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報告書&レポート

2008年12月4日 企画調査部 大久保 聡報告
2008年81号

ベースメタルの国際市場と需給動向(2008年9月号)


1. 国際市場
 9月のLME(London Metal Exchange)の平均価格は、銅、ニッケルが前月(8月)から下落し、亜鉛がわずかに上昇した。
 銅価格は、在庫の積増しにより2か月連続で下落し前月比8.4%減の6,991US$/tとなった。
 亜鉛価格は、在庫の減少により6か月ぶりに上昇し前月比0.7%増の1,735US$/tとなった。
 ニッケル価格は、在庫の積増し、供給超過を受け6か月連続で下落し同6.0%減の17,795US$/tとなった。
 総じて9月半ば以降の経済危機の影響により非鉄金属価格は下落傾向にある。

表1. 銅・亜鉛・ニッケル:LME平均価格と月末在庫 〔2008年8、9月〕
鉱種 LME月平均価格
(cash settlement,US$/t)
LME月末在庫
(t)
8月 9月 前月比 8月 9月 増減
7,634.20 6,990.86 -8.4% 173,375 198,600 +25,225
亜鉛 1,723.28 1,735.48 +0.7% 160,450 155,125 -5,325
ニッケル 18,927.75 17,794.55 -6.0% 47,022 56,070 +9,048

図1. LME月平均価格変動の推移(2004年6月=1、2004年6月~2008年9月)
図1. LME月平均価格変動の推移(2004年6月=1、2004年6月~2008年9月)

2. 需給動向

表2. 銅・亜鉛・ニッケル:2008年1~7月の世界の鉱石生産量、地金生産量、地金消費量
  鉱石生産量
(金属含有量)
地金生産量
(金属含有量)
地金消費量 需給
バランス
(t)
1~7月(t) 前年同期比 1~7月(t) 前年同期比 1~7月(t) 前年同期比
8,764,000 -1.8% 10,663,000 +2.7% 10,717,000 +2.3% -54,000
亜鉛 6,974,000 +9.9% 6,852,000 +4.0% 6,775,000 +3.0% +77,000
ニッケル 912,300 -3.1% 833,000 -1.2% 792,200 -0.8% +40,800
(出典:ICSG、ILZSG、INSG)

2.1 銅
【需要】

 2008年1~7月の世界消費量は前年同期比2.3%増の10,717千tであった。世界消費量は4月1,588千t、5月1,564千t、6月1,523千t、7月1,531千tと推移した。国別では2位米国が6.8%減、4位日本が0.1%減、5位韓国が2.8%減だったものの、最大消費国の中国が12.2%増、3位ドイツが3.4%増となり世界計として2.3%増加した。

【供給】
 2008年1~7月の鉱石生産量(金属純分、以下同様)は前年同期比1.8%減の8,764千tであった。鉱石生産量は4月1,248千t、5月1,306千t、6月1,304千t、7月1,278千tと推移した。鉱山設備稼働率は4月83.2%、5月85.2%、6月86.6%、7月81.6%と推移した。国別では2位米国が10.0%増、3位ペルーが9.5%増、4位中国が8.4%増、5位豪州が0.1%増であったが、最大生産国のチリが2.3%減などにより世界計として1.8%減少した。
 2008年1~7月の地金生産量は前年同期比2.7%増の10,663千tであった。地金生産量は4月1,526千t、5月1,522千t、6月1,555千t、7月1,595千tと推移した。製錬所設備稼働率は4月83.2%、5月80.0%、6月84.1%、7月83.2%と推移した。国別では、3位日本が4.1%減、4位米国が5.0%減、5位ロシアが6.5%減であったが、最大生産国の中国が15.9%増、2位チリが0.7%増により世界計として2.7%増加した。

【需給バランス】
 2008年1~7月の銅需給バランスは54千tの供給不足であった。4月に62千t、5月に42千tと供給不足で推移していたが、6月に32千t、7月に65千tと供給超過に転じた。季節調整後の需給バランスでは4月に11千tの供給超過、5月に18千tの供給不足、6月に63千t、7月に70千tの供給超過となった。
 LME在庫は7月末に142千t、8月末173千t、9月末に199千tと推移した。

