報告書&レポート
セミナー報告「Mining 2008」
10月29日~31日の3日間、QLD州ブリスベン市内で探査鉱業投資セミナー「Mining 2008」が開催された。 |
1. はじめに
「Mining 2008」は、豪州国内外で活動する鉱山会社、探鉱ジュニア企業、投資銀行、メディア等が参加して10月29~31日の3日間の日程でブリスベンにて開催され、今年で8回目を数える。鉱山会社・探鉱ジュニア企業を中心とした発表・ブース展示に加え、QLD州政府をはじめとする全ての州・準州政府及び連邦政府による発表・ブース展示が行われ、各政府の投資促進へ向けた取組みについての紹介があったほか、QLD州の“鉱山オブ・ザ・イヤー(QLD Miner of the Year)”と“探鉱オブ・ザ・イヤー(QLD Explorer of the Year)”が表彰された。
2. 探査鉱業投資セミナー「Mining 2008」の概要
今年の「Mining 2008」は、主催者による冒頭の挨拶中の「このタフな時期に参加してくれたことに感謝する」という言葉で象徴されるように、資源価格が下落し市況の低迷が広がり始めた中で開催されたものの、参加者は、最大参加者数を記録した昨年と同様の1,000名以上に達した。
講演数及び展示ブース数についても昨年とほぼ同規模となり、鉱山会社及び探鉱ジュニア企業による講演89件、アナリストによる講演4件、政府による講演8件の計101件の講演が行われたほか、展示ブース81件となった。
講演を実施した鉱山会社及び探鉱ジュニア企業のプロジェクト対象国の割合(発表資料中記載分、重複あり)は、豪州国内74%(77件)、アジア・大洋州地域9.6%(10件)、欧州・アフリカ・中東地域8.7%(9件)、北米3.8%(4件)、中南米3.8%(4件)であった。開催地であるQLD州を中心とした豪州国内のプロジェクトを中心に、近隣のアジア・大洋州地域をはじめとした全世界にわたる活動が行われている。
講演を実施した鉱山会社及び探鉱ジュニア企業のプロジェクト対象鉱種の割合(発表資料中記載分、重複あり)は、金17.9%(35件)、銅17.9%(35件)、亜鉛・鉛10.7%(21件)、ニッケル・コバルト9.2%(23件)、レアメタル・レアアース9.2%(18件)、鉄鉱石5.1%(10件)ウラン7.7%(15件)、ガス・石炭8.2%(16件)、その他11.7%(23件)であった。金、銅といった鉱種を主体としながら多様な鉱種の探鉱活動が行われており、同州で活発に活動が行われている石炭、石炭層ガスに関して発表も行われた。
鉱山会社及び探鉱ジュニア企業の講演では、これまでの好景気時に多く見られたような、自社の拡大戦略を全面に押し出した講演内容とは異なり、将来需給予測に基づいた今後の見通しや会社運営・財務状況の健全性を中心にアピールする堅実な講演内容が多く見られた。
3. 連邦政府及び各州・準州政府の取り組み
「Mining 2008」では、連邦政府及び全ての州・準州政府が講演及びブース展示を行い、鉱業分野への投資促進に向けた取組みを紹介している。
・連邦政府(豪州地球科学機構:Geoscience Australia)
David Huston博士により「New insights into the controls on An-Pb, Cu and U mineralisation (and geothermal potential) in the Mt. Isa and Georgetown Inliers」と題した講演が行われた。2006年からQLD州Mt. Isa地域のCloncurryからGeorgetown、Charters Towersで実施中の地震探査の結果について説明し、Millungeraベーズン地域等のフロンティア地域におけるベースメタル(Zn-Pb、Cu)、ウラン及び地熱のポテンシャルについて紹介した。
・QLD州政府(鉱山エネルギー省:Department of Mines and Energy)
鉱山エネルギー省のGeoff Cooke氏により“Queensland Energy Exploration Expansion”、地質調査局長のDavid Mason氏により“Smart Exploration Successes”と題した2件の講演がそれぞれ行われた。Cooke氏の講演では、石炭、石炭層ガス、石油及び地熱についてのポテンシャルについて紹介し、QLD州は石炭、石炭層ガスの探鉱ブームにあること、QLD州南部Suratベーズン地域でのエネルギー資源のポテンシャルが注目されていること、QLD州は地熱のポテンシャルがあることをアピールした。Mason氏は、QLD州政府による探鉱支援制度について紹介し、2005~2010年間に総額49.08百万A$の探鉱・鉱山開発への支援を行っていることをアピールしたほか、基礎データ整備や、州政府保有鉱区の入札について紹介した。
・NT準州政府(第一次産業漁業鉱山省:Department of Primary Industries, Fisheries and Mines)
地質調査局長Ian Scrimgeour博士により“Bringing forward discovery in the Northern Territory”と題した講演が行われた。2007~2008年間の探鉱投資総額は前年度比44%増の132.7百万A$で、特にウランとリンの探鉱ブームとなっている。NT準州政府では、2007~2011年の4年間で総額14.4百万A$の探鉱支援制度を行っており、うち11.25百万A$をデータ整備に、2.4百万A$を物理探査及びボーリング調査への民間助成に、0.7百万A$をプロモーション活動に費やしている。
・WA州政府(産業資源省:Department of Industry and Resources)
