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報告書&レポート

2011年12月22日 金属企画調査部 竹下聡美 廣川満哉
2011年68号

CHINA MINING Congress & Expo 2011参加報告-資源確保への国際協力強化、鉱山開発加速-

写真1. 開会セレモニー

写真1. 開会セレモニー

 2011年11月6日(日)~8日(火)の3日間、中国・天津市においてCHINA MINING Congress & Expo 2011(第13回中国国際鉱業大会)が開催された。中国国土資源省及び天津市人民政府が主催した中国最大の鉱業大会で、「国際協力の強化、探鉱・鉱山開発の加速化(中国語では「加强国际合作,加快找矿突破」)」をテーマとして掲げ、資源国との関係強化と中国の需要拡大に伴う供給先確保のための探鉱開発・投資促進を強調したものとなった。
 カナダ、豪州、南アの鉱業大臣が顔を揃えた大々的な開会セレモニーを皮切りに、8件の基調講演と28件の一般講演が行われ、展示会場では中国国土資源省の大規模なパビリオンを中心に約300以上の展示ブースが出展された。主催者発表では、政府関係者や鉱山関係者、金融機関等から4,800名、うち50カ国以上から1,000名の参加登録があったとのことであるが、海外からの参加者は全体の1割程度の印象で、鉱業大会全般において、主に中国企業に対して資源分野での政策のアピールや対外投資を促進する場となっていた。

写真2-a

写真2-a
写真2-b

写真2-b
写真2-c

写真2-c


展示会場:写真2-a:中国国土資源省の展示。テーマの「加强国际合作,加快找矿突破」の文字が見える。
       写真2-b,c:中国資源大手3社(Minmetals、Chinalco、有色公司)が大規模な展示を行った。

 開会セレモニーは当初出席予定であった李克強(Li Keqiang)副首相からの祝辞が代読され、続いて、中国側は徐绍史(Xu Shaoshi)国土資源大臣、天津市長、海外からはカナダ天然資源大臣(Joe Oliver)、豪州資源エネルギー観光大臣(Martin Ferguson)、南ア鉱物資源大臣(Susan Shabangu)らが挨拶し、鉱業分野での協力関係を確認し合った。現地報道によると、開会セレモニー終了後には、別会場にて上記3か国のほかインド、モンゴル、ラオス、アンゴラ、スーダン、キルギス、タジキスタン等の19か国以上の政府要人(次官・局長クラス)と徐绍史中国国土資源大臣が会談を行っている。

1. 基調講演―汪民(Wang Min)中国国土資源副大臣

写真3.開会セレモニーで挨拶をする

写真3.開会セレモニーで挨拶をする

徐绍史(Xu Shaoshi)国土資源大臣

 汪民(Wang Min)中国国土資源副大臣は中国の資源政策について基調講演を行い、世界経済の回復を待たずに海外での資源開発をスピードアップしていくとともに、国内については初期探査と資源開発の管理を進め、今後の供給体制を強化することを強調した。
<講演内容>
 中国は工業化と都市化により急速に経済成長してきた。引き続き、資源の安定供給確保のために鉱山開発を推進し、また技術革新により資源の有効利用と効率化を改善させる。持続可能な資源利用は持続可能な社会経済の発展に寄与する。資源政策については次のとおり進めていく。

(1). 探査と鉱山開発を加速強化し、国内と海外資源のバランスを見ながら供給体制を強化する。中国政府は新規鉱床開発への足がかりとなる初期段階の探査を進めるほか、補助金制度やファンドを設立し、探査環境を整備する。

(2). 資源の有効利用と保護のため、国内資源の乱開発を防止するためのガイドラインを設け、管理を行う。

(3). 持続的な鉱山開発を進めるため、構造改革と鉱山緑地化を推進する。

(4). 資源の管理の改善を行う。統一的なルールで鉱業権の売買が出来るようにオンラインで管理を行う。

(5). 探査を着実に行いつつも、限られた資源を有効に使用する。ステークホルダーの法的権利と利益を保護し、中国企業に対し環境保護への社会的責任を啓蒙する。

(6). 海外との協力関係を強化して、Win-Win体制を構築する。

(7). 鉱物資源の深部化、奥地化により求められる技術は高度化しており、最新の探査・開発技術を構築するために、各鉱山会社とのR&Dや共同プロジェクトを推進する。

2. 一般講演

2-1. 2011年中国銅市場需給分析及び2012年の展望
  北京安泰科信息开发有限公司 何笑辉
<講演内容>
 2007年から2011年の銅地金の供給状況を見ると、2007年の国内銅地金生産量3,497千tが2011年には5,268千t(見込み)と約1.5倍に伸びているものの、消費量は2007年の4,560千tが7,380千t(見込み)と約1.6倍に増加しており、国内消費の伸びに地金生産が追いついていない状況にあり、その不足分を地金輸入で補っている。

