報告書&レポート
Mining INDABA 2010 (第15回アフリカ鉱山投資会議)

2010年2月1~4日、Mining INDABA 2010が南ア・ケープタウンにて開催され、アフリカ各国の政府関係者、メジャー鉱山会社、ジュニア探鉱会社、金属需給動向やファイナンスのアナリスト等が参集した。本カンファレンスは大規模な世界鉱業大会であり、2010年も講演会とブース展示のほか、関係者の間で積極的な意見交換が行われた。JOGMECは前年同様にブースを出展し、また、JOGMEC森脇理事は、アフリカの各鉱業大臣が講演を行う大臣フォーラムにて、JOGMECの活動や役割についての紹介を行った。 |
1. INDABA 2010の会場観察 ~ 活気の回復 ~ 2010年は、経済危機後の前年とは一変して、場内には活気が回復し、公式参加人数も前年よりも多い4,700人となった (前年4,000人、2008年6,000人)。会場では、中国の探鉱会社が地質の専門技術を有する企業を探していたり、中国商社の数社が地金供給先を模索している姿が見られ、特にインド人の姿が目立っていた。なお、日本企業の参加は、商社・非鉄金属・日本政府機関を合わせ9社・機関と前年と同様であったが、参加者自体はやや増加した。
2010年H1の現在、経済低迷の余韻は残り、資金調達は未だ困難な状態であるが、BRICsを中心とした今後の景気回復の予想、そして既存鉱山での資源量減少により、新たな資源アクセスの確保が注目されている。その背景から、アフリカで活動を行うジュニア企業等の積極的な姿勢が目を引くとともに、メジャー企業の活動も再活性化しつつあるように感じられた。
2010年のブース数は約250件と、前年より50件増加した。世銀等の支援機関を始め、コンサル会社、メジャー及びジュニア企業、アフリカ数か国の鉱山関係省等(2010年は南ア鉱物資源省を除く)が各自ブースを展示していた。また、豪州とカナダは独自の展示フロアを設け、豪州政府は、豪州企業の参加者リストを配布してマッチメイキングの役割を担い、カナダ天然資源省は、同国の鉱業に於けるグッドプラクティスを紹介するためにも、UNCTAD主催の『鉱業、鉱物、金属と持続可能な開発のための国際的政府間フォーラム』の活動や、アフリカ連合が推進している“African Mining Partnership(AMP)”への貢献を積極的に紹介していた。その他、中国は国土資源部(Ministry of Land and Resources China)がINDABAでの初の展示ブースを開き、2010年11月16~18日に中国・天津にて開催される『第12回中国国際鉱業大会(China Mining 2010)』を宣伝していた。
2. INDABA 2010の講演内容 ~ アフリカ各国の外資に対する姿勢、中国の動向に注目~ 南アのShabangu鉱物資源大臣による基調講演をはじめ、アフリカ資源国の閣僚、アフリカにて鉱業投資を行うAnglo American、Rio Tinto等メジャー、IFC等金融機関、鉱物資源関係のアナリスト等から講演が行われた。
内容としては、金融危機後の鉱物資源市場の回復、アフリカにおける鉱物資源の探鉱・開発の動向、アフリカと中国との関係などが主なテーマであった。以下、主な講演を紹介する。
2-(1). 南ア鉱物資源省(Department of Mineral Resources:DMR)、Shabangu大臣による講演[1]南アにとって、2010年は重要な年
2010年はマンデラ氏釈放20周年、ワールドカップの開催と、南アにとって重要な年である。現状は世界不況の影響により、南ア経済も“challenging”な状態で、同国経済を支えている鉱業も未だ低迷している。他方、2009年5月にZuma大統領が就任し、従来の鉱業・エネルギー省(DME)がエネルギー省と鉱物資源省が分離・再編されたことから、南アは2010年、鉱物資源の持続可能な開発に、より集中できる環境になったと言える。
[2]南ア鉱業に係る優先アジェンダ