表3. 銅:需給推移
表3. 銅:需給推移

【価格】
 9月のLME銅価格は1日に7,371US$/tでスタートしてから一旦4日に7,420US$/tまで上昇したが、その後は下落傾向となり30日に6,419 US$/tで終了した。

図2. LME銅地金価格・在庫の推移(2007年8月1日~2008年9月30日)
図2. LME銅地金価格・在庫の推移(2007年8月1日~2008年9月30日)

2.2 亜鉛
【需要】

 2008年1~7月の世界消費量は前年同期比で3.0%増の6,775千tであった。3位日本が0.9%減、4位のドイツが5.0%減、5位の韓国が5.2%減となったが、最大消費国の中国が14.2%増、2位の米国が3.4%増となり世界計として3.0%増加した。

【供給】
 2008年1~7月の鉱石生産量は前年同期比で9.9%増の6,974千tであった。最大生産国の中国が17.1%増、2位ペルーが5.9%増、3位豪州が4.7%増、4位の米国が9.5%増、5位カナダが4.3%増と世界的な増加傾向により世界計として9.9%増加した。
 2008年1~7月の地金生産量は前年同期比で4.0%増の6,852千tであった。2位カナダが1.3%減となったが、最大生産国の中国が4.9%増、3位韓国が6.2%増、4位日本が9.8%増、5位インドが37.0%増と大幅増となり世界計として4.0%増加した。

【需給バランス】
 2008年1~7月の需給バランスは77千tの供給超過となった。2007年末からの供給超過の状態が続いていたが7月には供給不足となっている。
 LME在庫量は7月末に157千t、8月末に160千t、9月末に155千tと推移した。

表4. 亜鉛:需給推移
表4. 亜鉛:需給推移

【価格】
 9月のLME亜鉛価格は1日に1,774US$/tでスタートしてから4日に一旦1,816US$/tまで上昇した。その後は、1,700~1,800US$/tの範囲で変動を続け30日に1,650US$/tで終了した。

図3. LME亜鉛地金価格・在庫の推移(2007年8月1日~2008年9月30日)
図3. LME亜鉛地金価格・在庫の推移(2007年8月1日~2008年9月30日)

2.3 ニッケル
【需要】

 2008年1~7月のニッケル消費量は792.2千tで、前年同期比0.8%減となった。消費量第1位の中国は12.0%増であったが、第2位日本は1.7%減、第3位米国は8.9%減、第4位ドイツは1.4%減、第5位台湾は16.7%減となり世界計として0.8%減少した。

【供給】
 2008年1~7月のニッケル鉱石生産量は912.3千tで、前年同期比3.1%減となった。第2位カナダは3.5%増、第3位豪州は20.5%増と大幅増、第4位インドネシアは11.5%増であったが、最大生産国のロシアが2.4%減、第5位のニューカレドニアは26.1%減と大幅減となり世界計として3.1%減少した。
 2008年1~7月の一次ニッケル生産量は833.0千tで、前年同期比1.2%減となった。第3位カナダは2.4%増、第5位豪州は17.2%増であったが、最大生産国ロシアは3.7%減、第2位中国は2.5%減、第4位日本は5.1%減となり世界計として1.2%減少した。

【需給バランス】
 2008年1~7月需給バランスは、40.8千tの供給超過となっている。
 LME在庫は7月末に45千t、8月末に47千t、9月末に56千tと推移した。

表5. ニッケル:需給推移
表5. ニッケル:需給推移

【価格】
 9月のLMEニッケル価格は、1日に19,515US$/tでスタートしてから4日に一旦19,575US$/tまで上昇した。その後は下落傾向となり30日に15,755US$/tで終了した。

図4. LMEニッケル価格・在庫の推移(2007年8月1日~2008年9月30日)
図4. LMEニッケル価格・在庫の推移(2007年8月1日~2008年9月30日)

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