表1. 中国銅地金供給実績と見通し(単位:純分千t)

  2007 2008 2009 2010 2011
国内生産量 3,497 3,779 4,123 4,578 5,268
地金輸入量 1,494 1,455 3,185 2,920 2,414
地金輸出量 126 96 73 37 174
消費量 4,560 5,100 6,100 6,800 7,380
バランス 305 38 1,135 661 128

 2010年の用途別消費では、エアコン、運輸交通での消費が、対前年比20%を超えて増加したものの2011年には、鉄道建設等の増加の伸び率が縮小するために運輸交通の伸びが減少する見込みである。一方、エアコンの伸び率は減少するものの10%以上の伸びが継続し、電力需要も2010年より伸び率が増加する見込みである。

表2. 中国銅地金用途別消費見通し(単位:純分千t)

  2010 対2009年比
(%)
2011 対2010年比
(%)
電力 3,140 6.8 3,390 8.0
エアコン 990 23.8 1,150 16.2
運輸交通 750 21.0 800 6.7
電子機器 510 13.3 550 7.8
建築 640 8.5 680 6.3
その他 770 10.0 810 5.2
合計 6,800 11.5 7,380 8.5

 2012年の中国の銅市場について、以下のとおり予測している。
 銅製錬所の能力増強により、2012年の銅製錬と銅精錬の生産能力は、それぞれ472万t(65万t増)、843万t(2011年比130万t増)となる。消費は、2011年の金融引き締め、インフレ問題から国内需要と輸出の減少の可能性があるものの、電力用銅需要が大きく伸びるため、2012年は、785万t(2011年比6.4%増)の消費と予測する。銅地金の生産と消費のギャップ、必要な銅地金輸入量は210万t程度である。

2-2. Outlook of Global Mining in 2012
  Dr.Yan Weidong, Research Office Deputy Director,Information Center, Ministry of Land and Resources P.R.C
 中国国土資源経済研究センター副所長のDr.Yan Weidong氏から、2012年の世界の資源動向について講演がなされた。講演内容は一般的な事項に留まったが、特に自国の政策には触れず、海外の資源ナショナリズムが高まっている状況について中国企業に対し注意を喚起した。
<講演内容>
 世界経済は過渡期にあるが、中国、インドをはじめとした新興国は成長を続け、鉱物資源の需要は拡大していくだろう。資源開発費は2000年の1,000億US$から年々増加して2010年には5,000億US$半ばに達し、5倍以上に増加し成長を続けている。金と銅が主要ターゲットで、全体の70%に相当する。Ernst and Young調べによると2011年上期の鉱業分野でのM&A取引は960億US$、2011年中には1,200億US$の新記録を達成する見通しで、今後もM&Aは活発になされる見通し。
 鉄鉱石及び銅の需要については、2012年も伸び続け、中長期的なトレンドとしては、鉄鉱石は供給不足とはならないものの、銅は大規模銅鉱山の品位低下や深部化で年々生産量が減少していることを受けて供給不足となる見通し。さらに、超高速鉄道や石油、天然ガスのパイプライン、自動車、船舶向けの需要拡大は、ステンレススチールのほか、チタン、ニオブ、バナジウムなどのレアメタルの需要増も引き起こすとみられる。
 資源ナショナリズムのリスクも高まっている。資源国では鉱業税やロイヤルティの改正が続いており、また鉱業権を取り消すなどして資源国政府はプロジェクトの保有を進めている。2010年から2011年には、少なくとも25か国が鉱業分野からの政府歳入を増加させるために課税やロイヤルティ率を上昇させた、または上昇させることを表明しており、今後も資源開発を実施する上での懸念事項となっている。

2-3. Deloitte. Success Factors in Outbound M&A
  Mr. Jeremy South, Partner Corporate Finance Advisory, Global Mining Leader, Financial Advisory Beijing
 デロイト・トーマツのパートナーJeremy South氏は、中国企業が海外のM&Aで成功するために必要な要件は何か、中国の資源政策と中国企業のM&A動向について講演を行った。欧米や日本、韓国の手法と比較して中国企業は自社の経験の浅さを認識して単独での参入を避け、海外企業とのパートナーシップの上でマイノリティシェアでの参入が成功のカギとなると提言した。
<講演内容>
 中国は、第11次五カ年計画(2006~2010年)でGDP成長率年平均7.5%を目標値としていたが結果は10%を上回り急速に経済成長を続けている。李克強(Li Keqiang)副首相は、「経済成長パターンの転換が求められており、新しいアイデアと革新的なアプローチを必要とする。我々はそれらを成し遂げるために改革と開放を加速化させねばならない。」と述べ(2010年6月)、第12次五カ年計画ではGDP成長率の目標値を7%に引き下げ、質の成長、包括的な成長に重点をおいた経済成長パターンを描いた。

