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報告書&レポート

2011年6月30日 サンティアゴ事務所 縫部保徳金属企画調査部 菱田元
2011年28号

Exploration Forum 2011報告

 Exploraiton ForumはCESCO(Centro de Estudios del Cobre y la Mineria:チリ銅・鉱業研究センター)主催のチリ銅鉱業、特に探鉱に焦点を当てた会議で、毎年4月初旬にサンティアゴで開催されるCRU主催の世界銅会議の前日に開催される。
 2011年で第4回目となるExploration Forum 2011は2011年4月4日にサンティアゴ・シェラトンホテルで約440名を集めて開催された。プログラムは表1のとおりである。Juan Carlos Guajardo CESCO事務局長の冒頭挨拶のあと、Laurence Golborne鉱業大臣のプレゼンテーションが行われ、チリにおける探鉱の発展と成長を促進する同国の経済、政治、地質状況が紹介された。

表1. Exploration Forum 2011プログラム

OPENING REMARKS    

Juan Carlos Guajardo, Executive Director, CESCO

Laurence Golborne, Minister of Mining, Chile

OPENING PRESENTATION 1

Global Exploration Trends

Michael Chender,CEO,Metals Economics Group (MEG)

  2

PDAC vision and ideas for Latin America

Scott Jobin-Bevans, Presidente, Prospectors and Developers Association of Canada (PDAC)

MODULO 1 3

EXPLORATION POLICY AND MINING DEVELOPMENT IN CHILE

Round Table

Carlos Cantero, Senator of the Republic of Chile
Juan Pablo Letelier, Senator of the Republic of Chile
Cristián Quinzio, CESCO
Cristián Leay, Nueva Mineria

MODULO 2  

RELEVANT TOPICS FOR MINING EXPLORATION IN LATIN AMERICA

 
4 Fénix Mining Fund

Cristóbal Undurraga, Executive Director of InnovaChile of CORFO

5

The presence of mining exploration in Latin American exchanges. Analysis of the integration of exchanges in Chile, Colombia and Peru, and the potential for cross listings with foreign exchanges like Toronto, Aim or others.

Gonzalo Delaveau, Attorney, Guerrero, Olivos, Novoa y Errazuriz

6

Comparison of management systems of Mining Property and their impact on exploration activity.

José Joaquín Jara, member of Cesco
MODULO 3  

POLICIES ON SEARCH FOR MINING RESOURCES IN LATIN AMERICA OF CHINA, KOREA AND JAPAN

 
7

Chinese policy on the search for mining resources.

Fu Shui Xing, Assistant Director, China Non-Ferrous Metals Resource Geological Survey – Beijing Institute of Geology for Mineral Resources, People’s Republic of China.

8

Korean policy on the search for mining resources.

Chai Sung Keun, Former Head of Business Department and Chief Representative of Chile Office Korea Resources Corporation, Kores

9

Japanese policy on the search for mining resources

Hajime Hishida, Director General, Metals Strategy Department, Japan Oil, Gas and Metals National Corporation, Jogmec

MODULO 4  

THE STATUS OF THE EXPLORATION BUSINESS IN CHILE, COLOMBIA AND PERU

 
10

The potential of the Cordillera de la Costa in Chile for exploration

Francisco Camus, Consultant and member of the organizing committee

 

The Main Discoveries of the Major Companies

 
11 CODELCO exploration policy

Carlos Huete, Corporate Exploration Manager

12

Collahuasi, a look at its future development

Jorge Camacho, Exploration Manager
13 West Wall Project

Vicente Irarrázaval, Vice President of Exploration, AngloAmerican Chile

14

Mining Exploration of the Leading Mining Company in Colombia

Gonzalo Gómez Vargas, Manager of the Mining Business Unit of MINEROS S.A.

