報告書&レポート
Mining INDABA 2012(第18回アフリカ鉱山投資会議)

2012年2月6日~9日、南ア・ケープタウンでMining INDABA 2012(第18回アフリカ鉱業投資会議)が開催された。世界各国からメジャー鉱山会社、ジュニア探鉱会社、政府関係者、非政府団体、アナリスト等が集い、前年より17%増となる約7,000名iが出席した。 |
1. INDABA 2012の会場の状況

写真1. BHP Billitonの立体的なブース

写真2. JOGMECのブース
Mining INDABA 2012は、欧州の債務問題の深刻化や二番底の不況に対する懸念、鉱業における資源ナショナリズムの動きの活発化を背景に開催された。事前登録者数は2011年より約1,000名多い約7,000名を記録して、史上最大規模で行われた。展示会場では、メジャー/中堅鉱山会社、ジュニア探鉱会社、政府機関、金属需給動向やファイナンスのアナリスト及びコンサルタント、証券取引所や金融機関、鉱山設備提供会社等がブースを設けており、多くの来場者が活発に各ブースを訪問し、名刺交換、意見交換等のネットワーキングを行っていた。特に、メジャー企業はそれぞれに個性的なブースを設営し、来場者の注目を集めていた。
参加者を地域別でみると、カナダや豪州政府が各国企業の協賛を仰いで大きなブーススペースを設け、例年どおりの存在感を示したほか、ブースを設けているアフリカ各国や欧米の企業からの参加が多く、アジアからはインド政府のブースや参加者は見られたが、昨年同様中国からの参加者はさほど多くないと思われた。
この中でJOGMECは前年からの試みとして、JBICを隣接したブースに誘致し、チームJapanとして、日本政府や企業のアフリカへの関与や投資に関心を持ちブースに訪れる人々に対して日本政府全体としての鉱業支援体制を説明した。
2. アフリカ各国の鉱業大臣による講演
アフリカ開発銀行(AfDB)主催でアフリカ大臣フォーラム1~4が2日間にわたって開催され、モーリタニア、ギニア、タンザニア、モザンビーク、ザンビア、エチオピア、コンゴ民主共和国(DRCコンゴ)、ガーナ、マリ、ナミビア、ナイジェリア、ブルキナファソ、ボツワナ、アンゴラ、ソマリランドの政府代表者が自国における鉱業の概要や鉱業政策に関する講演を行った。またホスト国である南アフリカは、Shabangu鉱物資源大臣が大ホールにて基調講演を行った。なお、当初予定されていたチャド及びリベリア政府による講演はキャンセルとなった。
2-1. 南ア鉱物資源省(DMR)、Shabangu大臣による基調講演

写真3. 大ホールで行われたShabangu大臣の基調講演
【南ア鉱業の背景】
南アには、白金、金、クロム、マンガン等多くの鉱物資源が賦存している。特に白金に関しては、世界における生産シェア(2010年)は75.6%である。
南ア鉱業に関する最近の主な動きとしては、2011年4月から探鉱権・鉱業権の一元管理を行うためのオンライン地籍管理システム(SAMRAD システム)を運用開始したこと、2011年6月に高付加価値化戦略が内閣の承認を得たことに加えて、2011年11月に鉱山国有化を推進していたアフリカ民族会議青年同盟(ANCYL:ANC Youth League)の元議長Julius Malema氏が党員資格停止処分を受けたこと等が挙げられる。また本カンフェレンス開催直前の2012年2月2日、アフリカ民族会議(ANC)が委託した鉱山国有化に関する調査の結果報告書の情報が一部報道され、同報告書が鉱山国有化をしないことを推奨していることが明らかになった。
【講演概要ii】
● 鉱山の国有化
鉱山の国有化はANC及び南ア政府の政策ではない。ANCは南アフリカにとって最大の利益をもたらすような政治的な立場を取っていく。鉱業界が(BEE権益譲渡の目標達成など)鉱業憲章及び鉱物・石油資源開発法(MPRDA)の条項を遅れることなく実施できていれば、そもそも鉱山国有化に関する議論は浮上しなかった。鉱山国有化に関するタスクチームの調査結果は、鉱山国有化は実行可能な政策ではないとするANCの判断をより強固にするものであり歓迎している。
● SAMRAD システム
透明性の向上と事務手続きの簡素化を目的として、2011年4月18日からSAMRAD システムが導入された。初期段階では問題(新規探鉱権申請受付の遅れなど)が発生したが、問題は特定され次第対処された。現在までに3,000件以上の申請があり、MPRDA施行以来の年平均件数を達成できる申請状況であり、南ア鉱業に対する関心が継続的に高いことが伺える。
