閉じる

報告書&レポート

2010年5月20日 ロンドン事務所  萩原崇弘、竹谷正彦、フレンチ 香織
2010年22号

『レアアース・レアメタル投資会議』参加報告

 2010年3月18日、ロンドンにてObjective Capital主催のレアアース・レアメタル投資会議(正式名:Rare Earth, Speciality & Minor Metals Investment Summit)が開催された。ロンドンでは初めてレアアースを主題とした国際会議ということで、ジュニア探鉱企業、投資家、銀行家、政府機関、報道等含め、総勢150名程が集まった。本稿では、リチウム及びレアアースに焦点を当て、以下に講演の概要を報告する。
(※なお、本会議での講演資料及び講演ビデオは、以下のウェブサイトで閲覧可能である。http://www.objectivecapitalconferences.com/ocic/london_18mar10.html )

1. リチウム需給
1-(1). 自動車産業を中心に伸びるリチウム需要
 電子金属市場の調査を得意とするByron Capital社(加)のJon Hykawy氏(クリーン技術 & 原料アナリスト)の講演では、世界のリチウム需要について、2008年118千t(炭酸リチウム換算)、2009年102千tとのRoskill社(英)の推定値を紹介し、経済不況に大きく影響されなかったと分析した。
 また、その需要の2008年の重量別内訳について、耐熱ガラスまたは陶磁器などの釉薬としての利用が37%を占め、ノートパソコン、携帯電話、そして小型電子機器に含有されるリチウムイオンバッテリーへの利用は20%に過ぎないと紹介した。
 加えて、同氏は、自ら参加したジュネーブでの第80回国際モーターショー(3月4~14日)での感触として、今後は、多くの大手自動車会社が、新型ハイブリッド車や電気自動車の開発に、寿命の極めて長い薄膜固体リチウムイオンバッテリーを利用すると改めて確信したと述べた。したがって、今後の需要についても、自動車産業の回復とともに、現在主流のニッケル水素バッテリーだけではなく、リチウムイオンバッテリーの実用化が広がり、2015年までのリチウム全体需要は、自動車産業を中心に2009年比58%強の増加を示すとの予測を紹介した(表1を参照)。

図1. 2008年におけるリチウムの最終製品割合 図2. 2008年における世界のリチウム消費国割合
図1. 2008年におけるリチウムの最終製品割合 図2. 2008年における世界のリチウム消費国割合
 (図1の出典:Byron Capital社(加) Jon Hykawy氏講演資料(Roskill社(英)からの引用))
 (図2の出典:2010年3月、国際リチウム協会からの会場配布資料)

表1. 用途別炭酸リチウム需要の予想 (単位:t)
  2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
耐熱ガラス 27,258 27,803 28,915 30,072 31,275 32,526 33,827
産業用グリース 11,399 11,627 12,092 12,576 13,079 13,602 14,146
アルミ製品 5,876 5,994 6,234 6,483 6,742 7,012 7,293
空調装置 5,452 5,561 5,783 6,014 6,255 6,505 6,765
鋳造 7,021 7,161 7,448 7,746 8,056 8,378 8,713
その他 19,588 19,980 20,779 21,610 22,475 23,373 24,308
バッテリー(一般) 25,800 26,574 28,168 30,422 32,856 35,484 38,323
自動車バッテリー 0 150 6,350 10,100 14,500 19,900 28,700
合計 102,394 104,850 115,769 125,023 135,238 146,780 162,075
(出典:Byron Capital社(加) Jon Hykawy氏講演資料)

