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報告書&レポート

2011年7月14日 ロンドン事務所 萩原崇弘 小嶋吉広
2011年35号

ZIMEC 2011(Zambia International Mining & Energy Conference 2011)参加報告

写真. ZIMEC 2011会議場
写真. ZIMEC 2011会議場

 2011年6月15~16日、ザンビアの首都ルサカにあるMulungushi Conference CenterにてZIMEC 2011(Zambia International Mining & Energy Conference)が開催された。ZIMECはザンビア初の国際的マイニングカンファレンスであり、ザンビア鉱山・鉱物資源開発省及び投資庁が主催し、BHP BillitonやValeがスポンサーとなり、ザンビア政府関係者や鉱業関係者約600名が参加し、大々的に開催された。
 JOGMECロンドン事務所は本会議に出席する機会を得たので、ZIMEC 2011における主な講演についての概要を報告する。

1. 本カンファレンスの意義

 ザンビアは、1962年の独立以降、5回に及ぶ国政選挙が行われており、アフリカの中でも政治的に安定した国と言われている。独立後の経緯もあり、インドや中国との関係が良好な国と言われている。特に、1970年代にカッパーベルトからダルエスサラーム(タンザニア)までのタザラ鉄道(タンザン鉄道)が中国の支援により整備され、世界金融危機後は中国のアフリカにおける経済特区がカッパーベルト州に設立されるなど、中国との経済的結びつきが強い。
 一方、本カンファレンス開催の前週、同じ会場で米国のAGOA(注)(アフリカ成長機会法)2011フォーラムが開催され、クリントン国務長官がザンビアを公式訪問した。同長官は6月10日の記者会見で「アフリカに対する中国の援助や外資は、透明性やグッド・ガバナンスの国際標準に合致しているわけではない」と、中国のアフリカ進出に懸念を示した。一方、一緒に会見したバンダ・ザンビア大統領は「我が国は独立前から中国と密接な関係にある」と強調した。
 クリントン長官の発言に対し中国外務省も反発し、中国外務省洪報道官は6月14日の記者会見で「関連する発言を注視している。中国とアフリカ諸国は歴史上植民地主義の侵略と圧迫を受けたことがあり、何が植民地主義かよく分かっている。中国は平等、互恵、共同発展の原則に基づき、アフリカ諸国と協力を進めている」として、クリントン長官の発言を批判した。
 このように今回のカンファレンスは、国際場裡においてアフリカ開発のルールをめぐり米中間の緊張が高まる中での開催となった。

(注)AGOA:African Growth and Opportunity Act。2000年制定。条約ではなく米国国内法として、米が一方的にアフリカ諸国に対して特恵を供与。対象国となる基準は、(1)ガバナンスが良好、(2)輸出管理制度が整っているサブサハラアフリカ諸国。AGOAフォーラムは毎年開催され、米とサブサハラアフリカ諸国の閣僚級が開発・貿易投資促進について会談。2011年はザンビアがホスト国。

2. 講演内容

セッション1:成長するザンビアの採取産業への投資

1-1 「The Mining Sector and Its Contribution to achieving Zambia’s national Vision 2030」
Mwale鉱山・鉱物資源開発大臣
 2010年のザンビアの銅生産は対前年比12%増の749,811 t(図1参照)となった。また同年の鉱業への資本投資は9億US$となり、リーマンショック前と同程度の水準にまで回復してきている。最近、ジンバブエや南ア等の近隣諸国で鉱山の国営化の議論が活発になってきているが、ザンビア政府は鉱山の国有化は考えていない。ザンビアでは1990年代後半に鉱業セクターを民営化した結果、探査活動が活発に行われ、昨今の経済成長の原動力となった。ザンビア政府としては、引き続き、国の主要産業として鉱業を重視しており、2015年には150万t、2020年には200万tレベルにまで銅生産を拡大していく方針である。

図1. ザンビアの銅生産推移
図1. ザンビアの銅生産推移

(出典:ZIMEC 2011講演資料)