  The main advances in Junior companies  
15 El Volcán (Chile). Andina Minerals

Alejandro Labbé, Vice President of Projects

16 Canñriaco (Peru), Candente Copper Corp.

Dr. Klaus M. Zeitler, Chairman and Director

17 Haquira (Peru), Antares Minerals John Black, Chairman
18 La Arena (Peru), Rio Alto Enrique Garay, Vice President of Geology

1. 2010年の探鉱トレンド(世界、中南米)

 Global Exploration Trends
 (Michael Chender, CEO, Metals Economics Group (MEG))

 前3回と同様、セッション前のオープニングにMEG(Metal Economics Group)による前年の世界の探鉱トレンドに関するプレゼンテーションが行われた。

(1) 2010年の探鉱投資レビュー(世界、中南米)
 世界の非鉄金属探鉱投資額は年平均金属価格指数と良い相関を示し、2002年以降一貫して増加していたが、2009年は金融危機の影響を受けて金属価格指数、探鉱投資額とも2008年に比べて減少した。一方で2010年は金属価格が回復、探鉱投資額も2008年に及ばないものの、2007年を凌ぐレベルとなった。
 全探鉱費に対する地域別の割合を見ると、2006年から2010年にかけて中南米と太平洋・東南アジアが増加傾向であるのに対し、カナダ・アフリカは減少している。
 2010年の国別探鉱投資額の上位10か国は、カナダ(シェア19%)、オーストラリア(12%)、米国(8%)、メキシコ(6%)、ペルー(5%)、チリ(5%)、中国(4%)、ロシア(4%)、ブラジル(3%)、アルゼンチン(3%)である。中南米のトップ3はメキシコ、ペルー、チリで、この顔ぶれは2007年以降不動であるが、チリの割合が伸びている。
 探鉱ステージ別の割合を見ると、2003年まではグラスルーツ探鉱が50%前後の割合を保っていたが、2003年以降、後期ステージの割合が増加、2006年にグラスルーツを逆転し、それ以降40%前後を保っている。マインサイト探鉱も1997年から割合が増加、2009、2010年は20%台後半までその割合が伸びている。中南米では2003年までグラスルーツ探鉱の割合が50%を越えていたが、2004年以降減少し、世界の傾向と同様、後期ステージ探鉱の割合が最も高くなっている。
 鉱種毎の探鉱投資比率は、全世界で見ると2008年を除き金が40%を越え最も高く、ベースメタルは30~40%台であるが、中南米だけで見ると両者の割合は拮抗しており、2008、2009年はベースメタルが金を上回っていた。2010年は金の割合が上回ったものの、両者40%台前半である。
 会社規模による探鉱費割合を見ると全世界、中南米とも1999年~2003年まではメジャー企業がジュニア企業を大きく引き離していたが、2005年~2008年はジュニアが逆転した。2010年は全世界で見るとジュニア企業が40%を越えメジャー企業を上回ったが、中南米ではメジャー企業の割合が40%台後半でジュニア企業を上回っている。
 資源(鉱床)の発見公表数(第1回目)とその時点での現金価値(in-situ value)を見ると、2008年1月から2010年3月までは両者とも減少傾向であったが、それ以降は回復傾向が認められる(図1)。

図1. 資源(鉱床)の発見公表数とその時点での現金価値(in-situ value)

図1. 資源(鉱床)の発見公表数とその時点での現金価値(in-situ value)
(出典:MEG, 2011)

(2) 2011年の探鉱投資予測
 2005年から金価格が急上昇する一方、金1 ozを発見(取得)するのに要したコストは2009年まではほぼ横ばいであったが、2010年は発見(取得)コストも急上昇した。金、銅、その他金属価格は2011年も高値で推移すると予想され、発見(取得)コストも高くなると考えられる。ジュニア企業は市場から資金を従来どおり調達できると予想される。探鉱コストは上昇し、ボーリングの実施がより難しくなる可能性が高い。2011年の非鉄金属探鉱費は1993年以降最大であった2008年を凌ぎ、最大となることが予想される。

2. 中南米における探鉱の関連トピックス

 Modulo 2で中南米の探鉱関連問題を分析する3件の講演が行われた。チリ経済開発公社(CORFO)が中小企業向けに融資を行うフェニックス・マイニングファンド(Fénix Mining Fund)に加え、チリ、ペルー、コロンビアの証券市場統合を議論する講演、チリと世界各国の鉱区管理システムを比較議論する講演が行われた。

(1) フェニックス・マイニングファンド(Fénix Mining Fund)
 Fénix Mining Fund
 (Cristóbal Undurraga, Executive Director of InnovaChile(CORFO))

