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報告書&レポート

2008年11月13日 企画調査部 黒坂鮎美資源探査部 宮田初穂シドニー事務所 原田富雄、増田一夫報告
2008年78号

豪州ウラン会議参加報告と西豪州のウラン行政


 2008年9月、WA州(西豪州)でウラン開発を支持する自由党を中心とした連立政権が成立した。今までウラン開発禁止の方針であった同州の政権交代にウラン開発解禁の期待が高まっている。
 現在注目を集めるWA州で7月に開催された豪州ウラン会議参加報告に加え、同州の政権交代によるウラン開発動向への影響につき報告する。

1. 豪州ウラン会議について

写真1. JOGMECブースの様子
写真1. JOGMECブースの様子

 2008年7月23~24日、豪州WA州のFremantle(フリーマントル)でAustralian Uranium Conference(豪州ウラン会議)が開催された。同会議は豪州で最大規模のウラン関係国際会議で、毎年Fremantleで開催され今回が4回目になる。主催者のVertical Event社によると、参加者は豪州、カナダ、日本、南ア、ヨーロッパの企業・公共機関等から400人以上であった。日本以外のアジアからの参加はごく少数であった。参加企業はAREVA社(フランス)等の大企業もあったが、豪州に拠点を置くジュニア・カンパニーが多数を占めた。アフリカに鉱区を持つジュニア・カンパニーも多くあった。そのほか法律事務所、探査機器メーカー、情報関係企業等がブース出展を行っていた。
 JOGMECは経済産業省とともにメインスポンサーとして参加し、ブース出展や講演を通じてJOGMECのウラン関係事業や日本の原子力事情を紹介した。

2. 講演・展示ブースの様子
 会場には40ほどのブースが設けられ、参加各社による探査成果紹介や出版物の展示等が行われた。多くのジュニア・カンパニーが豪州やアフリカ等に保有する鉱区で行った探査の概要や成果につき紹介していた。ジュニア・カンパニーはウランに限定せず探査を実施している企業も多く、中にはウラン探査を最近になって始めた企業もあった。また、ウラン鉱山から流通までを手掛けるAREVA社や、メインスポンサーである豪州大手証券会社PATERSONS社などもブース出展を行っていた。
 同会議では、20数社の豪州のジュニア・カンパニーが活動状況を講演した。豪州ばかりではなく、南アや南米で活発に探鉱活動を展開している状況が具体的に示された。ほとんどは初期段階の探鉱プロジェクトであるが、2006年のPaladin Resources社(本社:WA州Subiaco)によるナミビアのLanger Heinrich鉱山の操業開始と、ウラン市況の好況を受け、ナミビアを中心にマラウィ、タンザニア及びザンビアの既知ウラン鉱床の権益を取得し、鉱山開発を目指した探鉱活動を進めており、今後の展開が注目される。
 講演会ではブース出展等参加企業のほか、基調講演としてSA州(南豪州)議会議員のTom Kenyon氏、Australian Uranium Association(豪州ウラン協会)理事のAngwin氏、AREFVA社、日本の経済産業省が講演を行った。SA州議会議員Tom Kenyon氏は、同州でのウラン探査開発への優遇政策を紹介し、ウラン探鉱等投資歓迎の姿勢を示した。経済産業省からは“原子力ルネッサンスと日本の原子力政策”と“日本の核燃料サイクル政策”の2件、東京電力は“日本の原子力発電産業と核燃料確保”、JOGMECは“ウラン資源探査とJOGMECの役割”につき講演を行った。

写真2. SA州議会議員Tom Kenyon氏の講演
写真2. SA州議会議員Tom Kenyon氏の講演

経済産業省資源エネルギー庁 電力・ガス事業部西山部長 同庁原子力立地・核燃料サイクル産業課山下課長補佐
経済産業省資源エネルギー庁
電力・ガス事業部西山部長
同庁原子力立地・核燃料サイクル産業課山下課長補佐
東京電力株式会社鈴木執行役員 JOGMEC広田理事
東京電力株式会社鈴木執行役員 JOGMEC広田理事
写真3. 日本側による講演

3. WA州政府のウラン行政
 1996年に当時の豪州連邦政府(自由党・国民党)が新規のウラン鉱山開発を禁止する“3鉱山政策”(※前労働党政権が1984年来Ranger、Nabarlek(既に閉鎖)及びOlympic Damのみ開発を認可した政策)を廃止して以降、ウラン開発の許認可は州政府に委ねられている。2007年の選挙で労働党が勝利し政権の座に就いたが、労働党も2007年党大会以降は3鉱山政策廃止の方針を取っており、ウラン開発の許認可に州政府の判断が重要であることに変わりはない(表1.参照)。
 2008年7月の時点では、開催地であるWA州でも労働党政権がウランの探鉱・開発を凍結する政策を採っていたが、WA州の野党自由党ではこの政策に反対している状況であった。今回の会議で講演を行ったTroy Buswell自由党党首は、次回選挙で政権をとればウラン採掘禁止措置を廃止する旨の講演を行った。
 2008年9月にWA州で選挙があり、ウラン開発を支持する自由党を中心とした連立政権が成立したため、今後は同州でのウラン開発が加速するものとみられている。

表1. 各州でのウラン探鉱・鉱業許可動向
探鉱 鉱業
SA(南豪州)
NT(北部準州)
QLD(クイーンズランド) ×
WA(西豪州) ×→?
経済性のあるウラン鉱山が存在する州

 また、WA州のウラン鉱山開発が現実的になってきたことで、アフリカ地域のウラン開発に影響を及ぼす可能性が指摘されている。ウラン価格が沈静化し、生産コストの高い鉱床の開発が困難になってきている状況もあり、南部アフリカに進出している豪州ジュニア・カンパニーが本国に回帰する動きが出てくる可能性がある。

写真4. WA州議会議員Troy Buswell氏の講演
写真4. WA州議会議員Troy Buswell氏の講演

参考:プログラム

参考:プログラム

参考:ニュースフラッシュ 2008年30号、37号
   カレントトピックス 2008年04号、69号

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