報告書&レポート
南ア・科学技術展示会INSITE 08参加報告
1. はじめに
2008年9月14日(月)、15日(火)及び16日(水)の3日間、南ア・ヨハネスブルグのサントン・コンベンションセンターにおいてINSITE 08(第3回南アフリカ科学技術展示会:International Science、Innovation&Technology Exhibition)が開催された。DST(南ア・科学技術省の科学技術局:Department of Science and Technology)が主催し、2004年から2年ごとに南アの科学技術の普及を目的に開催している。この3日間を通して約6,000名の訪問者があったと言われている(2004年第1回5,889名、2006年第2回6,298名)。
このINSITE 08にボツワナ・地質リモートセンシングプロジェクト及びAIST((独)産業技術総合研究所)と共同でCGS(南ア地質調査所)との南ア・レアアース鉱物資源ポテンシャル調査の紹介・普及を兼ねてJOGMECは初参加した。
写真1. JOGMECブース〔ボツワナ・地質リモートセンシングセンターの活動のポスター展示〕
2. 参加の背景
JOGMECは、2007年11月の甘利経済産業省大臣の南ア訪問をきっかけに、CGS(南ア地質調査所:Council for Geoscience)とAISTとともに南アのレアアース鉱物資源ポテンシャルを評価するため、カラハリ・マンガン・フィールドのマンガン鉱石中のレアアース調査などの地質調査を実施している。JOGMECはこのプロジェクトを実施するに当り、在京の南ア大使館とは密接な連絡を取り合いながら進めている。
現在の在日南ア大使館のNgubane(ングバネ)大使(Dr. Baldwin S. Ngubane)は前科学技術省大臣からの大使起用であり、Masoka(マソカ)公使(Mr. Cecil B. Masoka)も科学技術局出身の外交官である。INSITE 08を実施するに当り、在日南ア大使館は、南アに日本の科学技術を紹介するため政府関係機関を中心に参加を広く呼び掛けた。JOGMECもこの7月にボツワナで地質リモートセンシングセンターを開所し(カレントトピックス08-57号「JOGMECボツワナ共和国・地質リモートセンシングセンターの開設」)、また、この2月からAIST及びCGSとの共同調査であるレアアース鉱物資源ポテンシャル調査を実施していることから、当方のプロジェクトの紹介・普及のため参加することとした。
南アは有望な中進国として持続的な経済発展が期待される国であり(2007年GDP成長率5.3%)、南ア政府は高い失業率(2007年9月時点で23%)の改善と共に人材育成に力を入れている。産学官の協力により、教育・技術レベルを高め、質の高い労働力を確保するため、学術・技術面での人的交流を活発化することによる人材育成が急務とされている。
3. 展示会・講演会
約200のブースが設けられ、バイオテクノロジーやアグリカルチャー、ロボット工学、通信、環境分野での科学技術関係の展示が主であった。
資源関係では、日本のAISTとJOGMEC以外では、南アのCGSとMINTEKのブースがあった。CGSもMINTEKも各機関の活動概要をポスターで展示し、そのパンフレットを配布していた。
国別では、地元の南アからの政府関係機関、企業及び大学等の参加が一番多いが、展示会場で目立ったのは中国である。一角を24のブースが占め、漢方薬を含むバイオテクノロジー、通信・電気・機械などの展示がなされていた。その次に規模が大きかったのはドイツ(8つ)であった。
日本はドイツに次ぐ5機関・大学からの参加があった。JOGMECのほかAIST、JAMSTEC((独)海洋研究開発機構)、JST((独)科学技術振興機構)、東京農工大の5つである。
このほか、会場内に設けられた小ホールでは15日の午後と16日に、ロボット、バイオテクノロジー、コンピューター関係の講演会が行われた。日本からは横浜市立大学の関光准教授が南ア特有の植物を利用したゲノム関係の講演をされた。
JOGMECはAISTとの壁を取り払い、ボツワナ・地質リモートセンシングセンターの説明及び実際のトレーニングの様子の写真をポスター展示をし、リモセンセンターのパンフレットの配布を行った。併せて“JOGMECの全体活動”と“北上川を守り続けて”と題した旧松尾鉱山での新中和処理施設のDVDを放映した。AISTでは我々のCGSとの共同調査である南ア・レアアース鉱物資源ポテンシャル調査、南ア・ローズ大学との共同研究(硫化鉱物中の金の賦存状況研究)についてポスター展示し、セラピーティックロボット“パロ”(やさしくなでるとポジティブな表情、鳴き声を、たたくとネガティブな表情、鳴き声を上げるアザラシのぬいぐるみロボット)を持ち込んでいた。この“パロ”は、小・中・高校生を始め老若男女問わず来訪者に人気が非常に高かった。
次世代の南アを背負う子供たちに科学の素晴らしさ、技術の大切さを伝えるため、小・中・高校生の訪問者がほとんどであった。
写真2. JOGMECブースに来た高校生たち
4. おわりに
INSITE 08は科学技術の紹介・普及活動のための科学技術展示会であり、カナダのPDAC、南アのINDABAなどの資源関係の鉱業大会とは違い、探鉱プロジェクトの情報交換や案件の商談を実施するコーナーなどはなかった。
今回JOGMECブースを訪ねてきた人の中でボツワナ・通信科学技術省の方がいた。ボツワナの森林火災の状況をリモセンで識別できるかボツワナ大学博士課程で研究しているという。名刺を交換したら、早速我々のリモセンセンターへの来訪があり、半日間の講義を熱心に聴講していた。我々の活動が資源分野以外でも口コミで伝わっていけば新しい分野でのリモセンセンターの活用に結び付くものと期待される。
写真3. JOGMECブース(AISTとの間の壁を取除いている)
写真4. AISTの展示品の人気№1、アザラシぬいぐるみ人形ロボット
写真5. 最大規模の中国ブース群