表3. 直近3期の五カ年計画の概要

第10次五カ年計画
(2001-2005)
第11次五カ年計画
(2006-2010)
第12次五カ年計画
(2011-2015)
下記による急速な成長-
→コアとなる産業への投資
→インフラ投資
→輸出促進
→金融セクターの自由化
→地場産業のイノベーション
→更なる輸出促進
→“調和のとれた社会”への投資
“包括的な成長”-
→8%経済成長
→社会インフラと家計消費の改善
→富の増大と分配の公平性
→持続可能性と成長のバランス
→中国企業と中国通貨の国際的な存在感を増す
→コモディティ輸入への依存を減らす

(出典:Deloitte講演資料から作成)

 2010年には米国に代わって中国が世界最大のエネルギー消費国となり、1次エネルギー消費量は第11次五カ年計画期間で年平均33億t(石炭換算)、前期から6.3%増加した(参考までに日本の2010年のエネルギー消費量は6.6億t)。中国のエネルギー強度(エネルギー生産量あたりのエネルギー消費量)は依然として高く、公表ベースでは19.1%となっている。

表4. 直近3期の五カ年計画の目標値

  第11次五カ年計画 第12次
(2011-2015)
(目標値)
第13次
(2016-2020)
(目標値)
(2006-2010)
(目標値)
(2006-2010)
(実績)
GDP成長率(年平均) 7.5% 10.8% 8%
一次エネルギー消費増加率 4% 6.3% 3.75%-5% 5.5%
エネルギー消費量(単位:10億石炭換算t) 2.7 3.3 4.2-4.5 <4.9
一次エネルギー消費量に占める非化石エネルギーの比率 10% 8.3% 11.4% 15%
エネルギー強度(5年間での減少率) 20% 19.1% 16%

(出典: Deloitte講演資料から作成)

 こうした状況を受けて、中国の第12次五カ年計画では次のとおり取り組むこととされている。

・供給源の多様化と国内供給量の強化によりエネルギーリスクを減少させる。

・エネルギーの管理を優先し、エネルギー強度を減少させる。

・クリティカル・コモディティについては国家管理を集中化し、特に、石炭鉱山については、Shanxi省から全ての主要な石炭鉱山に至るまで整理統合を推し進める。

・天然ガスの生産量を増加し、メタンガスやシェールガスの石油・ガス資源を開発する。

・内モンゴルや新疆自治区などの中国西部での探鉱開発を行う。

・海外活動を奨励し、技術力や管理能力を改善するために国際的な協力関係を築く。

・再生可能エネルギーについて長期販売契約などセクターへの投資を促進する。

・資源エネルギー価格の改定を優先事項とし、徐々にエネルギー価格を自由化する。

 中国企業による海外でのM&A取引件数は2007年、2008年、2009年と対前年比50%以上増加しているが(図1)、海外の鉱物生産量のうちコントロールできるのはたった1%に過ぎず、中国政府は新たな資源案件の獲得を支援する必要がある。さらに地域別で見ると、2003年から2010年上半期までの鉱業分野でのM&A取引件数の内訳は、豪州50%、北米23%、南米6%、欧州6%となっており、半数を豪州が占めている状況である(図2)。最近の傾向としては、供給国の多様化に向けて、豪州、カナダからアフリカ、特に南アへの集中が目立っている。

図1. 中国の海外M&A取引件数の推移

図1. 中国の海外M&A取引件数の推移
図2. 中国の海外M&A取引件数地域別割合

図2. 中国の海外M&A取引件数地域別割合

(2003年~2010年H1)


(出典: Deloitte講演資料から作成)

表5. 2010年の中国の海外資源獲得の主要国一覧

国名 金額
南ア 30.3億US$
豪州 14.3億US$
ブラジル 12.2億US$
カナダ 11.0億US$
インドネシア 4.2億US$

(出典:Deloitte講演資料から作成。400百万US$以上のものを列記)

