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セミナー報告「Africa DownUnder Conference」-アフリカ大陸で活躍する豪州系探鉱ジュニア企業-

2008年9月4日、5日の両日、WA州Perth市内において、アフリカ鉱業探鉱投資セミナー「Africa DownUnder Conference」が、アフリカ各国政府、探査ジュニア企業、鉱山会社など鉱業関係者約900名が参加者して開催された。本稿では、「Africa DownUnder Conference」の概要を報告する。 |
1. はじめに
2008年で6回目となるアフリカ鉱業探鉱投資セミナー「Africa DownUnder Conference」には、鉱山会社、アフリカ各国政府鉱業関係者、投資家、銀行・保険会社等の金融関係、経済アナリスト、報道関係など約900名が参加した。
講演は探査ジュニア企業とアフリカ各国政府鉱業関係者を中心に約50件、展示ブースは鉱業コンサルタント企業、鉱業エンジニアリング企業のほか、ボツワナ政府、南ア政府など約100件に及び、アフリカ大陸以外のアフリカ鉱業探鉱投資セミナーでは最大、豪州国内の鉱業探鉱投資セミナーでも最大規模のものとなった。
2. Africa DownUnder Conferenceの概要
1)講演の傾向
今回参加した探査ジュニア企業等の探鉱・開発プロジェクトが最も多かったのは、南ア、次いでボツワナ、ザンビア、タンザニア、ナミビア、DRCコンゴ等の国々である。これらの国々はSADC(南部アフリカ開発共同体)に属しており、全体のプロジェクトの約80%を占めている。
鉱種別では、金、銅、ウラン、ミネラルサンド、白金族、石炭と続き、更にコバルト、ニッケルその他レアメタル(タンタル・ニオブ・クロムなど)が大きな割合を占めている。
また、プロジェクトの開発段階では、初期探鉱、探鉱、進んだ探鉱、操業がそれぞれ全体の20%を占め、FS、プレFS、建設中がそれぞれ数%となっている。
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データ)Africa DownUnder 2008資料 同参加企業Webサイト MINMETデータベース |
図1. Africa DownUnder 2008参加企業のプロジェクト位置図 |
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データ)Africa DownUnder 2008資料 同参加企業Webサイト MINMETデータベース |
図2. 国別プロジェクト数(国名、件数、割合) |
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データ)Africa DownUnder 2008資料 同参加企業Webサイト MINMETデータベース |
図3. 対象鉱種 |
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データ)Africa DownUnder 2008資料 同参加企業Webサイト MINMETデータベース |
図4. 開発段階別プロジェクト数(開発段階、件数、割合) |
2)展示ブース
探査ジュニア企業や鉱業サービス企業の展示に混じって、アフリカ各国政府鉱業機関の展示が目を惹いた。南アは、鉱物エネルギー省(Department of Minerals and Energy, South Africa)・地質調査所(CGS)・鉱業技術研究所(MINTEK)が展示ブースを連ねアフリカ最大の鉱業国としての存在感を示していた。
また、ナイジェリア、ザンビアは、改定された鉱業法(Nigerian Minerals and Mining Act, 2007及びMines and Minerals Development Act No.7 of 2008)を紹介していた。
一方、資源メジャーとして唯一の参加となったAnglo American(英・南ア資本)は、同社が開発した低温超電導素子を用いた電磁気探査システム(Low Temperature SQUID)を大きく紹介していた。
3.アフリカ各国における探査ジュニア等企業の探査活動状況
1)ボツワナ
ボツワナでは、同国東側の東部アフリカ・ニッケルベルトにおいて、Discovery Metals Ltd.(本社:Brisbane)がDikolotiニッケル・PGE鉱床、Albidon Ltd.がSunnyside硫化ニッケル鉱床(Selebi-Phikwe地区)の探鉱を実施している。その他に、Boseto銅鉱床探査を同国西部で実施している。
ウランは、A-Cap Resources Ltd.(本社:Perth)が、Letlhakaneウラン鉱床のプレFSを実施し2011年の生産を目標としているほか、Bolau、Mea、North Uray、South Uray、Suaなどの探鉱を実施している。
なお、ボツワナ国内の探鉱及び鉱山開発については、平成20年8月14日付け、カレント・トピックス2008年59号「ボツワナ鉱業大会」において詳しく記述している。*1
2)ザンビア
ザンビアでは、カッパーベルト(Copper belt)での銅・コバルト・ニッケル探鉱開発に加え、東部及び南部でのニッケル、ウランなどの探査が行われている。
カッパーベルトでは、Equinox Minerals Ltd.(本社:Perth)が、Lumwana銅・コバルト・ウラン鉱山*を建設中、2008年中には建設を完了し、2009年にはフル生産を開始、アフリカ最大級の銅鉱山となる見込みである。*2同鉱山周辺などカッパーベルト沿いで探鉱を実施している。
一方、東部アフリカ・ニッケルベルト(The Eastern Nickel Belt)では、Albidon Ltd.(本社:Perth)が、Munaliニッケル・コバルト・銅・PGE鉱山**を開発しているほか*2、Chikani、Luwanya地区で銅・ニッケルを対象とした探査を実施している。*3また、Zambezi Resources Ltd.(本社:Perth)は、ルサカ東部地域でCheowa銅・金鉱床***のプレFS、Chalimbana、Kangaluwi-Chisawa、Mulofwe銅・金鉱床等の探鉱を、Chipata地域で金の初期探鉱を実施している。*4
