報告書&レポート
『レアアース・レアメタル投資会議』参加報告
2012年3月13日・14日、主に資源分野での投資を扱う投資顧問会社Objective Capital(本社:ロンドン)主催によるレアアース・レアメタル投資会議(正式名:Rare Earths, Speciality & Strategic Metals Investment Summit)がロンドンで開催された。同会議は2010年3月に初めて開催され、今回は第3回目となる。 |
1. 世界経済及び市場全体の動向
1-1. 講演『The macro-economics implications of the strategic metal supply』
(Longview Economics社、Chris Watling氏)
欧米の株式市場のトレンドを長期的な視点で見ると、40~50年周期で景気循環が発生していることが把握できる(図1参照)。これは景気循環理論において「コンドラチェフの波」と言われるものであり、現在は2000年をピークにした景気下降局面に入っている。理論的には、「コンドラチェフの波」の下降局面は20~25年継続すると言われており、今後10年程度、株式市場の下降トレンドは続くと予想される。
図1. 欧米証券市場における景気循環
他方、コモディティ市場の長期トレンドに目を転じると、欧米の株式市場と逆相関の関係を有していることが分かる(図2参照)。現在は2000年を底とした景気回復期にあり、今後さらに市場が拡大する見込みである。
図2. コモディティ市場における景気循環
欧米株式市場の景気後退は今後もしばらく継続するであろう。その理由として、欧米では1990年代後半から2000年代前半まで地価高騰による住宅バブルが発生し、リーマンショックにより地価は下降局面に入ったものの、バブル前の水準までは十分に下がりきっていない状況である。また、この資産価格低下によるいわゆる「逆資産効果」の結果、家計の借り入れ減少により、家計負債比率(対GDP)は下降局面に入っているが、未だ米英とも歴史的に見て高水準にある(図3、図4参照)。
図3. 米国の家計負債比率(対GDP)
図4. 英国の家計負債比率(対GDP)
欧米とは対照的にアジア経済の拡大は顕著であり、コモディティ市場の景気拡大は、中国やインド等のアジアの経済成長に負うところが大きい。アジアの投資と成長率の関係について見ると、対GDP投資率と実質GDP成長率には正の相関関係が見られ(図5参照)、「供給はそれ自身の需要を創造する」とするセイの法則(古典派経済学の理論)がまさに適合する状況である。中国の自動車保有台数(人口1,000人当たり)は現在32台であり、米国(820台)、ブラジル(198台)と比べ大幅に低い状況である。今後GDP成長率と比例して中国の自動車保有台数が増加したとしても2030年で170台程度と見込まれ、市場のポテンシャルは十分にあると言える。またインドは、中国の経済成長の12年後を追っていると言われており、ここ数年、投資率と貯蓄率の急激な上昇が見られることから、今後、堅調に成長が推移するものと期待できる。
図5. 投資とGDPの関係
中国はエネルギーや金属資源分野で積極的な対外投資を展開し、コモディティ市場での関与を強めている。中国の対外投資を分野別で見ると、エネルギー分野と金属資源分野で7割を占めている。2005年から2011年までの間の投資額は、エネルギー分野へは1,146億US$、金属資源分野へは694億US$となっている(図6参照)。また、中国の貿易の特徴として「南南貿易」が多く、先進国を介さずに、途上国から直接に原材料の調達を行っている。このように、中国の経済力拡大、コモディティ市場における影響力増大により、レアアース等のStrategic Metalsの供給懸念は今後も継続すると考えられる。
図6. 中国の対外投資額(2005-2011)
1-2. 『Critical metals in strategic energy technology』
(Oakdene Hollins社、Adrian Chapman氏)
Oakdene Hollins社(本社:ロンドン)は、金属セクターだけでなく化学、素材、廃棄物等のセクターも対象とするシンクタンクである。金属セクターでは、国際非鉄研究会より副産物に関する調査や、EU委員会よりエネルギー業界におけるレアメタルに係るサプライチェーンリスク分析調査等を受託している。EUが指定した14種類のクリティカルな原材料を供給量の観点で整理すると、以下のように大別することができる(表1参照)。
表1. クリティカルメタルの供給量による分類
供給量が比較的多い鉱種 | 供給量が比較的少ない鉱種 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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出典:USGS資料(2010) |