地質調査局長のTim Griffin博士により“New Geoscience Information and New Understanding for Mineral Systems in Western Australia”と題した講演が行われた。新規データ整備と重点調査地域について紹介した。新規データ整備では、10万分の1でのデータ整備を進めており、地質図に加え、衛星画像データ、物理探査データ、地化学探査データ、文献等をパッケージにして情報提供を行っている。重点調査地域については、地質調査所による調査が進められており、キンバリー地域のCanningベーズン地域をはじめ7地域の紹介があった。
・TAS州政府(インフラ・エネルギー&資源省:Department of Infrastructure, Energy and Resources)
鉱物資源局のGeoff Green博士により“Well Placed to weather the storm: Exploration and mining in Tasmania”と題した講演が行われた。2007~2008年で実施された探鉱費の総額は41.54百万A$。TAS州政府では、4年間で総額5.06百万A$の探鉱支援制度を行っており、うち4.1百万A$をデータ整備に、0.96百万A$をプロモーション活動に費やしている。
・SA州政府(第一次産業資源省:Department of Primary Industries and Resources)
鉱物エネルギー資源局長のTed Tyne博士により“PACE and South Australia’s pipeline of new mines”と題した講演が行われた。SA州の探鉱支援制度“PACE(Plan for Accelerating Exploration) ”について、Carrapateena銅金鉱床や4Mileウラン鉱床等の発見といった成果について紹介し、基礎データ整備を含めた総合的な探鉱支援の結果として、2007~2008年で実施された探鉱費の総額が350百万A$を越えたことを紹介した。銅、金、ミネラルサンド、ベースメタル、鉄鉱石、地熱、ウラン等の多様な鉱種のポテンシャルをアピールし、特にウランについてはポテンシャルだけでなく、SA州の許認可制度の充実について強調した。
・VIC州政府:(第一次産業省Department of Primary Industries)
地球科学部のPaul McDonald氏により“Gold Undercover-9 Million Victorian Initiative, Helping explorers access Gold Undercover”と題した講演が行われた。Gold Undercoverと称した金探鉱に重点を置いた3年間で9百万A$の探鉱支援制度を実施しており、物理探査データ取得やデータベース整備を中心としたデータ整備や研究活動を行っている。また、Rediscover Victoriaと称した未探鉱エリアでの探鉱促進のための支援制度を2008~2012年の4年間で総額5百万A$のボーリング調査への助成等の支援を行っている。
・NSW州政府(第一次産業省 :Department of Primary Industries, Mineral Resources)
鉱物資源局副局長John Watkins氏により“Frontier opportunities in New South Wales”と題して講演がなされた。NSW州の探鉱支援制度として、1994年~2000年まではDiscovery2000と称して35百万A$、2000~2006年間はExploration NSWと称して30百万A$の支援を実施し、現在はNew Frontiers NSWと称して、2006~2011年間に総額24.5百万A$の支援を実施中である。新しいフロンティアとなる探鉱地域としては、NSW州北部のThomson Orogen地域と西部のDelamerian Orogen地域を、新規対象鉱種として鉄鉱石、ニッケル、レアアースを挙げ、基礎データ整備等の探鉱促進を行っている。
4. 2008年QLD州“鉱山オブ・ザ・イヤー”と“探鉱オブ・ザ・イヤー”
QLD州の“鉱山オブ・ザ・イヤー”には、QLD州Mt Garnet地域でベースメタルの生産を行っており、2008年Q3期には同社の四半期記録となる9,472tの銅を生産したKagara Ltd.(本社:Perth、ASX上場)が受賞した。“探鉱オブ・ザ・イヤー”には、QLD州中央部のGalileeベーズンで石炭(一般炭)の探鉱を行っており、33.8億tの予測鉱物資源量を計上したWaratah Coal Inc.(本社:Brisbane、TSX-V上場)が受賞した。
5. おわりに
資源価格が下落し、市況低迷期に開催されたものの、昨年と同規模の参加者があり、会場は活気に溢れ、最終日まで賑わいを見せていた。一方で、鉱山会社及び探鉱ジュニア企業の講演では、投資家に対し自社ビジネスの健全性をアピールする傾向が高まっており、経済危機の流れが確実に波及している。豪州の各州政府は、鉱業分野への投資促進のためのデータ整備や助成といった探鉱支援を行っているが、鉱山会社及び探鉱ジュニア企業の中には、投資促進策として、QLD州のウラン開発解禁といった政策転換や、許認可制度の改善等の規制・行政手続の簡素化を望む声がある。
写真1. JOGMEC展示ブース
写真2. 政府機関展示ブース
右からGeoscience Australia、QLD州鉱山エネルギー省、NSW州第一次産業省
参考文献等
Excellence in Exploration&Mining 2008プログラム
Excellence in Exploration&Mining 2008 講演資料
各社WEBサイト