1-(2). 現在のリチウム供給と、増加するリチウム開発案件
 前述と同様、Hykawy氏は、リチウムの生産量について、Roskill社のデータを用いて、2008年の世界の炭酸リチウム(Li2CO3:安全に輸送できる状態)の生産は121千tと紹介した。現在の炭酸リチウム供給の実態については、炭酸リチウム(Li2CO3)のメーカーは15社存在するが、主な生産元はチリやアルゼンチンなどの南米に集中しており、SQM Salar社(チリSantiago、NYSE上場)、FMC Lithium社(米NC州、NYSE上場)、Chemetall(独Frankfurt、NYSE上場)の3社に集約され、その他のTalison of Australia社(豪、IPO再申請中)を加えれば、ほぼ市場全体が占有され、そのうち、最大手のSQM社は、市場の25%を占めていると述べた。
 また、(別途講演した)国際リチウム協会(International Lithium Alliance)会長のGerry Clarke氏によれば、2015年を目処とした、ハイブリッド車及び電気自動車に利用するリチウム充電バッテリーの需要増加に応えるべく、現在、複数のリチウム開発プロジェクトがラインアップされており、最近注目されている探鉱・開発・生産プロジェクトだけで、合計7.2百万tのリチウム埋蔵量は期待できると同氏は紹介した(下表2.参照)。
 さらに、2010年1~3月の間で、同年1月には豊田通商(株)がアルゼンチンOlaroz 塩湖でのリチウム権益獲得に向けた投資、同月ポスコ(韓国)のPan American Lithium社(米)へ4.8百万US$投資、同年2月ERAMET社(仏)のBollore社(仏)とのアルゼンチン北部のリチウム探鉱に係る提携、同年3月にはAmerilithium Corp社(米)が米アルバータ州を中心に複数の探鉱権を獲得と、リチウム資源獲得の争奪フィーバーが続き、今後もさらに案件が増加するであろうと同氏は予想していた。

表2. 今後、探鉱・開発・生産が予想されるリチウムプロジェクト
(以下のプロジェクトの合計で、7.2百万tのリチウム埋蔵量を推定)
Sentient:Salar de Rincon,アルゼンチン
Salar de Jujuy(Oroconbre) Salar de Olaroz、アルゼンチン
Canada Lithium:Quebec、カナダ
Nordic Mining:フィンランド
Galaxy Resources:豪州 / 中国
Western Lithium:米ネバダ州
Rio Tinto : セルビア
Simbol Mining : 米カリフォルニア州
(出典:国際リチウム協会Clarke氏講演資料)

 但し、リチウム開発案件に関して、Hykawy氏は以下の留意点を言及していた。

  • 「リチウム資源は地球から枯渇することは無い」と断言できるが、リチウム資源は拡散しており、採算性のあるリチウム資源が集中した場所を探鉱するのは困難である。
  • 今日に主流となっているかん水型鉱床からの回収でも、不純物、特にマグネシウムや硫酸の含有が多ければ、炭酸リチウムの生産コストは高くなる。例えば、日本等が入札を争っているボリビアのSalar de Uyuniは巨大リチウム資源と期待できるが、マグネシウムが多いとされ、今日の炭酸リチウム(Industrial grade)価格である4~5,000 US$/t程度であれば、経済性を保つのは難しいと分析する。(※リチウムの回収方法は主に、鉱石(Minerals)からの抽出とかん水(Brines)からの回収に分かれる。現在は、比較的に低品位ではあるが(表3.を参照)、純度が高くなり易く、経済性に優れているとの観点からかん水からの回収が主流で、前述のリチウム4大企業の中でも、Talison社以外は同手法を適用している。)
  • スポジウム鉱石から採取する場合は、高品位ではあるが、精製までの生産コストは一般的に高い。他方、炭酸リチウムを生成せず、酸化リチウムのままでガラス産業に利用する場合は、低コストで最適と考えられる。

表3. リチウム資源の賦存状況
(鉱石は150種、かん水:4種)
硬岩鉱石:  スポジウム
葉長石
8.0 % Li2O
4.9 % Li2O
軟岩鉱石:  ヘクトライト
ジェダライト
1.2 % Li2O
7.3 % Li2O
かん水:  大陸
地熱
油田
海水
200-1600 ppm Li
400 ppm Li以下
700 ppm Li以下
0.1-0.2 ppm Li
(出典:国際リチウム協会 Clarke氏講演資料)

参考:リチウム賦存域について
 本会議では、国際リチウム協会等によって作成された『LAWM、Lithium Availability Wallmap』が配布された。本地図には、世界の主要リチウムプロジェクトの位置が記されており、また、各プロジェクトの埋蔵量 / 鉱石の種類等が記載されていた。転載不可であるため本稿では紹介できないが、International Lithium Alliance (http://www.lithiumalliance.org/)のウェブサイトから問い合わせできる。