1-2「Salient Features of Mines and Petroleum (Exploration and Development) ACT」
鉱山・鉱物資源開発省Beene次官
 2008年に制定された現在の鉱業法(Mines Act)は、世界的な標準である透明性や説明責任の原則を織り込んだものである。1990年代後半以降、ザンビア政府は鉱業分野の民営化を行ってきたが、本法律はこれまでの政策の流れを具体化したものである。鉱山開発による利益はザンビア国民全体が享受するべきものであるが、投資家の利益保護も本法律においては重視されている。
 本法律において鉱業権は、探鉱ライセンス(Prospecting Licenses)と採掘ライセンス(Mining Licenses)の2種類が規定されている。探鉱ライセンスは、対象エリアでの全鉱物資源に対する排他的な探査権を認めるものである。2年ごとの更新により、最長で7年まで延長が可能である。鉱区の最大面積は1,000 Km2である。個人又は法人は、最大5ライセンスまで取得できる。
 採掘ライセンス(Mining Licenses)の最長期限は25年で、更新が可能である。面積は、250 Km2が上限となる。いずれの鉱業権も先願制が採用されており、2008年より採用している新しい鉱区管理システムにおいて登録されることとなる。申請された鉱業権の許認可に当たっては、関係省庁が参加する鉱業諮問委員会(Mining Advisory Committee)が審査することになる。

1-3.「Zambia – Hub of Central Southern Africa」
Chipwendeザンビア投資庁長官
 2006年に策定した長期国家開発計画「Vision 2030」において、ザンビアは2030年までに中所得国(世銀による分類。現時点の基準では一人当たりGNI(Gross National Income:国民総所得)が1,906~3,945 US$)に入ることを最大の目標としており、官民連携(Public Private Partnership)によって民間資金を活用することで経済成長を図る計画である。
 2010年のGDP成長率は7.6%、一人当たり実質GDPは2000年には332 US$であったが、2010年には1,152 US$にまで成長している。直近10年間のザンビアの経済成長率は年平均5.9%であり、アフリカ諸国(5.1%)やSADC諸国(3.6%)を上回っている。
 IFCによる「Doing Business 2011」においてザンビアは全世界で76位(2010年は84位)であり、サブサハラ諸国の中では7位であった。ルワンダ、カーボヴェルデ等と共にTop 10 Leaders in World Bank Business Surveyに位置づけられ、投資環境が近年急速に改善している。
 ザンビア政府は官民連携法(Public Private Partnership法)を整備し、外国からの民間投資誘致によって国内基礎産業の成長を図る方針であるが、電力や通信インフラが十分でないため、特にインフラ整備への投資優遇措置を講じているところである。
 鉱業については、主要産業としての位置付けで、法人税の減免(通常35%のところ30%)や源泉徴収税の免除等により引き続き投資促進を図っていく予定である。

表1. ザンビア経済の概況

  2000年 2010年
人口(百万人) 9.8 13.0
一人当たりGDP(US$) 332 1,152
GDP成長率(%) 3.6 7.6
事業開始に要する日数 45 2
インフレ率(%) 30.1 7.9
輸出額(百万US$) 869 7261

(出典:ZIMEC 2011講演資料)

