報告書&レポート
メキシコ・Zacatecas州鉱業事情報告
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周知のとおり、メキシコは古くからの鉱業国であり、現在でも銀・ビスマス等の世界の主要生産国である。中でもEstado de Zacatecas(サカテカス州)は、Peñolesの主力鉱山であるFresnillo(フレスニージョ)鉱山及びFrancisco I. Madero(フランシスコI.マデロ)鉱山を有するほか、同国最大規模となるPeñasquito(ペニャスキート)鉱山の開発が進行中である。 |
1. Zacatecas州の概要及び鉱業生産
(1)Zacatecas州の概要
Zacatecas州はメキシコ中央部に位置し(図1参照)、北はCoahuila(コアウイラ)州、北西部はDurango(ドゥランゴ)州、南西部はJalisco(ハリスコ)州及びNayarit(ナジャリット)州、東はSan Luis Potosí(サンルイスポトシ)州、南はAguascalientes(アグアスカリエンテス)州及びGuanajuato(グアナフアト)州に接する。面積は73千km2(同国31州の中第10位)、人口は140万人(同じく第25位)、州都はZacatecasである。

図1. Zacatecas州位置図
(2)Zacatecas州の鉱業生産
2007年のメキシコ国内及びZacatecas州の主要鉱産物の生産量を表1に示す。Zacatecas州は銀、亜鉛の生産で国内第1位を占めるほか、銅の生産量がSonora(ソノラ)州に次いで第2位、亜鉛の生産量がChihuahua(チワワ)州に次いで第2位となっている(州内主要鉱山は図2を参照)。
Zacatecas州の鉱業生産額を表2に示す。2003年の州内の鉱業生産額は約5.05億US$であったが、その後金属市況に恵まれたため、大幅な成長を続け2007年の生産額は13.4億US$に達した。

図2. Zacatecas州の主要鉱山(試験操業中を含む)
| Peñoles保有 | Pan American Silver Corp.保有 | ||
| [1]Fresnillo(Ag・Au・Pb・Zn) | [7]La Colorada(Ag・Au・Pb) | ||
| [2]Francisco I. Madero(Zn・Pb・Cu・Ag) | |||
| [3]Sabinas(Zn・Cu・Pb・Ag) | Capstone Mining Corp.保有 | ||
| [8]Cozamin(Cu・Zn・Pb・Ag) | |||
| Frisco保有 | |||
| [4]Tayahua(Ag・Pb・Zn) | Goldcorp保有 | ||
| [5]Real de Angeles(Ag・Pb・Zn) | [9]Penasquito(Au・Ag・Zn・Pb) | ||
| Aura Minerals Inc.保有 | Siver Eagle Mines Inc.保有 | ||
| [6]Aranzazu(Cu・Au・Ag) | [10]Miguel Auza(Ag・Pb・Zn) | ||
| 表1. Zacatecas州の主要鉱産物生産量及び国内順位(2007年) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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| 出典:経済省鉱山局 |
| 表2. Zacatecas州の鉱業生産額 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| (単位:US$) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 出典:経済省鉱山局、INEGI (オリジナルデータはペソ表示:年平均Peso/US$為替レート(2003年10.7913、2004年11.2871、2005年10.8895、2006年10.9006、2007年10.9284)で換算 |

