報告書&レポート
インドネシア一次産品輸出貿易信用状利用義務について

インドネシア商業省は2009年3月5日、商業大臣規定2009年第10号を発出、4月1日以降、金属鉱石、錫地金等の鉱業製品を含む一次産品輸出に貿易信用状(Letter of Credit:L/C)利用を義務付けた。ジャカルタ事務所では当該省令を翻訳(仮訳)したので、概要とともに紹介する。 |
1.対象となる産品
輸出に当たってL/Cを利用しなければならない一次産品は、大きくA、Bの2グループに分類される(第1条、別紙1及び別紙2)。
A | (1) | パーム油 | ||
(2) | 鉱業製品 | |||
イ) | 鉄鉱 | |||
ロ) | マンガン鉱 | |||
ハ) | 銅鉱 | |||
ニ) | ニッケル鉱 | |||
ホ) | アルミニウム鉱(ボーキサイト) | |||
ヘ) | 鉛鉱 | |||
ト) | ニオブ、タンタル、バナジウム及びジルコニウムの各鉱 | |||
チ) | 石炭 | |||
リ) | 錫の塊 | |||
B | (1) | コーヒー | ||
(2) | カカオ | |||
(3) | ゴム |
2.対象となる輸出
(1)A分類産品(鉱業製品含む)の輸出
[1] |
2009年4月1日以降、一の輸出で輸出価格が1百万US$を超える場合は、L/Cを利用した支払方法で輸出しなければならない(第1条第1項、第7条第1項)。ただし、本大臣規定施行時において有効である輸出契約に基づき、当該契約期間中に実施される輸出については、2009年8月31日まで、商業大臣にL/C利用義務の猶予を求めることができる(第6条第1項)。 |
[2] |
百万US$以下の場合は、L/C又は他の支払方法によることが出来る(第1条第2項)。 |
[3] |
輸出代金は、L/C、他の方法いずれの場合も、インドネシア国内の外為銀行を経由して受領しなければならない(第2条)。 |
[4] |
輸出状況について、毎月商業省へ報告する(第5条) |
(2)B分類産品の輸出
[1] |
2009年9月1日以降の輸出が対象となる(第7条第1項)。それ以外の条件は、A分類産品の輸出と同一(ただし、9月1日以降の輸出が対象となっているため、A分類産品輸出にある商業大臣による猶予規定は、B分類産品輸出には無い)。 |
3.本措置の背景
4月1日から施行される本大臣規定に先立ち、2009年1月5日付商業大臣規定第1号により、全品目、輸出価格に関わりなく3月5日からL/C利用義務化が定められていた。しかし、この大臣規定第1号には、各業界から適用までの期間が短く対応が困難である等の要望が出、また、一次産品価格の下落もあり、実施日及び対象となる輸出価格を絞るなどして、改めて本大臣規定第10号を発出したもの(商業大臣規定第1号は廃止)。
Jusuf Kalla副大統領は、商業大臣規定第1号発出に当たり、金融危機時における輸出代金回収を確実にし、また同国外貨準備高の確保に資するための政策であると表明、また、税金、ロイヤルティ管理のための方策であるともしている。これは、金融危機以降、資産家が保有するUS$の海外流出、インドネシア通貨ルピア防衛(買い)のためのUS$(売り)資金確保、密輸や海外関連会社への安価売却等による国損阻止等を図ったものといえる。
4.本措置の影響
インドネシア鉱業協会では、支払条件改定には鉱石売買契約変更が必要であり金属価格低迷時の改定交渉は鉱石価格引下げを惹起しかねないこと、鉱山開発時のファイナンス条件で国外エスクロー口座※への売買代金入金が義務付けられている等から、3か月毎の輸出実績報告等を行うことにより金属鉱石の適用除外を要望しているが、認められていない。
資源開発における資金調達方法の1つとしてプロジェクトファイナンスがあるが、L/C利用義務または1百万US$以下の輸出でも国内外為銀行への入金を義務付けられると、国外エスクロー口座利用が前提である同ファイナンス利用が困難となる。