 フェニックス・マイニングファンドは、鉱業界におけるチリの世界的リーダーの地位を維持し、ジュニア企業を育成し、鉱山開発プロジェクトのために強固な金融業界を発展させ、マイニングビジネスの機会を投資家に提供することを目的として、チリ鉱業省とCORFOにより2011年3月5日に設立された基金である。その名称は2010年10月のSan José鉱山落盤事故で労働者救出に使われたカプセルに由来する。
 チリへの探鉱投資を取り巻く現況は、次のようにまとめられる。チリは銅の埋蔵量が世界の36%を占めていながら、探鉱投資額の世界シェアはカナダの17%、豪州の14%に遠く及ばない5%でしかない。同様に市場資本と鉱山会社・探鉱会社の上場数はカナダの3,670億US$、1,400社、豪州の3,150億US$、740社に対し、チリは80億US$、6社でしかなく、チリ市場はジュニア企業が資金を調達するには難しい環境である。2002年以降のチリへの探鉱投資は世界の5%を上回ることはなく、世界的に見ると探鉱投資が積極的に行われているとは言い難い。また、企業規模別の投資額割合を見ると、世界ではメジャー44%、ジュニア38%と大きな差がないのに対し、チリではメジャー74%、ジュニア14%と圧倒的にメジャー企業のシェアが大きく、ジュニア企業の活動が世界の状況と比較して著しく低調である。
 上記の状況を踏まえ、フェニックス・マイニングファンドはCORFOから拠出された60百万US$の基金を探鉱に提供しジュニア探鉱企業を育成するとともに、イノベーションと起業家精神を涵養することを目的とした鉱業基金として立ち上げられたものである。
 フェニックス・マイニングファンドの構造は以下のようにまとめられる(図2)。
 ・基金の2/3はCORFOから、1/3は市場から調達される。
 ・探鉱プロジェクトを保有する中小企業(資本金<9百万us$)のみが対象
 ・プロジェクト期間は10年(基金弁済にプラス2年)
 ・融資限度額:6.7百万US$~18百万US$
 ・投資スケジュール:プロジェクト期間/融資額の割合=24か月/30%、42か月/60%、60か月/100%
 ・弁済は個人投資家へ優先的に行われる

図2. フェニックス・マイニングファンドの構造(出典:CORFO, 2011)
図2. フェニックス・マイニングファンドの構造(出典:CORFO, 2011)

 フェニックス・マイニングファンドは2011年3月5日に設立され、中小企業によるボーリング計画やプロジェクト・マネージメントに関する提案の受付期間が2011年3月4日から5月4日まで、採択の結果は2011年6月30日に発表されることとなっている。(注:CORFOは応募が多く慎重に審査する必要があるとの理由から、プロポーザルの受付締め切りを2011年6月15日まで延長した。)

3. チリ、コロンビア、ペルーにおける探鉱ビジネスの状況

 Modulo 4でチリ、コロンビア、ペルーにおける探鉱の状況を紹介する9件の発表があった。内訳は、チリ海岸山脈における探鉱ポテンシャルについての講演1件、大手鉱山会社4件、ジュニア探鉱会社4件である。そのうち3件を以下に紹介する。

(1) CODELCOの探鉱ポリシー
 CODELCO exploration policy
 (Carlos Huete, Corporate Exploration Manager(CODELCO))

 CODELCOは銅の資源量(地質資源量+鉱物資源量+埋蔵量)として505百万tを保有する。継続的な探鉱活動により、2003年は36百万tであった埋蔵量、252百万tであった地質資源量とも、2010年にはそれぞれ53百万t、327百万tと増加している。
 同社の探鉱戦略は以下のようにまとめられる。チリを最重要拠点とし、保有鉱山の周辺探鉱(特定地区探鉱またはブラウンフィールド探鉱)及び主要なメタロジェニックベルトにおいて新規ターゲットを抽出するグリーンフィールド探鉱を行う。グリーンフィールドでは特に、新期の堆積物に被覆された地域において新しい地質モデルと新技術を適用した探鉱を行う。海外では開発初期段階のプロジェクトを第三者と共同で行う。また、第三者との提携においては、鉱山開発に協力・参加するよりも探鉱により生じる資産の価値向上を目指す。
 チリにおける特定地区探鉱では各事業所の地質部門とともに、次の3つを基本条件として活動を行う。①各事業所の優先課題に沿った鉱量の確保、②土地管理、水源確保など、開発計画のための地質情報の提供、③将来の鉱源(深部及び採掘中の鉱床と同じ地質環境の延長部)確保のための解析と新規モデルの形成。
 チリ第Ⅱ州Chuquicamata地区においては、Chuquicamata鉱床の鉱化作用が地下深部まで連続しており、露天採掘から坑内採掘への移行が2018年に予定されているが、Radmiro TomicやTokiクラスターでも同様に地下深部に鉱化が連続していることが期待される(図3)。CODELCOでは地質の3次元解析を行うとともに、米国Bingham Canyonの深部評価で有効であったとされる比抵抗解析の実施も予定している。

