報告書&レポート
タンザニアの鉱業政策について
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タンザニアの新鉱業法「The Mining Act 2010」は2010年4月に可決成立した。これに先立ち2009年9月に新鉱業法の基礎となる、タンザニアの2009年鉱業政策がエネルギー鉱物資源省から発表されており、本稿では、その内容と最近の鉱業政策の動向について報告する。 |
1.鉱業政策制定の背景
タンザニアの2009年鉱業政策は、1997年鉱業政策を実施した1997年から2007年の実績を評価し、その結果を受けて制定された。特に、鉱業による多大な利益を外国企業が享受し、タンザニア国内への利益還元が十分でないという批判を受けて、鉱業収入の国への配分がより多くなるように見直し、ボツワナ等の鉱業制度のような鉱山会社の株式の一部を国が取得する制度の導入を明らかにしていた。
2009年鉱業政策は、政府と利害関係者の指針となるように、政策目的と政策声明という形で記載され、同国の鉱物資源の持続的可能な開発・利用により2025年までに社会経済の発展に著しく貢献する鉱業部門の育成を目指している。
2. 鉱業政策の目的
鉱業政策の目的として、鉱業部門のGDPに対する貢献度が低いことからこれを高め、鉱業部門を他の経済部門と統合することで、貧困を軽減することを第一に挙げ、その他の目的を以下の通り列記している。
| (a) | 鉱業部門への民間投資の誘致及び継続のための経済環境の改善 | |
| (b) | 鉱業部門の経済貢献度を最大化するため、鉱業部門とその他の経済部門との経済的統合の推進 | |
| (c) | 鉱業部門の法律、規制の枠組みを強化し、行政による監督と執行能力の強化 | |
| (d) | 鉱業部門の効果的な管理と監督のため、行政機関の能力の強化 | |
| (e) | タンザニア人が、実行可能な鉱業プロジェクトに戦略的に参加し、中規模および大規模な鉱山の所有が可能となる環境の確立 | |
| (f) | 鉱業分野の経済貢献度を高めるため、小規模鉱山の開発支援と促進 | |
| (g) | 宝石用原石採掘業へのタンザニア人参入の促進とその補助及び支援 | |
| (h) | 鉱山開発における透明性を確保した、適切な補償、移転、および移住スキームの確立 | |
| (i) | 鉱業プロジェクトへの地域社会からの投資と参加の強化、および、鉱山会社の社会的責任意識を高めるよう、鉱山会社への奨励 | |
| (j) | 公式の市場で売買される鉱物の適正価格の確保のための鉱物のマーケティング・システムの開発、促進 | |
| (k) | 歳入と雇用機会を増やすため国内における高付加価値化の促進及び支援 | |
| (l) | 鉱業部門に不可欠な研究開発と訓練を支援し、その利用の奨励 | |
| (m) | 国内における技術能力の開発 | |
| (n) | 教育および正確で時宜を得た情報の提供による、一般市民への鉱業部門に関する情報提供の改善 | |
| (o) | タンザニア地質調査所(Geological Survey of Tanzania=GST)の役割と機能を適切かつ効果的に遂行するための、同調査所の能力の強化 | |
| (p) | 各機関によって提供される施設、資金、情報の利用のため、国内外の機関との協力関係の強化 | |
| (q) | 鉱山の安全性を高め、衛生条件を維持し、鉱山地域における環境の保護 | |
| (r) | 鉱業活動への女性参加を奨励、促進し、鉱業における児童労働に対する法律および規制の強化 |
上記目的を達成するため、政策声明として17のタンザニア鉱業における課題、目標、それに関する政策声明を表記し、最後に、政府の役割を明記している。
3. 注目される鉱業政策
(1)政府とタンザニア人の鉱業活動への参加拡大
[1] 宝石用原石採掘業におけるタンザニア人の直接関与
| 「宝石用原石採掘業の開発」において、政策声明として、大規模な宝石用原石鉱山の株式の50%以上のタンザニア人による保有や、中小規模の宝石用原石鉱山については、タンザニア人による完全な保有、操業を目指すことを明記した。 |
[2] 政府機関の鉱業プロジェクトに関する直接関与
| これまで、政府は鉱業プロジェクトに直接関与していなかったが、政策声明に、鉱業ブロジェクトに直接あるいは民間と共同で関与できるようする権限を政府機関に付与することを明記した。 |
(2) 環境対策
| 鉱山閉山時の環境対策として、鉱山会社に対して、環境の再生、および鉱山の閉山時の義務履行のための資金の積み立てを義務付けることを明記している。 |
4. まとめ
2009年の鉱業政策の主要な目的は、鉱業部門が、同部門のGDPの貢献度を最大にし、同部門と他の経済部門との統合を進め、貧困軽減に貢献することである。
タンザニア政府は、この2009年鉱業政策において
| [1] | 鉱物探鉱、採掘、製錬、精錬、および高付加価値化への戦略的な参加 | |
| [2] | タンザニア人が、中規模および大規模な鉱山に参加するために役立つ環境の創出 | |
| [3] | 高付加価値産業の発展に重きを置いた鉱業部門民間投資の誘致による小規模鉱業の発展 | |
| [4] | 鉱業部門の管理及び行政サービスの提供 | |
| [5] | 政府機関の能力の強化及び国益を増大のための、法的枠組みと税制の見直しを行うとしており、2010年4月に国会で可決成立した2010年鉱業法では、新規鉱業プロジェクトに対し、政府が一部権益を確保することやダルエスサラーム証券所に鉱山会社の上場を義務付けるなど、鉱業投資に影響を及ぼす法律改正が行われている。 |
なお、新鉱業法について、上場に関する規程のうち政府や公的機関の株式の保有率は明確になっておらず、また、原則最大25年の鉱業権の更新について、鉱山寿命あるいは鉱業権者が望むまでの期限の鉱業権を付与することができるとの条項があり、大企業が独占できる内容になっているとの批判も出ている。
2010年4月の鉱業法可決成立に続き、2010年6月には鉱業税制の強化を発表するなど、鉱業制度の変更が続いており、今後の動きを注目している。