● 高付加価値化
南アの鉱物資源の高付加価値化は、産業及び経済開発政策において大変重要である。鉱物資源の採取から南アが得られる利益の最大化を目的として、高付加価値化戦略が策定された。高付加価値化戦略では、①鉄鉱石及び鉄鋼、②エネルギー、③自動車触媒及びディーゼル排気浄化、④チタン、⑤宝飾品、の5つの鉱物資源バリューチェーンが対象として選定されており、①及び②に関しては戦略の作成が完了、③、④及び⑤に関しては仕上げの段階である。鉱山会社を強制的に製造会社にすることが南ア政府の意図ではなく、地域における高付加価値化の妨げとなっている課題に対処することが目的である。
2-2. ザンビア、Simuusa鉱山・鉱物資源開発大臣

写真4. Simuusa鉱山・鉱物資源開発大臣
【ザンビア鉱業の背景】
巨大な銅鉱床地帯(カッパーベルト)が存在するザンビアでは、銅鉱業が同国鉱業において中心的な役割を担っている。Vale、Barrick Gold、Vedanta、First Quantum Mineralsといった鉱山会社に加え、中国有色鉱業集団といった中国企業も活発に銅鉱山に投資を行っている。
2011年9月に野党の愛国戦線(PF)のSata党首が現職Banda大統領を破り、新大統領に就任し、鉱山・鉱物資源開発大臣にはWilbur Simusa氏が任命され、それ以降鉱業の税制改正に意欲的に取り組んでいる。2011年10月には、鉱業に関する新ガイドラインを策定するとともに、汚職一掃のために鉱業権の見直し作業を開始しており、見直し作業の完了まで鉱業権の新規発給を一時停止すると発表した。また、2011年11月に2012年の国家予算を発表し、ベースメタルのロイヤルティ料率を現行の3%から2倍の6%に、貴金属では5%から6%にそれぞれ引き上げる計画であることを明らかにした。
【講演概要】
2011年9月にSata大統領が就任して以降、ザンビアでは鉱業に関する法規制の見直しが行われている。新政府は銅生産量を現在の75万t/年から2015年までに100万t/年に増大させることを目標としており、同国における探鉱活動の促進に励んでいる。同国の政府、そして鉱山・鉱物資源開発大臣にとって最大の課題は、いわゆる「資源の呪い(resource curse)」から脱することである。世界有数の鉱物資源国であるザンビアは、いまだに貧困国の一つであり、この矛盾した状況を打破することが優先課題である。ザンビア政府は、ザンビア国民が鉱山の所有権に関与することを促進するが、鉱山の国有化はザンビア政府の政策ではないことを強調したい。現在鉱業ライセンスの見直し作業のため、新規ライセンスの発行が停止されているが、1~2か月後には見直し作業が完了すると思われる。今回の見直し作業によって、鉱業における透明性が向上するとともに、鉱業ライセンスの申請手続きの簡素化が実現される。
ザンビア政府の鉱業投資戦略は、鉱物資源の増産及び多様化を目標としており、内容には新鉱山開発につながる探鉱活動の活性化、鉱物資源の付加価値化と製造部門の強化、鉱業関連消耗品の製造業の発展等が含まれている。同戦略の実現のためには直接外国投資が最も有効な手段の一つであると認識している。
2-3. DRCコンゴ、Kabwelulu鉱業大臣
【DRCコンゴ鉱業の背景】
銅、コバルト、ダイヤモンド等の鉱物資源が賦存するアフリカ有数の資源国である。しかしながら、DRCコンゴ産の特定の鉱物資源は、同国東部における深刻な暴力、特に性的暴行やジェンダーに基づく暴力を伴う紛争や武装集団の活動の資金源となっているとの懸念があることから、2010年7月、米国金融規制改革法(Dodd-Frank 法)が成立し、DRCコンゴ及びその周辺国を原産とする「紛争鉱物(タンタル鉱石、錫鉱石、金、タングステン鉱石とこれらの派生物)」の利用及び取引に米国証券取引委員会(SEC)への報告義務が課されることとなった(現時点では未施行)。同国政府は反政府武装勢力による鉱物の密輸を阻止するための対策を講じてきたが、2011年12月末に発表された国連の専門家レポートiiiによると、同国東部において状況の深刻化が見られるなど、解決すべき課題が残っている。