図3. Chuquicamata地区:鉱床の位置と深部発達状況(出典:CODELCO, 2011)
図3. Chuquicamata地区:鉱床の位置と深部発達状況(出典:CODELCO, 2011)

 チリ第Ⅴ州Andina地区ではSur-Surピットの南において、La Americana鉱体(868百万t、Cu 0.6%、Mo 0.02%)が発見され、La Uniónピット北側のCerro Negroにおいて深部に向かい銅、モリブデンの品位が上昇する斑岩型鉱化作用の存在を3孔のボーリングで確認している。
 グリーンフィールド探鉱はターゲットの性質から以下3つのタイプに整理される。①北部斑岩型鉱床ベルト:第Ⅰ州から第Ⅳ州の大規模鉱床帯中の被覆域または深部の探鉱、②南部斑岩型鉱床ベルト:第Ⅳ州及び第Ⅵ州の気候条件と限定されたアクセスにより探鉱の進んでいない高山地帯の探鉱、③鉄・銅・金システム:第Ⅲ州及び第Ⅳ州のカンデラリア型鉱床の探鉱。
 CODELCOのチリでの鉱区面積(採掘、探鉱を含む)は2003年に250万haを超えていたが、2003年以降は減少し2010年では120万ha余りである。
 海外の探鉱は、ブラジル、エクアドル、コロンビアにおいてJVや政府との協定によるプロジェクトの形成を検討している。チリ以外の国(メキシコ、ブラジル、エクアドル)でも案件形成の用意がある。ファイナンス能力及びノウハウを持つ戦略的パートナーを求めている。
 第三者との提携においては、現在、30以上の契約を締結している。コアビジネスにならないプロジェクトを対象とし、銅のみに限定せず、新たなプロジェクトの形成を行っている。チリのCODELCO保有鉱区ではオプション契約を締結し、そのプロジェクトがバンカブルFSステージに到達しても、権益の買戻しはせずCODELCOはマイノリティーシェアを継続する。

(2) Collahuasi、今後の開発の展望
 Collahuasi, a look at its future development
 (Jorge Camacho, Exploration Manager (Companía Minera Doña Inés de Collahuasi))

 Collahuasi鉱山はチリ第Ⅰ州の州都Iquiqueの南東約185 kmに位置し、Anglo American 44%、Xstrata 44%、日系企業連合 12%が権益を有する。”Collahuasi”はアイマラ語で「鉱夫の家」を意味する。
 Collahuasi鉱山では銅精鉱、銅カソード、モリブデン精鉱を生産しており、2010年の生産量は金属純分でそれぞれ465,207 t、38,836 t、4,476 tである。2010年12月に発表されたCollahuasi鉱山の埋蔵量は2,458百万t@0.82% Cu(銅純分20.07百万t)、資源量は6,951百万t@0.81% Cu(銅純分57.58百万t)である。
 Collahuasiでは先史時代(1世紀)より鉱山活動が行われ、銀、銅、金の採掘が行われていたが、世界恐慌の影響を受け1930年に採掘が休止された。1970年代に、チリ地質調査所(IIG:Instituto Investigaciones Geologicas)の調査により斑岩型銅鉱床の胚胎ポテンシャルが明らかにされた。1975年Quebrada Blancaにおいて最初のボーリングがCODELCOにより実施され、12m@1.39% Cuの鉱化帯を捕捉、資源量 >100百万t@1% Cuの輝銅鉱及び酸化鉱からなる2次鉱床賦存のポテンシャルが把握された。その後、Quebrada Blanca(1977年)、Rosario(1979年)、Ujina(1991年)と斑岩型銅・モリブデン鉱床の発見が続いた。Ujinaは厚さ約100 mの被覆層の下位80 mに胚胎しており、充電率及び比抵抗異常として把握されたものである。
 開発の歴史は、1996年にUjinaの設備建設、1997年に初期剥土工事が開始され、1998年にはUjina及びHuinquintipaにおいて生産が始まった。2004年には生産拠点がUjinaからRosarioに移り、2005年にモリブデン回収プラントが建設された。
 2005年以降、Rosario周辺のブラウンフィールド探鉱により、Extensión Rosarioで1,411百万t@0.9% Cut(初成硫化鉱)、Rosario Oesteで1,451百万t@0.82% Cut(2次硫化鉱)、Rosario Surで23.2百万t@0.61% Cut(酸化鉱)の鉱床が発見された(図4)。Rosario Oesteではボーリング量とともに資源量も増加しており、2010年までのボーリング掘進長合計は143,735 mである。Rosario Oesteは銅の2次富化鉱床であるが、金及び砒素の含有量が高い。金は30万oz~100万oz(9.3 t~31.1 t)のポテンシャルを有する。砒素含有量が高い領域は鉱脈ゾーンに限定されるものの、その含有率は107~542 ppm(銅品位0.93~1.14%)に及ぶ。