(1)-3.リチウム開発案件
 本会議では、以下の1社が、自社のリチウム開発案件についての講演を行った。なお、詳細については、本稿冒頭のウェブリンクを参考されたい。

●カナダ:旧Quebecリチウム鉱山の再開発プロジェクト
 Canada Lithium Group (本社:Toronto、TSX-V上場)のPeter Secker氏(CEO)から、1955~1965年の間、カナダでスポジウム及び炭酸リチウムが生産されていた旧鉱山であるQuebec リチウム鉱山の再開プロジェクトが紹介された。

資源量:  概測及び推測鉱物資源量(NI 43-101規程)は、31.6百万t(Li2O品位1.11%)、予測鉱物資源量は38.9百万t(Li2O品位1.12%)。
開発計画:  2010年3月、プレFS調査を完了。その結果、2011年Q2には鉱山開発を開始。2012年Q3には鉱山操業を開始する予定で、初期生産は19,300t/年(Li2O品位99.5%)の炭酸リチウムの生産を見込んでいる。
備 考:  2009年7月、三井物産株式会社が同社よりリチウムの独占的マーケティング権を取得している。

2. レアアース需給
2-(1). 省エネ / エコ製品に利用するレアアースの需要増加
 カナダのレアアースジュニア探鉱企業であるMontero Mining Exploration社(加)のTony Harwood氏(CEO)からは、レアアース需要の見通しについて紹介があった。

 17元素から構成されるレアアースは、近年の地球温暖化防止を目的とした省エネルギー、環境保護に寄与する製品の開発では、主要な役割を果たしている。例えば、レアアースの中にはハイブリッド車の中の磁力やモーター、風力発電に利用する風力タービン内の磁力、小型機器・大型機器の充電電池、液晶画像等の発光に必須の元素や、米国における軍用機の製造に欠かせない元素などが含まれていると認識されている。こうしたことから、今後とも、クリーン技術の新たな開発・発展とともに、レアアースの需要(特に重希土類のレアアース)は、大幅に増加すると予想される。
 各レアアース元素は、磁気、発光作用、合金等のそれぞれの用途に利用されるが、例えば、ハイブリッド車のなかには、図3のとおり、種々のパーツでレアアース元素が活用されている。

図3. 一般的なハイブリッド車に利用されるレアアース
図3. 一般的なハイブリッド車に利用されるレアアース  
(出典:Montero Mining Exploration社講演資料)  

 2010年における世界の(酸化)レアアースの需要は、140千t(内、中国の需要は100~130千t)と推定されている。2010~2014年を10% / 年の割合で増加するとすれば、2014年の世界需要は200千t(内、中国の需要は120千t)にまで拡大する。なお、2012年における主要なレアアースの世界需要の内訳は、充電池及び磁石などとなる見込みである(表4を参照)。

表4. 各レアアース元素の世界の需要比率(%)及び主要な用途
軽希土類 2012年における
世界REE需要の
比率予想(重量:%)*
主要な用途 価格(US$/kg)*
酸化ランタン 28.4 充電池 5.30 – 5.80
酸化セリウム 36.6 触媒、ガラス、研磨 3.90 – 4.40
酸化プラセオジム 3.7 磁石、ガラス着色剤 25.50 – 26.00
酸化ネオジム 20.5 磁石、レーザー、ガラス 26.50 – 27.00
酸化サマリウム 1.1 磁石、照明、レーザー 4.25 – 4.75
重希土類   主要な用途  
酸化ユウロピウム 0.6 テレビのカラー発光体(赤) 470.00 – 490.00
酸化テルビウム 0.3 発光体(緑)、磁石 420.00 – 440.00
酸化ジスプロシウム 1.3 磁石、レーザー 130.00 – 135.00
酸化ガドリニウム 0.1 磁石、超伝導体 7.40 – 7.90
酸化イットリウム 6.8 発光体、セラミック、
レーザー
10.00 – 10.50
*表内のすべての軽・重希土類は、品位99%以上であるが、酸化イットリウムのみ品位99.999%
(出典:Montero Mining Exploration社講演資料、
  価格表示は2010年2月26日時点の価格で、同社はMetal-Pages.comを参照)

