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セミナー報告「Excellence in Exploration &Mining 2008」

9月14~16日の3日間、シドニー市内で探査鉱業投資セミナー「Excellence in Exploration & Mining 2008」が開催された。 |
1. はじめに
「Excellence in Exploration&Mining」は、豪州国内外の鉱山会社、探鉱ジュニア企業、投資銀行、メディア等が参加して毎年9~10月のうちの日曜日から火曜日までの3日間で開催されている。初日を個人投資家の日(Private Investor Day)と称して日曜日に開催し、初日の講演が無料で聴講できるのが特色となっており、セミナー初日には、一般投資家向けのプログラムが組まれ、最近の資源ブームを受け、2007年以上に多くの個人投資家が来場した。
2. 探査鉱業投資セミナー「Excellence in Exploration &Mining 2008」の概要
2008年の「Excellence in Exploration &Mining 2008」は、参加企業・団体等77社、鉱山会社及び探鉱ジュニア企業による講演46件、アナリストや有識者による講演32件、展示ブース70件となり、参加者は800名以上に達した。2007年はAPEC(アジア太平洋経済協力会議)と合わせて開催したことにより例年以上の600名以上の参加者を得たが、2008年は2007年の参加者数を上回る盛況ぶりであった。
参加者の業種別の割合は、一般投資家が全体の40%、鉱山会社及び探鉱ジュニア企業が30%と大多数を占めたほか、出版・マスコミ8%、仲介業者7%、銀行3%、政府関係機関3%等であった。
参加者の95%が豪州からの参加で、その他に、ニュージーランド、北米(カナダ、アメリカ)、アジア(日本、中国、フィリピン、ウズベキスタン)、欧州・アフリカ(フランス、南ア、マリ、ガーナ)からの参加があった。
講演を実施した鉱山会社及び探鉱ジュニア企業のプロジェクト対象国の割合(重複あり)は、豪州国内64%(41件)、アジア地域11%(7件)、欧州・アフリカ地域8%(5件)、北米8%(5件)、中南米6%(4件)であった。
講演を実施した鉱山会社及び探鉱ジュニア企業のプロジェクト対象鉱種の割合(重複あり)は、金21%(36件)、銅19%(32件)、亜鉛・鉛12%(21件)、ニッケル11%(19件)、ウラン8%(13件)、銀7%(12件)、レアアース・タングステン・錫・レアメタル14%(23件)、その他8%(13件)であった。
最近の豪州企業の探鉱傾向は、2007年に引続き、豪州国内や近隣のアジア・大洋州地域に加え、欧州・アフリカ、北米、中南米地域等全世界にわたる活動が行われていることと、金、銅を中心としながら、多様な鉱種の探鉱活動が行われていることが挙げられる。
一方、アナリストや有識者による講演では、豪州の鉱業概観、需給予想に関する講演を始め、一般投資家向けの講演(例えば、「Tips for Mum and Dad Investors」と題したGoogle検索システムを利用した投資に関する情報検索方法の講演)から、鉱山会社及び探鉱ジュニア企業を対象とした特別セッションまで、幅広い参加者を対象とした内容であった。特別セッションの概要は以下のとおりである。
排出権取引(Carbon trading)セッションでは、排出権取引導入に向けた取り組み、排出権取引が資源分野に与える経済的影響といった国内動向や予想される制度に関する講演、鉱業分野で競争力を維持するための方策についての実践的な講演が行われたほか、Adelaido大学のIan Plimer教授による「Why bother?」と題した講演では、気候変動データ等から排出権取引そのものに疑問を投げかける内容の発表があり、多くの参加者が詰めかけた。
鉱業分野における危機管理(Managing risk in the mining sector)セッションでは、近年プロジェクトが増加している東南アジアでリスク分析に関する講演、危機管理対処に関する講演、社会的・環境的リスクに関する講演、セキュリティ・リスクに対する実行上の考慮事項に関する講演が行われた。
中国とのビジネス「Doing business with China」セッションでは、中国から豪州鉱業分野への投資に関する動向・課題についての講演や中国での探査・開発プロジェクトに関する講演が行われた。
その他には、現在カナダで導入されているフロースルー株式制度が豪州で導入される見通しについての講演、資本コスト管理に関する講演、鉱山開発の効率化に関する講演等の実際の現場に即した内容のセッションが開かれた。
3. 2008年の「鉱業オブ・ザ・イヤー」
例年どおり、シドニー鉱業クラブ(Sydney Mining Club)が中心となって、2008年の豪州鉱業各分野において最も印象に残った企業に対して与えられる「鉱業オブ・ザ・イヤー(The National Mining Awards)」が発表された。
