報告書&レポート
メキシコ合衆国・Durango州の鉱業事情
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Durango州は、古くから鉱業州として知られるにもかかわらず、周辺の州の鉱業生産の伸びが著しい中、同州の鉱業生産が伸びていない。この現状及び背景、こうした状況に対し州政府等が如何に取り組もうとしているか等について、Tomas Salcedo同州鉱業部長、Eduardo Carranzaメキシコ鉱業センター(SGM)Durango事務所長等の関係者から、ヒアリングする機会を得たので、報告する。 |
1. Durango州の概要
Durango州は、メキシコ北・中部に位置し、北部はChihuahua州、西部はSinaloa州、南東部はZacatecas州、東部はCoahuila州に接する(図1参照)。面積は123千km²(同国31州中第4位、全体の6.1%)、人口は155万人(同じく24位、全体の1.4%)、州都はDurangoである。独立後の初代大統領や著名な革命家が生まれた州として知られ、古くは金及び鉄鉱石の生産で栄えた州である。

図1. Durango州位置図
2. 国内鉱業生産に占めるDurango州の位置
2009年のメキシコ及びDurango州の主要鉱産物の生産量を表1に示す。また、金、銀、鉛の2003年以降のメキシコ及びDurango州の生産量の推移を図2~4に示す。金の生産量は2005年までは、国内第1位であったが、現在ではSonora州、Chihuahua州に次ぐ第3位になっている。メキシコ全体の金生産量に占める割合は、2003年の38.0%から2009年には13.1%と大きく低下している。銀の生産量は、2006年まではZacatecas州に次ぐ国内第2位であったが、現在ではChihuahua州にも抜かれ、第3位となっている。メキシコ全体の銀生産量に占める割合は、2003年の14.1%から2009年には12.7%へと低下している。鉛の生産量は、Chihuahua州、Zacatecas州に次ぐ第3位、鉄鉱石が第4位、銅と亜鉛の生産量は第7位となっている。
| 表1. Durango州及びメキシコの主要鉱石生産量(2009年) |
| 鉱 種 | Durango州 | メキシコ全体 | 割合(%) | 州別順位 |
| 金(t) | 8.2 | 62.4 | 13.1 | 3位 |
| 銀(t) | 450.8 | 3,553.8 | 12.7 | 3位 |
| 鉛(kt) | 10.8 | 143.8 | 7.5 | 3位 |
| 銅(kt) | 1.6 | 240.6 | 0.7 | 7位 |
| 亜鉛(kt) | 12.7 | 489.8 | 2.6 | 7位 |
| 鉄鉱石(kt) | 422.6 | 11,677.5 | 3.6 | 4位 |
| (出典:INEGI(メキシコ国立統計地理情報院)) |

図2. Durango州及びメキシコの金生産量(t) (出典:INEGI(メキシコ国立統計地理情報院))

図3. Durango州及びメキシコの銀生産量(t) (出典:INEGI(メキシコ国立統計地理情報院))

