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Africa Downunder Conference参加報告- 豪州資源業界とアフリカ諸国との良好な関係 –
2011年8月31日から9月2日までの3日間、豪州WA州Perthにおいて、アフリカ鉱業探鉱投資セミナー「Africa Downunder Conference」がアフリカ各国政府鉱業関係者、探査ジュニア企業、鉱山会社、各種コンサルタント会社、投資家、銀行・保険会社等の金融関係、経済アナリスト等、約2,000名が参加して開催された。主催はPerthに本社のある鉱業雑誌出版社Paydirtである。 写真1. Africa Downunder Conference会場 (Pan Pacific Hotel) 写真2. 同(Novotel Hotel) |
1. Africa Downunder Conferenceの概要- 政府機関からの参加 –
第1回Africa Downunder Conference(2003年)に南アフリカSusan Shabangu鉱物資源大臣が当時の副大臣として参加していたことからもわかるように、会議には多くのアフリカ諸国の政府関係者も参加している。今回は、これまで最多のアフリカ12か国から鉱山大臣等の参加があった。表1に講演を行った各国政府関係者を示す(講演順)。
表1. Africa Downunder Conferenceにて講演したアフリカ各国大臣等
国名 | 役職 | 氏名 |
南アフリカ共和国 | 鉱物資源大臣特別アドバイザー | Sandile Nogxina |
ブルキナファソ共和国 | 地質局長 | Emile Kaboré |
リベリア共和国 | 土地・鉱山・エネルギー大臣 | Hon. Dr Roosevelt G. Jayjay |
ガーナ共和国 | 土地・天然資源大臣 | Hon. Mike Hammah |
アンゴラ共和国 | 地質・鉱山・産業大臣 | Hon. Joaquim Duarte da Costa David |
モザンビーク共和国 | 鉱物資源副大臣 | Dr. Abdul Razak Noormahomed |
マリ共和国 | 鉱山大臣 | H.E. Amadou Ciss`e |
ジンバブエ共和国 | 経済計画・投資促進大臣 | Hon. Tapiwa Mashakada |
ボツワナ共和国 | 通商産業大臣 | Hon. Dorcas Makgato-Malesu |
ナイジェリア共和国 | 鉱山・鉄鋼開発大臣 | Arc. Musa Mohammed Sada |
シェラレオネ共和国 | 鉱山・鉱物資源大臣 | Hon. Alhaji Minkailu Mansaray |
セネガル共和国 | 鉱山・産業大臣 | H.E. Abdoulaye Bald`e |
ホスト国の豪州からは、連邦政府のGary Gray特別国務大臣がオープニングスピーチを行い、WA州の成長企業の上位10社のうち7割がアフリカに資産を有している。また、約230社の豪州企業がアフリカの43の国と地域に650以上の計200億US$の価値を持つプロジェクトを有しており、そのうち約20企業100プロジェクトが2011年に開始されたと述べた。さらに豪州政府は成長する豪州-アフリカの鉱業関係を支援するとし、進出している企業に敬意を表した。
Kevin Rudd外務大臣はビデオ講演を行い、アフリカの鉱物資源分野における豪州企業活動の重要性を説明した。Rudd外相は、「アフリカには世界の鉱物資源の約30%が分布すると言われているが、世界の探鉱費用の約5%しか費やされていない。豪州の資源会社は計約200億US$を投資しており、さらに数10億US$の投資が展開されている。また、豪州資源会社の海外投資の約40%はアフリカに対するもので、これまでの実績からアフリカの各国政府から進出を求められている。」と講演した。
各国政府代表者は、一般概要、鉱業概要の他、提供している情報やサービス等各国の支援制度を説明し、自国への探鉱会社及び鉱山会社の進出を呼びかけていた。また、ナイジェリア及びジンバブエは、独自にセミナーを開き投資の呼び掛けを行っていた。
その中で、南アフリカ共和国の前鉱物資源局長で現在Susan Shabangu鉱物資源大臣の特別アドバイザーを務めるSandile Nogxina氏は南アの抱える問題について現状を説明した。Nogxina氏は南アフリカ与党ANC(African National Congress)の青年部(Youth League)リーダーJulius Malema氏が推進する鉱山の国有化について、ANCは現実的な政策ではないと主張しながらも、本件は投資減退につながる可能性を懸念している、と述べた。Nogxina氏は、現在ANCはタスクチームを任命し国有化に関する調査を行っており、2012年7月までに立法化の是非が決まる見通しになっているとも付け加えている。
写真3. ボツワナMalesu通商産業大臣の講演
2. 探鉱案件の紹介
Rudd外務大臣がConferenceのビデオ講演で示したように、豪州資源会社の海外投資の約40%はアフリカに対するもので、豪州外務貿易省によれば、豪州証券取引所(ASX)に上場している会社が海外に所有する868プロジェクトのうち335はアフリカに位置している。
(出典:2011年9月3日付Australian紙)
図1. ASX上場企業の海外資源プロジェクトの地域別割合
第1回のAfrica Downunder Conference(2003年)が開催されてからの9年間で、アフリカに資産を所有するASX上場の会社は40から170へと大幅に増加し、多くの探査ジュニア企業もこの新天地へ参入してきている。
今年のConferenceで講演した探査ジュニア企業59社のアフリカ諸国における探査プロジェクト数は247に及ぶ。それらを以下にまとめる。
○ 鉱種:金が最も多く99プロジェクト、金・ベースメタルを対象にしているもので123プロジェクトと全体の約半数となる。以下、石炭:28、ウラン:19、鉄鉱石:14、白金族(含む+Ni, Cu):12、銅(含む±Au, Mo, Co, Ag, U)、レアアース:7、ミネラルサンド:6、と続く。他には、マンガン、燐鉱石、カリウム、錫、ニオブ、バナジウム。
○ 国:南アフリカが最も多く44プロジェクト。以下、ブルキナファソ:43、ガーナ:24、ナミビア:20、リベリア:17、ボツワナ:16、タンザニア:13、ケニア:10、コンゴ民主共和国:9、ザンビア:7、と続く。他にエリトリア、マリ、ニジェール等、現在プロジェクトを実施しているのは、27か国に及ぶ。なお、ブルキナファソ、ガーナ、リベリアは主に金を対象とした探査プロジェクト。