先ず、2010年の最優先の対策は、『探鉱権・鉱業権の申請に係る審査手続の迅速化』である。従来までは、水質管理や採掘計画等の適切さを確認するためにも、探鉱鉱区申請の審査は原則として、申請されてから最長6か月、鉱業に関しては最長1年の期間を要した。今後は、同省の管理・処理能力の向上に注力し、(企業が直ぐにプロジェクトに着手できるようにするためにも)探鉱権は3か月以内、探掘権は6か月以内で審査を完了するようにする。
2つ目の対策は、『鉱山保安と熟練者不足』である。2009年の南アでの鉱山事故・死亡者数は未だ公式に発表されていないが、依然として許容し難い人数である。南アの鉱業が、『死亡者ゼロ産業』になり、また、『血染めのマネー(Blood Money) 』から収益を得ている産業というイメージを除去するためにも、2010年はMine Health and Safety Amendment Actの更なる強化を検討したい。なお、鉱山保安の向上やその検査プログラムについては、現在、豪州政府と協力関係を結ぶように交渉している。
3つ目の対策は、『国内の付加価値化(Beneficiation)』である。2009年4月、『鉱業に係る付加価値化政策(Beneficiation Strategy)』の草案を発表しているが、2010年Q1の議会アジェンダには本件が含まれている。国内の付加価値化事業を促進して、雇用機会の創出、経済の回復を目指す方針である。
その他、2004年に制定されたBEEへの権益譲渡などを含む鉱業憲章(Mining Charter)については、(2009年には改正内容が発表される予定であったが、) Chamber of Mines(鉱業協会)のコンサルテーション後、今月中には公表される予定である(補足説明[1])。
[3]その他(記者会見で、鉱山国有化を否定)
本講演後の別室で行われた報道記者会見において、前年から議論が続いている鉱山国有化案について、同大臣は、「我任期中には絶対に無い」と宣言し、真っ向から否定する姿勢を見せた。これに対して、同日、南ア与党のANC(アフリカ民族会議)青年同盟は、「ANC青年連盟は現在、同大臣と国有化案について議論を進めているのでそれは嘘言である」と反論し論争となった。ANC青年同盟は、自国の経済成長及び鉱山雇用の救済を目的として、新国営企業の設立を訴えており、また、鉱業権の新規または更新に係る申請に対して、本国営企業がこれらの権益の60%以上を保有する提案を行っている。なお、本論争は、2月16日、Zuma大統領が「鉱山国有化は南アの政策アジェンダには含まれていない」と発言したことから、一旦、幕を閉じた。
本会議で、同大臣は、今月中には鉱業憲章の改正内容を公表する予定と述べたが、実際には4月以降にすると南ア鉱業関係者の間では予想されている。南アChamber of Mines(鉱業協会)のチーフエコノミストRoger Baxter氏によれば、鉱物資源省から確かに同協会へコンサルテーションが確かに委託されており、見直しの最終段階にあるとのことであった。内容については、安全対策や女性鉱山労働者の保護など、細かい調整を行っているところであり、BEEへの権益譲渡に関する義務(※1)など重要な骨格には変更は無いはずとのコメントがあった。
(※1 南アでは、2004年に制定された鉱業憲章によって、各企業は2009年までに、HDSA(Historically Disadvantaged South African:歴史的に(1993年以前に)不利益を被ってきた南ア人)に対して、最低でも15%の権益譲渡、その後、遅くとも2014年までに26%の権益譲渡を完了しなければならない義務が定められている。詳細:http://www.jogmec.go.jp/mric_web/current/07_36.html)
2-(2).大臣フォーラムの概要 講演メイン会場とは別に、2月2~3日、大臣フォーラムが開催された。本フォーラムでは、アフリカ諸国の各鉱業大臣等が、自国の鉱業状況及び鉱業政策を紹介し、質疑応答形式で行われた。