図4. Ujina鉱床、Rosario鉱床と新たに発見された鉱床
図4. Ujina鉱床、Rosario鉱床と新たに発見された鉱床
(Extension Rosario、Rosario Oeste、Rosario Oeste)との関係
(出典:Compania Ines de Collahuashi, 2011)

 Collahuasi鉱山周辺地区の探鉱は40×50 kmの範囲が対象で、その内Companía Minera Doña Inés de Collahuasiが140,200 haの鉱区を有する。物理探査(MIMDAS)をガイダンス的に実施し、地質モデル、操業現場からの距離、ポテンシャル、鉱区権益、被覆層の厚さに基づき探鉱優先順位を決定する。Collahuasi鉱山周辺地区の地質の理解を深め、放射能探査を行い、鉱床生成モデルを組み立て25,000分の1地質図をバージョンアップする。

(3) West Wallプロジェクト
 West Wall Project
 (Vicente Irarrázaval, Vice President of Exploration (AngloAmerican Chile))

 West WallプロジェクトはAnglo American 50%、Xstrata 50%のJVであり、サンティアゴの北東100 km(チリ第Ⅳ州)、Los Pelambres-El Pachón、Los Bronces-Río Blancoが形成する中新世斑岩型銅鉱床ベルト中に位置する。West Wallプロジェクトを含め、近傍にVizcachitas(Los Andes Copper Ltd.)、Pimentón(South American Gold and Copper Company Ltd.)、Navicio(Anglo American)の斑岩型銅鉱床群があり、San Felipeクラスターを形成している。
 プロジェクトの歴史は1981~1984年のAnglo American-Comincoの金探鉱JV(Maricunga及びSan Felipeが対象)まで遡る。1991~1993年にはWest Wallで斑岩型銅鉱床システムの存在が確認され、West Wall Norteにおいて14孔、計3,400 mのボーリングが実施された。2000年にはAnglo American-NorandaのJV探鉱が合意され、2000~2005年の間にNorandaは54孔、計21,600 mのボーリング(コア及びRC)を実施、Lagunillasにおいて2次的鉱化作用の存在を確認した。2007年、Campañía Minera West Wall S.C.M.がAnglo AmericanとXstrata Copperにより設立された。2007~2010年にかけて25,500 mのボーリング(コア及びRC)をLagunillas及びWest Wall Norteにおいて実施、2010年にLagunillas鉱床の予測資源量、West Wall Norteの地質ポテンシャルが公表された。
 West Wallの地質はWWN~N40°E方向の剪断を伴うNS系及びNNE系の構造に支配される。鉱化作用は石英閃緑斑岩の貫入に関連して生じており、この石英閃緑斑岩はAbanico層と呼ばれる火山岩-堆積岩シーケンスを切っている(図5、図6)。斑岩型銅(・モリブデン)鉱化システムはN20°E方向に7×3 kmの範囲に及ぶ。深成鉱化鉱物は黄鉄鉱+黄銅鉱+斑銅鉱で、カリ変質(カリ長石+黒雲母)に関連して沈殿している。溶脱帯はLagunillasにおいて150 m程度、West Wall Norteにおいて40 m程度の厚さで発達しており、2次硫化鉱物は輝銅鉱及び銅藍が黄銅鉱+黄鉄鉱の表面に沈殿する。

図5. West Wallプロジェクト地質図(出典:Anglo American, 2011)
図5. West Wallプロジェクト地質図(出典:Anglo American, 2011)
図6. West Wallプロジェクト地質断面図(出典:Anglo American, 2011)
図6. West Wallプロジェクト地質断面図(出典:Anglo American, 2011)

