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報告書&レポート

2009年8月20日 北京事務所長 土居 正典  潘 璟 企画調査部調査課長 上木 隆司
2009年42号

日中経済協力会議―内蒙古“省エネ・環境分科会”及び“投資貿易分科会”報告

 はじめに
 日中経済協力会議は、日中東北開発協会と(財)日中経済協会が主催し、本年2009年内蒙古会議で第9回を数える。急速な経済発展を遂げつつある中国にあって東北3省(遼寧省・吉林省・黒龍江省)及び、1区(内蒙古自治区)は、面積197万km2(中国の20.5%、日本の5.3倍)、人口1.3279億人(中国の9.8%、日本の1.04倍)、GDP5,180億US$(中国の8.4%、日本の11%)であり、広大な面積と日本とほぼ同数の人口・市場を有し、石炭・天然ガス・石油・鉄・レアアース等の豊富な鉱物資源を賦存することが着目される。
今回は、レアアース主要産地・包頭を有する内蒙古自治区の首府である呼和浩特(フフホト)市で開催されたことから、JOGMECは森脇久光 金属事業本部長・理事以下、筆者ら3名を派遣した。以下、本会議の状況を鉱業関連に焦点を当てて報告する。


図1. 中国東北3省(遼寧省・吉林省・黒龍江省)・1区(内蒙古自治区)

1. 会議の概要
1-1.経緯
本会議のこれまでの開催状況を表1に示す。

表1. 日中経済協力会議の開催状況   (参加者数単位:人)
開催年 開催地(省・市) 日本側参加者(現地) 中国側参加者 合計
2000 遼寧・瀋陽 59 (26) 48 107
2001 吉林・長春 77 (19) 32 109
2002 黒龍江・ハルピン 84 (27) 95 179
2003 (SARSにより中止)        
2004 日本・仙台 1100   700 1,800
2005 遼寧・瀋陽 177 (69) 238 415
2006 吉林・長春 136 (49) 302 438
2007 黒龍江・ハルピン 164 (93) 354 518
2008 日本・新潟 430   290 720
2009 内蒙古・呼和浩特(フフホト) 171 (71) 453 624
2010 遼寧・瀋陽(予定)        
(出典:会議資料)

 2000年の第1回以降、中国東北3省に2004年の仙台市、2008年の新潟市を含め過去8回を数え、第9回となる2009年は初の内蒙古自治区での開催となった。2010年は、遼寧省・瀋陽市での3回目の開催となり第3巡目に入ることとなる(開催地は毎回会議中に検討・協議され、2011年以降の開催地は未定)。

1-2. 全体会議(ラウンドテーブル)
 8月6日午前、内蒙古自治区の巴特尓(バトル)主席、日中東北開発協会清川祐二副会長、中国商務部代表からの挨拶に引き続き、全体会議(ラウンドテーブル)が開催された。
 中国東北3省・1区の代表から良好な経済成長状況、インフラ、投資環境等について説明され、更なる日本からの投資を省エネや環境分野を含めて歓迎する意向が表明された。
 日本側代表は、泉田 裕彦 新潟県知事、中野 節 秋田県副知事、(社)東北経済連合会 渡辺 奉宏 専務理事、JETRO中富 道隆 副理事長、三井物産㈱
副島 利宏顧問であり、日本海横断国際フェリー※ (韓国・束草~新潟~ロシア・ザルビノのV字型航路)の就航による投資促進への期待、日本の東北地方は従来より製錬所や技術が集中し都市鉱山・金属リサイクルの拠点となっていること、中国の資源と日本の技術との融合が期待されること、中国における大規模な経済発展計画や豊富な資源などから、更なる日本側の投資余地があることなどが説明された。
 なお、会議は全て同時通訳にて進行された。

写真1. 開幕式~全体会議 (8月6日午前)

1-3. 分科会
 8月6日午後、[1]省エネ・環境、[2]投資貿易、[3]緑色農業、[4]運輸・観光の各分科会が開催された。中国側からは、各省・区の投資環境状況の説明がなされ、日本企業代表からは主に中国東北3省・1区での投資実績状況について紹介された。金属精製・リサイクル関連の発表があった上記[1]及び[2]の分科会に参加したが、その概要については後述する。


写真2. 投資貿易分科会(8月6日午後)