図3. Zacatecas州の鉱業生産額の推移
2. Fresnillo鉱山訪問結果
Fresnillo鉱山は、国内第2位の鉱山企業であるPeñolesの主力銀山であり、世界最高品位の銀山といわれている。同鉱山で行った聞き取り調査の結果は以下のとおりである。
(1)鉱山の概要
本鉱山は1554年に発見され、450年以上の操業歴を有する。20世紀前半までは酸化鉱を対象に採掘が行われていたが、1926年から硫化鉱の選鉱処理を開始した。1921~2006年までの採掘実績は表3のとおりである。
| 表3. Fresnillo鉱山の採掘実績(1921~2006年合計) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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| (注1)1921~1943年まで採掘 (注2)1926年から採掘 |
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2006年の獲得資源量は2,152,083tであり、2007年現在の埋蔵量・資源量は表4のとおりである。
| カテゴリー | 鉱量(t) | 品位 | |||
| Au(g/t) | Ag(g/t) | Pb(%) | Zn(%) | ||
| 埋蔵量 | 11,926,767 | 0.56 | 507 | 0.46 | 0.77 |
| 資源量 | 17,210,155 | 0.76 | 519 | 1.8 | 2.5 |
(2)操業状況
従業員数は約800名。主としてCut &FillとSublevel Stopingによる採掘を行っており、採掘量は前者によるものが4,200t/日、後者によるものが3,000t/日、全体では7,600t/日である。本鉱山では2003年秋から、トンネル用自動継続掘削機(Tunelera)を導入し、坑道掘削を行っている(カレント・トピックス2005年25号参照:現在は同重機が故障中のため、一時的に通常の発破法を採用)。採掘は3交代で週6日操業(日曜休み)、選鉱場は月1回メンテナンスのため休止する以外は毎日操業している。現在のキャッシュコストは2.45US$/oz-Agである。

写真1. Fresnillo鉱山選鉱設備
3. Francisco I. Madero鉱山訪問結果
Francisco I. Madero鉱山はPeñolesの主力鉱山であり、メキシコ最大の亜鉛鉱山である。同鉱山で行った聞き取り調査の結果は以下のとおりである。
(1)鉱山の概要
本鉱山は2001年6月から操業を開始した。鉱床は総厚2~50mの潜頭マント型で砕屑堆積岩中のSEDEX(堆積層内硫化物鉱床)と考えられているが、スカルン鉱床との意見もある。2001年からの累積採掘量は表5、2008年現在の埋蔵量・資源量は表6のとおりである。
| 累積採掘量(千t) | 品位 | |||
| Ag(g/t) | Pb(%) | Zn(%) | Cu(%) | |
| 15,584 | 33 | 0.48 | 3.50 | 0.11 |
| カテゴリー | 鉱量(千t) | 品位 | |||
| Ag(g/t) | Pb(%) | Zn(%) | Cu(%) | ||
| 確定埋蔵量 | 12,665 | 31 | 0.61 | 2.40 | 0.19 |
| 推定埋蔵量 | 22,144 | 22 | 0.81 | 2.85 | 0.07 |
| 精測・概測資源量 | 335,822 | 15 | 0.28 | 1.09 | 0.08 |
(2)操業状況
従業員数は約700名。採掘法はCut&Fillを採用している。現在の粗鉱処理量は8,000t/日、精鉱生産量はZn精鉱300t/日、Pb精鉱60t/日、Cu精鉱20t/日、キャッシュコストは0.65US$/lb-Znである(選鉱場の稼働日数は24日/月)。金属価格の下落により、2008年5月から赤字操業となっている。
採掘された鉱石は坑内で6inch以下に破砕された後、ベルトコンベアで坑外のSAGに運ばれ3.8inch以下に磨鉱される。2008年度計画による粗鉱処理量は2,300千t(粗鉱品位Ag 31g/t、Pb 0.64%、Zn 2.71%、Cu 0.14%)、1~9月までの実績は1,670,197t(粗鉱品位Ag 32g/t、Pb 0.60%、Zn 2.62%、Cu 0.13%)である。選鉱工程では亜鉛の分離浮選後、鉛と銅の分離浮選(シアン化物を黄銅鉱の抑制剤として使用(※))を行っており2007年からCu精鉱生産を開始している。