ウランでは、Globe Metals & Mining Ltd.(本社:Perth)が、プロジェクトを保有している。*5
* Equinox Minerals Ltd.権益100%、年間生産能力172,000 t、埋蔵量319.4百万t、品位Cu 0.73%、マインライフ37年、ウラン資源量3.3百万t、U3O8 0.123%、U3O8 32,900t。
** Albidon Ltd. 100%、資源量(Enterprise, Voyager鉱体)10.3百万t、品位Ni 1.2%、Cu 0.2%、Co 0.07%、Pd 0.6g/t、Pt 0.3g/t、年間生産能力 Ni 10,000~10,500t、Cu 1,650t、Co 480t、PGM 18,000oz(0.6t)。
*** Zambezi Resources Ltd. 100%、資源量(現状)2.9百万t、品位Cu 1.05%、Au 0.22g/t(目標資源量は7~10百万t)
3)ナミビア
操業中の鉱山には、Paladin Energy Ltd.(本社:Perth)のLanger Heinrichウラン鉱山*,*6、Anglo AmericanのSkorpion亜鉛鉱山**,*7、Exxaro Resources Ltd.(本社:南ア・Pretoria)のRosh Pinah亜鉛・鉛鉱山***,*8がある。
探鉱は、ウランでは、Deep Yellow Ltd.(本社:Perth)が、現地子会社Reptile Uranium Namibia(Pty)LTD.を通じてReptile、Tumas、S-Bend(BA)、Aussinsn、Tubas、Magnetiteの各ウラン鉱床地区の探査を実施している。*9
ベースメタルでは、Mt.Burgess Mining N.L.社がボツワナにおいて自社のKihabe亜鉛・鉛鉱床鉱区の西側に隣接しているTsumkwe地区でベースメタルとダイヤモンドを対象にした探査鉱区を保有している。*10
* Paladin Energy Ltd. 権益90%、生産能力3O8 3.7百万lb(2008年末)、埋蔵量25.37百万t、品位U3O8 0.067%、U3O8 17,041t、マインライフ17年。
** Anglo American 100%、2007年生産量151,000t、埋蔵量11.5百万t、Zn 11.4%、1.312百万t
*** Exxaro Resources Ltd. 93.3%、亜鉛精鉱年産量1.26百万t、埋蔵量8.3百万t、品位 Zn 7.5%、Pb 1.9%、Zn金属量622,000t、Pb金属量160,000t
4)DRCコンゴ
Anvil Mining Ltd.(本社:Perth)は、カントリーリスクの高い同国に他社に先駆けて進出。2002年には同社にとって同国最初の鉱山となるDikulushi銅・銀鉱山*が生産を開始、2005年にはMutoshi銅鉱山**を、2007年には現在、同社の主力鉱山となっているKinsevere銅・コバルト鉱山***が操業開始した。また、探査も積極的に実施している。*, *11, *12
その他では、Anglo Americanがコバルト・銅・亜鉛の探鉱を、Tiger Resources Ltd.(本社:Perth)がコバルト・銅・ウランの初期探鉱を実施している。
* Anvil社権益90%、2007年生産量10,066t(精鉱中銅含有量)、Cu 7.07%、資源量1,104,000t、品位 Cu 7.01%、Ag 179g/t
** Anvil社権益80%、Gécamines 20%、2007年生産量27,045t(精鉱中銅含有量)、品位Cu 5.2%、資源量3,124,000t、品位Cu 3.57%、Co 0.14%、廃さいのSxEwを含む)
*** Anvil社権益95%、年間生産目標60,000t(精鉱中銅含有量)、Cu 5.2%、資源量33.256百万t、品位 Cu 3.68%、Co 0.20%、第2開発段階ではSxEwを実施予定)
5)タンザニア
同国では、金に加えウランを主体とした探鉱・開発が行われている。金は、Resolute Mining Ltd.が、Golden Pride金鉱山*を操業しているほか、Nyakafurut金鉱床**とこれらの周辺地域で探鉱を実施している。*13また、Sub-Sahara Resources NL社が、Nyanzaga-JV***、Lake Victoria-JV、Nyakafurut-JV金鉱床等の鉱区を保有している。*14,*15
ウランは、Uranex NL社が、Bahi-Thatcher Soakウラン鉱床のプレFSを開始****、Mkuju-Songeaウラン鉱床地区で*4、また、Globe Metals & Mining Ltd.がMhukuruウラン鉱床の探鉱を実施している。*16
また、ベースメタルでは、Sub-Sahara Resources NL社が、Western Riftニッケル・PGE・金・ウラン鉱床探鉱を実施している。*14
* Resolute Mining Ltd.権益100%、生産量2007年度138,421oz(4.3t)、2006年度 145,043oz(4.5t)、埋蔵量13.1百万t、品位 U3O8 1.6g/t、Au金属量687,000oz(21.4t)。1998年から約1.4百万oz(44t)
** 資源量19.4百万t、1.7g/t、Au金属量1.1百万oz(34t)
*** 4.5百万oz(140t)
**** Uranex NL社権益100%、資源量60百万t、品位U3O8 151 ~ 218ppm、U3O8 22百万lb(9,979t)、 (C1, Playa A, Playa E) 2010年生産開始予定。
6)マラウィ