一方で、2007年5月から、同国政府は内戦前後に外国鉱山会社が締結した鉱業ライセンスの見直しを行っており、ライセンスの没収といった事例も多発したため、交渉が長期化していた。特に交渉が難航していたFirst Quantum Minerals社のKolwezi銅プロジェクトをめぐる訴訟に関しては、2012年1月にカザフスタン非鉄大手のEurasian Natural Resources Corp(ENRC)社に同プロジェクトを譲渡することで合意に達した。
【講演概要】
国内の一部地域(東部)において、いまだに紛争が起きており、残念ながらその地域における鉱業に悪影響を与えている。同国政府は、鉱物資源の生産を不安定にする武装集団の存在に憤慨している。米国証券取引委員会の規制(米国金融規制改革法(Dodd-Frank法))及びICGLR(The International Conference on the Great Lakes Region)によるイニシアティブは、DRCコンゴでより安全なサプライチェーンを構築することを支援するものである。紛争鉱物の取引に関する問題に関して、DRCコンゴ政府は透明性を持って、国際社会の基準を満たすよう努めていきたい。
同国の鉱業法に関しては、2006年に政権交代があった際には、二つの異なる税制度が存在するという不都合があった。そのため、鉱業ライセンスの見直しを行う必要があり、場合によっては鉱業ライセンスの凍結を行わざるを得なかった。
DRCコンゴの国営企業だけでは、鉱山開発のための十分な資本が賄えず、鉱物資源の付加価値化を達成することが難しいと理解している。外国鉱山会社による同国への投資を歓迎しており、首都キンシャサに足を運んでくれれば、鉱業省が対応する。
2-4. モザンビーク、Bias鉱物資源大臣
【モザンビーク鉱業の背景】
同国では、エネルギー資源である石炭及び天然ガスが産出されるほか、アルミニウム、イルメナイト、タンタル、ジルコンといった鉱物資源も生産されている。北西部のTete 州には、アフリカで最大規模の石炭資源が賦存しており、ValeのMoatizeプロジェクトは2011年9月に生産を開始し、Riversdale Mining社(Rio Tintoが2011年6月に完全子会社化)のBengaプロジェクトは2012年3月末までに初出荷を予定している。また新日鉄が権益の一部(新日鉄23.3%、日鐵商事10%)を有するRevuboèプロジェクトは鉱山開発に向けた準備段階であり、同社の宗岡正二社長は2012年2月22日、モザンビークのアリ首相と会談し、同プロジェクト開発の早期実現に向けた支援を要請している。
【講演概要】
同国には、重砂(heavy mineral sands)、石炭、ベースメタル、ペグマタイト、タンタライト、ダイヤモンド、金、工業用鉱物、炭化水素といった鉱物の探鉱がまだ十分に行われておらず、資源のポテンシャルが高い。鉱業に関する法律には、鉱業法(2002年)、鉱業活動に関する環境規制法(2004年)、鉱業規制法(2006年)、鉱業安全規制法(2006年)等があり、法的枠組みは安定している。現行の鉱業ライセンスには、①予備調査権(2年間有効、更新不可)、②探鉱権(最長継続期間5年間、同じ期間で更新可)、③採掘権(最長継続期間25年、最長25年更新可)、④採掘免許(2年間有効)、⑤採掘許可書(12か月間有効、同じ期間で更新可)の5種類があるが、現在鉱業法の見直しが行われており、探鉱活動の期間が変更される可能性がある。
モザンビークには、世界最大規模の石炭資源が賦存しており、高品質の原料炭(coking coal)があると考えられている。現在、石炭の探鉱活動に対する探鉱権は約100件発行されており、近いうちに新規採掘権の申請が3件以上行われることが予想されている。同国における石炭生産に関する最大の課題は、鉄道や湾岸施設といった石炭輸送のためのインフラの建設である。同国で活動する外国企業の中には、この課題に取り組むためのインフラ投資を行っている企業がいることは喜ばしいことである。
モザンビークには、豊富な鉱物資源があり探鉱の好機に恵まれているとともに、安定した鉱業法規があることから、投資に適した国であり、同国政府は外国企業の同国鉱業への参加を歓迎する。
3. 海外メジャー鉱山企業による基調講演
3-1. Anglo American, Executive Director, South Africa, Godfrey Gomwe氏