2. 中国東北3省・1区の良好な経済発展
 急成長を遂げている中国の中にあって、中国東北3省・1区の経済成長率の高さが注目されている。特に内蒙古自治区の経済成長率は高く(2008年17.2%)2002年から7年連続して中国全省・区中、第1位となっている(表2参照)。

表2. 中国東北3省・1区の経済実績 (2008年速報値)
 省・区 遼寧 吉林 黒龍江 内蒙古 合計/平均
GDP(億元) 13,462 6,424 8,310 7,762 35,958
GDP(billion US$) 194 92 120 112 518
対前年比(%) 13.1 16 11.8 17.2 14.2
<産業別内訳(億元)>  
 第1次産業 1,302 917 1,089 907 4,215
 第2次産業 7,512 3,065 4,366 4,271 19,214
 第3次産業 4,648 2,443 2,855 2,584 12,529
<産業別対前年比(%)>  
 第1次産業 6.3 9.5 8.2 7.5 7.7
 第2次産業 15.5 17.2 12.1 20.5 16
 第3次産業 11.2 16.7 12.4 15.5 13.4
<産業構成割合(%)>  
 第1次産業 9.7 14.3 13.1 11.7 11.7
 第2次産業 55.8 47.7 52.5 55 53.4
 第3次産業 34.5 38 34.4 33.3 34.8
人口(万人) 4,306 2,734 3,825 2,414 13,279
一人当りGDP(元) 31,259 23,514 21,727 32,214 27,078
   〃    (US$) 4,501 3,386 3,128 4,638 3,899
面積(万km2) 14.6 18.7 46 118.3 197.6
〔出典:会議資料、対US$レートは6.9451元/US$(日中経済ジャーナル2009年7月号)〕

3. 内蒙古自治区の著しい経済成長と鉱物資源
 経済成長著しい内蒙古自治区のGDPの推移を図1に示す。


図1. 内蒙古自治区のGDP推移  (出典:会議資料)

 中国国内随一とされる内蒙古自治区の経済成長率は、特に豊富な石炭、天然ガスやレアアース資源に支えられている。表3には同区の鉱産量、表4には埋蔵量・資源量を示す。表3に併記された2008年生産量の対前年比伸び率を見ると、石炭、天然ガス、非鉄金属、鉄鋼、セメント生産量の大幅な伸びが注目される。
 石炭は、包頭市周辺に賦存し露天掘採掘されている。
 天然ガスはオルドス市に賦存し、中でも蘇里格ガス田は中国最大とされる。
 レアアースは、包頭に世界最大のレアアース鉱床とされるバイユン・オボ(Bayan Obo)が存在し、磁鉄鉱鉱床に酸化希土類、酸化ニオブが伴う。

表3. 内蒙古自治区の鉱産量
  2008年生産量 対’07年比伸び率(%)
石炭(万t) 47,212 30.2
石油(万t) 175 4.5
天然ガス(億m3) 100 27.7
発電量(億kWh) 2,115 11.5
鋳鉄(万t) 1,257 0.1
鋼(万t) 1,211 18.6
鉄合金(万t) 304 -0.2
10種非鉄金属(万t) 167 25.8
セメント(万t) 3,424 23.4
※希土類の生産データに関し中国側資料に記載無いが、年産7万tとされる。

表4. 内蒙古自治区の埋蔵量・資源量
  埋蔵量 資源量
石炭(億t) 6,583.4 ≧10,000
石油(億t) 3.11 30~40
天然ガス(億m3) 7,000 ≧10,000
希土類(億t) 8,390~10,000  
10種非鉄金属(万t)※ 2,139  
10種非鉄金属とは、銅、鉛、亜鉛、タングステン、錫、モリブデンなど。
文中には2,539.5万tの数値もある。

 
4. 省エネ・環境分科会
4-1. 日本側発表
富士電機企業管理(上海)有限公司 三木広志副総経理: 風力発電に関する課題として、[1]大容量化をはじめとするコストダウン、[2]直接駆動などによる信頼性向上、[3]電機・機械両面の効率向上、[4]系統連系のための安定化を挙げ、具体的な技術・納入事例の紹介があった。

㈱日立プラントテクノロジー経営戦略本部 伊藤真実 本部長付: 21世紀は水の世紀であり、世界市場規模(設備及び管理・運営)は、2025年に100兆円規模と見込まれるが、大きな部分を占める管理・運営事業ノウハウ研究のため協議会を立ち上げたこと、また下水再利用及び農村の環境対策につき報告があった。