Paladin Energy Ltd.(本社:Perth)が、同国北端でKayelekeraウラン鉱山*を建設中、2009年初頭の生産開始を目指している。*17
その他に、Globe Metal Ltd.(本社:Perth、Globe Uranium Ltd.より改名)が、プレFS段階のKanyikaニオブ・タンタル・チタン・ウラン・ジルコン鉱床**のプレFSをはじめとしてウラン、ニオブ・タンタル、レアアースの初期探鉱~探鉱プロジェクトを行っている。*18また、Albidon Ltd.(本社:Perth)が、Mpembaニッケル・PGE鉱区を保有している。*19
* Paladin Energy Ltd権益100%(政府取得の可能性あり)、初期投資額200百万US$, 埋蔵量10.46百万t、品位 U3O8 1,088ppm、U3O8金属量11,377t、2007年4月に採掘許可取得、2008年末までに建設完了予定。
** 資源量56百万t、品位 Nb2O5 2,600ppm、U3O8 70ppm、Ta2O5 120ppm、ZrSiO4 4v,800ppm
7)南アフリカ共和国
ジュニア探査企業等の多くは、PGE(白金族)関連プロジェクトに表1のとおり参入している。
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データ)MINMET |
4. おわりに
Africa DownUnder Conference 2008の参加企業の多くは豪州の探鉱ジュニア企業であり、アフリカへの関心の高さが窺える。また、これら企業の進出先は、南ア、次いでボツワナ、ザンビア、タンザニア、ナミビア、DRCコンゴなど集中しており、アフリカ地域における鉱物資源探査の中心が南部アフリカ地域であることを再認識させられた。
参考文献等
*1 JOGMEC, 平成20年 8月 14日付け、カレント・トピックス2008年59号「ボツワナ鉱業大会」
*2 Equinox Minerals Ltd. Webサイト
http://www.equinoxminerals.com/Development/Lumwana-Project
*3 Albidon Ltd., Albidon annual Report 2008
*4 Zambezi Resources Ltd. “Zambezi Realising Shareholder Value”(2008 AMEC National Mining Congress : Perth – May 2008)
*5 Globe Metals & Mining Ltd. Webサイト
http://www.globemetalsandmining.com.au/subproj.php?mid=27&title=Other%20Projects
*6 Paladin Energy Ltd. “Langer Heinrich Uranium Project, Namibia, Southern Africa, In Production”
*7 Anglo American plc Webサイト
http://www.angloamerican.co.uk/aa/
*8 Exxaro Resources Ltd. Annual Report 2007
*9 Deep Yellow Ltd. Webサイト
http://www.deepyellow.com.au/projects/namibia.html
*10 Mt Burgess Mining N.L.社, “Courses for Resources",
(Presentation in Africa DownUnder Conference, 4-5 September 2008)
*11 Bill Turner, CEO and President, Anvil Mining Ltd.,”Facing and Overcoming the Challenges Working in the DOC”(Presentation in Africa DownUnder Conference, 4-5 September 2008)
*12 Anvil Mining Ltd. Webサイト
http://www.anvilmining.com
*13 Resolute Mining Ltd. Webサイト
http://www.resolute-ltd.com.au/ex_tanzania.html
*14 Sub-Sahara Resources NL社 Webサイト
http://www.subsahara.com.au/projects/proj-4.shtml
*15 Sub-Sahara Resources NL社, “Eritrea and Tanzania-Sub-Sahara’s Perspective Africa Down Under 2007“(Presentation in Africa DownUnder Conference 2007)
*16 Mr J Cottle, Uranex NL, “Africa DownUnder Conference Presentation”, (Presentation in Africa DownUnder Conference 2008)
*17 Paladin Energy Ltd.Webサイト
http://www.paladinresources.com.au/PROJECTS/Kayelekera/tabid/62/Default.aspx
*18 Dr. Julian Stephens, Exploration Manager, Globe metals and Mining, Investor Update
“An Emerging African Resources Company” (Presentation in Africa DownUnder Conference, 4-5 September 2008)
*19 Albidon Ltd., Albidon Annual Report 2008, p7