 
2-(2).レアアース供給は中国が95%、北米・豪州での開発プロジェクトが急増
 資源分布図などで知られるIntierra社(豪)のDon Pridmore氏(CEO)からは、レアアースの供給の見通しについて紹介があった。
 1985年までは、米国がレアアースの最大生産国であったが、米国のMountain Passレアアース鉱山が閉鎖されて以来、世界全体におけるレアアース供給は中国に依存している。2009年には、中国の世界全体における(酸化)レアアース供給率は約95%に達した。(世界96.5千tに対して、中国90千t、出典:IMCOA)。今後、レアアース需要の増加が予想される反面、価格高騰、中国のレアアース輸出制限の動きで、中国以外の国が供給不足を懸念していることはご案内のとおりである。
 このことからも、2009年10月以降、北米の旧レアアース鉱山の再開、そして豪州を中心とした新規レアアース探鉱プロジェクトが再注目されている。なお、同氏は同月以降の世界全体のレアアースプロジェクト(国際市場で発表されているプロジェクトのみ)を分析し、北米企業等に、以下の傾向があると分析していた。

  • 2009年10月時点の北米におけるレアアース探鉱案件は70件程度であったが、2010年3月には140件へと倍増した。
  • 世界のレアアースプロジェクトの大半は、Grass Root探鉱(新規に探鉱を着手する未探鉱プロジェクト)で、278件中160件がこれを占める。他方、プレFS調査以降のプロジェクトは、278件中7件、現在操業中の鉱山は18件と少ない。これは、2009年H2にレアアースの価格が高騰し、多鉱種の鉱床を開発している途中にターゲットを変更した企業が多いからである。
  • 2010年3月時点で、合計196企業が240件のレアアースプロジェクトを有している。そのうち、82社がトロント証券取引所(TSX)のベンチャー市場に上場しており、それらのみで147件のレアアースプロジェクトを所有している。次いで、TSX上場の17社が23件を所有、オーストラリア証券取引所(AUX)上場の48社が、60件のプロジェクトを有する。他方、ロンドン証券取引所(LSE)の企業は3社のみで、3件のプロジェクトのみである。なお、これと同様に、国際市場に公開されている探鉱プロジェクトの位置も、カナダや米国の北米、そして豪州に集中している(図4.を参照)。
  • AUX上場のレアアース探鉱企業の代表として、Lynas社(本社:Sydney)とAurafura Resources社(本社:Perth)は、現在迄に500百万US$程の資金調達に成功している。
図4. 国際市場で公表されているレアアース探鉱のボーリング調査結果
図4. 国際市場で公表されているレアアース探鉱のボーリング調査結果
(出典:Intierra社講演資料)

 加えて、米国でレアアースの探鉱を行うGreat Western Minerals Group社(加)の講演では、Pridmore氏の分析と同様、レアアースは現状、初期探鉱段階のプロジェクトが多いが、生産間近のレアアースプロジェクトは少ないと指摘していた(図5を参照)。

図5. 限られた数の生産間近であるレアアース開発案件
図5. 限られた数の生産間近であるレアアース開発案件
(出典:Great Western Minerals Group社(加)講演資料)

 参考:レアアースの賦存域 / プロジェクトについて
 本会議では、Intierra社が、レアアース・バナジウムのプロジェクト相談窓口を設けていた。国際市場で公表されている活動中のレアアース企業のリストを配布されたため、同社の許可を得て、以下に世界で活動中のレアアースプロジェクトを紹介する。

表5. Intierra社が分析する世界のレアアース資源量
カナダ/グリーンランド:REE 7百万t、イットリウム 3千t
米国:REE 2.3百万t
南米:REE 1.68百万t
アフリカ:REE 940千t、イットリウム490千t
中国:REE 43百万t
豪州:REE 3百万t、スカンジウム 270百万t