2009年1月に施行された新鉱業法では、鉱業事業契約制度を廃止して全て鉱業事業許可制に移行、国内高付加価値化(製錬)義務等、大型鉱業投資におけるリスクが高まっているとも評価されている中、事業リスクを融資側が分担するプロジェクトファイナンス利用が制約されると、更なる投資環境の悪化となる。
※エスクロー口座(escrow account):プロジェクトファイナンスの返済原資を、プロジェクト破綻等の事態に備え隔離しておく第三者管理口座。売買代金はこの口座に入金され、事業資金への充当、ファイナンス側への返済、配当等に費消される。}
信用状の使用が義務付けられる物品の輸出
に関する
インドネシア共和国商業大臣の規定
第:10/M-DAG/PER/3/2009号
唯一の神のご加護により
インドネシア共和国商業大臣は、
以下の事柄を考慮し:
a. | 物品の輸出政策の実施の有効性のために、信用状(L/C)の支払方法による物品の輸出義務について再度定める必要性が生じた; |
b. | 上記aにおいて示されるような考慮に基づき、商業大臣の規定を制定する必要性が生じた; |
以下の法規に鑑み:
1. | 企業の規則に関する1934年の法令(官報1938年第86号); |
2. | 世界貿易機関(WTO)設立協定の批准に関するインドネシア共和国の法令1994年第7号(インドネシア共和国官報1994年第57号、インドネシア共和国官報補足第3564号); |
3. | 通関に関するインドネシア共和国の法令1995年第10号(インドネシア共和国官報1995年第75号、インドネシア共和国官報補足第3612号)。本法令は、法令2006年第17号によって改正されている(インドネシア共和国官報2006年第93号、インドネシア共和国官報補足第4661号); |
4. | 法規の作成に関するインドネシア共和国の法令2004年第10号(インドネシア共和国官報2004年第53号、インドネシア共和国官報補足第4389号); |
5. | 輸出、輸入及び外貨取引の実施に関するインドネシア共和国の政府の規定1982年第1号(官報1982年第1号、官報補足第3210号)。本政府の規定は、インドネシア共和国政府の規定1985年第24号によって改正されている(インドネシア共和国官報1985年第33号、官報補足第3291号); |
6. | 海外貿易の分野における商業大臣の任務と責任の確認に関するインドネシア共和国大統領の決定文書1967年第260号; |
7. | インドネシア統一内閣の結成に関するインドネシア共和国大統領の決定文書2004年第187/M号。本決定文書は、インドネシア共和国大統領の決定文書2005年第171/M号によって改正されている; |
8. | インドネシア共和国国務大臣府の立場、任務、機能、権限、組織編成及び業務体制に関するインドネシア共和国大統領の規定2005年第9号。本規定は、数回の改正を経て、最終的にはインドネシア共和国大統領の規定2008年第20号によって改正されている; |
9. | インドネシア共和国国務大臣府エセロンI(総局長級)の組織ユニットと任務に関するインドネシア共和国大統領の規定2005年第10号。本規定は、数回の改正を経て、最終的にはインドネシア共和国大統領の規定2008年第21号によって改正されている; |
10. | 輸出分野における一般規定に関する商工大臣の決定文書第558/MPP/Kep/12/1998号。本決定文書は、数回の改正を経て、最終的には商業大臣の規定第01/M-DAG/PER/1/2007号によって改正されている; |
11. | 商業省の組織と業務体制に関するインドネシア共和国商業大臣の規定第01/M-DAG/PER/3/2005号。本規定は、商業大臣の規定第34/M-DAG/PER/8/2007号によって改正されており。 |
12. | 輸出分野における通関規定に関するインドネシア共和国財務大臣の規定第145/PMK.04/2007号; |
以下の規定を制定する:
インドネシア共和国商業大臣の規定
(1) |