 これまでの探鉱の結果、Lagunillas鉱床ではJORC準拠で予測資源量750百万t@0.54% Cu、0.01% Mo、0.05g/t Au(カットオフ品位0.3% Cu)が把握され、West Wall Norteでは資源量400~500百万t@0.3~0.5% Cuのポテンシャルが把握されている。
 最後に、West Wallプロジェクトが成功した要因として、以下が紹介された。
 ・地質調査及び地化学探査結果に基づくシンプルなコンセプト
 ・長期的な戦略ビジョン
 ・資源(鉱床)と戦略が調和していたこと
 ・当該プロジェクト専門の総合チームの存在
 ・Anglo American及びXtrata Copper上層部のサポート

4. 中国、韓国、日本の中南米における鉱物資源確保のための政策

 Modulo 3セッションのタイトルは「中国、韓国、日本の中南米における鉱物資源確保のための政策」。近年の中国の急速な工業化が鉱業資源需要拡大を招いていることを踏まえ、中国に先行して経済発展の道を歩んだ日本、そして韓国を含めた資源確保のためのアジア3国の取り組みが紹介された。政府系機関として、中国からは有色金属鉱産地質調査所、韓国からはKORES、日本からはJOGMECが招かれ発表を行った。

(1) 中国の探鉱政策
 Chinese policy on the search for mining resources
 (Fu Shui Xing, Assistant Director (China Non-Ferrous Metals Resource Geological Survey – Beijing Institute of Geology for Mineral Resources, People’s Republic of China))

 中国は過去10年、非常に速いペースで経済成長してきた。第12次5ヶ年計画(2011~2015年)によれば、同国の経済成長は毎年7%を超える見通しである。中国政府は、資源問題の解決のため国内調達を基本に据えると同時に、探鉱会社及び鉱山会社の海外進出を奨励している。
 国内調達においては、これまでの国内鉱物資源探鉱の結果、900の鉱床(内、152は大規模~超大規模鉱床)が発見され、さらに26,000の地化学異常帯、2,400の磁気異常帯が抽出されている。1999年以降、銅鉱床ではQulong(駆龍)、Kiama(凱阿瑪)、Zhunuo(朱諾)、Shannan(山南)、Xiongcun(雄村)が発見されており、その中でもQulong鉱床は銅量で10百万t、Jiama鉱床は銅量で5百万t、金量で300tの資源量を誇る。中国西部では探鉱が未だ十分に行われておらず、国土面積の2/3を占めるにも拘わらず、そこでの鉱床発見数は中国全土での発見の14%に満たない。操業鉱山周辺の探鉱も成果を挙げており、マインライフの延長、安定的な生産や生産拡大に貢献している。2011年から2018年には、国内の19鉱床生成区(メタロジェニックベルト)において、鉱物資源確保のプログラムが実施される計画である。
 中国政府が海外での資源プロジェクトへの投資申請を受けた場合、会社の経営状況に問題が無く、プロジェクトが経済的と判断されれば、申請は迅速に認可される。申請手続きも非常にシンプルで透明性が高い。中国政府は投資に有用な情報提供も行っている。商務部は主要国の投資ガイドをまとめており、国土資源部も鉱業投資ガイドを編集する予定である。国土資源部は毎年国際鉱業サミットを開催しており、中国の鉱山会社や探鉱会社に投資情報やプロジェクト獲得の機会を提供している。また、中国政府は企業の海外進出奨励の一環として、探鉱会社とメジャー鉱山会社、民間資本、投資機関などとの協力についても後押ししている。
 中国・有色金属地質調査中心(CNGS)は地質調査やリスクの高い探鉱及び開発、探鉱技術サービスなど様々な事業を行っており、過去8年間に発見された11案件のベースメタル及び金鉱床の探鉱に関わった実績を有する。近年、海外への投資を増やしており、エチオピアやタンザニア等のアフリカ諸国、チリやメキシコの中南米諸国、カナダなどで探鉱事業を行っている。CNGSは2011年、チリへの投資を増やす予定でチリ鉱山会社、特に中小企業との協力関係樹立を目指している。

(2) 韓国の探鉱戦略
 Korean policy on the search for mining resources
 (Chai Sung Keun, Former Head of Business Department and Chief Representative of Chile Office (Korea Resources Corp.))

