報告書&レポート
セミナー報告「8th Asian Pacific Mining Conference &Exhibition」その1-持続可能な鉱山開発;地域社会と環境への責任-
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2008年10月14~16日の3日間、マニラ市内(フィリピン)において、「8th Asian Pacific Mining Conference & Exhibition」(第8回アジア太平洋鉱業会議・展示会)が、東南アジア諸国の鉱業担当大臣、政府高官、鉱業団体、鉱山会社などから数約300名が参加して開催された。 |
1. はじめに
“Asian Pacific Mining Conference &Exhibition(以下“APMCE”とする)”は、1988年に東南アジアの鉱業法制度の統一をテーマにバンコクで第1回会合が開催されて以来、マニラ(1992年)、ジャカルタ(1994年、1996年)、クアラルンプール(2000年)、フィリピン(2005年、2007年)において東南アジア地域における鉱山開発に関する諸問題が取上げられてきた。今回の第8回会合は2007年に続いてフィリピン(マニラ)での開催となった。
2. 8th APMCEの概要
初日のNoli De Castroフィリピン副大統領の基調講演で幕を上げた“8th APMCE”は、講演数約40件、そのうち地域社会への取組み・環境関係を含む鉱業政策に関するものが41%(18件)、個別プロジェクト32%(14件)、リスク管理・市場・金融関係18%(8件)を占め、鉱業政策に関する講演が多く行われた。
展示ブース数は約50件、そのうち鉱山会社・探査ジュニア企業が29%(15件)、鉱山機械・プラント等が27%(14件)、エンジニアリング・技術コンサルタント15%(8件)のほか分析機器・通信機器等、法律事務所・コンサルタント等であった。
図1. “8th APMCE”の講演内容の内訳
図2. “8th APMCE”の展示ブースの内訳
3. 講演の中から
政府関係者による「地域社会と環境への責任を果たし、かつ、魅力ある鉱業投資環境を実現するための鉱業政策」をテーマとする講演が多かった今回の会議のなかで、その鉱業政策を実践する各国のケーススタディ(事例)が紹介された。以下にその内の幾つかについて報告する。
図3. 事例プロジェクト位置図
(1)探査開始前の事例
-フィリピン探査ジュニア企業―
豪州の探査ジュニア企業の関係者がフィリピンで探査活動を行う上で重要なこととして次のような話をしてくれた。
「フィリピン探査を行う上で最も重要なのは、地域社会と良好な関係を築くことである。フィリピンでは、地域によっては、環境保護、鉱山開発が地域社会へ与える負の影響、過去の鉱山開発の悪いイメージに起因する「反鉱業感情」がある。更に、NGOや教会などの活動も加わり、問題はより複雑化していることがある。」
「探査・鉱山企業は、地域社会の専門家を探査に先駆けて同地域に派遣して、説明や交渉を行う。同社もカナダから心理学などを専門分野とするスペシャリストを雇用して対応している。」
(2)探鉱・開発中の事例その1
-フィリピンTampakan銅・金山プロジェクト-
“The Tampakan Project:Responsible Mining Caring for Nature and ommunities”, Mr. Peter J. Forrestal President, Sagittarius Mines Inc, Executive General Manager, Xstrata Copper.
Tampakanは、東南アジア地域における最大規模の銅・金山プロジェクト(資源量22億t・銅量12.8百万t・金量15.2百万oz(473t)、カットオフ品位Cu 0.3%)と言われている。現在、プレFS(Extended Pre?Feasibility Study;XPFS)が、Xstrata Copper(62.5%)、Indophil Resources NL(34.2%)、Alsons Corporation (3.3%)とのJV企業であるSagittarius Mines, Inc(SMI)社によって進められている。
SMI社は、探鉱・開発にあたって、「We work ethically」(人道的・専門家としての倫理)、「We work responsibly」(保健・安全・環境の高次元での確保)、「We work openly」(透明性)、「We work together and with others」(全ての当事者との協力関係)との原則を掲げている。
具体的な取組みとして、環境保護、水質保全、環境調査、地域関係、地域経済への貢献、医療保健・教育の促進の活動を実施している。
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| 出典)Tampakan Project Sustainability Report 2007 |
(3)探鉱・開発中の事例その2
-フィリピンMindoroニッケル鉱山プロジェクト-
“Unexpected Opportunity for Development:Mindoro Nickel”
Mr. Erlend Grimstand President &CEO, Intex Resources
Mindoroプロジェクトは、ニッケル・コバルト鉱山(資源量86百万t・品位Ni 0.9%、Co 0.03~0.07%、周辺鉱体の資源量135百万t)からのラテライト・ニッケル鉱石(Limonite)をHPAL法(High Pressure Acid Leach)によって処理し、混合硫化物(Mixed Sulfide)80,000tを生産する計画である。2007年にプレFSを終了、現在、FS(Bankable Feasibility Study)が、Intex Resources ASA社(ノルウェー資本、以下Intex社)によって進められている。
Intex社は、環境影響、環境への影響を最小限に抑えるための森林修復や政府機関と協力したプロジェクト地区の教育・医療支援を計画・実施している。
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| 出典)“Unexpected Opportunity for Development: Mindoro Nickel” Mr. Erlend Grimstand President & CEO, Intex Resources |