同和鉱業㈱上海代表処・中国営業推進責任者 菊池健二代表: 都市鉱山の概念、同社が行う資源再利用、家電リサイクル、廃棄物処理及び土壌浄化各事業・技術及び2003年、江蘇省蘇州市に設立した金属リサイクル工場の紹介がなされた。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 気賀澤孝二 北京事務所長: これまで中国で実施してきた[1]省エネ技術普及(16工場)、[2]石炭のクリーン利用(20件)、[3]太陽光発電(5箇所)、[4]水問題・砂漠化等に対処した環境対策(毎年2~3件)、[5]地球温暖化対策の各事業の報告があった。

 分科会の最後には、『汚染発生源である各者に対策責任がある』との認識が示された。

4-2. 中国側発表
(1)中国企業代表
包頭鋼鉄集団 李春龍副社長: 「高炉等より発生したガスの回収・利用により自家発電を行い、年間4万tの石炭を節減、また薄板工場加熱炉で転炉ガスを利用するなど省エネを図っている。また発生したスラグより道路路盤材、舗装材などを製造して資源を再利用している。更に廃水処理水の循環・再利用により、280万t/年の上水を節減した」との報告があった。
(2)各省及び市の代表
 次の各氏から省・市レベルでの第11次5か年計画で定められた省エネ・環境目標に関する取組みについて実績報告があった。
黒龍江省環境保護庁 孫慶民処長
ハルビン市環境保護局 張基晴氏
吉林省発展改革委員会 劉非氏
遼寧省環境庁副庁長
 各省・市とも目標値達成のため、旧式設備で操業する中小企業の閉鎖を進めているほか、新技術導入や汚染発生源への責任強化を図っている。
 また、亜硫酸ガス対策に苦心しており技術支援を求めている。金融危機により世界各国の経済が停滞する中、唯一順調に経済発展している中国にあって、3省・1区ともGDPは順調に発展し中国内上位に位置付けられるものの、国からの補助は25%であり、残りを地方が資金調達しなくてはならないため、出資など資金面での協力を求めている。
 そのほか、瀋陽市及び大連市の代表よりリサイクル事業や『大連日本環境・省エネ・テクノパーク』の紹介がなされた。

5. 投資貿易分科会
5-1. 日本側発表
昭和電工㈱ 海老沼 彰 レアアース事業部長・包頭昭和稀土高科新材料有限公司薫事長: 磁石合金製造合弁会社の設立状況及び、現在発展状況について紹介し、日本企業は、エレクトロニクス、自動車産業などハイテク分野において、日中間の資源と技術を融合とより緊密な関係構築により、更なる発展が可能となると説明された。投資する立場からは、進出の際の優遇措置も重要であるが政策変更による競争力喪失が最も懸念されること、レアアース産業による更なる拡大・成長に向けた政策の一貫性や一元化(※)、知的財産権の尊重に係る制度整備が提言された。

〔※政策の一貫性等について:補足〕
 2006年11月以降、希土類鉱石、希土類 金属にも輸出税が10%課税され、2007年には鉱石に15%課税されるなど課税対象が拡大し、2008年には税率が15%、あるいは25%へと 課税強化された。また、磁石用合金についても鉄合金の課税率20%が適用・課税される状況となった。
 昭和電工㈱は2009年に入り、以上のような輸出税の課税強化や需要減退に対処して同工場の操業を一時休止していたが、6月より
需要の好転により操業を再開したとのこと。
 中国は国内の需要増大(図2参照)に対処してEL(輸出割当)により輸出も制限しており、日本への磁石原料調達は、厳しい状況となり
つつある。

写真3.包頭昭和の生産量推移(講演資料)〕


図2.中国のREO内需と輸出    

  〔出典:『レアアース資源と産業』
       (太田,MERI/J,2007.3)にデータ追加〕

伊藤忠商事㈱ 高木純夫 瀋陽事務所長 兼 ハルピン事務所長: 日本企業による投資がなぜ思ったように伸びないかについて独自の解説があり、中国国内各地方の開発区にそれぞれ優越性があるが、日本企業が最も関心が高い現地の産業構成、生活インフラ等の状況について詳細が紹介・説明されていない現状の問題があり、それらの改善が意外に効果を発揮する可能性が示された。

