報告書&レポート
セミナー報告『JOGMECリモートセンシングセミナー/ワークショップ 2009』その1-セミナー編-
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2009年7月27日から31日の5日間、Lobatse (ボツワナ共和国ロバッツェ市)にあるJOGMEC地質リモートセンシングセンターにおいて、同センター主催の『JOGMECリモートセンシングセミナー/ワークショップ 2009』が、南部アフリカ開発共同体(SADC)諸国)からの10か国約80名強が参加して開催された。 |
1. はじめに
2009年7月27日に、ボツワナ共和国Lobatse市にあるJOGMEC地質リモートセンシングセンター(以下、”リモートセンシング”は”リモセン”とする)において開催されたセミナーには、ボツワナ共和国鉱物エネルギー水資源省Gabaake G.・Gabaake次官、松山良一在ボツワナ日本国大使、ボツワナ地質調査所 Ngwisanyi Tiyapo 所長、南部アフリカ開発共同体(SADC)事務局 Alisoa Vololoniaina 鉱業担当、JOGMEC森脇久光理事ほかとSADC諸国からの10か国約80名強が参加した。
また、7月28日から31日までの4日間は、SADC諸国の技術者20余名を対象に実習を中心としたリモセン及びGIS技術移転のためのワークショップが行われた。
2. 主催者、来賓挨拶
『JOGMECリモートセンシング・セミナー/ワークショップ 2009』は、鈴木所長による「リモセンセンター開所から丸一年の記念すべき日にSADC諸国から多くの参加者を得て、セミナーを開催できることに感謝する」との開会宣言により開幕した。
(1)森脇久光JOGMEC金属資源本部長挨拶 -リモセンセンター事業について-
「我が国の南部アフリカ地域に対する資源外交は、2007年11月に日本の経済産業大臣及びボツワナ鉱物エネルギー水資源大臣立会いの下、JOGMECとボツワナ地質調査所との間の資源分野での協力に関する基本合意書の署名に始まり、2008年5月の横浜でのTICAD Ⅳを経て、2008年7月にはJOGMECボツワナ地質リモセンセンターの開所とそれに続く共同解析の実施、日本からの官民合同ミッション派遣と続いている。今回セミナーによってその活動がSADC諸国へと更に広がり、リモートセンシング共同解析を通じて、SADC諸国と日本の関係がより強まることを期待したい。」
(2)松山良一在ボツワナ日本国大使挨拶 -リモセンセンター事業と日本の資源外交-
「2008年のリモセンセンター開所式から1年、このように多くのSADC諸国が参加してセミナーが開催されたことを嬉しく思う。リモセンセンターの機能には、技術移転と人材育成が含まれていると認識している。日本のアフリカとの協力関係に関する方針は、TICADで示されているようにアフリカ諸国の自立した発展とそのための協力をしていくことである。リモセンセンターはこのような日本の方針に沿った事業であり、その成果を期待している。」
(3)Gabaake G.・Gabaake・ボツワナ共和国鉱物エネルギー水資源省次官挨拶
-リモセンセンター事業と今後への期待-
「ボツワナ地質調査所が協力して設立されたリモセンセンターでの活動が、SADC諸国へ広がることを嬉しく思う。そして、各国での人材育成や技術向上、生活水準の向上にもに貢献することを期待している。また、ボツワナでの最初の1年は技術移転が中心であったが、2年目の今年はその技術と成果を基に現地調査に出て行って、新鉱床を発見して欲しい。」
(4)Alisoa Vololoniaina SADC事務局鉱業担当挨拶
-リモセンセンター事業のSADC拡大への期待-
「セミナーを企画したリモセンセンター、ボツワナ地質調査所に感謝する。南部アフリカ地域は、まだ、十分な(経済)発展がなされていない。鉱業は地域と発展の重要な産業のひとつであり、SADCとしては、調和のとれた鉱業のための政策・枠組みの構築に努めている。鉱業への民間投資を促進するのもそのひとつである。リモセンやGISなどによる地質情報の整備と民間企業への提供は、SADC諸国の鉱業へのアクセスを容易にするものであり、リモセンやGISの技術移転を行うリモセンセンターの活動に期待している。」