本大臣の規定の別紙Iにおいて記載されているパーム原油(CPO)及び鉱業製品の品目、別紙IIにおいて記載されているコーヒー、カカオ及びゴムの品目で、各物品輸出通知書(PEB)における輸出価格がUS$1,000,000を超える場合には、国内の外為銀行を通した信用状(L/C)の支払方法によって輸出を行う義務を有する。 |
(2) | 本大臣の規定の別紙I及び別紙IIにおいて記載されているような物品の輸出で、各物品輸出通知書(PEB)における輸出価格がUS$1,000,000以下の場合には、国内の外為銀行を通して、信用状(L/C)の支払方法又は国際取引において有効なその他の支払方法によって輸出を行うことができる。 |
第1条において示されるような物品の輸出についてのL/C又はその他の支払方法による輸出の結果(輸出売上高)は、国内の外為銀行を経由させて受領する義務を有する。
(1) | 第1条第(1)項において示される物品の輸出の実施に当たっては、その都度物品輸出通知書(PEB)にL/Cの番号と日付を記載する義務を有する。 |
(2) | 第1条第(2)項において示される物品の輸出の実施に当たっては、その都度物品輸出通知書(PEB)に以下の事柄を記載する義務を有する: |
(3) | L/Cの支払方法又はその他の支払方法;及び |
(4) | L/Cの番号と日付、及びもしあれば、その他の支払い書類の番号と日付。 |
物品輸出通知書(PEB)の使用が義務付けられていない、又はその他の法規によって別途に定められているような物品の輸出については、本大臣の規定は適用されないものとする。
(1) | 第1条において示される物品の輸出を行う輸出業者は、商業大臣、本件においては海外貿易総局長宛に、毎月、完全かつ正確な輸出実現報告書を提出する義務を有する。 |
(2) | 第(1)項において示される輸出実現報告書には、とりわけ本大臣の規定の別紙IIIにおいて記載されているような、物品輸出通知書(PEB)の番号、支払い方法、輸出の支払い結果(輸出売上高)を受領する国内の外為銀行の口座番号と名義を記載し、毎月、遅くとも翌月の10日までに提出する。 |
(1) | 本大臣の規定が施行された時点においてまだ有効な、海外の輸入業者との契約の期間中に行われた第1条第(1)項において示される物品の輸出については、2009年8月31日まで、商業大臣に対して、国内外為銀行を通したL/Cの支払い方法を用いた義務の遂行の猶予を求めることができる。 |
(2) | 第(1)項において示される猶予は、商業大臣、本件においては、海外貿易総局長が、省庁間のチームによる評価結果に基づいて与えることができる。 |
(3) | 第(2)項において示される省庁間のチームは、商業大臣によって結成される。 |
(1) | 国内の外為銀行を通したL/Cの支払い方法を用いる義務は、以下の輸出が対象となる: | |
a.2009年4月1日から実施される、第1条第(1)項において示されるパーム原油(CPO)及び鉱業製品の品目の輸出; | ||
b.2009年9月1日から実施される、第1条第(1)項において示されるコーヒー、カカオ及びゴムの品目の輸出。 | ||
(2) | 第(1)項bにおいて示される物品の輸出については、2009年4月1日から2009年8月31日までの期間においては、L/Cの支払い方法又は国際取引において有効なその他の支払い方法を使用することができ、国内の外為銀行を経由させて受領する義務を有する。 | |
(3) | 物品輸出通知書(PEB)におけるL/Cの番号と日付の記載義務は、以下のような輸出が対象となる: | |
a. | 2009年4月1日から実施される、第(1)項aにおいて示されるような物品の輸出; | |
b. | 2009年9月1日から実施される、第(1)項bにおいて示されるような物品の輸出。 | |
(4) | 2009年4月1日から実施される、第(1)項b及び第1条第(2)項において示されるような物品の輸出については、物品輸出通知書(PEB)に以下の項目を記載する義務を有する: | |
a. | L/Cの支払方法又はその他の支払方法;及び | |