瑞穂(MIZUHO)コーポレート銀行 中澤幸太郎 執行役員・中国営業推進部長: 
 東北3省・1区での業務概要及び今後これらの地域における業務発展の可能性について説明された。金融をはじめ各種ノウハウを活用し、事業活動を更に活発化させたいとし、内蒙古自治区への投資上の優位点として、[1]石炭・石油・天然ガス及びレアアースといった地下資源が豊富であること、[2]農牧業資源も豊富、[3]環境産業に発展余地があることを挙げた。

三井物産(中国)有限公司 上井 傑 薫事・総経理: 中国での投資実績と事業概要について紹介がなされた。1979年、オルドス・グループとの合弁事業によるカシミア(カシミア山羊から取れた毛あるいは毛織物)が中国投資の端緒となり、2007年4月には同グループと豊富な地下資源に着目した石炭火力発電・冶金(FeSi・SiMn・金属Si・カーバイド)複合プラントが順調に業績を伸ばしており、現在では北京・上海・広州・香港の4ユニットで社員数623名(日本人188名、中国人440名)の規模に拡大している。

5-2. 中国側発表
 2009年8月6日午後、開催される日中経済協力会議中の投資貿易分科会で、中国側から内蒙古自治区商務庁徳順副庁長、遼寧省対外貿易経済合作庁 葛海鷹副庁長、吉林省経済技術協力局副局長 崔軍、黒竜江省商務庁国際経貿関係処処長于志斌、瀋陽冶金工業パーク管理委員会主任 孟 宏、大連長興島臨港工業区管理委員会副主任 衣 慶燾、ハルピン市経済合作促進局副局長 趙 剛、内蒙古ホロンバイル市副市長 金 昭、長春市商務局局長 劉 亜群、オルドス市新エネルギー垂範区王永明書記ら合計10名から発表がなされた。主なものは次のとおりである。

内蒙古自治区商務庁徳順副庁長: 地下資源が豊かで、希土類資源の埋蔵量も世界のトップに占め、希土類、銀及び石炭の埋蔵量は国内1位、天然ガスの埋蔵量も国内でトップクラスに占め、銅・鉛・亜鉛・タングステン・錫・モリブデンなど10種の非鉄金属の資源量・埋蔵量の総量は2,539.5万tに達している。
 工業化の中期段階にある内蒙古自治区は、エネルギー、化学工業、冶金建築材料、装備製造業、農牧製品加工及びハイテク技術等6大特色ある産業と高い技術力が蓄積されている。原材料の調達から機能材料と応用製品の生産までできる希土類産業チェーンがあり、最近注目されている希土類高機能性材料や多結晶シリコン産業の成長に力を入れている。
 今後、同区は、生態管理、水利、地方鉄道、道路、都市建設などインフラ整備、または工業経済構造の最適化、省エネと廃物減量の技術改革の推進、加工貿易など分野で日本との協力を強化していきたいと考えている。特に非鉄金属に関し非鉄金属工業基地の建設を強め、アルミ・銅・鉛・亜鉛・マグネシウム・希土類の二次加工産業を推進する。

内蒙古自治区ホロンバイル市金昭副市長: 同市には豊かな鉱物資源があり、石炭、石油、銅・モリブデン・鉛・亜鉛・金・銀等9種65品目の鉱種が発見され、内蒙古で発見された鉱種の49%を占め、金属鉱物の埋蔵量が346.7億tとなる。
ロシア及びモンゴルと隣接しているため、中国系企業が両国において鉄鉱石、アルミ、鉛・亜鉛、ウランなどの資源開発事業を展開している。
 日系企業は、買収、株式取得、合弁などの方式により、石炭化学工業、非鉄金属製錬の分野で優れた技術を利用し、ホルンバイル市及び隣接国の鉱物資源の総合利用開発に参加することが可能である。

内蒙古自治区オルドス市新エネルギー垂範区 王永明 書記: 貧しい地域から豊かな地域に変貌させるには、現地に賦存する豊かな資源を活用し、低炭素オルドスを構築し、グリーンエネルギー都市への転換することと認識し、着実に実行している。

瀋陽冶金工業パーク管理委員会 孟 宏 主任: 瀋陽市から政策分野、現在の開発状況が説明された。日本から先進的な省エネ・環境保護技術と経験を取り入れるだけではなく、日本の省エネ・環境保護型の新材料、新エネルギー生産企業も誘致することを目的としている。日本側と共同で『日本中小企業(省エネ・環境保護)工業団地』を設置したい。

