd Web-site, http://www.discoverymetals.com.au
17) “Albidon- Nickel Hit in Botswana”, Beneath Botswana, May 2008, p36
18) “The best of both worlds at Munali”, Australia’s Paydirt, Volume 1, Issue 143, p24-29
19) Albidon Ltd Web-site, http://www.albidon.com
20) “Botswana Resource Conference Presentation”, 22 July 2008, Botswana Metals Ltd
21) “Amendment to earlier announcement lodged today 16 April 2008-Update of nickel exploration in Botswana”, 16 April 2008, Botswana Metals Ltd

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