我々がこれまで行った12件の調査の結果、特に最もCriticalな鉱種として、ベリリウム、ガリウム、インジウム、マグネシウム、PGMs、レアアース、錫、タングステンが挙げられる(図7参照)。
図7. クリティカル度による分類
EU委員会は「戦略的エネルギー技術計画(SET Plan: Strategic Energy Technology Plan)」を2007年に提示した。SETプランは、EUが掲げた政策目標を実現するための取り組みを示したものであり、具体的には、2020年までに温室効果ガスの排出を20%削減するとともに、再生可能エネルギーの割合を20%に引き上げ、2050年にはエネルギーシステムを脱炭素化することを目標としている。
2009年にEU委員会は、SETプラン実現における有望技術分野として重点6分野(「風力」、「太陽エネルギー」、「バイオエネルギー」「二酸化炭素回収・貯留(CCS)」、「電力グリッド」、「持続可能な核分裂」)を発表した。これらの分野は、技術開発への障害や投資リスクの点でEUレベルで結束して取り組むことでEU加盟国の技術力向上及びEU企業の国際競争力強化に資するとされている。
これら6分野での技術開発推進に伴う鉱種毎の需要の増加割合を予測すると図8のようになる(2010年の消費量をベースとして2030年時点の消費量の伸びを予測)。図9はその分野別内訳であり、例えばテルルは太陽光発電パネル用途の需要が増加するため、2010年に2030年の消費量は対2010年比で50.4%増加する見込みである。また、これら鉱種に関し、供給のボトルネックを市場要因と政治的要因に分けて分析を行った結果、ジスプロシウム、ネオジム、テルル、ガリウム、インジウムが全体的なリスクが高い鉱種として浮かび上がった。このような供給リスクを低減させるためには、情報収集、備蓄、資源国との連携強化、省資源化などの対応が不可欠である。
図8. SETプランによる需要増(2010年を基準とした2030年の消費量増を予測)
図9. 技術分野別の需要増分析
2. レアアース
2-1. 『Zeus: home of the heavies』
(Matamec社、Caroline Wilson氏)
Matamec社(本社:モントリオール)はカナダ・ケベック州においてKipawaレアアース探鉱プロジェクトを手がけるジュニア企業。同社は2011年12月に豊田通商とMOU(非拘束)を締結し、Kipawaプロジェクトの開発加速に向け、両社が連携することを確認した。具体的には、まずはデューディリジェンス期間(2012年3月頃まで)に予備的経済性調査を行うとともに、JV契約及びオフテイク契約の準備を行う。予備的経済性調査の結果プロジェクトの採算性が見込める場合、重希土の分離製錬技術の検討を行うため、豊田通商はF/S費用として150万C$を資金支援。その後、最終的に開発決定された場合には、豊田通商49%、Matamec51%によるJVを設立することとなっている。生産に至った場合、豊田通商は生産される製品に対し100%の引取権を取得するとなっている。豊田通商の支援を得たことにより、当初は2016年Q2の生産開始予定であったが、現在のところ2015年半ばに生産開始できる見込みとなった。(2012年3月12日付けのMatamec社のプレスリリースによれば、両社間のMOUは2012年2月28日より拘束的位置付けとなり、同日付でデューディリジェンスが開始。豊田通商より150万C$の資金支援決定がなされた。)
2012年1月下旬に公表された資源量情報によれば、概測資源量(資源量の79.8%):65,798 t(TREO)t、レアアース品位:0.434%となっている。レアアースの組成内訳は、セリウム29.1%、ランタン14.8%、ネオジム13.2%、イットリウム22.3%、ジスプロシウム3.6%、テルビウム0.6%、ユーロピウム0.4%となっている。CAPEX(2012年1月30日時点)は3億1,500万C$を見込んでいる。
2-2. 『Ngualla Project: A large new rare earth discovery』
(Peak Resources社、Robert Mackay氏)
Peak Resources社(本社:パース)はタンザニアでレアアースの探鉱を行うジュニア企業。同社のNguallaレアアース探鉱プロジェクトは、タンザニア南西部の内陸部に位置し、2010年からのボーリング調査の結果、3つのレアアース鉱化帯を捕捉している。カットオフ品位3.0%の場合の資源量(予測も含む)は、1,600千t(REO)、平均品位4.07%(REO)。カットオフ品位1.0%の場合の資源量(予測も含む)は3,800千t(REO)、平均品位2.24%(REO)となっており、中国以外では第4位の資源量を誇るプロジェクトである(図10参照)。
図10. Nguallaプロジェクトと他のプロジェクトの比較