 韓国の鉱物資源の海外依存度は日本と同様に非常に高く、金属では98.83%(2009年)である。国別の鉱物資源輸入金額(2009年)は大きい順に豪州、ブラジル、インドネシア、チリ、ペルーであった。
 韓国の海外鉱山プロジェクトへの投資は1977年のパラグアイでのウラン案件が最初で、2010年末までに419案件、37鉱種、58ヶ国において実施してきている。現在も進行中なのは289案件、35鉱種、46ヶ国である。鉱業投資額は2007年より急増し、2010年は26.4億US$であった。鉱種毎の累積投資額の割合を比較すると、石炭が最も多く41.6%、鉄が18.2%、ニッケル11.2%で、銅はニッケルに次いで10.5%となっている。累積投資額の国別シェアは豪州が最も多く35%で、中南米諸国には豪州に次ぎ19%が投資されている。韓国では韓国電力公社(KEPCO)やPOSCO(鉄鉱石)といった石炭や鉄鉱石のエンドユーザーにより活発な投資が行われている。
 韓国の海外鉱業投資戦略は、エネルギー及び鉱物資源の確保を目的として、次3つのキーワードにまとめられる。
 ① 資源国との戦略的パートナーシップの確立
 ② 資源開発への投資拡大
 ③ 海外鉱業に関する良好な投資環境の創造
 具体的には、①資源に関する首脳会談の拡大、二国間協力チャンネルの確立、韓国型Win-Winモデルの採用と普及、②海外資源開発への政府サポートの促進、金融面のサポート(融資、ファンド)の充実、③税制上の優遇措置、民間セクター投資の魅力向上、といった活動が行われている。
 中南米への進出戦略としては、公的セクター(政府)及び民間セクターによる二重アプローチを採用している。政府はエネルギー及び天然資源に関する政府間合同委員会の開催や政府代表団の派遣を行い、民間セクターはKORESの主導により投資済みのプロジェクトの操業を拡大し、鉱山建設及びインフラ建設を含めた投資を行う。
 KORESは1967年6月に設立された国営組織であり、国内及び海外の鉱物資源の探鉱及び開発を行い、それらに関する技術・資金・情報を提供し、更にはレアメタルの備蓄も行っている。KORESのビジネス戦略は、大陸毎にターゲットとする資源を絞るもので、アフリカではレアメタルを、豪州では石炭を、南北アメリカ大陸では銅の資源確保に注力している。2010年のKORESの海外鉱業投資額は315百万US$で、韓国全体の海外鉱業投資額の12%を占め、POSCO(11%)を上回る(最大はKEPCOの35%)。
 韓国政府は、主要6鉱種(瀝青炭、ウラン、鉄、銅、亜鉛、ニッケル)及び追加2鉱種(リチウム、レアメタル)を国内経済に重要で必要な資源として指定している。2011年、KORESの戦略は2B(Big & Balanced)で表され、新規大規模案件への投資(Big)及び既存案件と新規案件のバランスを取ること(Balanced)が2本柱となっている。新規大規模プロジェクトでは、銅、コークス用炭、レアメタルをターゲットにし、生産または開発ステージの案件に注力し、最低10%の採掘権益取得を目指している。既存プロジェクト(マダガスカルAmbatovy等)に関しては、開発ステージから生産ステージへの移行を促進している。

(3) 南米におけるJOGMECの探鉱及び鉱山開発に係わる活動
 (JOGMEC金属企画調査部 菱田元)

 南米におけるJOGMECの探鉱及び鉱山開発に係わる活動を紹介した。まず、海外鉱物資源獲得のための民間企業支援スキーム(JV探鉱、金融支援)を紹介し、南米における近年の探鉱及び鉱山開発に係わるJOGMEC支援事業(以下6件)を紹介した。

(事例1) Esperanza鉱山開発(チリ;銅、金):権益比率Antofagasta 70%、丸紅30%。丸紅が出資する開発費の一部に対する債務保証(約150億円)を実施。

(事例2) Caserones鉱山開発(チリ;銅、モリブデン):権益比率Pan Pacific Copper 75%、三井物産25%。探鉱費の一部についての融資を実施。

