報告書&レポート
ボリビア・アルティプラーノ中南部地域経済開発セミナーの開催
JOGMECは、経済産業省、在ボリビア日本国大使館の支援と協力を得て、2010年2月24、25日の両日、ボリビア多民族国の首都La Paz(ラパス市)において、ボリビア開発企画省と『ボリビア・アルティプラーノ中南部地域経済開発セミナー』を共催した。本稿ではその概要を報告する。 |
1. セミナー開催の背景
『アルティプラーノ』とは、ペルー、ボリビア及びチリに拡がる高原地帯を指す。ボリビア中南部に広大に拡がるアルティプラーノ地域は、標高3,000mを超える高地であるが、住友商事(株)が100%権益を保有して操業するSan Cristobal(サン・クリストバル)鉛・亜鉛鉱山、Uyuni(ウユニ)塩湖でのリチウム資源開発評価、再生可能エネルギーとして期待される地熱発電プロジェクト等、我が国に関係する事業及びプロジェクトが展開されつつある。
この様な状況を踏まえ、日本とボリビア両国の鉱業関係者の、より一層の相互理解の増進及び互恵関係構築を目的として、本地域に係る経済開発セミナーを開催した。
■参考
Uyuni塩湖の概要
・Potosi市より西に約300 km
・標高約3,700m
・面積約12,000 km²、南北約100 km×東西約130 km
・リチウムの推定資源量:およそ9百万t(ボリビア側発表)
San Cristobal鉛・亜鉛鉱山の概要
・権益保有者:住友商事㈱100%
・生産開始:2007年8月
・確認埋蔵量:銀14千t、亜鉛 3.8百万t、鉛 1.3百万t
・年産量(2008年実績) 銀 512t、亜鉛 173千t、鉛 67千t
図1.ボリビア全土図とUyuni塩湖とSan Cristobal鉱山 |
(原図:http://www.paises-america.com/mapas/bolivia.htm) |
2. 概要
本セミナーは、世界最大のリチウム埋蔵量が期待されるUyuni塩湖が位置するボリビア南部において、今後の地域経済開発に向けたボリビアと日本の相互理解の増進及び互恵的関係構築を目的に開催した。
ボリビア側からCaro(カロ)開発企画大臣はじめ160余名が参加し、日本側からは、経済産業省 高橋大臣政務官、在ボリビア日本国大使館 田中特命全権大使、JOGMEC森脇理事、住友商事㈱、三菱商事㈱など企業から関係者計62名が参加し、参加者数は200名を越える盛況となった。(プログラムは別紙参照)
3. セミナーでの両国政府関係者の発言要旨
開発企画省Caro大臣 (開催挨拶)
日本との友好関係及びセミナー開催に謝意が表された後、「アルティプラーノ中南部地域では、リチウムの工業化・産業化に基づく開発計画が策定されていることから、セミナーを通じて両国間のより一層の関係構築を期待する」と表明。
経済産業省高橋大臣政務官 (基調講演)
「我が国企業、METI及びJOGMECは、ボリビアのリチウム資源開発に貢献する観点から、2009年にUyuni塩湖からのリチウム回収技術に関する提案を行った。リチウム以外にも産業振興や地域開発について、スポンサーではなくパートナーという立場で、両国が共に考え、共に発展を分かち合えるように手を携えていきたい。」
Minera San Cristobal S.A社Gerardo Garrett副社長 (セミナー講演)
「San Cristobal鉱山は周辺コミュニティや環境と調和した操業をこれまで行ってきているところ、今後も持続的な鉱業活動を展開していくため、一層の操業改善及び探鉱投資促進を図る予定である。」
JOGMEC森脇理事 (セミナー講演)
「ボリビアの持続的な経済成長のためには、リチウムの他、鉛・亜鉛・錫等の鉱物資源賦存が期待されるアルティプラーノ中南部地域の探査活動が重要であり、JOGMECでは、リモートセンシングを活用した衛星画像解析技術、環境調和型の鉱山開発促進に不可欠な鉱害防止技術等の支援を通じ、リチウムのみならず、ボリビア鉱業振興に貢献するための全体支援に取り組んでいく所存である。」