3. ボツワナ地質調査所による2008年度リモセンセンター事業報告
セミナー最初の講演として、昨年度、リモセンセンターでの共同解析に参加したボツワナ地質調査所Lesole Lekgoa氏が2008年度の事業内容を紹介した。
同氏は、はじめに、リモセンセンター事業の経緯と、資源探査に利用されたLANDSAT, JERS-1, ASTER, ALOSなどの衛星と各種センサーの特徴について説明した。次に、鉱床生成メカニズムから熱水変質、地質構造、超塩基性岩などの特徴的な地質現象をリモセンで捕らえていくこと、更に、これらの地質現象をGISを用いて解析・統合してポテンシャル図を描き、リモセンとGISを用いた鉱床探査の方法を示した。
4. SADC諸国によるリモセンへの取組みに関する報告
セミナーに参加したSADC諸国の代表より、自国の地球科学データの取得・管理状況及び、リモセンとGISへの取組みが紹介された。
(1)ボツワナ共和国 -地質調査所(DGS) Tshoso Gomotsang氏-
ボツワナでの物理探査データの取得は、1970年代に英国の協力のもと重力・地震探査・磁気データに始まる。1980年代には、英国、ドイツ、カナダ、オランダ、豪州、スウェーデンなどの協力により北西部で衛星画像の取得が始まった。1990年代には、米国の協力で世界的な地震探査網の中に組込まれ、また、高分解能の空中磁気データが官民それぞれによって取得された。2000年代には、地下浅所の探査を目的とした空中電磁気探査が行われている。
(2)レソト王国 -地質調査所(DMG) Ngakane Pius Ngakane氏-
レソトのリモセンやGISの現状は、データベースの構築を始めた段階である。GIS部署では、機材やソフトウェアを揃え、地質図のデジタル化を進めている。また、国連開発計画(UNDP)の協力により、地化学異常図を作成して探査に利用している。その他、重力・地震探査・空中物理探査などのデータを取得しているほか、現地調査にGPSを用いてデジタル化を進めている。
リモセンやGISは、調査の意思決定に役に立っているが、今後は、GISの特性を理解して、この技術を活用できる人材育成が課題である。
(3)マラウィ共和国 -地質調査所(GSD) Charles Freinderson Kankusi氏-
マラウィのリモセンやGISの現状は、機材やソフトウェアが導入されたものの、まだ、十分ではない。また、地質図は1950年代から各縮尺のものがあるが紙媒体であり、デジタル化されていない。地質や物理探査データはあるが、データの欠落がある。人材面ではリモセンやGIS技術を持つ者が民間企業に移籍してしまう。
今後は、鉱区管理で導入が始まったGISに対応できる人材の確保と鉱物資源分野への活用が課題。また、リモセンや航空写真技術の有効活用、そのためのリモセンとGISの専門部署の設置、SADC諸国との情報・データの共有が必要と考えている。
(4)モザンビーク共和国 -地質調査所(DNG) Alfredo Miguel Pontavida氏-
地質図は、各縮尺のものがあり、広域的なものは全土をカバーしている。物理探査データは、広域と高分解能の空中磁気、放射能データを取得、地質図作成に利用している。地化学データは企業が取得したものも含めて随時更新しており、過去のデータはGIS化を進め、地化学異常図を作成している。
また、衛星画像・写真・鉱床・鉱山・地質調査所レポート等で構成されるデータベース『鉱物資源情報システム』を構築している。
(5)ナミビア共和国 -地質調査所(GSN) Nguno Anna-Karren氏-
高分解能空中物理探査データを取得中、ウラン鉱床を含む鉱床地区では航空機によるハイパースペクトルを取得している。各縮尺の地質図の作成・更新中であり、この作業には衛星画像解析を利用している。鉱山地区の砒素、鉛等の有害元素の分布の把握など、リモセンとGISは鉱害防止にも利用されている。複数データを統合したデータベース”Earth Data Namibia System”を構築。
今後は、データアクセスの改善、データ欠落の防止、更新の迅速化、重複の防止などデータベースの質の向上を図りたい。