アフリカの鉱業ポテンシャルが注目されているが、資源ナショナリズムの動きや地政リスクが未だ大きな課題として残っている。このため、本フォーラムでは、現在の鉱業政策の真相を聴取するためにも、多くの参加者が集まり、大臣や政府関係者等に積極的に質問を行っていた。
以下、報道等でも注目されていた発言内容と主な質疑応答等を紹介する。
[1] DRCコンゴ代表、Martin Kabwelulu Labilo鉱山大臣による講演・質疑応答
DRCコンゴの主産物は銅、コバルトであるが、10億t以上の鉄鉱石資源も期待できるため、鉄鉱石探鉱の投資家を誘致したい。特に、Rio Tintoが同国東部での鉄鉱石探鉱を開始したが、同社の探鉱エリアは鉄鉱石資源ポテンシャルが大いに期待できる。
- 〔Q1〕「鉱業権の見直しで、First Quantum Minerals(加)のKolweziプロジェクトの権益が承認されず、同社は現在、IFC等とともに国際調停手続を行っているが、それに対する見解は?」
- 〔A1〕First Quantumの鉱業権の見直しは2007年末に完了しており、国家検事局は『同社は違法』と宣言している。従って、同社の鉱業権見直しに関する未解決案件は、Tenke Fungurme銅プロジェクトのみと認識している。
- 〔Q2〕DRC政府によって制限されている鉱石輸送についてどう考えるか。
- 〔A2〕「国内の付加価値(Beneficiation)の活性化のためである。また、これによって、雇用機会の創出を目指している。」
(なお、2010年2月上旬に報じられたKatanga州の16社に対するコバルト精鉱輸送の禁止に関しては、発言が無かった。) - 〔Q3〕「2009年11月、国連安全保障理事会が、国連加盟国である金や鉱物資源の輸入者、製錬事業者及び消費者に対して、DRCコンゴ産または供給元不明の資源が使われている場合、鉱物資源の購入先、供給源などのいわゆるサプライチェーンを証明するよう引き続き求めているが、それに関する見解は?」
- 〔A3〕DRCコンゴ産鉱物の供給元の調査に関しては、同国鉱業界への有益なサポートと認識しており、歓迎している。
[2]ザンビア代表、Boniface Nkhata鉱山・鉱物開発副大臣による講演・質疑応答
・ | 新鉱業法2008 *2は、超過所得税の条項を削除するためにも一部改正された。新鉱業法2008は現在も見直しが行われており、外国企業にとって安定かつ信頼性のある投資環境を形成することを目標として、“Give and Take”のアプローチで、今後も改定する方針である。 |
・ | ザンビアでは、銅、コバルトをはじめ、金、マンガン、ニッケル、宝石用原石、ウラン、石炭と多種多様な鉱物が存在する。今は特に、エネルギー資源である石油とガスの探鉱を強化し、ザンビアの石油産業の発展を目指したい。なお、2010年2月現在で、7社が11か所の石油・ガス探鉱区を落札している。 |
・ | ザンビアの多様な鉱物資源に付加価値を与え、製造部門をさらに活性化したい。 |
(※2: ザンビアでは、新鉱業法2008(Mines and Minerals Development Act of 2008)が2008年4月3日に制定され、2009年4月1日から施行となった。本法の制定により、ザンビア政府は、民間企業が保有できる鉱区面積を制限して、休止状態の鉱区を政府系企業ZCCM IH社へ移管している。) |
2-(3). Anglo American:Cynthia Carroll女史(CEO)による講演 “Making a real difference”と題して、同女史がAnglo Americanに着任してからの3年間の事業改革、そして、同社の90年間のアフリカ活動で培ってきた知恵と経験が紹介された。
[1]最優先課題とする“Safety”
先ず、同社にとって最優先すべきは、“Safety(保安)”である。同社は2008年4月、南ア政府及びアフリカ連合(AU)と協力して、『三者鉱山保安イニシアチブ(Tripartite Safety Initiative)』を発表した。それ以来、2009年には同社鉱山の事故での死亡者数は2006年比60%減の19名となったが、そのことを真摯に受け止め、2010年も安全性の強化に注力する。