b. | L/Cの番号と日付、及びもしあれば、その他の支払い書類の番号と日付。 |
第1条(1)、第2条、第3条、第5条及び第7条における規定に違反した輸出業者には、本大臣の規定の別紙I及び別紙IIにおいて記載されているような物品の輸出の差し止め処分、及び/或いは現行法規に基づいたその他の処罰が科されるものとする。
第8条において示されるような輸出業者は、第1条第(1)項、第2条、第3条、第5条及び第7条において示されるような規定を満たした場合には、本大臣の規定の別紙I及び別紙IIにおいて記載されているような物品の輸出を再開することができる。
別紙I、別紙II及び別紙IIIは、本大臣の規定から切り離すことのできない一部となる。
本大臣の規定のより詳細に渡る規定については、商業省海外貿易総局長が定めることができる。
本大臣の規定が施行された時点で、信用状の使用が義務付けられる物品の輸出に関する商業大臣の規定第01/M-DAG/PER/1/2009号は取り消され、無効となる。
本大臣の規定は、制定日より有効となる。
各人に本規定の内容を知らせるため、本大臣の規定を、インドネシア共和国官報に掲載することによって公告することを命じる。
ジャカルタで 2009年3月5日に制定された インドネシア共和国商業大臣 マリ・エルカ・パンゲストゥ |
本写しは、原本の内容と一致する。
商業省
事務局
法律局長
署名
ウィドド
パーム油(CPO)及び鉱業製品の品目
|
No. |
TARIF/HS |
品名 |
Ⅰ 1.
Ⅱ
2. 3. 4. 5.
6. 7. 8. 9.
10. 11.
12.
13. 14. 15.
16. 17. |
1511.10.00.00
26.01
2601.11.00.00 2601.12.00.00 2601.20.00.00 2602.00.00.00
2603.00.00.00 2604.00.00.00 2606.00.00.00 2607.00.00.00 26.15 2615.10.00.00 2615.90.00.00 27.01
2701.11.00.00 2701.12 2701.12.10.00 2701.12.90.00 2701.19.00.00 80.01 8001.10.00.00 8001.20.00.00 |
パーム原油(CPO) ---粗パームヤシ油
鉱業製品 鉄鉱(精鉱及び焼いた硫化鉄鉱を含む) -鉄鉱(精鉱を含むものとし、焼いた硫化鉄鉱を除く) --凝結させてないもの --凝結させたもの -焼いた硫化鉄鉱 マンガン鉱(精鉱を含む)及び含鉄マンガン鉱(精鉱を含むものとし、マンガンの含有量が乾燥状態において全重量の20%以上のものに限る) 銅鉱(精鉱を含む) ニッケル鉱(精鉱を含む) アルミニウム鉱(精鉱を含む) 鉛鉱(精鉱を含む) ニオブ鉱、タンタル鉱、バナジウム鉱及びジルコニウム鉱(精鉱を含む) -ジルコニウム鉱(精鉱を含む) -その他のもの 石炭及び練炭、豆炭その他これらに類する固形燃料で石炭から製造したもの
-石炭(粉状にしてあるかないかを問わないものとし、凝結させたものを除く) --無煙炭 --歴青炭 ---燃料用炭 ---その他のもの --その他の石炭 錫の塊 -錫(合金を除く) -錫合金 |
本資料は、JOGMECが仮訳したものです。正確な翻訳に努めましたが、内容の正確性、安全性については保証いたしかねます。正確な理解のため、原文(下記URL)を参照することをお勧めいたします。また、JOGMECは、本資料に起因して生ずるいかなる業務上の責めを負うものではありません。信用状の使用が義務付けられる物品の輸出に関するインドネシア商業大臣規定2009年第10号(インドネシア語) http://www.depdag.go.id/index.php?option=regulasi&task=detil&id=1084&file=htm (2009.3.26現在のURL。1回のクリックで商業省HPの入口に行く場合があります。この場合は、商業省HPの中に進んでから、再度上記URLをクリックしてください。) |