Cynthia Carroll CEOが怪我により欠席したため、Gomwe氏がCarroll CEOのスピーチ原稿ivを代読した。講演の要旨以下のとおりである:
● 世界で約35億人が十分な電気が利用できない、若しくは全く電気を利用できない状態にあり、この問題を解決するための重要な役割を石炭が担っている。世界の電力消費量の約40%が石炭を使用して発電されており、今後数十年間も石炭が発電に広く利用されることが考えられる。環境に悪影響を及ぼさない石炭利用技術は、Anglo Americanの投資戦略においても優先的事項となっている。
● 持続可能でグリーンな社会を構築・維持していくためには、鉱業におけるイノベーションが大変重要である。例えば、低炭素社会の実現のためには、ハイブリッド車や電気自動車に多く利用される銅、自動車触媒に利用される白金といった金属が不可欠である。Anglo Americanでは、南アにおける燃料電池産業の創出というアイデアに着目をしている。白金の触媒を用いた燃料電池は、環境に優しいことに加えて、エネルギー効率が高く、多用途に対応できる。南アで燃料電池産業を発展させることで、雇用の創出とエネルギー安全保障の強化に貢献できる。
● 法の支配(rule of law)を確立することは、政府が果たすべき最も基本的な役割である。大規模な投資を行う鉱山会社にとって、自信を持って長期的な計画を立てるためには、彼らの所有権(property right)が尊重され、保護されることを確認する必要がある。また、資源国の裁判所は独立機関であり、国民と(外国)鉱山会社の権利に関して公平な立場を取れることが重要であり、南アの裁判所はそのような要件を満たしている。他の国においても、そのような公平な扱いを受けられることを期待している。
● 安定した経済政策を策定することも政府の重要な役割である。資源国の課税及びロイヤルティ制度に関しては、鉱山会社が投資に対する公平な利益を享受でき、恣意的な突然の変更が行われない制度であるということが不可欠である。また長引いている鉱山国有化の議論に関しては、これまで何度も明言してきたとおり、鉱山国有化は実施可能なモデルではなく、議論が継続していることで投資先としての南アの評判に悪影響を及ぼしている。鉱山国有化への道は誤りであるという明確な結論に達することを期待する。
3-2. Rio Tinto, Chief Executive, Energy, Douglas Ritchie氏v
Rio Tintoは、現在アフリカに8か所の事業拠点があり、Simandou鉄鉱石プロジェクト、Rössingウラン・プロジェクトを含む数多くのプロジェクトに関わっている。最近では、2012年2月1日に、BHP Billitonが所有していたRichards Bay Minerals 社株37%を取得し、Rio TintoはRichards Bay Minerals 社の筆頭株主(74%)となった。また2011年にはRiversdale Mining社を買収し、モザンビークのBenga原料炭(coking coal)プロジェクトを獲得した。鉄道及び湾岸施設の建設に多額の投資をし、現在インフラの設備が進められており、2012年3月末までに同プロジェクトからの初出荷が行われる予定である。
世界経済では先行き不透明感が広がり、金融市場のボラティリティが高まるといった不安要素はあるが、中国をはじめとする新興国経済における都市化及び産業化によって、原材料の需要高が継続し、金属価格が高水準を記録すると考えられる。主な産業用コモデテイの需要は過去20年間で約2倍に増加しており、今後も増加基調が続くと考えられることから、Rio Tintoではエネルギー資産である石炭に注目しているため、2011年Riversdale Mining社の買収を行った。
またRio Tintoでは新しい地域で事業を展開する際に「評価される招待客(valued invitee)」そして「大きな貢献をする地域社会の一員」となるため、インフラ、教育、トレーニング等への投資、環境活動、採取産業透明性イニシアティブ(Extractive Industries Transparency Initiative:EITI)の支援といった幅広い活動を行っている。鉱山会社は、活動を行う資源国及び地域社会の課題と機会をよく理解し、その課題に対する解決策を提供していくことで、「評価される招待客」として認識される必要がある。