(4)操業中の事例
-インドネシアBatu Hijau銅・金山-
“The Importance of Batu Hijau’s Social License to Operating”, Dr. Grant Batterham, Regional Director, Environmental and Social Responsibility, Newmont Asia Pacific
Batu Hijau銅・金山は、1990年にNewmont Mining Corporation(米国資本)が発見した、ジャカルタの東約950kmのSumbawa島に位置するアジア最大規模のポーフィリー銅・金鉱床である。1997年から建設が開始され、1999年に生産が開始された。2007年の生産量は、銅427.5百万lb(193,911t)、金494,3000oz(15.4t)であった。
同鉱山をはじめ世界各国で鉱山を操業しているNewmontは、健康・安全、地域関係、環境に関する全世界的な方針を持っており、これらの分野において社会に対する責任を高い次元で果たすことを会社の公約としている。
Batu Hijau銅・金鉱山に関係する地区は面積1,849km2、人口は107,604人に達している。同社は、同地域において水資源管理、環境修復、地域社会に対する教育や医療、経済活動に関する支援で大きな役割を果たしている。
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| 出典)“The Importance of Batu Hijau’s Social License to Operating”, Dr. Grant Batterham, Regional Director, Environmental and Social Responsibility, Newmont Asia Pacific Newmont Sustainability Report 2007, Newmont Mining Corporation |
(5)閉山後の事例
-マレーシア閉山後の環境修復と跡地利用-
“Mine Rehabilitation:The Malaysian Experience”, Dr. Mohd Suhaili Ismail Principal Geologist, Industrial Relations Unit Department of Mineral and Geosciences, Malaysia
マレーシアでは、1980年代の錫価格暴落により300以上の錫山が閉山に追い込まれ、その多くが環境修復されずに放置された結果、Kuala LumpurやIpoh地区などに125,000haに及ぶ閉山跡地(錫山の堆積場が85.6%、沈殿池が14.4%)が存在していた。
鉱山跡地の環境修復作業が行われ、1990年までの環境修復率はわずか9.7%であったが、2008年には67%に達している。
修復後の鉱山跡地は、当初、農地、放牧地、住宅地として利用されていたが、近年のマレーシアの経済発展により、大規模な宅地開発・レクリエーション施設(テーマパーク等)、大規模農地などとしての利用が進んでいる。再開発は、当初、政府主導(海外からの支援も含む)により進められ、現在は、民間も参入している。
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| 修復前(近景) | 修復前(前景) |
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| 現状(修復し、ゴルフ場として利用) | |
| 写真1. マレーシア錫山跡地をゴルフ場等の施設として開発した事例 | |
4. おわりに
今回の会議では、「Sustainability(持続可能性)」、「Socio-Economy(地域経済)」、「Environment(環境)」、「Social Community(地域社会)」、「Anti-mining Sentimental(反鉱業感情)」、「Benefit(利益)」、「Responsibility(責任)」、「Best Practice(ベストプラクティス)」など、人口が多く、多雨地域、植生が繁茂する東南アジア地域での鉱山開発にはこれらに伴う様々な課題を解決しなければならないことを認識させるものであった。
また、CSR(企業の社会的責任)が多くの講演の中で、今後、取組むべき課題の一つとして取上げられており、環境、地域社会に調和した持続可能な鉱山開発への積極的に取組む企業・政府等鉱業関係者の「Challenging(挑戦)」への期待が高まっているとの印象を受けた。
参考文献等
“The Tampakan Project: Responsible Mining Caring for Nature and ommunities”, Mr. Peter J. Forrestal President, Sagittarius Mines Inc, Executive General Manager, Xstrata Copper.
“The Importance of Batu Hijau’s Social License to Operating”, Dr. Grant Batterham, Regional Director, Environmental and Social Responsibility, Newmont Asia Pacific
“The Importance of Batu Hijau’s Social License to Operating”, Dr. Grant Batterham, Regional Director, Environmental and Social Responsibility, Newmont Asia Pacific
“Mine Rehabilitation: The Malaysian Experience”, Dr. Mohd Suhaili Ismail Principal Geologist, Industrial Relations Unit Department of Mineral and Geosciences, Malaysia
Newmont Sustainability Report 2007, Newmont Mining Corporation
Newmont Annual Report 2007, Newmont Mining Corporation