表6. Intierra社が会場で配布していたレアアース企業リスト
企業名、レアアースのプロジェクト活動国 (2010年3月15日時点)
Mount Gibson Iron社(ASX上場)、豪州 Commerce Resources社(TSX-V上場)、カナダ
Lynas社(ASX上場)、豪州 Ucore Uranium社(TSX-V上場)、カナダ
Palabora Mining社(JSE上場)、南ア Rare Earth Metals社(TSX-V上場)、カナダ
Aurizon Mines社(TSX上場)、カナダ Stans Energy社(TSX-V上場)、キルギス
Straits Resources社(ASX上場)、豪州 CanAlaska Uranium社(TSX-V上場)、カナダ
Arafura Resources社(ASX上場)、豪州 Mithril Resources社(ASX上場)、豪州
Avalon Rare Metals社(TSX上場)、カナダ Tasman Metals社(TSX-V上場)、スウェーデン
Etruscan Resources社(TSX上場)、ナミビア Pele Mountain Resources社(TSX-V上場)、カナダ
Quest Uranium社(TSX-V上場)、カナダ Matamec Exploration社(TSX-V上場)、カナダ
Rare Element Resources社(TSX-V上場)、米国 Eagle Plains Resources社(TSX-V上場)、カナダ
Alkane Resources社(ASX上場)、豪州 Capella Resources社(TSX-V上場)、カナダ
Greenland Minerals Energy社(ASX上場)、
グリーンランド
Altura Minerals社(TSX-V上場)、ペルー
Navigator Resources社(ASX上場)、豪州 Threegold Resources社(TSX-V上場)、カナダ
Great Western Minerals Group社
(TSX-V上場)、カナダ
Waterloo Resources社(TSX-V上場)、カナダ
Hudson Resources社(TSX-V上場)、グリーンランド Quantum Rare Earth Development社
(TSX-V上場)、カナダ
Rock Teck Resources社(TSX-V上場)、カナダ Capital Mining社(ASX上場)、豪州
International Gold Exploration AB社
(Oslo上場)、スウェーデン
Molycorp Minerals社(非上場)、米国
Titan Mining社(非上場)、カナダ Westrip Holdings社(非上場)、グリーンランド

(2)-3.レアアース開発案件
 本会議では、以下の6社が自社のレアアース開発案件について講演を行った。なお、以下の探鉱企業からレアアースの需給見込みが紹介されたが、ほぼすべての探鉱企業が、レアアースの需給データをIMCOA(Industrial Mineral Company of Australia社)の調査結果を基に紹介していた(その後の懇談では同社のDudley Kingsnorth氏が、レアアース分野では著名であることが数多く聞かれた)。詳細については、本記事冒頭のウェブリンクより参照されたい。
●Great Western Group(本社:加Saskatoon、TSX-V上場)、
           Gary Billingskey氏(Executive Chairman)
 同社は5つのレアアース案件を有しており、カナダではHoidas Lake、Douglas River、Benjamin River、米国ではDeep Sand、南アではSteenkampskraalプロジェクトを開発している(米国のDeep Sandプロジェクトは同社権益25%を保有しており、それ以外は、同社が権益100%を有する)。特に、南アのSteenkampskraalレアアース鉱山は開発が進んでおり、現在は同国の採掘権への更新手続き中であるが、2012年に生産を開始する予定である。同鉱山は、軽希土類と重希土類の比重が92:8ではあるが、過去の調査データでは、資源量29.4千tの中にジスプロシウムが196tが含有されているとのこと。また、カナダのDouglas Riverプロジェクトは現在もサンプル鉱石の品位を分析中ではあるが、高品位の重希土類が捕捉されている。

●Alkane Resources社(ASX上場)、Ian Chalmers氏(Managing Director)
 同社が紹介する豪州New South Walesの中央西部に位置する同社のDubbo Zirconiaプロジェクトは、1996-2005年に稼動していたPeak Hill金鉱山の隣接地域に位置しており、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、イットリウム等のレアアースの潜在性が期待されている。
 資源量:精測鉱物資源量は、35.7百万t(品位ZrO2 1.96%、HfO2 0.04%、Nb2O5 0.46%、Ta2O5 0.03%、Y2O3 0.14%、Total REO 0.75%、U3O8 0.014%)
 開発計画:2010年Q3には、2002年時点のFS調査の見直しを完了する予定。

