閉じる

報告書&レポート

2009年6月11日 ロンドン事務所  竹谷正彦
2009年29号

ICSG総会(2009年春季・定期会合)概要報告

 2009年4月20日~4月24日の間、リスボンにおいて国際非鉄金属研究会(銅、ニッケル、鉛・亜鉛)の定期会合、銅研究会については総会が開催された。
 今回の銅研究会には、加盟国16ヶ国・地域、オブザーバーとして、豪州、ブラジル、トルコが参加、この他に、銅関係の政府・民間関係者が参加して開催された。日本からは、JOGMECの他日系企業(2社)が参加した。今回は4月20~21日の2日間の定期会合で産業アドバイザリーパネル、統計委員会、環境経済委員会及び総会等が開催された。なお、次回会合は、2009年10月5日(月)~9日(金)にリスボンで開催される予定となった。以下、本稿では今回の会合の国際非鉄金属研究会本部で開催された概要について報告する。
(以下、数値の桁は”百万”を”m”、”千”を”k”と表記する。)
参考:国際研究会ウエブサイト http://www.icsg.org/

1. 統計委員会
1-1. 2009・2010年の世界の銅需給見通し
 2009・2010年の銅需給について議論され、以下の研究会の予測が発表された。
 2009年の銅鉱石生産は、稼働率が1989年以降最低の81%となり、北米(-4.5%)等において減少が見込まれるものの、アフリカ地域、アセアン(10か国)地域においてぞれぞれ前年比21.1%、38.4%と伸びが予想され、全体として、590kt増の16.04mt(前年比+3.8%)になると予測。2010年は、新規開発や操業の強化により増産が見込まれ、1.2mt増の17.24mt(前年比+7.5%)と予測。
 2009年の銅地金(一次+二次)生産は、世界的な銅スクラップの不足が影響し670kt減の17.54mt (前年比-3.7%)と予測。2010年には、設備稼働率の改善も見込まれるため1.18mt増の18.75mt(前年比+6.7%)と予測。
 2009年の銅地金消費は、765kt減の17.23mt(前年比-4.3%)と予測。これは、アフリカ地域(前年比+3.9%)の増加が見込まれるものの、世界経済の悪化により銅地金需要が著しく減少し、特に北米地域(前年比-11.7%)及びEU(27カ国)(前年比-10.8%)と大きく減少している。なお、中国では5.36mt(前年比+3.1%)が見込まれている。2010年には全ての地域で消費回復が見込まれ、1.10mt増の18.33mt(前年比+6.4%)と予測。
 以上のことから、2009年の銅地金需給バランスは、345ktの供給過剰、2010年は、418ktの供給過剰と予測した。

表 1. 銅鉱石生産量、地金生産、消費量の見通し (2008 ~ 2010 年 )
( 単位: kt)
  銅鉱石生産 銅地金生産量 銅地金消費量
地域 2008 2009 2010 2008 2009 2010 2008 2009 2010
アフリカ 950 1,150 1,449 583 788 1,035 286 297 344
北米 2,181 2,084 2,179 2,009 1,950 1,976 2,470 2,182 2,303
中南米 6,969 7,079 7,450 3,777 3,948 4,075 592 574 593
ASEAN(10 カ国 ) 768 1,063 1,255 496 498 548 758 731 742
アジア (ASEAN ・ CIS 以外 ) 1,484 1,459 1,509 6,786 6,783 7,354 8,699 8,669 9,308
アジア (CIS) 530 517 517 488 450 480 140 137 140
EU(27 か国 ) 709 735 834 2,562 2,553 2,680 3,830 3,444 3,666
欧州 ( その他 ) 813 823 853 1,041 1,015 1,085 1,067 1,046 1,086
オセアニア 1,045 1,125 1,195 503 502 502 152 149 151
世界計 ( 調整前 ) 15,450 16,035 17,239 18,244 18,486 19,734 17,995 17,230 18,333
製錬原料不足の調整         -319 -234      
生産障害の差引         -593 -748      
世界計 ( 調整後 ) 15,450 16,035 17,239 18,244 17,574 18,751 17,995 17,230 18,333
対前年比 ( % ) -0.1 % 3.8 % 7.5 % 1.7 % -3.7 % 6.7 % -1.0 % -4.3 % 6.4 %
地金生産・消費バランス             249 345 418
( 出典: ICSG2009 年 4 月 21 日付けプレスリリース )