(6)南アフリカ共和国 -地質調査所(CGS) Engelbrecht Jeanine氏-
各縮尺の地質図をはじめ、鉱床図・地質構造図・広域重力図・広域空中磁気図・広域放射能図などを作成・提供している。CGSの活動は国内に留まらず、モザンビーク・マダガスカル・ガボン・ガーナ・モロッコなどアフリカ各国と協力して地質図などの作成・データ管理/提供・物理探査などを行っている。リモセン・GIS技術は、各種衛星・センサーからの衛星画像や航空写真などを解析し、ダイヤモンドなどの鉱床探査や地質図作成に利用している。
今後は、マルチスペクトル・ハイパースペクトルデータの利用も進めて行きたい。
(7)タンザニア共和国 -地質調査所(GST) Bushi Alphone Michael氏-
国による地球科学データ提供体制を2025年までに整えて、鉱床探査・防災・環境保全に役立てたいと考えている。地質データとしては、地質図のほか鉱床鉱徴地データベースがある。物理探査データには、全国をカバーした低分解能空中磁気のほか高分解能空中磁気データの取得を行っている。放射能データも全国をカバーしており、ウラン探査に利用されている。リフト構造を解析するための地震データの取得も進められている。
今後は、現在、限定的な利用に留まっているリモセンやGISの活用、1923年から蓄積している古い紙媒体のデジタル化、これらデータへのアクセスの改善に努めたい。
(8)ザンビア共和国 -地質調査所(GSD) Kennedy Liyungu氏-
リモセンは、航空写真やステレオ写真を使って地形や地質境界を決めるなどの初期段階である。地質図の整備は踏査を中心に進めて国土の60%程度をカバーしている。1990年代にリモセン技術が導入されて野外調査のフォローアップとして利用が始まった。リモセンやGISに必要な機材やソフトウェアも導入が進み鉱床鉱徴地データベースも構築した。
今後は、データベースの質の向上、データ更新、リモセンとGISの地質図作成等への利用、人材育成などを進める必要がある。
(9)ジンバブエ共和国 -地質調査所(ZGS) Hawadi Temba Mabasa氏-
地質調査は1910年頃から進められ、全土をカバーするものから詳細なものまで整備されている。物理探査、地化学データの取得も継続している。過去の各種地質データ(文献)の電子化(スキャン)はほぼ完了しており、絶版となったものもソフトコピーとして提供できる。地質図は約30%がデジタル化(ベクトル形式)されている。また、金・ダイヤモンド・ベースメタルなど各鉱種のデータベースを構築、GIS化も進んでいる。物理探査データも整理されている(この作業には、MMAJ-JICA事業が役に立っている)。
5. 最新の衛星画像解析技術 -ERSDAC 藤田 勝氏、三菱マテリアルテクノ㈱ 百瀬 敦氏-
セミナーでは、日本の衛星画像解析技術の紹介として、これまでに資源探査をはじめとして広く利用されてきたJERS-1, ASTERや、2006年に打ち上げられた陸域観測技術衛星だいち(ALOS)に搭載されている最新のセンサーPALSAR(フェーズアレイ方式Lバンド合成開口レーダー)、PRISM(パンクロマティック立体視センサー)、AVNIR-2(高性能可視近赤外線放射計2型)とその利用技術開発の現状が紹介された。
6. おわりに
『JOGMECリモートセンシングセミナー/ワークショップ 2009』にはSADC諸国から9か国(遅れてアンゴラから2名が参加して10か国)の地質技術者が参加した。リモセンセンター開所からわずか1年後に開催したセミナーにこのように多くの国の参加を得られたことは、同センター事業へのSADC諸国の関心と期待の現れであり、今年度から事業をSADC諸国に拡大するに当り、手応えのある第一歩となった。期日の経過と共に参加者間の交流も深まり、互いに連絡先を交換し合うなど、最後は”修学旅行“のような雰囲気となった。
ワークショップの最後はSADC諸国を快く受け入れてくれたNgwisanyi Tiyapoボツワナ地質調査所長の挨拶に引き続き、参加者を代表してHawadi Temba Mabasaジンバブエ地質調査所長から「今回、ここLobatseで我々は初めて出会った。これをきっかけに互いに交流を深め、そしてSADC諸国においてプロジェクトを実施できるようになることを祈念する。」との言葉で5日間の全スケジュールを終了した。