3-3. Norilsk Nickel, Director, International Production Assets, Roman Panov氏
ニッケル・パラジウム生産世界最大手の露Norilsk Nickelは、ロシア、豪州、フィンランド、ボツワナ及び南アで生産活動を行っている。特に南アは、同社のアフリカ大陸における成長戦略の中で重要な役割を担っている。同社は、African Rainbow Minerals社とのJVであるNkomatiニッケル・プロジェクト(副産物:銅、コバルト、白金族)で50%の権益を有しており、同プロジェクトで予想されている鉱石埋蔵量(estimated ore reserves)は約1.6億tで、鉱山寿命は20年以上と考えられている。
白金族鉱業は南ア鉱業における主要産業である。同社では、白金族の投資対象としての可能性は、金と同等、若しくはそれ以上であると見込んでいる。同社はロシアで白金族生産を50年以上行っており、白金族生産に関する独自の知識と技術を有している。現状では、南アの白金族鉱業における同社の占有率は低く、ニッケル生産の副産物として白金族を生産しているにすぎないが、今後、同社が南アで白金族プロジェクトを拡大できる好機が十分にあると考えている。
3-4. Ivanhoe Mines, Chief Executive Officer, Robert M. Friedland氏

写真5. 伊藤忠商事中村常務の講演
カナダ資源大手のIvanhoe Minesは、アフリカではガボン、DRCコンゴ及び南アで探鉱・開発プロジェクトに関わっている。DRCコンゴのカッパーベルトでは、既に探鉱されつくしたと考える人々がいる中、同社は銅の豊富なKolweziエリアの西部にある過去に探鉱が十分に行われていなかった地域で探鉱活動を行い、その結果、アフリカ最大規模のKamoa銅鉱床を発見した。Kamoa銅鉱床の大きさは長軸方向22 km、短軸方向12 kmで、地表から深度30m以浅に水平方向に鉱床が広がっている。開発当初は露天掘りで採掘を開始し、最終的には坑内掘りを行い、製錬所も建設する予定である。Friedland氏は、「Kamoa銅プロジェクトは、DRCコンゴ鉱業の再生を実現するプロジェクトとなるだろう。」とコメントした。
また、南アのPlatreef白金族・ニッケル探鉱開発プロジェクトでは、高品位のFlatreef鉱床の発見により世界で最も低コストでかつ長期間にわたる白金生産が可能になると予想される。伊藤忠商事がPlatreefプロジェクトの権益10%を保有しており、Ivanplats社と共同でPlatreefプロジェクトの探鉱・開発を行っていることが紹介され、その中では伊藤忠商事 中村常務が壇上に招かれてPlatreefプロジェクトの説明を行うとともに、JOGMECの金融支援プログラムが大きな役割を果たしているとの言及があった。
4. 非アフリカ政府によるアフリカ鉱業への投資動向
前年に引き続き、Mining INDABA 2012でも非アフリカ政府フォーラムが開催され、各国の代表者が40分間の講演を行った。第2日目には豪州、インド及び日本、第3日目にはアフガニスタン、カナダ、アメリカの政府代表者により、自国の鉱業やアフリカ鉱業に対する貢献等に関する説明があった。ここでは、特に豪州、インド、カナダ及び日本政府の講演概要を報告する。なお、前年講演を行った中国政府はキャンセルをして参加しなかった。
4-1. 豪州政府、在南ア豪州高等弁務官、Ann Harrap氏vi
30年前の中国、20年前のインドと同様に、アフリカは今まさに経済的な離陸期(economic take-off)を迎えようとしている。アフリカ鉱業に対する豪州の関心は急速に高まっており、現在では少なくとも230社の豪州企業がアフリカ42か国で、約650のプロジェクト(探鉱、採掘、加工)に関与しており、現在の投資額と予定されている投資額を合計すると500億US$を超える。アフリカには未開発の鉱物資源が多く存在しており、今後もアフリカで大規模な資源ブームが継続することが考えられる。実際に資源ブームを経験した豪州は、資源国政府が効果的な資金管理、マクロ経済学的な計画、適切な環境基準、労働法、社会的な責任に関する基準を持ち合わせていない場合、資源ブームが短期間で終わり、ほとんど利益を生み出さないことを理解しているため、他国とは異なる独自の方法でアフリカ諸国を支援できる。2011年11月、豪州政府は発展途上国、特にアフリカ諸国での鉱業分野の効果的な管理を目標とした「開発のための鉱業イニシアティブ(Mining for Development Initiative)」を発足した。同イニシアティブの下、2012年には40か国以上のアフリカ諸国に対して、持続可能な鉱業確立に必要な専門知識を得るためのサポートを提供する他、約350名のアフリカ政府高官に対して、統治・規則、コミュニティと環境における持続可能性、鉱山運営等に関するトレーニングを受けるための資金提供を行う予定である。