なお、探査ステージとしては、初期探鉱が83プロジェクトと全体の約1/3を占めている。
2003年の第1回Africa Downunder Conferenceには、昨今Barrick Gold及びMinmetals Resourcesによる買収で話題となったEquinox Minerals社のCraig William氏及びAnvil Mining社のBill Turner氏(2011年11月7日現在Anvilは買収協議中)、さらにPladin Energy社のJohn Borshoff氏も参加していた。
彼らはアフリカ地域の鉱物資源探査のパイオニアで、Equinox Minerals社は2008年にザンビア・Lumwana銅鉱山を、Anvil社は2007年にコンゴ民主共和国・Kinsevere銅鉱山を、Pladin Energy社は2007年にナミビア・Langer Heinrichウラン鉱山をそれぞれ開山している。
3. 豪州のアフリカ進出企業への支援
Gray特別国務大臣は、Rudd外務大臣を代行したオープニングスピーチの中で、豪州は自国の資源ポテンシャルを活かし経済成長を促進させるために100年以上にわたり海外投資を引き付けてきた歴史を有しており、その経験をアフリカ諸国の人達と共有することで、アフリカ各国の天然資源を活用し投資を引き付ける手助けができる、と講演した。
Conferenceのプログラムには、DFAT(Department of Foreign Affairs and Trade:外務貿易省)、Austrade( Australian Trade Commission:豪州貿易促進庁)、AusAID(Australia Agency for International Development:豪州国際開発庁)及びDIAC(Department of Immigration and Citizenship:移民多文化先住民関係省)によるパネルディスカッションも組み込まれ、豪州政府がアフリカに対してどのような援助を行っているか説明するとともに、アフリカ投資への支援を説明した。Austradeは、毎年アフリカで開催されている鉱業大会Mining Indabaに豪州ラウンジを設置し、豪州企業のネットワーク作りの支援等を行っており、2012年にもラウンジを設置する計画となっている。AusAIDは、2011年にはアフリカ24か国から150人を豪州に招き鉱山研修ツアーを実施し、2012年にも115人を招待する予定としている。
写真4. 豪州政府関係機関パネルディスカッション
2010年には民間投資と政府援助を結びつける役割をDFATに期待されて、Australia-Africa Mining Industry Group(AAMIG)が設立され、元Anvil Mining社のBill Turner氏が会長に就任した。Turner氏はConferenceで講演し、豪州鉱山会社はアフリカ各国において先駆者(First Mover)としての技術的な、また社会責任的な地位を獲得している、とした。さらに、DFAT/AusAIDとAAMIGとの官民連携(Public-Private Partnership:PPP)を進展させることによって、豪州及びアフリカ諸国双方に経済的及び政治的な利益がもたらされるとした。また、鉱山会社にとっても、政府とPPPを実施することによって幅広い連携が構築され、財務および投資市場での信頼性が向上する、と講演した。AAMIGの関与するPPPは2012年から開始される予定となっている。
写真5. JOGMECブース
おわりに
アフリカ諸国で探査を行う豪州企業の年に一度の会合Africa Downunder Conferenceは、年々その規模を拡大し、今年の参加者はついに2,000人に及んだ。来訪するアフリカ諸国の政府関係者も増加し、豪州政府も資源所有国としての経験を援助に活かし、さらに資源会社を支援しようと積極的に展開している。Africa Downunder Conference開催後約2か月経った2011年10月28~30日の3日間、WA州パースで英連邦ビジネスフォーラムが開催され、各国の政府代表及び企業関係者約1,200名が参加した。その中で、豪州企業はこれまでアフリカの42か国において665件(総額250億US$)以上の資源プロジェクトを手がけており、そのうち220件はこの20か月の間に開始されているとし、アフリカ資源は投資先として可能性を秘めていることが強調され幕を閉じている。
今回JOGMECは初めてブースを設置し、ボツワナ地質リモートセンシングセンターのプロジェクトやアフリカ諸国での探査プロジェクトについて紹介した。資源の豊富な豪州スタイルの援助・支援をする事はできないが、ボツワナ地質リモートセンシングセンターの活動や例年のMining Indabaにおける講演・ブース設置等を通じ、JOGMECの存在もアフリカ諸国、豪州企業に徐々に浸透してきていると感じた。
参考資料
● Africa Downunder Conferenceプログラム
(http://www.africadownunderconference.com/programme.11.html)
● AusAID, 2011, Mining in Africa
(http://www.ausaid.gov.au/country/africa/mining.cfm)
● Australian, 2011, Explorers eye Africa as race begins to tap its riches
(http://www.theaustralian.com.au/business/mining-energy/explorers-eye-africa-as-race-begins-to-tap-its-riches/story-e6frg9df-1226128440898)
● Australian Minister for Foreign Affairs, 2011, Sharing Australian mining expertise to help Africa
(http://www.foreignminister.gov.au/releases/2011/kr_mr_110831.html)
● Australian Trade Commission, 2011, Mining Indaba – Australia Lounge
(http://www.austrade.gov.au/EventViewBookingDetails.aspx?Bck=Y&EventID=3098)