図1.世界の銅地金生産・消費量の推移と予測


図2.世界の銅地金需給バランス

表2 世界の銅地金需給バランス(2006~2010年)
(単位:kt)
  2006 2007 2008E 2009P 2010P 増減
‘08/’07 ‘09/’08 ‘10/’09
生産量 17,295 17,944 18,244 17,574 18,751 1.7 % -3.7 % 6.7 %
消費量 17,042 18,175 17,995 17,230 18,333 -1.0 % -4.3 % 6.4 %
需給バランス 253 -231 249 345 418      
(E :見込み、 P :予想 )

1-2.講演
(1)BGRIMM(北京鉱冶研究総院)、Li Lan氏 ”The Chinese Copper Industry During the Global Crisis”

 本講演では、以下のテーマについて、中国政府による銅産業支援策に係る講演を行った。
 [1]中国のリーディングカンパニー(Chinalco等)による海外投資への支援
 [2]中国銅企業の統合
 [3]製錬所のスクラップ&ビルド

  [1]の企業支援については、ChinalcoのToromochoプロジェクト(ペルー)やChina MinmetalsのGalenoプロジェクト(ペルー)に対し、中国輸出入銀行(the Export and Import Bank of China)や中国開発銀行(China Development Bank)が支援し、また、CNMC(China Nonferous Metal Mining (Group) Co.ltd)のアフリカ投資についても政府が支援している。

[2]の企業の統合については、2011年時点で中国の銅生産の90%を占めるような3~5社の企業グループへの再編を目標としている。
 また、[3]の製錬所のスクラップ&ビルドについては、今後3年間で旧式技術の製錬所(生産能力300kt/年)を廃止し、新技術を導入した製錬所(生産能力約900kt/年)を新設し、銅製錬の効率化と能力増強を行う計画である。
 また、中国における2009年の銅地金の生産は少なくとも3.85mtと前年比2%増加する見込みで、その内訳として、一次銅は7%増となるものの、二次銅は、新規プロジェクトの遅れやキャンセルにより10%減が見込まれ、総じて2%増となる見込みである。
 中国の銅地金の消費は2009年に5.36mtと前年比6.5%の増加が見込まれ、これは、世界的なスクラップの発生減とその輸入の減少により、主に銅加工業者が原材料の確保が困難となり、その代替として銅地金を使用するためである。
 2010年の見込みについて具体的な数値の発表はなかったが、銅地金の生産については前年比9%の増加、消費についても同5.8%の増加を予想している。

 [1]の企業支援については、ChinalcoのToromochoプロジェクト(ペルー)やChina MinmetalsのGalenoプロジェクト(ペルー)に対し、中国輸出入銀行(the Export and Import Bank of China)や中国開発銀行(China Development Bank)が支援し、また、CNMC(China Nonferous Metal Mining (Group) Co.ltd)のアフリカ投資についても政府が支援している。

 [2]の企業の統合については、2011年時点で中国の銅生産の90%を占めるような3~5社の企業グループへの再編を目標としている。
 また、[3]の製錬所のスクラップ&ビルドについては、今後3年間で旧式技術の製錬所(生産能力300kt/年)を廃止し、新技術を導入した製錬所(生産能力約900kt/年)を新設し、銅製錬の効率化と能力増強を行う計画である。
 また、中国における2009年の銅地金の生産は少なくとも3.85mtと前年比2%増加する見込みで、その内訳として、一次銅は7%増となるものの、二次銅は、新規プロジェクトの遅れやキャンセルにより10%減が見込まれ、総じて2%増となる見込みである。
 中国の銅地金の消費は2009年に5.36mtと前年比6.5%の増加が見込まれ、これは、世界的なスクラップの発生減とその輸入の減少により、主に銅加工業者が原材料の確保が困難となり、その代替として銅地金を使用するためである。
 2010年の見込みについて具体的な数値の発表はなかったが、銅地金の生産については前年比9%の増加、消費についても同5.8%の増加を予想している。