4-2. インド、Shri Dinsha J. Patel鉱業大臣
現在インド政府は、ナミビア、モザンビーク、マラウィ及びマリと覚書(MOU)を締結しており、タンザニア及びDRCコンゴとのMOU締結が検討されている。インド企業がアフリカで好機を見いだせる鉱種には、石炭、リン鉱石、金、マンガン、ニッケル、白金族、リチウム、ウラン、レアアース等があり、買収及びJVを通じての投資が考えられる。インドとアフリカは、ゴンドワナ大陸の一部であったことから、共通の地質・地理的環境を有しており、インドとアフリカ諸国の関係は歴史が長い。またインドで新しい鉱業法が策定されたことにより、外国投資の活発化が見込まれている。インドの鉱山会社は、政情や経済が不安定な地域におけるビジネスの経験があり、アフリカを含めたすべての大陸で成功例があるため、インド企業はアフリカ鉱業への投資に適していると言える。インド政府は、アフリカ諸国とのさらなる経済的及び商業的な協力関係の構築に励み、双方にとって利益を生み出していきたい。
4-3. カナダ、Ginny Flood天然資源省長官
2010年にカナダ企業が有した鉱業資産(mining asset)の総資産額約1,880億C$の内訳は、国内資産が約590億C$であったのに対して、国外資産が約1,290億C$であったことからも分かるように、カナダは世界中(約100か国)で活発に鉱業活動を営んでいる。アフリカにおけるカナダ企業の鉱山資産は、2002年は約30億C$であったが、2010年は約270億C$へと急増している。カナダ企業のアフリカ鉱山投資の内訳は、上から順にモーリタニア(25.3%)、南ア(15.1%)、ガーナ(11.5%)、マダガスカル(9.8%)、DRCコンゴ(9.7%)となっている。
カナダ政府はアフリカ諸国に対して、特に知識と経験の共有という形での支援を行っている。2009年には、「カナダの国際鉱業分野に対するCSR戦略(A Corporate Social Responsibility (CSR) Strategy for the Canadian International Extractive Sector)」を策定し、同戦略では、①発展途上国が資源開発を管理する能力の強化を支援する、②CSRの実施指針を促進する、③採取産業専門のCSRカウンセラーの事務所を設立する、④卓越したCSRの拠点を形成する、という4項目を戦略の中核としている。また同戦略の一部として、2011年10月に、「採取産業及び開発のためのカナダ国際研究所(the Canadian International Institute for Extractive Industries and Development)」が発足した。同研究所では、発展途上の資源国が抱える課題に対処するために、採取産業の管理に関する国ごとに最適な政策の研究、政府や地域社会への技術的支援、技能開発を支援するためのトレーニング等を行っている。カナダ政府では、アフリカ鉱業における持続可能性を実現するために、今後もアフリカ諸国との協力関係を継続及び強化していく意向である。
4-4. 日本政府/政府関係機関の参加

写真6. 松下忠洋産業副大臣の講演
Mining INDABA 2012では、前述のとおり、経済産業省、在南アフリカ日本大使館のほか、商社を始めとした多数の日本企業関係者に加えて、JBIC、JICA、MERI/Jから参加があり、全体として日本のプレゼンスが非常に高い会議となった。