 資源案件の参入方法について中国、韓国、日本の最近の動向を比較すると、中国は100%権益取得やマジョリティでの参入がほとんどを占める一方で、日本はJVや第三者割当増資など参入方法が分散している。また中国では国内企業での競合から1社単独での参入が見られる一方、日本、韓国については原則コンソーシアムでの参入がなされており、対象鉱種についても中国は銅に集中している一方で、日本は幅広い鉱種をターゲットとしている。

表6. 日中韓3か国の資源案件参入形態の傾向比較

中国 韓国 日本

・100%権益取得や第三者割当増資による支配的な参入が主。JVではほぼマジョリティ権益を保有、

・鉄鉱石や亜鉛を副産物とする銅に集中

・単独での権益取得は見られず、JVや第三者割当増資での参入がメイン

・JV取引では戦略的な企業と商社とともに行う

・最近の取引は銅とモリブデンに集中

・JVや100%権益、第三者割当増資などツールが分散している。

・商社や関係企業とコンソーシアムを組む。すべてのベースメタルと原料にわたって権益を保有

・最近は銅、ウラン、リチウム、タングステン、石炭など

(出典: Deloitte講演資料から作成)

 対外投資を成功させるための重要なカギは、中国企業は経験が浅いということを認識して権益100%での単独参入から欧米企業等とのパートナーシップに移行することである。また中国企業はマジョリティ権益を取得してコントロールしたがる傾向があるが、成功することはほぼ不可能だと言ってよい。さらに海外企業の中国企業へのイメージはかなり低いということを分かっておく必要があるだろう(中国市場の不完全さ、公共資料の信憑性、環境への認識の低さ等)。交渉に際しては信用が第一で一貫したアプローチをとることが高く評価される。さらに、開発案件に集中せず探鉱案件にも目を向け、コモディティの価格予測のもと戦略的に対外投資を行っていくことが重要である。

2-4. Preliminary thoughts on current macro economy & mining industry
  Mr.Fang Qixue(George),Managing Director, Head of Mining & Metals, Standard Bank
<講演内容>
 2011年の中国のGDP成長率は9%となる見通しで、PMIは2009年1月に落ち込んだが以降50%以上を推移しており、今後も引き続きGDP成長率は伸びていくだろう。これまでのGDP成長率を引き上げた重要なファクターはインフラ整備と都市化である。中国政府は2008年には内需拡大のため4兆人民元の経済刺激策を実施しており、インフラ整備としては、2020年までに鉄道建設費用として総額5兆人民元以上、水道、道路整備には3~5年のうちに5兆人民元を投資する予定である。都市化については、2008年の都市化比率(全人口に占める都市人口の割合)は45%で2020年には60%に達する見通しである。
 次に、対外投資にとって重要な地域であるアフリカについては、2050年時点世界で最も高い人口上昇率が見込まれ、それに合わせて都市化も進み2050年までにアフリカ人の3人に2人は都市部で生活する見通しで都市化が急速に進展する見通しである。アフリカは鉱物資源にも富み、世界の埋蔵量のうち白金族金属(PGM)は9割、リンは8割がアフリカに存在しており、PGMやコバルトは世界の約6割以上を生産している。中国は「走出去」政策のもとアフリカに積極的に投資を行っており、2010年中国・アフリカ間貿易額は1,270億US$で米国を抜いて最大の貿易相手国となった。アフリカへの対外直接投資(FDI)額は330億US$とフランス、米国に次いで中国が世界3位となっている。
 また、鉱業分野の対外投資は拡大し続けており、2003年対外直接投資(FDI)額は59億US$であったのが、2010年には447億US$にまで増加した。特に2008年の世界経済危機が資源権益獲得をスピードアップさせた。

図3. 中国の鉱業分野でのFDI額の推移

図3. 中国の鉱業分野でのFDI額の推移

(出典:Standard Bank講演資料から作成)

 中国企業は対外投資の実践により経験を積み教訓を得てきており、最近の中国企業の投資におけるトレンドは次のとおり変化してきた。さらに中国政府による中国投資家に対する支援が期待される。

・長期需要やマクロ的な投資環境などを考慮に入れ、より戦略的になってきた。

・投資銀行や法律事務所、会計事務所、保険会社等を利用し始めた。

・単独で投資するよりパートナーシップを組み始めた(例:DRCコンゴでは中国鉄道グループが複数の中国企業とパートナーシップを組んでいる)