本プロジェクトのレアアース組成は、ネオジム35%、セリウム20%、ユーロピウム15%、ランタン11%。本プロジェクトは放射性元素が低いことが特徴であり、品位1%(REO)以上の鉱化帯においてウランは21ppm、トリウム35ppmとなっている。また、深度も平均155mと他のプロジェクトに比べ浅部に位置している。2012年はScoping Studyを行い、2013年よりプレF/Sを開始。生産開始は2015年後半を予定している。
2-3. 『Exploration in a New Mineral District Targeting Exceptional Heavy Rare Earth Enrichment』
(Namibia Rare Earths社、Don Burton氏)
Namibia Rare Earths社(本社:ハリファックスはトロント証券取引所に上場するジュニア企業。ナミビアにおいてLofdalレアアース探鉱プロジェクトの権益100%を保有している。同プロジェクトは2008年に発見され、2010年に試掘を行った結果、カーボナタイト中にレアアースの鉱化及び重希土の濃集したハローを確認した。ボーリング調査の結果、レアアース品位1.28%(TREO)、重希土の割合が94.5%の鉱化帯を捕捉しており、他のプロジェクトと比べ重希土の割合が高いことが特徴である。
2012年1~4月までの間、6,000mのボーリング調査を実施しており、この結果に基づき、2012年Q3にNI43-101に準拠した資源量を公表する見込みである。
2-4. 『Integrated Approach & South African opportunity』
(Great Western Minerals Group、Gary Billingsley氏)
Great Western Minerals(本社:サスカツーン)は、南アにおいてSteenkampskraalレアアース鉱山の開発を手がけている。同社の特徴として、鉱石の採掘のみならず、分離製錬、レアアース合金製造までを自社グループで一貫して行うことを掲げている。Steenkampskraal鉱山は1952~1963年までの間、Anglo Americanによりトリウムを生産していたが、その後閉山。1989年にRARECO社が権益を取得するも、レアアース市況の低迷により操業は見合わされていた。2009年にGreat Western MineralsがRARECO社を買収し、同鉱山の権益74%を取得することとなった。同鉱山の生産物はGreat Western Mineralsが100%の引取権を保有している。もともと同鉱山はトリウムを産出していたため、トリウムの加工、抽出、保管に関しライセンスを得ている。
NI43-101に準拠したレアアース資源量は現在、調査中であり2011年H1に公表予定であるが、過去の探鉱結果(NI43-101非準拠)では、レアアース品位16.74%、うち重希土の割合は8%とのことである。
レアアースの分離プラントについては、2011年7月25日、Ganzhou Qiandong Rare Earth社とJV設立を発表し、2012年1月10日のJV会社が設立された。JV会社の権益比率は、Great Western Mineralsが75%、Ganzhou Qiandong Rare Earthが25%となり、Great Western Mineralsが経営権を取得した。プラントは山元に建設される予定であり、操業開始時(2013年目途)の処理能力は2,700 t/年(REO)、フル生産以降は5,000 t/年を計画している。
2-5. 『World class production centre in Greenland』
(Greenland Minerals and Energy社、John Mair氏)
Greenland Minerals and Energy社(本社:豪WA州)は、グリーンランドにおいてウラン、レアアースをターゲットとしたKvanefjeldプロジェクトを現在F/S中。同プロジェクトは1960年代より1983年までデンマーク政府が5,000万US$以上を投資し、ウランをターゲットとした探鉱・調査がなされた。このため、鉱石の採掘や加工、インフラ整備に関し広汎な情報収集が十分に行われている。2007年に同社が権益を取得した後は、レアアース、ウラン、亜鉛をターゲットとしてさらに6,000万A$を投資した。
グリーンランドは2008年に自治権拡大を問う住民投票が行われ、賛成75%で自治権拡大が承認された。2008年に自治権拡大に関する法律が施行し、探鉱権や採掘権はグリーンランド自治政府が発行できることとなった。Greenland Minerals and Energy社は自治政府との友好な関係を維持しており、2011年8月には社会環境影響調査の仕様書(Terms of Reference)の承認を受け、同年12月にウランの採掘ライセンスを取得している。
JORC規程に基づいたレアアース資源量は、660万t(TREO)、平均品位1.1%(TREO)。ウランの資源量は158,758 t(U3O8換算)であり、ウラン資源量では世界第7位に位置する。2011年に実施したレアアース及びウランの分離製錬に係る技術的検討では、従来の常圧浸出技術を用い90%以上の回収率を達成した。