日本政府の代表としては2011年の中山経済産業大臣政務官(当時)に続き松下経済産業副大臣が参加され、2月7日(火)の非アフリカ政府セッションにおいて、「アフリカと日本の新たな『絆』」viiと題する基調講演を行った。この中で松下副大臣は、日本に古くからあるビジネス哲学である「三方良し(three-way virtues)」の考え方を紹介し、売り手の利益、買い手の利得、そして社会の幸福を実現する方法でアフリカ諸国との関係構築に励み、アフリカの鉱物資源と日本の知的資源を共に活用することで、世界規模の新しいサプライチェーン構築を目指していきたいと表明した。
続いて、講演を行ったJOGMEC森脇理事は、JOGMECの世界における探鉱活動及び日本企業の鉱業活動に対する日本政府全体の支援体制に関する説明を行うとともに、JOGMECが南部アフリカ(SADC)9か国とMOUを締結していること、また6つのJV探査プロジェクト(南ア3、マラウィ1、モザンビーク1、ボツワナ1)に関与していること等を説明した。
また、翌日2月8日(水)のアフリカ大臣セッションにおいては、在南アフリカ共和国日本大使館 岡庭公使の講演として、日本政府のアフリカ支援や総合商社といった日本特有の高付加価値化のビジネスモデルが説明されるとともに、具体的な環境保全や人材育成の取組の紹介、2013年6月開催予定のTICADVの紹介が行われた。またJOGMECボツワナ地質リモートセンシングセンターの久保田所長が講演を行い、アフリカと日本の「win-win関係」を構築するためのリモートセンシングセンターの活動内容を紹介し、同センターのトレーニングに参加した参加者からのフィードバックも発表された。

写真7. JOGMEC森脇理事の講演

写真8. JOGMECボツワナ地質
リモートセンシングセンター
久保田所長の講演
5. その他の講演
5-1. 中国によるアフリカ鉱業投資
The Beijing Axis社、Founder & Group Managing Director、Kobus van der Wath氏
外国企業の中国での事業及び中国企業の国外での事業展開を斡旋しているThe Beijing Axis社の代表が「アフリカ及び世界の鉱業におけるアジアの重要性」と題した基調講演を行った。
アジア、特に中国は、過去20年間で、世界金属消費量に占める割合を急激に増やしており、今後も、世界のマクロ経済及びコモデテイ需要に大きな影響を与えることが予想される。
中国の鉱業は2010年の自国のGDPの6%を占めるにすぎないが、その産業規模は約3,280億US$で世界最大である。中国の対外直接投資額は2010年には世界第4位で、アジア諸国の中では第1位であった。2015年までには、中国の対外投資残高(OFDI stock)は5,600億US$を超えると予想されており、鉱業、石油及び天然ガスといった資源分野への投資が目立っている。アフリカ鉱業への投資に関しては、中国がアジア諸国の中では最大の投資国であるが、近年、インドもアフリカ諸国での存在感を増してきている。今後も中国の対外投資に関するニュースが、世間の注目を集めることが予想される。
中国といった新興市場の台頭によって市場の景観が変化し、また今後も変化が継続すると考えられる。市場関係者らは、新興市場のポテンシャルを十分に理解した上で、新しい戦略的手法を構築していかなくてはならない。

※石油及びガスを含む。●は投資プロジェクトではなく投資国を示す。
図1. 中国・インドによるアフリカにおける鉱業関連投資の投資先
(出典:Beijing Axis社の講演資料)
6. 「持続可能な開発」フォーラム
Mining INDABA 2012の最終日にはICMM主催の「持続可能な開発」フォーラムviiiが開催され、政府、学界、民間企業、NGO団体の代表者ら約600人が出席し、持続可能な開発における鉱業の貢献について講演及びパネルディスカッションが行われた。
まず、Gold Fields社会長でありアフリカ開発分野において世界的に顕著なMamphela Ramphele博士が基調講演を行った。Ramphele博士は、最近鉱業界を脅かしている「資源ナショナリズム」の風潮を軽減するためにも、持続可能性の精神を実際の鉱山経営においてさらに発揮する必要があると指摘した。持続可能な開発の実現のために鉱山会社が専念すべき分野として、教育、健康、持続可能な生活を挙げ、資源国政府が自国の抱える社会的課題に十分な対応ができていない状況を見過ごすのではなく、鉱山会社が効率的かつ長期的な投資を行い、そのような課題に取り組んでいくことが重要であると述べた。また鉱山会社は地域社会に対して素晴らしい貢献をしている場合でも、なお非難の対象とされ、資源国政府が鉱山の国有化といった対策で応じることがある。