(2)Bloomsbury Minerals Economics Ltd. Paul Dewinson 氏”The Collaspe in Copper Consumption :How Long? How Deep? Will the Copper Industry Be Ready for the Recovery?”
 銅消費の落込みに関する今後の見通しについて講演した。
銅の供給が過剰で、マクロ経済に対して、現在の銅価は非常に高く、このまま高い銅価で推移するとは予想していない。銅価は3500US$/tあるいはここ数か月のうちにそれ以下になると思われる。2009年の中頃が景気サイクルの底と予想する。銅消費の本格的な回復はそれ以降となり、本格的消費回復を迎えるのは、2010年のゆるやかな回復後、2011年になると思われる。2009年後半~2010年は銅産業界にとって厳しい年であるが、殆んどの鉱山で採算割れは起こらない。
 2010/11年の消費の回復の際に、鉱石の生産が追いつかずに、精鉱が不足する可能性がある。現在、投資を控えれば、需要の回復時に生産開始を早めることが困難になる。現在では、銅の価格下落の一方で、生産コストも減少している。この状況は、2011/12年に予想される価格回復の際に、2006~2008年よりも銅価が低い状況であっても、企業に高い収益をもたらすことになる。

2. 産業アドバイザリーパネル(IAP)
2-1銅スクラップ調査
 世界の銅スクラップの使用量は2007年に1%増加し8.2mt超に達した。これには2.7mtの二次銅(前年比5%増)と5.5mtの直接溶融(Direct melt)(前年比1%減)が含まれる。2007年にスクラップの直接溶融は減少し、その結果、米国、日本、イタリア、韓国、フランス他で銅製品全体の生産が減少した。2007年の中国のスクラップの直接溶融は108ktであった。しかし、中国のリサイクル原料供給率(Recycling Input Rate:スクラップ及び他の低濃度で金属を含有する残渣物から生産される金属、金属製品の地金生産に占める割合)は2007年には36%となり2006年から減少している。
 2007年の主要なスクラップ使用国は、中国、米国、日本、イタリア、韓国、ドイツ(旧西独)が含まれ、上位10カ国で世界の約82%(前年比4%増)を占めている。全世界のリサイクル原料供給率は35%であり、地域別のサイクル原料供給率として欧州(ロシア含む)41%、アジア34%、北米32%、その他16%となっている。

22銅スクラッププロジェクトの現況
[1]中国、ロシア、インドにおける最終スクラップ市場報告を2009年5~6月に販売開始予定。
[2]日本における国際貿易と銅スクラップ市場報告書作成については、MERI/J(日本メタル経済研究所)と契約を締結し、2009年10月に完成予定。
[3]中国における銅スクラップ使用の調査については、BGRIMM(北京鉱冶研究総院)と契約を締結。
[4]世界(中国、ロシア、インド、日本を除く)における、銅や銅合金プラントにおける銅スクラップ使用報告について米国のNathan Inc.と契約する予定。

3. 環境経済委員会
 本委員会では、現在の経済危機が銅産業に与える影響についての講演が行われた。また、2009年の銅と銅合金製品の生産能力に関する報告が行われ、事務局より、中国については生産能力等明らかになっていない点が多く、これに対応するため、中国の銅製品生産能力データベース改良が提案された。