1-4「China’s Importance to the African Resources Sector」
Nitesh Dullabh, General Manager, The Beijing Axis
 The Beijing Axis(本社:北京)は中国の海外投資を専門とするコンサルティング企業である。アフリカから中国への輸出額は1995年では14億US$であったが、2009年には427億US$にまで成長した。2009年のアフリカから中国への輸出のうち、65%が石油、8%が鉄鉱石、銅は7%となっている。鉱物資源分野でのアフリカへの投資については、金川集団有限公司が、2009年にザンビア・Munaliニッケル鉱山の株式52%(37百万US$)を取得、2010年にJVでタンザニア・Kabanagニッケル鉱山の探鉱開始、また同年南アでWesizweプラチナ鉱山の株式51%(87百万US$)を取得するなど投資が盛んになってきている。
鉱物資源分野への投資はインフラ投資とパッケージで行われることが多く、ザンビアでは1975年に中国の支援によりタザラ鉄道(1,900 km)が建設された。タザラ鉄道は、中国の対アフリカ支援における先駆的存在であるが、5億US$の借款額の半分は2011年1月に債務免除された。また、DRCコンゴでは、Kisangi-Lubumbashi間3,500 kmの高速道路整備や、カッパーベルト地域と大西洋岸のMatadiを結ぶ鉄道整備(3,200 km)に対し支援を行っている。さらに中国は、アフリカ全土で7か所の経済特区(Special Economic Zone)を設置している。うち1か所は、ザンビア・Chambishi鉱山にあり、銅の採掘・下流産業を集積させている。また、そのSub-zoneがルサカに建設中であり、繊維、食品、電子機器等の分野の企業が立地している(他のSEZはナイジェリアに2か所、モーリシャス、エチオピア、ルワンダ、エジプトに各1か所)。
 中国とザンビアとの貿易額は、ここ数年50%近い成長率で拡大しており、2010年は25億US$になる見込みである。ザンビアから中国への輸出は93%が銅であり、2010年は24億US$である。中国政府はザンビアの電力インフラ整備にも取り組んでおり、2008年Kariba発電所の能力増強に3.15億US$、2009年Kafue Gorge発電所整備に10億US$、Pensula変電所からKasamaまでの330 kv送電線整備に2.85億US$の資金協力を実施した。実際の工事は中国水利水電建設集団公司(ShinoHydro)等が受注している。
 中国からザンビアへの直接投資は、2010年では10億US$に上り、15,000名の雇用を創出した。中国にとってザンビアは主要な銅の供給源であることから、引き続きザンビアとの友好関係を発展させる見込みである。最近はザンビア側より自国産品の高付加価値化の要望が上がっていることから、加工等下流分野への投資促進は今後の課題といえる。

1-5「Opportunity for Zambia Mining」
Ian Maxwell, President, BHP Billiton
 ザンビアでは銅をターゲットとしたグリーンフィールドの探鉱を実施している。2009年は28百万US$の探鉱を実施した。今後2年間は引き続き同規模の探鉱を行っていく予定である。探鉱活動を行う上で、鉱業法制及び財政の安定性、鉱業権台帳の十分な整備と開示、インフラ整備に向けた政府の努力について特に重視しており、ザンビアはこれらの環境が整っていると言える。

1-6「MMR- A New Model for International Sino Mining Investment」
Minmetals Resources Ltd.(五鉱資源有限公司)
 同社は五鉱集団公司(China Minmetals Corp)が株式の71.56%を保有する香港証取上場企業。豪州ではCentury鉱山(亜鉛、鉛)、Golden Grove鉱山(亜鉛、鉛)、ラオスではSepon鉱山(銅、金)などを保有している。ザンビアでは現時点では特段プロジェクトはないが、ルサカに事務所を設置し、今後積極的に展開する予定である。

セッション2:ザンビアでの新たな探鉱プロジェクト

2-1「Vale and Zambia in Partnership for the Future」
Ian Hart, Country Manager, Vale
 Valeのアフリカでの鉱物資源関係の取り組みは表2のとおり。今後、5年間で、126億US$の探鉱投資を行う予定である(図2参照)。

表2. Valeのアフリカでの取組み

国名 内容
アンゴラ ・Genius社とのJVであるGeValeを通じてベースメタルの探鉱中
DRCコンゴ

・LubumbashiとKinshasaに事務所設置

・Kalumines銅プロジェクトをARM(African Rainbow Minerals)とJVでFS実施中。銅プロジェクトの資本割合は、Gecaminesが40%、ValeとARMが折半出資のTealが60%保有。2017年の操業開始、マインライフ19年を見込む。

ギニア

・BSG Resources社(ギニア)とのJVであるVBGを通じ、2012年の生産開始、2014年のフル生産移行に向けSimandou Block1,2(鉄鉱石)の探鉱中。フル生産時の予定生産量は50百万t/年。

