報告書&レポート
ICSG総会・定期会合(2010年春季)概要報告
|
2010年4月26日~4月30日の間、リスボンにおいて国際非鉄金属研究会(銅、ニッケル、鉛・亜鉛)の定期会合、銅研究会については総会が開催された。 |
1. 統計委員会
1-1. 2010・2011年の世界の銅需給見通し
2010・2011年の銅需給について議論され、以下のとおり研究会の予測が発表された(表1)。
2010年の銅鉱石生産(地金換算)は、鉱山の稼働率が2009年の80.7%から84%に改善し、世界全体として、1mt増の16.8mt(前年比+6.7%)になると予測。2011年は、2008年の経済危機の影響により鉱山開発プロジェクトの延期や遅延が見込まれるため、0.5mt増の17.3mt(前年比+3.0%)と予測している。
2010年の銅地金(一次+二次)生産は、比較的安定的な操業が見込まれ114 kt微増の18.52mt (前年比+0.6%)と、2011年は、0.6mt増の19.1mt(前年比+3.1%)と予測している。
また、2010年の銅地金消費は、269 kt減の17.9mt(前年比-1.48%)と予測している。これは、3大マーケットの米国、EU、日本の3市場における銅の消費が前年比6.9%の増加が見込まれるものの、中国の消費が前年比13%減少するため、全体として269 ktの微減となったことによるものである。2011年には世界の銅消費に回復が見られ、914 kt増の18.9mt(前年比+5.1%)と予測している。
以上のことから、2010年の銅地金需給バランスは、578 ktの供給過剰、2011年は、243 ktの供給過剰となる(図2)。
|
表1. 銅鉱石生産量、地金生産量、消費量の見通し(2009~2011年)
|
| (単位:kt) |
| 銅鉱石生産量(地金換算) | 銅地金生産量 | 銅地金消費量 | |||||||
| 地域 | 2009 | 2010 | 2011 | 2009 | 2010 | 2011 | 2009 | 2010 | 2011 |
| アフリカ | 1,076 | 1,345 | 1,598 | 672 | 929 | 1,142 | 306 | 338 | 389 |
| 北米 | 1,929 | 2,012 | 2,257 | 1,782 | 1,792 | 1,887 | 2,048 | 2,156 | 2,235 |
| 中南米 | 7,036 | 7,438 | 7,561 | 3,937 | 4,039 | 4,136 | 523 | 560 | 592 |
| ASEAN(10カ国) | 1,180 | 1,215 | 989 | 544 | 568 | 615 | 687 | 734 | 770 |
| アジア(ASEAN・CIS以外) | 1,504 | 1,544 | 1,589 | 7,055 | 7,558 | 8,035 | 10,546 | 9,855 | 10,401 |
| アジア(CIS) | 503 | 524 | 525 | 458 | 460 | 501 | 105 | 105 | 106 |
| EU(27カ国) | 729 | 802 | 836 | 2,511 | 2,656 | 2,715 | 3,104 | 3,224 | 3,349 |
| 欧州(その他) | 774 | 803 | 826 | 995 | 1,017 | 1,036 | 759 | 822 | 861 |
| オセアニア | 1,024 | 1,122 | 1,119 | 445 | 447 | 478 | 130 | 142 | 148 |
| 世界計(調整前) | 15,756 | 16,805 | 17,301 | 18,401 | 19,467 | 20,545 | 18,206 | 17,937 | 18,851 |
| 製錬原料不足の調整 | -37 | -261 | |||||||
| 生産障害の差引 | -915 | -1,189 | |||||||
| 世界計(調整後) | 15,756 | 16,805 | 17,301 | 18,401 | 18,515 | 19,094 | 18,206 | 17,937 | 18,851 |
| 対前年比(%) | 1.47 | 6.66 | 2.95 | 0.98 | 0.62 | 3.13 | 0.80 | -1.48 | 5.10 |
| 地金生産・消費バランス | 195 | 578 | 243 | ||||||
| (出典:ICSG 2010年4月30日付けプレスリリース) |
|
表2. 世界の銅地金需要(2007~2011年)
|
| (単位:kt) |
| 2007 | 2008 | 2009 E | 2010 P | 2011 P | 増減 | |||
| ’09 /’08 | ’10 /’09 | ’11/’10 | ||||||