| 表1 セミナー・プログラム |
| (司会)鈴木リモセンセンター所長 |
| 時間 | 内 容 | 講演者 |
| 9:30~9:40 9:40~9:50 9:50~10:00 10:00~10:10 10:10~10:30 10:30~10:50 |
挨拶1「リモセンセンター事業について-」 挨拶2「リモセンセンター事業と日本の資源外交」 挨拶3「リモセンセンター事業の成果と今後への期待」 挨拶4「リモセンセンター事業のSADC拡大への期待」 講演1「ボツワナ地質調査所による2008年度共同解析結果」 講演2「ボツワナ・リモセンセンター事務局カントリーレポート」 |
JOGMEC金属資源本部長―森脇久光 在ボツワナ日本国大使―松山良一 鉱物エネルギー水資源省次官 ―Gabaake G.・Gabaake SADC事務局鉱業担当 ―Alisoa Vololoniaina ボツワナ地質調査所 ―Lesole Lekgoa氏 ボツワナ地質調査所 ―Tshoso Gomotsang氏 |
| 10:50~11:10 | 休憩 | |
| 11:10~11:30 11:30~11:50 11:50~12:10 12:10~12:30 |
講演3「レソト・カントリーレポート」 講演4「マラウイ・カントリーレポート」 講演5「モザンビーク・カントリーレポート」 講演6「ナミビア・カントリーレポート」 |
レソト地質調査所 ―Ngakane Pius Ngakane氏 マラウイ地質調査所 ―Charles Freinderson Kankusi氏 モザンビーク地質調査所 ―Alfredo Miguel Pontavida氏 ナミビア地質調査所 ―Nguno Anna-Karren氏 |
| 12:30~14:00 | 昼食 | |
| 14:00~14:20 14:20~14:40 14:40~15:00 |
講演7「南アフリカ・カントリーレポート」 講演8「タンザニア・カントリーレポート」 講演9「ザンビア・カントリーレポート」 |
南アフリカ地質調査所 ―Engelbrecht Jeanine氏 タンザニア地質調査所 ―Bushi Alphone Michael氏 ザンビア地質調査所 ―Kennedy Liyungu氏 |
| 15:00~15:15 | 休憩 | |
| 15:15~15:35 15:35~15:55 15:55~16:00 |
講演10「ジンバブエ・カントリーレポート」 講演11「最新の衛星画像解析-“だいち“-」 挨拶 |
ジンバブエ地質調査所 ―Hawadi Temba Mabasa氏 ERSDAC ―藤田 勝氏 三菱マテリアルテクノ(株)―百瀬 敦氏 ボツワナ地質調査所長 ―Lesole Lekgoa氏 |

写真1. セミナー全景

写真2. 鈴木リモセンセンター所長

写真3. 森脇JOGMEC金属資源本部長挨拶

写真4. 松山在ボツワナ日本国大使挨拶

写真5. Gabaake G.・Gabaakeボツワナ共和国鉱物エネルギー水資源省次官挨拶

写真6. Alisoa Vololoniaina 事務局鉱業担当挨拶

写真7. ボツワナ地質調査所 Lesole Lekgoa氏

写真8. ボツワナ地質調査所 Tshoso Gomotsang氏-

写真9. マラウィ地質調査所 Charles Freinderson Kankusi氏-

写真10. モザンビーク地質調査所 Alfredo Miguel Pontavida氏-

写真11. ナミビア地質調査所 Nguno Anna-Karren氏-

写真12. 南アフリカ地質調査所 Engelbrecht Jeanine氏-

写真13. タンザニア地質調査所 Bushi Alphone Michael氏-

写真14. ザンビア地質調査所 Kennedy Liyungu氏-

写真15. ジンバブエ地質調査所 Hawadi Temba Mabasa氏-

写真16. セミナー参加者集合写真