資源エネルギー庁鉱物資源課 安永課長 (セミナー講演)
「ボリビア国でのリチウム資源開発を契機とした持続的経済成長実現に向け、戦後我が国の高度経済成長の原動力となった傾斜生産方式の有効性及び普遍性を分析することで、我が国のこれまでの成長経験・ノウハウを活用し、かつボリビア国の経済環境に適合した産業化モデルを提案したい。」
在ボリビア日本国大使館田中大使 (クロージング・リマークス)
「このセミナーの成果として、アルティプラーノ地域には、様々な開発ニーズ及びポテンシャルが存在し、ボリビアの開発政策である“Vivir Bien”※の理念に対する理解を深め、その価値観を共有し、両国間の信頼関係深化を達成することができた。」
炭化水素省Vicenti大臣 (ボリビア政府代表)
「日本とは永い友好の歴史があり、全国民が日本の経済発展のことを承知している。ボリビアでは、発展のために必要であれば、日本の優れた技術を受け入れる用意がある。日本との間では、例えばリチウムの産業化、地熱発電所建設など、ボリビアが開発したいセクターで合意できることを望んでいる。また、高橋政務官、田中大使をはじめ日本側ミッションに対して謝意を表明すると共に、本セミナーの共催相手方として、今次セミナーを成功に導いたJOGMECに対して深謝する。」
4. JOGMECによる取り組み
JOGMECとしては、資源開発分野のみならず、オールジャパン体制でこのような地域開発・産業創出に向けた協力活動を通じ、ボリビア側の理解と協力を得ながらリチウム資源をはじめボリビアでの鉱物資源開発が互恵的経済関係の下で展開されていくことを期待し、日本のプレゼンスを高めるべくオールジャパンの中核的な役割を担っていく所存である。
写真1. Caro開発企画相(開会挨拶) | 写真2. 高橋 経済産業政務官(基調講演) |
写真3. Caro大臣(左)と高橋政務官(右) | 写真4. JOGMEC森脇理事(セミナー講演) |
写真5. 安永鉱物資源課長ご講演 | 写真6. 記念撮影 |
(左より、Loma開発企画省海外金融課長、 田中大使、Vicenti炭化水素大臣、高橋政務官) |
【別紙】 ボリビア アルティプラーノ中南部地域経済開発セミナープログラム 1. 開会挨拶 2. 基調講演 【経済産業大臣政務官 高橋千秋】
3. プレゼンテーション 【ボリビア開発企画省企画・調整次官室/科学技術次官室】
『アルティプラーノ中南部地域における日本の経済協力の状況と今後の方向性 【JICAボリビア事務所長 松山博文】
(2) ボリビア中南部地域の資源を生かした協力の可能性[1] 【Minera San Cristobal S.A社長 松崎治夫/副社長 Gerardo Garrett】
『日本貿易振興機構(JETRO)の活動について』 【JETROペルー事務所 国頭(くにがみ)アレハンドリナ】
(4) ボリビアにおける日系企業の活動報告 【SUTO Ltda.社長 古田芳昭】
(5) ボリビア中南部地域の資源を生かした協力の可能性[2] 【JICAボリビア事務所長 松山博文/西日本技術開発(株)海外営業部長 リマ・ロバト】
『ボリビアとリチウム共同開発によるパートナーシップ構築に向けたJOGMECの取組み』 【JOGMEC理事 森脇久光】
(6) 日本の技術とコンテンツ(教育等)を生かした中南米地域への協力事例 【総務省放送技術課技術企画官 布施田英生】
(7) ボリビア中南部地域の資源を生かした協力の可能性[3] 【経産省自動車課 課長補佐 川口征洋】
『ボリビア国ウユニ地域でのソーダ灰製造に係る予備調査報告』 【日鉄鉱コンサルタント企画部長 横井浩一】
『アルティプラーノ南部労働者・農民地域連合からのプレゼンテーション』 【アルティプラーノ・南部労働者・農民連合】
『リチウムを起点とした産業発展モデルの概要報告』 【資源エネルギー庁鉱物資源課長 安永裕幸】
『蒸発資源に関する計画/開発計画』 【COMIBOL/開発企画省科学技術次官室】 4. 閉会挨拶 |