(事例3) Quechua鉱山開発(ペルー;銅):権益比率 Pan Pacific Copper 100%。探鉱費の一部についての融資を実施。

(事例4) Vicuna 探鉱プロジェクト(チリ及びアルゼンチン;銅、金):権益比率 NGEX Resources 60%、JOGMEC 40%。2004年よりJV探鉱を実施。2010年までの探鉱ボーリング21孔のうち1孔で区間711m, Cu 0.54%, Au 0.26g/t、1孔で区間562 m, Cu 0.54%, Au 0.26g/t、1孔で区間655 m、Cu 0.26%, Au 0.09 g/tの鉱化帯を捕捉した。

(事例5) Olaroz塩湖・探鉱プロジェクト(アルゼンチン;リチウム):権益所有者Orocobre社、豊田通商。探鉱費のうち豊田通商支出分の50%補助、及び周辺インフラ調査、リチウム分離・精製プロセスの共同研究を実施。

(事例6) Araxa鉱山操業(ブラジル;ニオブ):権益比率 CBMM 85%、日韓コンソーシアム15%;うち日本側10%(新日鉄、JFE Steel、双日、JOGMEC)韓国側5%(POSCO, 国営年金サービス)。日本側10%(US$13億)のうちJOGMECは2.5%(US$3.25億)を出資。

 また、環境関連のプロジェクトとしてチリでは地質鉱山局(SERNAGEOMIN)を、ペルーではエネルギー鉱山省を相手方とした鉱害防止情報交換会をそれぞれ2010年6月(サンティアゴ)と11月(リマ)に開催し、日本の鉱害防止技術や鉱害防止対策スキームを紹介した。
 ボリビアでは2010年11月にリチウム抽出と精製の研究、及びボリビア人技術者の訓練を支援するためのMOUをCOMIBOLと締結し、2011年2月にはMETI、在ボリビア日本大使館、ボリビアの開発計画省と共に「中南部Altiplano開発セミナー」をラパスで開催し、ウユニ塩湖のリチウム開発の基盤整備に資するための日・ボリビア双方からの講演が行われた。
 日本にとって南米のいくつかの国は良い鉱業投資環境にあり、日本の鉱山会社や商社は今後とも投資を継続すると思われる。そのような日系企業の支援をJOGMECは続けていくとの結論である。

5. まとめ

 冒頭のModulo 1セッションのタイトルは「チリにおける探鉱政策と鉱山開発」で、パネルディスカッションにより、チリにおける鉱業探鉱政策とそれが鉱山開発に与える影響について議論された。国が管理する地質・鉱業サービス機関の改編、資本市場と鉱業との間の関係改善に関する政策、鉱区管理などについて、幅広く議論が行われた。
 チリの探鉱全般に関わる問題点として、地質図などで整備された地質情報が古く近年の知見が反映されていないこと、初期ステージ探鉱への投資が少ないこと、中小企業が投資機会を得ることが難しいこと等が挙げられた。質問者との討論では、中小企業に投資するファンドができても鉱区設定に余地がなく実際の参入が難しいことや、国が運営する地質サービス機関としてのSERNAGEOMINの在り方等が話題となった。
 チリにおいて、ジュニア企業によるグリーンフィールド探鉱投資が同じ鉱業国であるカナダや豪州と比較し活発ではないことは、昨年(2010年)のExploration Forumにおいても話題になっており、同国の探鉱投資における定常的な問題として認識されている。このような状況下、2011年3月にフェニックス・マイニングファンドが設立され、チリ政府も中小鉱山会社の探鉱開発を促進させるため、いよいよ動き出したと言える。ジュニア探鉱企業を含めた中小鉱山会社の探鉱投資を活発化させるには、より合理的に探鉱ポテンシャルを評価するため、近年の知見を反映した地質データの整備や流動性の少ない鉱区制度の改善は喫緊の課題である。
 探鉱活動が成熟期に入ったと一般に考えられているチリにおいても、最新の技術や知見を基に新鉱床の発見がなされている。これまで多くの探鉱がなされてきたチリだからこそ、既存の知識にとらわれない粘り強い継続的な探鉱が重要となる。銅価格が高止まりし鉱山会社の収益は好調であるが、探鉱コストも同様に上昇しており、「特に隣国ペルーとの比較において、チリのコスト高が同国への投資機会を失わせている」との指摘が印象に残った。
 既に大規模な生産を行い施設も整った既知鉱床周辺探鉱は今後も大きな割合を占めるものと思われるが、政府も支援に乗り出した中小鉱山会社による初期探鉱への投資がどのように変化していくか、今後の動向が注目される。

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