| 生産量 | 17,934 | 18,222 | 18,401 | 18,515 | 19,094 | 1.0% | 0.6% | 3.1% |
| 消費量 | 18,239 | 18,062 | 18,206 | 17,937 | 18,851 | 0.8% | -1.5% | 5.1% |
| 需給バランス | -305 | 160 | 195 | 578 | 243 | |||
| (E:実績見込、P:予測) |

図1. 世界の銅地金生産・消費量の推移と予測

図2. 世界の銅地金需給バランス(2007~2011年)
1-2. 講演
(1)”The Driving Forces of High Chinese Cathode Imports in 2009”
BGRIMM(北京鉱冶研究総院)、Wang Ye氏
1) 中国の銅地金輸入の増加要因について
中国の銅地金の輸入を促進する主な要因は、以下の[1]~[4]と考えられる。
[1] 中国国内需要の増加
2009年は前年比18%増の銅地金を消費しており、これは旺盛なインフラ整備(地下鉄、鉄道、送電線を含む)、家電製品普及の補助金制度、自動車需要(銅を含んだ部品等)の増加、建設需要の回復が主な要因である。
[2] 銅加工業者(Fabricator)のスクラップからの振替需要
銅加工業者のスクラップの直接使用が25%減っており、加工業者向けの高品質スクラップが減少したことや半製品に要求される品質が向上したことから、銅地金への振替需要が増加した。
[3] 中国国内の資金流動性とインフレ懸念の増加
2009年の銀行による貸付が、前年よりも96%増加しており、資金が十分に供給されインフレ懸念が生じ、銅をはじめとするベースメタルの購買意欲を喚起した。
[4] SRB(国家物資備蓄局)及び投資機関による在庫補充
SRBや投資機関が、銅価格の上昇を見越して銅の在庫補充を行った。
2) 中国の多量の銅地金在庫ついて
中国の銅消費量には、銅地金在庫に回っているものも含まれているのではないかという議論(注)1 に関し、BGRIMMでは、銅地金の未報告の在庫は約1.35mtと分析している。その内訳は、SHFE(上海先物取引所):80 kt、SRB:225 kt、保税倉庫:230 kt、トレーダー、製造者、消費者:280 kt、投資家、相場師:530 ktである。多量に在庫が存在する理由として、十分な資金流動性により購入資金が潤沢で、銅価格が上昇基調にあり銅投資以外の投資対象が少なく銅投資に投機資金が集中していることや、多量の銅地金在庫は、SRBの意向に沿っていると分析している。
3) 半銅製品(semis production)の公式生産統計データの正確性について
半銅製品の2009年生産量は、BGRIMM発表では2008年比9%増、公式発表では同19%増であった。この増加率の差は、公式発表では、統計手法において銅と銅合金の区別をしておらず、銅純分ではなく総量で計算しているからである。また、二重計上の問題や産銅企業が多すぎて小プラントの生産量が含まれていないこと等によりその差が生じている。従って、公式発表データを半銅製品の正確な生産量とするには問題ある。
1(注)ICSGで公表される銅消費量は、各国の報告を基に「銅消費量=生産+輸入-輸出+/-報告された在庫量の増減」で算出している。しかし、中国の場合は、在庫量の報告がないことから、「銅消費量=生産+輸入-輸出」で算出し、これを中国の銅消費量として計上している。2010年の中国の銅消費量は、約6.6mtと全世界の消費量約19mtの1/3以上を占め、実態より多い推定されることから、中国の銅消費量には在庫に回っているものも含まれているのではないかという疑義が生じている。信頼性のある中国の在庫データの入手が困難なことから、未報告の在庫量について以前より議論となっている。
(2) ”Unraveling the stock question”Barclays Capital Nicolas Snowdon氏
1) 2009年の中国の銅在庫の増加に関して
2009年の中国の未報告の銅地金在庫について、緩やかに増加し最大300 ktと予想している。
一方、約1mtの隠れた在庫が存在するという分析があるが、この予想は、最終需要の強さに対する認識とインフラ整備のために中国の銅需要が、劇的に増加しているという認識に欠けている。銅輸入地金のうち700~800 ktが、スクラップの代替需要で消費されている。2010年に中国では7mt近くの銅地金が消費される見込みである。187 ktのSHFE(上海先物取引所)の在庫は、中国全体の年間需要のわずか2.7%に過ぎない。もし、仮に、1mtの銅地金を隠蔽するには、約7つのサッカー場の広さに37個のオリンピック用の水泳プールと同等の空間が必要となり、少なくとも現在の2倍の倉庫面積が必要となり、1mtの銅地金を隠すことはまったく困難である。