2-6. 『Soviet expertise, Canadian security』
(Stans Energy社、Robert Mackay氏)
Stans Energy社はキルギスにおいて休止レアアース鉱山及び製錬施設の再開発プロジェクトを手がけている。当社はKutessay Ⅱ鉱山の権益100%を保有しており、旧ソビエト時代、同鉱山はソビエトで消費されるレアアースの約80%を供給していた。プレF/Sは2012年Q1に終了予定であり、同鉱山の精測及び概測資源量45,650 t(TREO)、予測鉱物資源量3,560 t(TREO)となっている。当社は同鉱山の20年の採掘ライセンスを保有している。レアアース鉱石の組成は、イットリウム26.73%、セリウム19.68%、ランタン16.55%、ネオジム8.18%、ジスプロシウム6.14%となっている。
3. リチウム
3-1. 『Trends in Lithium including LithoRec』
(Chemetall Lithium社、Thomas Krause氏)
Chemetallはドイツに本社を有するリチウム生産のリーディング企業。リチウム化合物の生産では50%以上、炭酸リチウムについては30%以上のマーケットシェアを有している。
2010年のリチウム需要量は120,000 t(炭酸リチウム換算)であり、主な用途としてはガラス添加剤と電池需要が挙げられる。今後、電気自動車の普及により電池需要の増大が期待される。一般的な予測では電気自動車は2020年に500万台~700万台にまで増加すると見込まれている。これにより需要は、最も低く見積もったとしても、2025年時点で現在の3倍近くまで増加する予想である(図11参照)
図11. リチウムの需要予測
当社は、塩湖及び鉱石よりリチウムを生産している。塩湖からのかん水リチウム生産は主にアタカマ塩湖(チリ)とSilver Peak(米)で生産している。増大する電池需要に対応するため、生産設備の増強に取り組んでおり、2012年Q2にはノースカロライナ(米)での水酸化リチウムプラント(生産能力5,000 t/年)、アントファガスタ(チリ)での炭酸リチウム生産プラント(生産能力20,000 t/年)が新規に立ち上がる予定である。これにより2014年には、炭酸リチウム:50,000 t、水酸化リチウム:10,000 tの生産が可能となる見込みである(当初計画よりも1年早く実現)。
また当社は、リチウムの二次的な供給ソースとしてリサイクルに着目しており、ドイツ政府等と共同でリサイクル技術の開発に取り組んでいる。電池寿命を10年と想定すると、2030年頃からリサイクルは主要な供給ソースとなると見込まれる。
3-2. 『South American Lithium』
(Li3 Energy社、Luis Saenz氏)
Li3 Energy社はチリにおいてMaricungaリチウムプロジェクトを保有するジュニア企業。2011年5月にMaricungaプロジェクトの権益60%を取得し、現在F/Sを実施している。チリの地質調査機関CORFOが80年代に行った予察的調査では、リチウム:600,000 t(炭酸リチウム換算。回収率50%の想定)、カリウム:3,274,000 t(KCl換算)のデータがある(NI 43-101非準拠)。また、Maricunga塩湖の生産コストはHombre Muerto塩湖(アルゼンチン)より低く、Atacama塩湖(チリ)より若干高いとの調査結果もある。
2011年8月、POSCO(韓)との戦略的提携を発表し、POSCOはリチウム資源の開発に向け1,800万US$の投資を表明し、まずはMaricungaプロジェクトに係る探査・開発計画の第1フェーズとして、ソニックドリル(超高速掘削機)を用いた800万US$規模の探鉱プログラムを開始した。さらに2012年3月には、POSCOとMOU(非拘束)を締結し、Maricungaプロジェクトでのリチウム回収率向上に向けパイロットプラントを韓国国内で建設する等の協力をすることとなった。
また、2011年1月にはカナダの探査企業であるNew World Resources CorpとLOIに署名し、Li3 Energy社の株式19%をNew Resources Corpに譲渡する代わりに、New World Resourcesが保有するPastos Grande塩湖(ボリビア)の権益100%を獲得した。これによりMaricungaプロジェクトで開発した技術をPastos Grandeプロジェクトに適用することが可能となり、リチウム生産体制の拡大によって将来的にはSQM、FMC、Talisonに次ぐ中堅のリチウム生産企業を目指す。
3-3. 『Lithium supply:how much can the market digest?』
(International Lithium Alliance、Gerry Clarke氏)