・ストライキなどの現地労働者問題等のリスクへの認識の向上

3. パネルディスカッション-中国の対外投資戦略-

 最終日には、「今後、中国はどのように鉱業投資を進めるべきか」をテーマにパネルディスカッションが行われた。ディスカッションの大半は資源分野で日本はなぜ成功しているのかに占められた。メンバーは、デロイト・トーマツ(中国支社)のパートナーAndrew Zhu氏、中国地質調査局研究長Xiang Yunchuan氏、カナダ天然資源省副次官Anil Arora氏、豪州取引委員会(Austrade)委員Henry Wang氏、中国国際投資委員会理事Wang yanguo氏、中国非鉄会社(Guangxi Non-Ferrous Metals Group)副部長Lee Fuping氏。以下に発言内容を挙げる。

★ 中国側の発言
 中国政府は米ドル外貨準備高を利用して海外の権益獲得を促進させていくと思われる。現在はコモディティ価格が下落傾向にあるので、タイミングとしては好機とみている。
 中国企業はメジャーシェアでオペレーターとしてコントロールしたがる傾向があるが、地元住民との接触をなるべくしないように出資だけにすべきだ。また別の手法として、JVを積極的に進め、カウンターパートから、現地国での様々なマナー、考え方を学ぶべきである。相互理解と協力関係の構築が資源開発には不可欠である。資源開発を成功させるには、地域経済に貢献し、また現地国からマネジメント層を雇用することが重要だ。
 日本について、資源分野での成功を収めているのはなぜかを学ぶ必要がある。日本は各資源メジャーと販売契約を多く締結しており、原料調達の面で安定している。中国もサプライチェーンをよく分析して、長期の販売契約を締結する必要がある。さらに、日本企業はグループ会社やコンソーシアムを組んで、互いに助け合うことでリスクを軽減している。このコンソーシアムは、ファイナンスからメーカーの下流にまで至っている。一方、中国は企業同士が競合しており、こういった動きは見られない。日本に学んで中国企業は協調していくべきである。今後中国政府は、日本の事例に学んでコンソーシアムを組成するための支援を行うべきである。また日本の海外戦略も成功しているといえるだろう。1980年代に遡るが、日本は資源安定供給確保のため、メジャーシェアでの権益参入は行わないこと、原料調達の確保を優先することを決断した。日本政府が資源戦略を策定し、政府機関がシナジー効果を作り出してきた。

★ 豪州取引委員会(Austrade)委員Henry Wang氏の発言
 中国企業の問題点としては、政府の関与が入るので投資決定のタイミングが遅いこと、また人的資源が不足しており、英語力を向上させる必要があることだ。なお、メディアによっては誤った報道をしているが、豪州では中国企業は積極的に現地住民を雇用している。PRの方法、コミュニケーション能力を高める必要がある。
 豪州と日本との関係では、日本は大きなマーケットを有し、豪州では日本企業なしの資源開発は成功しないと言っていいほどだ。中国も大きなマーケットに成長しているため、豪州との今後パートナーシップを結ぶべきだろう。

★ カナダ天然資源省副次官Anil Arora氏の発言
 中国企業は物事に対する考えや理解が国際企業と異なり、また投資の方法も中国独自の方法で行われるため、中国企業を理解することは難しいというのが印象としてある。
 カナダと日本との関係では、日本企業はかなり以前から大規模案件に参入してきている。ただし10~20%のマイナーシェアに留まり、オペレーターとならないのが特徴で、賢い参入方法である。

写真4-a

写真4-a
写真4-b

写真4-b
写真4-c

写真4-c


 講演会場等:写真4-a:人気の講演は立ち見が続出した。
         写真4-b:講演の様子は複数のスタッフがtwitter等で生発信していた。
         写真4-c:鉱業大会最終日に記念撮影する大学生ボランティア。

おわりに

 2010年の中国の銅地金消費量は742万tで世界消費量1,909万tのうち4割を占めるに至っている。中国は今や世界最大の資源消費国で今後も需要拡大が見込まれており、これに対応した供給先の確保が急務となっている。1999年から国家戦略として掲げられた「走出去」政策により、中国企業は主にM&Aによる自社権益優先の積極的な対外投資を行ってきた。しかし、中国の自給率が投資に比例してどれほど高まったのかデータはないものの結果は芳しくないと思われる。興味深いのは、これまでの中国の投資手法である完全買収、マジョリティ権益確保、オペレーターシップ取得を見直す動きが中国企業から始まっている点で、中国は、自国企業の経験をもって、地域経済に貢献し環境に配慮した持続可能な資源開発の重要性及びその困難性を認識した。それに取り組むためには、経験のある欧米企業とのパートナーシップが必要であると感じている。
 次回のCHINA MINING Congress & Expo 2012は2012年11月4日から6日にかけて開催される予定である。

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