2) 中国の備蓄データに関する主要な問題
備蓄データはファンダメンタル分析の必要不可欠の要素であり、LMEやSHFE等の取引所のデータやICSGの消費や商業生産のデータでは、中国を除いた国について世界的な動態の正確なデータを提供している。中国については、消費や在庫データに十分な透明性がなく、完全明瞭なデータ入手が困難である。現在、中国に関する貿易データ、生産データ、そして半加工品生産データをまとめているが、これらのデータには、二重計上や全てを網羅し集計しているのかなど、統計の本質的な信頼性に関する問題をはらんでいる
2. 環境経済委員会
(1) ICSG銅リサイクル調査について
銅リサイクル調査(2002~2008年)の最終報告が行われ、2010月7月1日からICSGのホームページからレポートの購入が可能となる。
また、2010~2011年の銅リサイクル調査の実施に関して、事務局より、以下の提案があり、承認された。
[1]インドのブラスミル・ワイヤーロッドプラントにおける生産能力及び銅スクラップ・銅地金・銅合金の使用に関する調査
[2]中国の大型プラント(175プラント)における半銅製品の銅スクラップ・銅地金・銅合金の使用に関する調査
[3]その他の世界における半銅製品データベースの更新
[4]銅流通モデルの作成(2010~2011年):対象地域はEU 27か国、NAFTA(北米自由貿易協定)加盟国及びラテンアメリカ
[5]銅流通モデルの作成(2011~2012年):対象地域は中国、その他のアジア、中東、アフリカEU 27か国、NAFTA(北米自由貿易協定)加盟国及びラテンアメリカ
[6]半銅製品の製造、生産能力、スクラップの使用に関する調査:対象地域は東南アジア、ラテンアメリカ
[7]半銅製品の製造、生産能力、スクラップの使用に関する調査:対象地域は日本、ロシア
(2) 中国に関する銅・銅合金半製品データベースの更新状況(2010年4月時点)について
銅・銅合金加工プラントは中国全土の520か所で稼動している。これまでに、新規稼動やデータベース修正によりデータベースに177か所のデータ追加と、廃業等に伴う384か所のデータ削除を行った。
今回のデータベースの更新は2010年6月に完了し、最終報告を2010年9月のICSG会合で発表する予定である。
2010~2011年の調査は、サンプルとして抽出した175のプラント調査を実施し、2009年のデータベースに新規データ25か所を追加する予定である。また、中国各地の少なくとも35か所のプラント訪問し、実際の銅地金やスクラップの使用状況の調査を実施する。
(3) ヨーロッパの銅スクラップの使用と流通に関する講演
La Farga Group(スペイン、銅半加工品製造会社)による講演があった。なお、同社は、銅含有量93%の銅スクラップから99.94%の銅地金の精錬を行い半製品の製造を行っている。
講演によると、世界の銅スクラップの発生は、ほとんどが米国とヨーロッパで、主な消費地は、中国やアジア諸国である。米国地域のスクラップ使用する産業は衰退したが、ヨーロッパ(ドイツ、ベルギー、イタリア、スペイン、ブルガリア、ポーランド、ギリシャ等)のスクラップ需要は、未だに強い状況にある(表3)。
10年ほど前から中国が主要なスクラップ消費国となった。その要因としては、膨大な銅需要、中国政府統制によるLME/COMEXとSHFEの価格スプレッド、世界規模のトレーダーの存在、ギャンブル好きの文化、安価な輸送コスト、緩い環境規制等が挙げられる。
EUでは、環境規制やVAT(付加価値税)等の法規制により、ヨーロッパのスクラップマーケットは影響を受けている。例えば、スクラップに対するVATの取扱いが国により違い、ドイツやポーランドでは課税されるが、他のほとんどのEU加盟国は課税されていない。この状況が、EUの銅スクラップの流通に何らかの影響を与えている。
|
表3. スクラップ分類
|
| 種類 | No1. 銅スクラップ | No2. 銅スクラップ |
| 銅含有量 | 99%平均 | 95%平均 |
| 不純物 | 金属の不純物なし | 他の金属や不純物を5%含む |
| 主な用途 | チュービングミル、ロッドミル等 | 製錬原料、ブラスミル、 ワイヤーロッドミル(FRHC) |
| 主な消費地 | 中国、米国、ヨーロッパ、韓国 | 中国、ヨーロッパ |
3. まとめ
全世界の銅消費量19mtのうち、中国の消費量は6.6mtと約35%を占めているが、今回のBGRIMMの発表で明らかになったように、公式発表の統計データには、銅純分に換算すべきデータ等、統計データの整備・改善が必要と感じられた。また、欧州のスクラップ市場に関する講演において、欧州域内でのスクラップ取引ではVAT(付加価値税)非課税の国があり、そのことが市場に影響を及ぼしていることなどが報告された。今後は、欧州のスクラップに対するVATの取扱いについても注視していきたい。