この背景には、資源国が長い間経験してきた社会的問題による「傷(woundedness)」が癒えていないという現状がある。鉱業界は資源国政府が抱える歴史的問題を理解し、目を背けるのではなく積極的に対話を行っていくことで対処しなくてはならない。また、鉱山会社が非難されるもう一つの原因に、鉱山会社が実施した活動内容を効果的に宣伝できていない状況が挙げられ、そのため鉱山会社が変わらず非難の対象とされている。鉱山会社は一体となり、鉱業がもたらす社会的貢献に関するデータを分析する統一された明確な手法を構築し、公表することで世間からのより良い理解を得るべきであるとのコメントがあった。
Ramphele博士の基調講演に続き、2つのパネルディスカッションが行われた。1つ目のパネルディスカッションは、多数の利害関係者間でのイニシアティブ(multi-stakeholder initiatives)実施に取り組んでいる企業及び団体から、以下4名の代表者がパネリストとして参加した:
- Clare Short氏, Extractive Industries Transparency Initiative (EITI)
- Hugh Elliott氏, Anglo American
- Monika Weber-Fahr氏, International Finance Corporation (IFC)
- Krista Hendry氏, The Fund for Peace
同パネスディスカッションでは、企業とNGO団体両方における透明性確立の必要性や、異なる団体での作業の重複による無駄な労力を回避するための作業の統一化の必要性が確認された。また出席したパネリストらは冒頭で、「鉱山会社が資源国に貢献できるか否か(whether)はもう問題ではなく、どのように貢献できるか(how)が話し合われるべき」とのコメントがあった。

写真9. 会場からの質問に耳を傾けるパネリスト
2つ目のパネルディスカッションでは、鉱山会社と保護団体の代表4名が出席し、双方間でのつながりに関して議論が行われた:
- Dennis Hosack氏, International Union for Conservation of Nature (IUCN)
- Jon Hutton氏, UNEP World Conservation Monitoring Centre
- Peter Cunningham氏, Rio Tinto
- Morné du Plessis氏, World Wide Fund for Nature South Africa (WWF-SA)
パネリストは、鉱業分野における生物多様性の保全義務を明言し、また鉱山会社と保護団体は、双方の相違点を乗り越えて、協力することでより良いパートナーとなる必要があると述べた。
7. 所感
鉱山の国有化に代表される資源ナショナリズムの動きが活発化し、鉱業関係者らの懸念が高まる中、過去最大規模で今回のMining INDABAが開催された。南アのShabangu大臣は基調講演で、鉱山の国有化は南ア政府の政策ではないことを明言し、鉱山会社からは安堵の声が聞かれた。他のアフリカ諸国政府の代表者は、自国の鉱業法の安定性や資源のポテンシャルを説明し、鉱業分野への投資誘致を積極的に行っていた姿が印象的であった。一方で、日本をはじめ、アフリカへ投資する側の国々の政府代表者は、アフリカ鉱業分野への投資活動状況だけではなく、教育や知識及び技術的なサポートといった支援内容を説明し、資源国経済及び社会への貢献をアピールしていた。鉱山会社も同じく、アフリカでの鉱業プロジェクトに加えて、各会社のCSR活動を強調していた。
「持続可能な開発フォーラム」でRamphele博士が講演していたとおり、資源ナショナリズムのリスクや採掘事業への非難を軽減するためには、資源国における教育や福利厚生への効果的な投資を行うとともに、鉱山会社等の利害関係者らが協力し、鉱業により達成される社会的貢献を、統一されたフォーマットで客観的に公表していくことが今後重要であると考えられる。
概して、資源ナショナリズムといったリスクにも拘わらず、アフリカの資源ポテンシャルへの関心はますます高まっており、2013年のMining INDABAは2012年と同等またはそれ以上の規模での開催が予想される。
<参考資料>