「生産者(Producer of the year)」、「発見(Discovery of the year)」、「フロンティア探鉱(Frontier Explorer of the year)」、「成長(Growth Story of the year)」、「取引(Deal of the year)」、「マネジャー(Manager of the year)」、「技術(Applied Technology of the year)」の各分野の受賞者は以下のとおりである。
- 「生産者」:会社設立5年にしてWA州Pilbara地区で鉄鉱石生産を開始したFortescue Metals Group社。
- 「マネジャー」:Fortescue Metals Group社のPilbara地区鉄鉱石生産現場でエンジニアリング及びマネージメント・サービスを行うWorley Parsons社。
- 「発見」:Western Areas社のWA州Forrestania地区のSpotted Quollニッケル鉱床発見に貢献した探鉱コンサルタント会社Newexco社。Spotted Quollニッケル鉱床は2007年10月に鉱床発見が発表され、2008年9月、資源量1.045百万t、品位Ni 7.2%が発表されている。なお、Newexco社は2005年にもWestern Areas社とともにForrestania地区Flying Foxニッケル鉱床発見の功績により「2005発見オブ・ザ・イヤー」を獲得している。
- 「フロンティア探鉱」:サウジアラビアにおける探鉱の先駆者であるCitadel Resources Group社。同社は、Jabul Sayid銅プロジェクト(予測及び概測資源量74.3百万t、品位Cu 1.33%)を含む複数の探査プロジェクトを手がけている。
- 「成長」:前年比で約300%増の利益を記録したFelix Resources社。同社はNSW州Ashton石炭鉱山、QLD州Minerva石炭鉱山等の権益を保有し、同社の2007~2008年の税引後利益は前年比300.9%増の188.2百万A$であった。
- 「取引」:WA州Karara鉄鉱石プロジェクトで、中国AnSteel社(Anshan Iron &Steel Group Corp.:鞍山鉄鋼集団)のJV参入により資金調達を行ったGindalbie Metals社。
- 「技術」:低コストで環境負荷の低いミネラルサンド精鉱の分離処理システム(ERMS SR:Enhanced Roasting and Magnetic Separation and Enhanced Acid Regeneration System)を開発したAustpac Resources社。
4. 「豪州鉱業の伝説(Legends in Mining Awards)」
例年どおり、長年豪州鉱業の発展に貢献した探鉱・鉱山関係者を表彰する「Legends in Mining Awards(豪州鉱業の伝説)」が発表された。2008年は、鉱業界の重鎮であるIan Burston博士とSA州のPaul Holloway鉱物資源開発大臣(Minister for Mineral Resources Development)の二人が表彰された。
Ian Burston博士は、Melbourne大学(機械工学)卒業。CRA社で22年の経験を有し、1970~80年代にはWA州Hamersley鉄鉱石鉱山開発に携わり、1982~86年にはHamersley鉄鉱石社のManaging Directorを務め、現在のRio Tinto鉄鉱石ビジネスの基礎を築いたといえる。その後、Kalgoorlie Consolidated Gold Mines社(WA州Superpit金山保有)を始めとする多くの会社役員を務め、現在はMincor Resources社のNon-Executive Directorである。1992年にはWA州Citizen of the Year、1993年には豪州勲章、1995年にはCurtin大学の名誉博士号(理学)をそれぞれ授与されている。
Paul Holloway鉱物資源開発大臣は、Adelaido大学(電子工学、経済学)卒業。労働党議員として1989年にSA州下院議員初当選。2002年3月より鉱物資源開発大臣の職にあり、現在は都市計画開発大臣及び中小企業大臣兼務。SA州で2004年から開始された探鉱促進プログラムPACE(A Plan for Accelerating Exploration)の立案に大きく関わった。PACEによってCarrapateena銅鉱床が発見される等、SA州の鉱業投資促進に大きく貢献した。
5. おわりに
資源ブームの影響から、2008年の「Excellence in Exploration & Mining 2008」は、2007年以上に多くの参加者があった。初日の講演会場では、午後の講演開始前に主催者側が、WA州選挙結果でウラン開発を支持する自由党を中心とした連立政権が成立することを伝えたところ、参加者から盛大な拍手をもって歓迎された。
写真 JOGMEC展示ブース
参考文献等
Excellence in Exploration &Mining 2008プログラム
Excellence in Exploration & Mining 2008メディアリリース
各社WEBサイト