・Conakry-Kankan鉄道のリハビリ中

リベリア

・ギニアでの鉄鉱石プロジェクトのロジスティックスのため、道路及び港湾整備検討中

マラウィ ・Nacala回廊の整備を実施中
モザンビーク ・Moatize石炭プロジェクトが2011年5月に生産開始
・Moatize石炭の拡張、Evateプロジェクト(リン)、Nacala回廊整備のFS実施中
南ア ・ヨハネスブルグにアフリカ地域での探鉱事業に係る統括事務所を設置
・ニッケルの探鉱実施中
ザンビア ・ARMとのJVでKonkola North銅プロジェクトを推進中
・2011年に事務所を設置し、銅に係る探鉱情報の収集を強化
・鉄鉱石、リン、カリウム、石炭、マンガンについても関心あり

(出典:ZIMEC 2011講演資料)

図2. Valeのアフリカ地域での探鉱投資計画
図2. Valeのアフリカ地域での探鉱投資計画

(出典:ZIMEC 2011講演資料)

 Valeはザンビアにおいて、Konkola North銅鉱山を建設中。権益の80%はTeal社(ValeとARM社の折半出資)、残り20%はZCCMが保有。生産される年間45,000 tの精鉱は、ザンビア国内の製錬所に供給する見込みである。CAPEXは4億US$、操業開始は2013年の予定で、マインライフは25年を見込んでいる。
 Valeは今後数年の間、ザンビアで2億US$の投資を行う計画である。Valeはザンビアやタンザニアでの投資機会を積極的に探しているところであり、銅、ニッケルのみならず、鉄鉱石、リン、カリウム、石炭、マンガン等をターゲットとしている。
 ValeはCSR活動を積極的に展開しており、雇用創出や所得向上、教育、インフラ整備費用として、Vale全体で2010年は11億US$を支出している。例えば、モザンビークでのMoatize石炭プロジェクトでは8,000人の雇用創出に貢献した。

2-2「Blackthorn Resources社の事業内容」
Scott Lowe, CEO, Blackthorn Resources
 同社は豪州証券取引所に上場しており、株式の13.04%はGlencore社が所有している。同社はザンビアではMumba IOCG(Iron Oxide Copper-Gold Deposit)プロジェクトの探鉱を実施中である。本プロジェクトは、2011年5月にBHP Billitonが撤退し、現在はBlackthornが100%保有。BHP Billitonは将来の生産額の2%をロイヤルティとして受け取る権利を有している。BHP Billitonが撤退した理由は、巨大な銅鉱床ではないためとのことであるが、我々としては本鉱床は十分大きな鉱床であると考えている。探鉱ライセンスは2010年2月に取得済み。Phase 1からPhase 4までで、56本のボーリングを実施済み。現在実施中のPhase 5のボーリングは、BHP Billiton前探鉱副部長であったDr. Tom Whitingが設計したものである。2011年H2は、BHP Billitonが探鉱を行ってこなかったエリアを中心にPre FSとFSを進める予定である。最も探鉱が進んでいるKitumba鉱床の予測資源量(Inferred Mineral Resources)は表3のとおりである。

表3. Kitumba鉱床の予測資源量

銅カットオフ
品位(%)
資源量
(百万t)
銅平均品位(%) 金平均品位(g/t) 銀平均品位(g/t) ウラン平均
品位(ppm)
0.20 345 0.47 0.06 1.38 45
0.50 87 0.94 0.05 1.27 37
1.00 22 1.73 0.05 1.20 36

(出典:ZIMEC 2011講演資料)

 アフリカではザンビアの他に、ブルキナファソでPerkoa亜鉛探鉱プロジェクトを実施中。本プロジェクトは、Glencore社が50.1%、Blackthorn社が39.9%、ブルキナファソ政府が10%の権益を保有しており、2012年Q2の操業開始を目指している。推定鉱石埋蔵量は6.3百万t、平均亜鉛品位13.9%、マインライフ9.5年、坑内掘での採掘を予定している。Glencore社とのJV契約では、Glencore社が建設費用として80百万US$をファイナンスすることとなっている。うち50百万US$は出資、残る30百万US$はプロジェクトファイナンスで調達する予定である。製品の亜鉛精鉱(品位53%)はGlencore社が引き取る予定である。