図4. Durango州及びメキシコの鉛生産量(千t) (出典:INEGI(メキシコ国立統計地理情報院))
3. Durango州の鉱業生産が伸びていないことの背景
Durango州の北部のChihuahua州や南東部のZacatecas州において、近年の鉱業生産の伸びが著しい中、古くから鉱山州として知られたDurango州の鉱業生産が伸び悩んであることの背景について、Tomas Salcedo同州鉱業部長、Eduardo Carranzaメキシコ鉱業センター(SGM)Durango事務所長等の関係者からヒアリングしたところ、以下のとおり。
(1)小鉱区に分断されている問題
Durango州には多くの金属資源が賦存しており、鉱業ポテンシャルは高いものの、旧坑が存在するなど鉱業ポテンシャルが高い有望地域は、100 haの小鉱区に分断されている。この理由の一つが100 ha以下の鉱区の場合には鉱区料が安いためで、企業が開発もせずに大きな鉱区を押さえることを避けるために取られている政策にあるとのことである。
経済的に鉱山開発を行うためには、まとまった規模の鉱区が必要であり、選鉱や製錬を行う場合にもまとまった規模の採掘量が必要となってくる。また、Durango州には、小鉱区所有者が委託処理を依頼、又は鉱石を売却することが可能な亜鉛、銅、希少金属を処理する選鉱プラント、製錬所が存在しないことから、採算の取れない亜鉛、銅、希少金属は処理をせず、捨てることとなる。このため、Durango州の小鉱区所有者は、金、銀の含有率の高い鉱石の鉱山を開発する傾向にあるとのことである。
また、Ejido(大統領により土地を与えられた農業集落)に対する対応においても、Penoles、Goldcorpといった大企業は、Ejidoを買収することによって問題を回避しているが、資本力の無い小鉱区所有者では、このような対応は困難である。
カナダ企業等が小鉱区を買収することもあるが、交渉相手が多すぎて交渉は困難とのことである。
(2)治安上の問題
このほか、州政府関係者は否定するが、Sinaloa州との境のSierra Madre Occidental地域、なかでもDurango州、Sinaloa州、Chihuahua州の三角地帯においては、麻薬取引の関係で治安が悪く、鉱山開発を困難にしているとの話もあった。
4. Durango州政府の取組み
Durango州政府は、小鉱区所有者への対応として以下の取組を行っている。
(1)小鉱区所有者に対する州の助成制度
[1]メキシコ鉱業センター(SGM)への委託調査費(注)の助成
Durango州政府は、SGMが小鉱区所有者を対象に実施している委託調査の費用の30%を助成している(Chihuahua州政府も同様の助成を実施しているとのこと)。
(注)SGMの委託制度の概要
SGMは、100ha以下の小鉱区所有者に対し、以下の委託調査(いずれも委託料は、30,410 Pes +消費税16%)を実施している。
ア)5日間程度の地表サンプリングと評価
イ)既存鉱山の坑内の鉱石サンプリングと評価
イ)については、SGMの評価が肯定的な場合、鉱区所有者は上限1.2百万Pesoの探鉱JV契約をSGMと締結することができる。この探鉱費は、将来の鉱石売却代で支払らわれ、JVが失敗に終わった場合には返却の必要が無い。
[2]メキシコ鉱業振興信託(FIFOMI)の融資制度(鉱山開発時に鉱山以外の担保保証で上限1.0百万Pesoを融資する制度)の40%の担保相当をDurango州政府が保証している。
(2)選鉱プラント及び製錬所構想
小規模鉱山のための亜鉛、銅、希少金属を対象とする官民合同の選鉱プラント及び製錬所の構想を2007年にDurango州政府は発表した。その後、製錬所を作るためには電力庁(CFI)の電力供給量に限界があることが判り、計画通りには進展していない。現在、新規火力発電所が完工したところであり、構想の具体化を考えているとのことであった。
(3)小鉱区所有者の組織化の促進
Durango州では、上記の小規模鉱山のための施策に加え、小鉱区所有者が数名の共同体を作るように指導しているとのことであった。
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| 写真1. Eduardo Carranzaメキシコ鉱業 センター(SGM)Durango事務所長(右) |
写真2. Tomas Salcedo州鉱業部長(左) |

写真3. Santa Nino鉱山
(Durango州の小規模鉱山の一例、同州Guadalupe Victoria町郊外)
・採鉱方法:立坑(230m)からの吊し上げによる採鉱
・労働者数:21名(10名×2交代+責任技師)
・品位:Ag 260g/t、Pb 7%、Zn 7%、Cu 1%以下
・資源量:2百万t
・採鉱量:1,000t/日
・粗鉱処理:鉱山より約80 km離れたECU Silver Mining社(加)の現地法人の選鉱プラントで処理(対象は、AgとPbで、Zn、Cuは捨てている。)

写真4. 8月25~28日にDurango市で開催された鉱業大会
(メキシコ鉱山・冶金・地質協会主催)の開会式
壇上は、Durango州知事、Maria Vales経済省鉱業総調整官、鉱業会議所会頭、Goldcorp等の加企業の現地法人幹部、加大使館等
おわりに
今回のDurango州訪問では、Durango州がかかえる小鉱区に分断されている問題等多くの関係者から興味深い話を直接聞くことができた。この問題は、Durango州以外の州においても多かれ少なかれ存在するものと思われる。今後とも、メキシコ事務所においては、Durango州政府が官民合同で進める小規模鉱山のための選鉱プラント、製錬所建設構想等の進展等をフォローアップして行きたい。