リチウムは今後、中期的には供給超過となる可能性がある。2011年の需要量は138,000 t(炭酸リチウム換算)となる見込みである。各社の需要予測を基に分析すると、2015年では191,472 t、2020年では279,945 t(いずれも炭酸リチウム換算)にまで拡大する見込みである。2011年から2015年までの年間平均成長率は9.70%、2015年から2020年までは若干成長率が鈍化し、9.27%となる見込みである。
他方、供給サイドについて見ると、現在開発中のプロジェクトが予定どおりに生産開始を迎えたという前提で供給予測をした場合、2015年時点で456,800 t、2020年時点で656,800 tとなり、2015年では265,328 t、2020年では376,855 tの供給超過が見込まれる。
4. ニオブ
4-1. 『Providing future Us niobium/ rare earth supplies』
(Quantum Rare Earth Developments社、Peter Dickie氏)
Quantum社(本社:バンクーバー)はニオブ・レアアースの探鉱を行うジュニア企業。当社の主要なプロジェクトは米ネブラスカ州のElk Creekニオブプロジェクトである。ニオブの主な用途は鉄鋼添加剤であり、少量の添加により鋼材の強度が向上する。今後、中国やインド等の新興工業国において、自動車用薄板やステンレス鋼等の特殊鋼の生産が拡大するため、ニオブの需要も堅調な増加(年平均10%の成長)が見込まれる。現在のスポット価格は43 US$/kgであるが、Roskillの予測では2015年に50 US$/kgに上昇する見込みである。CBMM社(ブラジル)がニオブの世界生産の85%を占めており、次いでNiobec社(カナダ)が8.5%のシェアを持っている。
Elk Creekプロジェクトは現在F/S中であり、2011年時点のNi 43-101に基づく予測資源量は497,000 t(Nb)、品位0.62%。現在、新Ni 43-101に基づいた資源量把握を行っているところであり、本年6月までに結果が出る予定。
5. タングステン
5-1. 『Developing a top ten unexploited tungsten deposit』
(Vital Metals社、Mark Strizek氏)
Vital Metals社(ASX上場)は豪州・クイーンズランド州にてWatershedタングステンプロジェクトを保有。同プロジェクトは、2011年8月にJOGMECがJVパートナーとして参画。現在、F/Sを実施中。タングステン鉱石の生産は中国が9割を占めているが、中国国内での需要拡大により、国内産出鉱だけでは需要を賄いきれず、2012年までに中国は輸入国に転じる見込み。本プロジェクトの概測鉱物資源量は1,510万t(WO3)、品位0.46%(WO3)。
6. 所感
今回の会議に参加し、印象に残った点は以下2点である。
① 会議の冒頭を飾ったLongview Economics社による市場予測において、今後、短中期的に(欧米の株式市場縮小の裏返しとして)コモディティ市場が拡大すると予測した根拠に「コンドラチェフの波」を挙げたことは、大変意外であった。コンドラチェフの波は主に技術革新により引き起こされると言われており、1780年代~の紡績・蒸気機関の発明、1840年代~の鉄道建設、1890年代~の電気・化学、1930年代~の自動車、1980年代~のコンピューター・情報通信技術などが挙げられている。しかしながら、最近では技術革新のサイクルが早くなっており、また、コンドラチェフの波は物価上昇だけを扱っており、実体経済の成長とは必ずしも符合していない、と理論の妥当性を疑う声も少なくない。
別の見方をすれば、コモディティ市場の拡大予測を投資家に伝えるため演壇に立つ経済アナリストにとって、「コンドラチェフの波」を根拠として出さなくてはならない程、現在の経済情勢は予測が困難な状況にあると解することができよう。
② Matamec社の講演の中で、「レアアースはコモディティではない」とするIMCOA(Industrial Mineral Company of Australia)のDudley Kingston氏によるコメントの紹介があった。この意味するところは、レアアース生産企業は、ユーザー(納品先)が決めた厳密な化学・物理的スペックに合致した製品を生産・納品する必要があり、また、このユーザーのスペック自体も進化し続ける。このため、レアアースを生産するということは、単に「商品」を生産するのではなく、サプライチェーンの一翼を担うことを意味する、ということである。この視点は、日本企業とオフテイクに係るMOUを締結した同社ならではのユーザーサイドに立脚したコメントであり、他の探鉱・開発中のプロジェクトには欠けている視点だと感じられた。
投資家サイドの視点がメインになりがちなこの種の会議において、製造業の視点を忘れてはならないとする貴重なメッセージとして受け取れた。