セッション3:ザンビアの鉱業セクターにおけるファイナンス及び歳入管理

3-1「Why Africa?」
Peter Von Klemperer, Director of Mining & Metals, Standard Bank
 アフリカの国々は経済状況から4つのグループに分類することが出来る。まず1つ目は「Diversified Economy」と呼ばれるグループであり、南ア、エジプト、チュニジア、モロッコが含まれる。これらの国々はアフリカで最もGDPが高く、経済が多様化しており、製造業とサービス業でGDPの83%以上を占める。アフリカにおける先進国とも呼べる国々である。
 2つ目は「Oil Exporter」であり、アルジェリア、リビア、ナイジェリア、ギニア、チャド、コンゴ共和国、アンゴラが含まれる。一人当たりGDPは高いものの、経済の多様化は遅れている。これらの国の輸出収入は原油価格に依存している。原油生産が最も多い3か国(アンゴラ、アルジェリア、ナイジェリア)では、1990年から1999年の10年間で原油の輸出収入は3,000億US$であったが、2000年から2009年の10年間では1兆US$にまで増大した。製造業とサービス業がGDPに占める割合は1/3未満である。製造業やサービス業を発展させるためには、原油輸出で得た収入を国内産業の振興に振り向けることが必要であり、ナイジェリアでは徐々に製造業とサービス業が成長しつつある。
 3つめは「Transition Economies」と呼ばれるグループであり、ザンビア、モザンビーク、タンザニア、ガーナ、カメルーン、ケニアなどが含まれる。これらの国々は、前2グループに比べ一人当たりGNIは低いが、経済の多様化のプロセスが進みつつあるのが特徴である。外貨収入を単一の農産品や鉱業産品に依存しているが、製造業やサービス業の成長が見られる。自律的な経済成長を実現するためには、インフラや法制度を整備し、競争力を高めていくことが重要である。
 最後の4つめのグループは「Pre-Transition Economies」であり、DRCコンゴ、エチオピア、マリ、シエラレオネ等が含まれる。これらの国の経済は最貧国に位置付けられ、一人当たりGDPは第1グループの1/10以下の350 US$程度であるが、近年、成長のスピードが速まっている。DRCコンゴ、エチオピア、マリでは1990年代は経済が停滞したが、2000年に入ってから平均7%の成長を遂げている。しかしながら、これらの国々の経済成長は、不十分なガバナンスやマクロ経済運営、農業の不振等により脆弱性を孕んでいる。法の統治と経済の諸権利を国内において確立させることが課題である。
 銅の需給に関してみると、1990年以降、世界的に銅鉱石品位の低下と鉱床の深部化が進行する一方、2020年まで銅の需要は年率3%で成長すると見込まれ、新たな供給源の開発が課題となっている。アフリカの銅鉱山の銅平均品位は世界平均(アフリカを除く)の0.54%を大きく上回る1.43%であり、世界的な競争力があるといえる。ザンビアは現在のところ世界第7位の銅生産国であるが、2010年から2015年までの開発可能性のあるプロジェクトを勘案すると、ザンビアはペルー、チリ、DRCコンゴに次ぐ世界第4位の銅生産国となり得る。今後アフリカでの開発予定の銅プロジェクトは表4のとおりである。
 アフリカの銅産業の課題としては、インフラの未整備、熟練労働者の不足、税制や政治の不安定性、国有化の可能性などが上げられる。ザンビアでは、操業を休止した鉱山のライセンスを国家が没収する規定があり、銅価下落で操業を休止していたLuanshya鉱山のライセンスをBSG Resources社、International Mineral Resources社からザンビア政府が没収したケースがある。またDRCコンゴでは2010年に、First QuantumのFrontier、Lonshiプロジェクトのライセンスが無効となり、国営企業のSODIMINCOへ移管されたケースがある。インフラの未整備、熟練労働者の不足、税制や政治の不安定性、国有化の可能性なども課題としてあげられる。