また、事業改革を検討する上でも、安定重視の姿勢は重要であった。経済不況の中、同社は先ず立ち止まって、長期的な事業展開を真剣に考えねばならない時期があり、その結果、同社は2009年、鉄鉱石、プラチナ、石炭、ダイヤモンドといったコアとなるコモディティの事業に特化することを決断した。特に、南アでのSishen鉄鉱石鉱山プロジェクトは、同社の4大コア資産の内の一つで、900百万US$に加えて、南部拡張への12億US$の投資で、世界トップ5の鉄鉱石鉱山に成長させることを目標とした。
[2]我々の産業の課題と対策
他方、経済不況下にあって、持続的発展に関するアジェンダは軽視しがちであるが、過去の経験からも持続的なビジネス展開の継続は必須と捉えている。具体的には、同社としては以下の対策を実施している。
『エネルギーの安定供給』:南アでは、Eskom(電力公社)が電気料金の値上げなどを提案しているため、今後の安定供給のためにも、産業界は政府やEskomと共に、電力に対する共通ビジョンを提案することが重要である。加えて、同社は、エネルギー利用効率化によるイニシアチブを掲げ、例えば、Sishen鉄鉱石鉱山ではBPと協力して、燃料効率(fuel efficiency)を5%から15%へ引上げることを目標としている。
『水の安定供給』:2014年までの10年間で、水利用効率を10%向上させる。同社は、BHP Billitonと共同で、南アWitbankでの水再生利用施設の設立に、3,000億ZAR(42百万US$)を投資した。本施設では、坑内掘りの石炭鉱山からの坑内水を浄化し、Witbank市民に必要な用水の約25%を供給している。
『地域社会への貢献』:同社は1989年にAnglo Zimele(南アの小規模ビジネス開発基金、特にBEE及びHDSA向け)を設立し、現在までに500件以上の事業を支援し、9,500人の雇用を創出してきた。Anglo Americanは、UNDPの『Business Call to Action』イニシアチブに認可されたプロジェクトを実行する初の採掘企業で、将来7年間で1,500件の事業、25,000の雇用機会の創出を目標としている。
『地球温暖化』:今日、鉱業界は世界のCO2排出量の8%、石炭を含めると25%を占めている。同社は、南ア及び豪州政府と協力して、CCS(Carbon Capture Storage)イニシアチブに取組み、また、Johnson Mattheyと共にメタンガスの放出防止を研究している。
2-(4). Bateman Beijing Axis社(BBA中国)、Kobus van der Wath氏(CEO)による講演
基調講演では、中国とアフリカ間の投資及び貿易を斡旋する企業であるBBA社のCEOが、『中国 & アフリカ:世界の天然資源での協調』という題で、アフリカにおける中国の動向に関する講演を行った。同氏は、世界資源市場における中国の役割の重要性を解説し、中国のアフリカにおける資源投資動向を紹介した。
[1]現在:明確な中国の輸入元・投資先プライオリティ
中国は、アジア、南米、アフリカの全域にわたって資源を輸入しているが、資源別の5大輸入元は、アフリカへの集中度が高い(スライド1を参照)。なお、輸入元のプライオリティは明確であり、2008年にアフリカからの中国の資源輸入総額は558億US$に達したが、この内の74%は4か国(アンゴラ、南ア、スーダン、DRCコンゴ)に絞られている(スライド2を参照)。加えて現状は、中国のアフリカからの輸入額で見ると、金属鉱物というよりも、原油が主体である。

スライド1. 中国の輸入元トップ5 | (出典:BBA中国社のINDABA講演資料) |

スライド2. アフリカからの中国の資源輸入内訳 |
(出典:BBA中国社のINDABA講演資料) |