31.ICSG事務局Carlos Risopatron 氏 “Impact of the Economic Crisis in the Copper Market”
 2005年~2009年の世界と中国の銅市場は、金融市況の影響を受けながら推移した。金融市況が好況な時には、銅市場にも投機マネーが流入し、銅価が上昇し、新規開発プロジェクトも推し進められたが、2008年の金融危機以降には、銅価の下落や資金調達の困難なプロジェクトの延期や中止が発生した。この間、新スクラップの発生が減少し、古スクラップのリサイクルも減少したことにより、二次銅の供給が減少し、銅生産に影響を及ぼした。2009~2010年の短期的な銅供給見込みは、銅の価格低下と信用収縮により鉱石生産が1.43mt減少し、地金の生産も221kt減少すると予想されている。また、SxEwプラントの長期投資計画が影響を受け、2010年の新規生産能力が減少すると見込まれる。今後5年間については、消費の低迷から製錬所や電解精錬所の生産能力が過剰となる可能性がある。
 中国の銅加工企業は2009年Q1に輸入スクラップが不足したため、一次銅の使用を増加することとなった。このため、銅地金の需給がタイトとなり、銅価格が下支えさられた。
 しかしながら、2009年の世界のGDPは景気の低迷から悪化しており、銅消費も減少する見込みである。世界の銅の余剰生産能力は高く、その一方で、中国では消費拡大が見込まれる。もし、仮に、銅地金の価格が維持されれば、古スクラップは需要の旺盛な中国に流出し、景気の低迷する中国以外の国では、消費低迷により生産活動も落ち込むことから新スクラップの発生は減少すると見込まれる。
 現在、銅供給部門への投資が減退しているため、今後、銅の消費が回復したときに、この投資不足が供給のボトルネックとなるが、この点は現在顕在化していない。

32.ICSG事務局Carlos Risopatron 氏“Directory of Copper and Copper Alloy Fabricatores 2009”
 2008年の銅生産能力とそれ以降の傾向について報告があった。それによれば、銅と銅合金製品の生産能力は2008年に44.7mt(前年比8.8%増)となり、2009年も増加する見込み。2008年のワイヤーロッド製造プラントの生産能力は21.8mt(前年比8.3%増)に増加し、その他の銅の一次ユーザーの生産能力は全体で22.9mt(前年比9.2%増)となった。世界的には、その他の使用として、特にブラスミルの生産能力が2008年において、より早く増加しているものの、ワイヤーロッドの生産能力の拡大に比べれば低いレベルとなっている。2008年の新規操業の生産能力の大部分は、ワイヤーロッドプラントであり、ブラスミルにおける新規操業の生産能力は、ワイヤーロッドプラントの25%にも満たない。2009年には、新規プロジェクトのスタートにより世界の生産能力は46.8mtになり、2010年はさらに1mt増加し47.8mtに達する見込みである。

33.ICSG事務局Carlos Risopatron 氏“中国における銅製品生産能力データベース改良の提案”
 2009年の調査によれば中国には872箇所の銅加工工場(ブラスミル等)があり、その大部分が小規模工場である。その中には生産能力等が明らかでなく、工場の生産状況と能力についての情報の更新が2009/10年のデータベースの更新のために必要である。このために、中国のコンサルタント等( China Non Ferrous Metals Fabrication Industrial Association(CNFA), China Nonferrous Metals Industry Association (CNIA)等)とICSG事務局が連携して、2010年の銅の一次ユーザーの状況についてアップデートを行うこととし、報告書の完成時期を2010年10月とすることが事務局より提案され、了承された。

4. 会計委員会
 本委員会では、2008年会計監査報告、2008年決算報告、2010年予算等ついての報告、議論がなされた。

5. 常任委員会
 本委員会では、運営管理、メンバーシップ、会計について報告がなされた。
 議長にBhabhrawala氏(米国、U.S Department of Commerce)が選任した。

6. 総会
 総会では、研究会の前回総会、今回の各会合で承認された事項が確認された。
 また、トルコのナショナルステートメントが配布された。
 なお、Heimlich氏(チリ、COCHILCO)が銅委員会議長に就任した。
 次回会合は、2009年10月5~6日に国際金属研究会事務局(リスボン)にて開催する予定。

ページトップへ