表4. アフリカでの開発予定の銅プロジェクト

鉱山名 企業名 埋蔵量及び資
源量
(千t)
品位
(%)
ステージ 備考
Kolwezi
Copper
Tailings mine
ENRC DRCコンゴ 1,676 1.486 建設  
Muliashi
Copper Mine
CNMC ザンビア 695 1.419  
Kipoi Copper
Mine
Tiger Resources
DRCコンゴ政府
DRCコンゴ 842 1.675 精測及び概測資
源量:347千t、
品位:1.67%
Haib Copper Mine Namibia Copper
Enickel
ナミビア 1,343 0.46 FS  
Boseto Copper
Deposit
Discovery Metals ボツワナ 1,404 1.376  
Kalumines
Copper Mines
DRCコンゴ政府 DRCコンゴ 1,402 2.059 精測及び概測資
源量:777千t、
品位:2.53%
Konkola
Copper Mines
Vale
ARM
ザンビア 13,712 1.942 Pre FS 精測及び概測資
源量:1,613千
t、品位:1.6%
Kalukundi
Copper
Deposits
ENRC
Rubison Minerals
DRCコンゴ 874 2.499 精測及び概測資
源量:294千t、
品位:2.42%

(出典:ZIMEC 2011講演資料、Metals Economics Groupデータベース)

3-2「Transforming Natural Resources Wealth into Wealth for Citizens」
Kapil Kapoor, Country Manager, World Bank
 ザンビアの鉱業部門はGDPの15~18%を占める国家の重要セクターであるが、いくつかの課題もある。例えば、労働コストは全生産費用の4割を占めており、労働者一人当たりの生産性はチリの1/7という統計もある。また、インフラの未整備は輸送コストの増大を招いており、国境のChirundu、Beitbridgeの税関での待機に係わる費用は、輸送費の25%に相当する。また、ザンビア国内での製造業が未発達であるため、鉱山に必要な資機材はザンビア国内で調達することが困難であり、南ア等からの輸入に依存していることも、投資家にとってはコスト負担になっている。
 世銀としては今後、EITI(採取産業透明性イニシアティブ)が推進する透明性及びアカウンタビリティの確保を重点にザンビア政府を支援していく予定である。ザンビアはEITIの候補国であり、2011年中には遵守国になる予定である。
 講演終了後の質疑応答において、ザンビアでの法人税率(鉱業は30%)やロイヤルティ(ベースメタルの場合売り上げの3%)の適否に関し質問がなされた。Kapoorマネージャーからは、現在ザンビアの税務当局はノルウェー政府による協力の下、税制見直しの検討を行っているところであるとの回答があった。

セッション4:ザンビアの電力セクター

4-1「Overcoming the Supply Challenges & Energy and Water Development」Kongaエネルギー・水資源開発大臣
 現在ザンビアの電力は99%が水力発電で賄われており(現在の発電能力は1,950 MW)、銅製錬等により拡大する電力需要に対応するため、新規の発電所整備に取り組んでいるところである。現在建設中の発電所は表5のとおりである。2011年は電力需給が逼迫しているが、今後は新規発電所の操業開始により供給が増加することから、電力不足は解消される見込みである(電力の需給見込みは図3参照)。

表5.ザンビア国内で建設中の発電所

ITEM NO. PROJECT NAME CAPACITY
(MW)
COST
(US$)
EXP.COMM.
DATE
1 KNBE (Zesco) 360 420m 2012
2 ITT(Zesco/TATA) 120 240m 2014
3 Kalungwishi(IPP) 218 500m 2015
4 Maamba CoalFiredStation (IPP) 300 750m 2014
5 KGLPS(Zesco/Sinohydro) 600 1.94bn 2017
6 Lusiwasi (Zesco) 86 170m 2013
7 Heavy Fuel Oil (IPP) 50 60m 2012
8 Shiwangandu Minihydro 1 4m 2011
9 Kabompo Gorge 34 140m 2014
10 Lunzua (Zesco) 14.4 60m 2012
11 Lunsemfwa Lower (IPP) 250 300m 2016
TOTAL   1873.4 4.584bn  

(出典:ZIMEC 2011講演資料)

図3. ザンビアの今後の電力需給見込み
図3. ザンビアの今後の電力需給見込み

(出典:ZIMEC 2011講演資料)