2003年以降、中国のアフリカへのFDI(外国直接投資)は急増した。2008年における中国のアフリカFDI(総合部門)は54.9億US$にまで上り、投資先の部門も小売業なども含み多様化しているが、特に南ア、ナイジェリアに集中している(スライド3を参照)。なお、資源に関しては、中国は、南部アフリカに興味を示しているが、実際には投資誓約はそれ程多くない。2009年1月~2010年1月までの中国の大規模な資源投資を分析してみると、アフリカへの投資件数は豪州、ブラジル等への投資に比べると少ない。

スライド3. 2008年の中国におけるアフリカ投資額と傾向
・ | 中国中鉄株式有限公司(China Railway Minerals)がAfrican Minerals社(シラレオネの鉄鉱石探鉱プロジェクト)に244百万US$投資(2010年1月) |
・ | 中国海洋石油総公司子会社(CNOOC)がケニアのBoghal-1油井に26百万US$投資(2009年10月) |
・ | CNOOCがナイジェリアの複数の石油ブロックに300億US$程投資(2009年9月) |
・ | 中国国有石油企業SINOPECがAddax Petroleum社(ナイジェリアの石油生産プロジェクト等)に72.4億US$投資(2009年8月) |
・ | Jinchuan Group(金川集団)がAlbidon社(ザンビアのニッケル探鉱プロジェクト)に投資(2009年8月、投資額N/A) |
・ | 中国有色金属建設有限公司(CNMC)がLCM社(ザンビアの銅山)に投資(2009年5月、投資額N/A) |
・ | 中国五鉱集団公司(Minmetals)が南アのTownlands / Kookfonteinクロム鉱山に81百万US$投資(2009年4月) |
・ | Minmetals社がVizirama社(南アのクロム鉱山/探鉱プロジェクト)に投資(2009年1月、数百万US$) |
[2]将来:中国による資源の需要増加は確実、さらなるアフリカ投資を予想
将来、中国の資源需要は確実に増加すると予想する。特に、都市化によって、2020~2025年の間で、350百万世帯以上が都市に移住すると予想され、今後も中国の資源需要は伸びるであろう。また、内需に限らず、LCC(Low Cost Country)としての魅力により、中国製品(特に電気機械・設備)の外需は更に成長すると予想でき、今後も中国の資源需要は耐えないと確信する。
アフリカ諸国が資源豊富国として注目されているのは言うまでも無いが、将来の経済成長を見計らって、今後2年間で中国の投資はさらに増加すると予想している。また、2009年11月に中国がエジプトで開催した中国・アフリカ協力フォーラムにて、温家宝首相は100億US$の低利融資を行うと表明したことも、投資を後押しするであろう。特に、中国は、アフリカにとって、『探鉱の機会が多く存在する場所』であり、今後は中国の探鉱への参画が増加するであろう。
3. JOGMECの活動報告
本カンファレンスでのJOGMECの活動としては、大臣フォーラムにて森脇理事から、『日本のアフリカ鉱業投資を促進するためのJOGMECの役割及び活動(Facilitating Mining Investment from Japan to Africa-The Role and Activities of JOGMEC-)』と題した講演を行うと共に、JOGMEC展示ブースを開設した。

森脇理事の講演では、JOGMECのレアメタルを中心とした戦略、ボツワナ地質リモートセンシングセンターでの技術供与、JVスキームの説明、2009年に開始した南ア3件、ボツワナ1件のJV等について説明と共に、更なるJVについて呼び掛けがなされた。大臣フォーラムでの講演であったため、アフリカ政府関係者が多く集まり、また、ベストパートナーを探している探鉱企業等が真剣に聴講している姿が見られた。