●Quantum Rare Earth Development社(TSX-V上場)、Peter Dickie氏(CEO)
 同社が探鉱調査を行うArchie Lakeレアアースプロジェクトは、ウランが多く採掘されているカナダSaskatchewan州のUranium Cityから東へ50 km離れた場所に位置している。2009年もサンプル鉱石の分析が行われ、36サンプルでのREE(レアアース)+Y(イットリウム)の平均品位は3.8%であった。

●Stans Energy社(TSX-V 上場)、Robert Mackay氏(CEO)
 同社が再開発を行うキルギスのKutessayⅡレアアース旧露天鉱山は、1964-1990年の間、旧ソビエト連邦のレアアース需要の80%を供給ていた。過去のデータによれば、同プロジェクトのレアアース埋蔵量は、63.3百万kgとされており、現在は、NI 43-101 規程で資源量を再測定、そして、FS調査を実施している。同氏は、本プロジェクトで世界級の重希土類が期待できるとされており、軽希土類と重希土類の比重は50:50、そのうち、ジスプロシウムは6.47%の重量を占めている。

●Montero Mining社(非上場)、Tony Harwood氏(CEO)
 同社がタンザニアで探鉱を行うWigu Hillプロジェクトは、2009年の220以上のサンプル調査において、最大でTotal REOが26.2%におよぶとの結果を示した。軽希土類(La+Ce+Nd) の85%に対して、重希土類は0.85%とされているが、2009-2010年にボーリング調査のターゲット領域を絞り、今後も更なる探鉱を続け、資源を確保していく計画である。次のステップとして、現在は、地質マッピングの作成及び5,000~10,000mのボーリング調査を計画している。

●Etruscan Resources社(TSX上場)、Don Burton氏(Vice President)
 同社は2005年、Khorixas付近のナミビア北部でIOCG(Iron Oxide Copper Gold)鉱床を目指して広範囲に探鉱を開始し、Lofdal地域でレアアースのポテンシャル地域を発見した。現在までに25 km²の領域で3,000の岩石サンプルが行われ、サンプルでは重希土類の品位が1.75%となっている。

3. 本会議の感想
 ロンドンではメタル関係の会議が数多く開催されるが、現在市場で注目されているレアアース等の希少金属のみに着目した国際会議が開催されたのは初めてであると思われる。
 リチウムに関しては、講演においては、今後の電気自動車需要などからリチウム開発への機運の高まりを歓迎する声が聞かれる一方、欧米ジュニア探鉱企業等から「日本はリチウム消費大国だが、今後の日本企業等のリチウム需要は本当に増加するのか」という質問を受けたり、米国の調査会社が「自動車バッテリー産業の技術は、未だリチウム利用まで発展していないのではないか」と不安感を露呈するなど、業界関係者が今後のリチウム市場を想像以上に慎重に見守っている点が印象的であった。
 一方、レアアースに関しては、ハイブリッド車や電気自動車など環境関連の需要が急速に増大することを疑う関係者はおらず、旺盛な探鉱投資を継続していこうという雰囲気に包まれていた。しかし、当面の世界のレアアースの供給については、IMCOA社のデータによれば、中国の酸化レアアース供給率は、現在の95%から2014年には81%まで徐々に低下するとされているものの、中国以外でのレアアース開発案件は新規プロジェクトが多く、放射性物質の取扱い等も含めて生産までに時間を要するため、当面は中国に供給を頼らざるを得ない。こうした中、米国Mountain Pass鉱山の再開プロジェクトが最大に注目されていたが、同プロジェクトを始め、その他の新規プロジェクトの成否が、レアアース供給の脱中国化のきっかけになるのか、市場関係者は注目していた。
 総じて、本会議では、将来的に需要増が期待されるリチウムやレアアース等の希少金属の探鉱・開発について、欧米各国の企業や投資家の動きが盛んになってきていることが感じられた。レアメタルに注目しているのは、日本だけではなくなってきており、ロンドン事務所では、探鉱案件の紹介を含めて、今後の動向を引続き注視していきたいと考えている。

ページトップへ