セッション5:ザンビアで操業中の鉱山 -ケーススタディー-

5-1「Lumwana鉱山の概要」
Mr. Adam Wright, Managing Director, Lumwana Copper Mining Company
 Lumwana銅鉱山の権益はEquinoxが所有していたが、2011年4月にBarrick GoldがEquinox社を買収したため、現在ではBarrick Goldの資産となっている。なお、Equinox社は他にサウジアラビアのJabal Sayid銅プロジェクトも保有している。Lumwana鉱山の建設は2006年に開始され、2008年12月より生産を行っている。投資総額8.6億US$、従業員数3,400名(うち地元従業員2,200名)、2010年の銅生産量は146,960 tである。(表6参照)

表6. Lumwana鉱山の銅鉱石生産量

  2009年 2010年 2010年/2009年比
鉱石処理量(百万t) 13.7 18.6 +36%
銅品位(%) 0.95 0.86 -9%
回収率(%) 84.5 91.3 +8%
精鉱生産量(t) 109,403 146,690 +34%

(出典:ZIMEC 2011講演資料)

図4. Lumwana鉱山の位置図
図4. Lumwana鉱山の位置図

(出典:ZIMEC 2011講演資料)

5-2「Current and Prospective Development in the Global Copper Industry」
Mr. Don Smale, Secretary Genral, International Copper Study Group
 2009年以降、世界の銅需要は拡大しており、2010年の銅地金需要量は対前年比6.8%増の19,314千tであった。2012年までは中国等新興国の旺盛な需要に支えられ、約4%で成長する見込みである。(銅生産量見込みは2011年:20,102千t、2012年:20,965千tである)。供給サイドに目を転じると、2010年の世界の銅鉱石生産量は銅量で16,097千tであった。2012年までは、北米及びアフリカでの生産が拡大することから、2011年は対前年比4.6%増の16,833千t、2012年は対前年比6.4%増の17,904千tとなる見込みである。
 2012年までの新規又は拡張プロジェクトに係る鉱石生産量の見込みは図5のとおりである。

図5. 2012年までの新規又は拡張プロジェクトの生産量
図5. 2012年までの新規又は拡張プロジェクトの生産量

(出典:ZIMEC 2011講演資料)

 2014年までに計画されている銅鉱石の生産能力拡張に関し国別で見ると、ペルーが775千tと最も高く、次にチリ、ザンビアとなっている。これら3か国で世界全体の生産能力拡張の46%を占めることとなる(図6参照)。

図6. 計画されている銅鉱石の生産能力拡張(国別、2014年まで)
図6. 計画されている銅鉱石の生産能力拡張(国別、2014年まで)

(出典:ZIMEC 2011講演資料)

 なお、講演後の質疑応答にてICSGへのザンビア再加盟が取り上げられた。Don Smale事務局長からは、ザンビア政府としては2004年に再加盟を検討したが、ザンビア鉱業会議所等の産業界が積極的でなかったため再加盟が見送られた等の経緯が紹介された。ICSGは参加各国が予算を供与する国際機関であるため、ザンビア政府の判断で加盟が出来るとのコメントがあり、ザンビア政府は再加盟に向け再び検討することとなった。

3. おわりに

 本カンファレンスはザンビア政府が主催者として開催したザンビアでの初の国際的な鉱業カンファレンスであり、メジャー企業ではBHP BillitonやValeがスポンサーに、またAnglo AmericanやRio Tintoからも参加があるなど、世界のザンビアへの投資に対する関心の高さが窺えた。日本からはほとんどの大手商社からの20名程度の参加者があった。本カンファレンスは南アのINDABAを強く意識していることを感じさせたが、内容や運営面において改善の余地があるように思えた。例えば、事前に案内にあったプログラムでは3日目に鉱山見学が予定されていたが、講演初日になって中止が発表されるなど準備不足が目についた。また、講演会場とは別にブースも設けられていたが、廊下等の空いたスペースに散発的にブースエリアが設置されており、来訪者はあまり多くないように感じられた。
 講演内容としては、中国の投資動向やメジャーのアフリカ戦略等興味深いものもあり、アフリカ第一位の産銅国であるザンビアの開発動向については引き続き注視していきたい。第2回ZIMECは2013年に開催の予定である。

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