遼寧省対外貿易経済合作庁 葛海鷹副庁長: 遼寧沿海経済ベルト、瀋陽経済圏、遼寧西部沿海経済区がまとめた主要な企業誘致のプロジェクトについて紹介し、日本側からの投資を期待している。

吉林省経済技術協力局 崔軍 副局長: 現在までの、吉林琿春の道路、航路及び琿春日本工業団地における日本の協力事業について紹介し、今後、日本側との協力を強化するための幾つかの提案を行った。今までの協力は、地方政府と企業間協力に限られているが、国家レベルに上昇させ、政府間協力を強めていることと、日中双方は自動車・電子・グリーン農業などハイテク分野での協力強化すべき。

吉林省長春市商務局 劉亜群局長: 長春市の経済発展状況について説明があった。
長春市では、ハイテク産業、交通設備製造産業などで優勢を持ち、今後、協力できる分野を広げ、経済貿易協力を継続的に実行する方針である。

黒龍江省商務庁 于志斌 国際経貿関係処長: 哈大斉回廊建設区、東部石炭電化基地建設区、北東アジア経済貿易開発区などの『八大経済区』の建設を提唱している。黒龍江省は、ハイテク技術、貿易、インフラ、建設分野などで日本との協力を希望している。

黒龍江省ハルピン市経済合作促進局 趙 剛 副局長: ハルピン市は、電子情報製造、アルミ・マグネシウム合金、複合材料を含めた新素材産業、バイオ産業など8件の産業集積を展開させ、強化したい。シリカ系製品の開発プロジェクトなどに日本側からの投資を希望している。

6. 中国側提出資料に記載された資源・金属・鉱業関連投資プロジェクト
 今回、中国側から個々の具体的な説明機会の設定は無かったものの、投資誘致プロジェクトについて日本語対訳付きの資料が配布された。その中から資源・金属・鉱業のいずれかに関連するプロジェクトを一覧として表5に列挙する。
レアアース選鉱、鉛・亜鉛製錬、シリコン、各種合金、天然ガス液化、オイルシェール開発等のプロジェクトが20件以上挙げられている。レアアース選鉱プロジェクトは、包頭ではなく、興安(ヒンガン)盟(内蒙古自治区北東部、黒龍江省・吉林省に接する地方)に位置する。
問い合わせ先も記載されているので詳細照会も可能である。

表5. 内蒙古自治区における資源・金属・鉱業関連の外資招致プロジェクト

〔出典:内蒙古自治区招商項冊(内蒙古自治区商務庁)、内蒙古興安盟・招商引資項目(内蒙古興安盟商務局、交換レートは2008年の6.9451元/US$(日中経協ジャーナル2009年7月号)による〕

7. まとめ
(1)『第8回日中経済会議-内蒙古』の全体会議(ラウンドテーブル)及び4分野の分科会において、中国東北3省・1区の経済成長率は著しく、2桁の状況を維持している状況及び、各省・区には経済投資特区が整備され、外資による投資環境が急速に整いつつある状況が示された。日本海横断国際フェリーの就航も日本と中国東北3省・1区間の経済交流、観光や投資促進に寄与するものとして強調された。

(2) 省エネ・環境分科会において、日本側を代表し、風力発電システムメーカーである富士電機㈱からは同システムと中国における納入実績状況が、中国蘇州で金属回収事業を展開するDOWAホールディングス㈱現地企業からは都市鉱山の概念、金属リサイクル事業や保有技術の概要が紹介された。NEDOからは中国での新・省エネ等に関する豊富な研究協力実績が紹介された。
中国側からは日本の優れた省エネ、環境技術に対する関心の高さと投資への期待が表明された。

(3) 投資貿易分科会において、中国の資源と日本の技術の融合事例として紹介されたところ、世界一のレアアース資源が賦存する内蒙古自治区・包頭市には『包頭レアアースハイテク地区』が整備(総面積15.54km2)されており、米・日・独・韓等12の国や地域の企業から投資され、登録企業は1300社を超える。日系企業も現地企業と合弁事業を展開しており、昭和電工㈱は、磁石合金工場を、三徳㈱は電池材(水素吸蔵合金)工場を操業している。
日本側からは、一貫した投資条件・制度、知的財産権尊重等が要望された。中国側からは、日本からの更なる活発な投資への期待と共に、双方向の投資可能性が指摘された。


写真4. 包頭三徳 
(包頭レアアースハイテク地区)

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