写真2. Francisco I. Madero鉱山鉱石運搬設備
4. Cozamin鉱山訪問結果
Cozamin鉱山はCapstone Mining Corp.(本社:Vancouver)が100%権益を保有する銅・銀・鉛・亜鉛鉱山である(注)。同鉱山で行った聞取調査の結果は以下のとおりである。
(注)Grupo Basisに3%のロイヤルティ(Net Smelter Royalty)を支払っている。
(1)鉱山の概要
本地域では70年以上前に銀を対象に採掘が行われていた。1999年にメキシコのGrupo Basisが1,000t/日の規模で生産を開始したが、1年半ほどで操業を停止した。Capstone社は2004年にGrupo Basisから本鉱区の権益を取得し、2006年から本鉱山の操業を開始した。鉱床は浅~中熱水性の脈状鉱床(Mala Noche脈と命名されている)で平均脈幅5m、鉱化帯の幅1.5km、延長5kmの規模を有する。2007年現在の埋蔵量・資源量は表7のとおりである。
| カテゴリー | 鉱量(t) | 品位 | |||
| Cu(%) | Ag(g/t) | Pb(%) | Zn(%) | ||
| 確定埋蔵量 | 1,809,719 | 2.32 | 84 | 0.45 | 1.17 |
| 推定埋蔵量 | 1,915,248 | 2.42 | 81 | 0.34 | 1.19 |
| 埋蔵量計 | 3,724,967 | 2.37 | 82 | 0.40 | 1.18 |
| 精測資源量 | 2,591,705 | 2.48 | 87.11 | 0.43 | 1.18 |
| 概測資源量 | 2,896,158 | 2.59 | 86.37 | 0.32 | 1.14 |
| 予測資源量 | 3,162,838 | 2.36 | 80.50 | 0.18 | 1.03 |
| 資源量計 | 8,650,702 | 2.47 | 84.35 | 0.30 | 1.11 |
(2)操業状況
従業員数は約500名。採掘法はLong holeとCut&Fillを採用している。現在の粗鉱処理量は2,500t/日であるが、まもなく3,000t/日に拡張予定である。2008年の粗鉱計画処理量は830,000t、金属生産量はCu 12,700t、Ag 40t、Zn 4,500t、Pb 2,700tである。操業コストは30~35US$/t-oreである(同社HPに発表された2008年Q3の総キャッシュコストは1.29US$/lb-Cu)。Cu精鉱とZn精鉱はTrafigla社に、Pb精鉱はPeñolesに売却している

写真3. Cozamin鉱山立坑
5. おわりに
最近の金属価格の下落、特にZacatecas州鉱業生産額の第1位を占める亜鉛価格の低迷は、同州鉱山業に大きな影響を与えるものであり、Francisco I. Madero鉱山の様に既に赤字操業に陥っている鉱山も見られる。今後の金属価格の動向によっては、操業停止に追い込まれる鉱山も少なからず出てくるものと思われる。
一方、同州では、メキシコ最大規模の鉱山となるPeñasquitoの開発が進められている。同鉱山は2009年中頃から本格的な生産を開始する予定であり、2009年の生産量はAu 4.57t、Ag 409t、Pb 32,000t、Zn 50,000tと見込まれている。これらの生産量を加算すると、Zacatecas州の鉱業生産は、Auが4.5倍、Agが27%増、Znが29%増、Pbが70%増に拡大する計算となる。また、同鉱山の鉱山寿命間(2008~2026年)の年平均生産量はAu 11.7t、Ag 916t、Zn 189,000t、Pb 97,000tと見込まれており、同州のメキシコ鉱業における重要性は益々増大するものと考えられる。
※参考:鉛・銅総合精鉱の分離浮選法として次の二つの方法がある(選鉱便覧参照)。因みにTizapaでは[2]の方法を使用している。
[1]シアン化物を銅鉱の抑制剤として鉛鉱を優先浮選する方法(黄銅鉱の銅分が高く、鉛分が少ない総合精鉱に適用)
[2]亜硫酸を方鉛鉱の抑制剤として銅鉱を優先浮選する方法