展示ブースでは、JOGMECによる2009年の4件の南部アフリカでのJVプロジェクトや、ラテンアメリカでの積極的なプロジェクト形成の動きなどにより、鉱山関連企業等が引っ切り無しに訪問してきたことが印象的であった。また、2008年7月に『JOGMECボツワナ・地質リモートセンター』が開設されて以来、JOGMECはボツワナ、ザンビア、モザンビークと鉱物資源の探査・開発など資源開発分野での関係強化を図る包括的な内容の覚書(MOU)を締結し、SADC (南部アフリカ開発共同体)諸国でのリモートセンシング技術移転を着実に拡大している。2009年7月には同センター主催で『JOGMECリモートセンシングセミナー/ワークショップ 2009』をボツワナで開催し、SADC諸国から10か国約80名強が参加した。そのことからも、多くの地質調査所のメンバーが、激励も兼ねてJOGMECブースに集まった。今回のカンファレンスでは、前年にも増して、JOGMECの知名度が高まっていることが認識でき、また、JOGMECのアフリカでの活動が、日本とアフリカ間の鉱業における友好協力関係の強化へと繋がっていることが確信できた。

4. 本カンファレンスの感想 ~ We are Africa! ~
本カンファレンスでは、前年と同様に、各企業は同社のCSR(企業の社会的責任)の重要性を強調していたが、今回は、「アフリカ諸国は『資源が豊富なポテンシャルの高い国』で、『新たなビジネスチャンスがある』と認識されているが、地政リスクが果たしてそのチャンスを上回るのか、また、中国のアフリカでの巨額の投資にどのように向き合っていくべきか」に関心が集まったように感じられた。
先ず、中国のアフリカでの資源投資に関しては、上述の基調講演をはじめ、Raw Materials GroupのMagnus Ericsson氏、世銀の石油・ガス・鉱山政策部門長Paulo de Sa氏による、「中国の鉱業におけるFDIの中心は豪州やカナダで、アフリカへの鉱業投資は、中国のFDI総額で見ると『比較的マイナー』である」との意見が多かった。しかしながら、2009年11月の中国による100億US$の低利融資の表明などにより、参加者の間からは、「今後は中国によるアフリカへの投資は増加する。LCC(Low Cost Country)で在り続けたい中国にとっては、アフリカはリスクが高いのではなく、低価格で大量の資源供給が可能となり得る鉱山開発投資のチャンスが眠っているところという位置づけとなるであろう」と予想する声が多く開かれた。
こうした中国のアフリカ投資を『脅威』と取るか『歓迎』と取るかであるが、一般的には、メジャー企業は資源の枯渇化を懸念して『競争』と警視する一方、アフリカ側は資金の流入に『歓迎』、資金調達が未だ困難なジュニア探鉱企業は『協調』と捉えているようであった。特に、Paulo de Sa氏は「豪州も現在はアフリカへの重要性に気付いており、今後、中国企業と豪州企業のアフリカでの共同投資が増えるかもしれない」との見解を示していた。
次に、「地政リスクが果たしてそのチャンスを上回るのか」については、『呪われた資源』と言われるほどで未だ懸念すべき点は多く残っていることは言うまでも無い。しかしながら、鉱業関連誌などでは、景気の回復とともにアフリカ鉱業投資の発表は増加傾向にあり、また、今回のカンファレンスでは、アフリカは現状、不況によって更なる失業問題に加え、インフラ不足、貧困問題、政治汚職、軍事政権等の大きな課題を抱えているが、今アフリカがビジネスチャンスとして注目されている時に、アフリカ諸国はどのように『Give and Take』の関係を築くべきかを真剣に取り組んでいる姿勢が見られた。具体的には、南部アフリカ諸国では2004年以降にUNの支援を受けて、SADC加盟国の鉱業法の調和を検討している。また、西アフリカでも、米国のNGO団体であるOxfam America等の協力のもと、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)が、加盟国の鉱業法に係る統一基準及び規定草案を作成している。
政治腐敗または“Take”に集中し過ぎた政策により、自国のポテンシャルを十分に活かせず、経済成長の前途の可能性を自ら絶ってきたアフリカ。しかしながら、今回のINDABAは、地政リスクを軽減し、国際ルールそして近隣諸国とも協調しながら、自らの足で自国の将来を改善しようとするアフリカ諸国の前向きな姿勢が確認できた4日間であった。

