閉じる

報告書&レポート

2012年8月30日 シドニー事務所 栗原政臣
2012年51号

豪州証券取引所(ASX)上場規則見直し及びJORC規定見直しの概要

 豪州証券取引所(Australian Securities Exchange Limited、以下ASX)は、2011年10月5日、上場規則見直しに関する論議書(ASX Listing Rules Review Issues Paper: Reserves and Resources Disclosure Rules for Mining and Oil & Gas Companies)を公開、パブリック・コメントを2012年1月27日まで受け付けた。
 一方、資源関連企業がメンバーとなる鉱石埋蔵量合同委員会(Australian Joint Ore Reserves Committee、以下JORC)も2011年10月に鉱物資源量及び鉱石埋蔵量の報告に関する大洋州規定(Australasian Code for Reporting of Exploration Results, Mineral Resources and Ore Reserves – The JORC Code 2004 Edition、以下JORC規定)に関する論議書(2011 JORC Code Review Issues Paper)を公開し、2011年12月16日まで一般からの意見を求めていた。
 2012年8月9日、豪州ブリスベンで開催された第34回IGC(International Geological Congress)において、両見直しにつきASX及びJORCから発表があったので見直しの概要及び今後のスケジュールについて報告する。
 なおASXの論議書は、石油・ガス関連企業に課している鉱物資源量及び鉱石埋蔵量に関する項目も含んでいるが本紙では鉱業に関してのみ報告する。

1.見直しの理由

 ASX及びJORCは、資源関係企業の資源量の報告に関する最低基準とガイドラインをJORC規定として示してきた。JORC規定は、探査活動によって得られる探査結果、鉱物資源量(Mineral Resources)、鉱石埋蔵量(Ore Reserves)の報告様式についての基本原則をまとめたもので、ASXの上場基準として採用されており、1989年の初版が発表されてから、1992年、1993年、1996年、1999年及び2004年に改訂が行われてきた。また、2007年にはASXからJORC規定に関する追加的なガイドラインも発表され、より正確な報告となる様見直されてきている。
 豪州では昨今の資源ブームにより、鉱業への投資ブーム及びこれに伴う鉱業関連企業のASXへの上場の増加が認められており、資源・エネルギー分野への資本投資がGDPに占める割合は過去25年間に2%から4%に増加、今後2年間はこれが更に増えて5~6%に達する見通しである。2011年現在で計画段階にある投資プロジェクトが数年の間に実施されれば、資源・エネルギー分野における資本額は、豪州の歴史が始まって以来最高額となると予想される。また、鉱物資源量、鉱石埋蔵量、探査情報の公開報告の基準の改善に対する利害関係者の関心は一層高まっており、世界各地での報告基準も向上しているため、今回のASX上場規則及びJORC規定の見直しとなった。

2.見直しの目的

 今回の見直しの目的は以下の通り。

○ JORC規定に従い報告を行う企業は、探査結果や鉱物資源量及び鉱石埋蔵量予想に使用した技術的パラメーター及び前提条件の情報を投資家及びアドバイザーに提供し、投資家による報告の理解及び投資決断を可能とする。

○ 国内外の関連規定との調和を図る。

○ 公開報告の要件を鉱業先進国のものと整合させることにより、二重上場等を行う企業の準拠コスト等を軽減する。

○ ASXが、鉱業企業や石油/ガス企業の上場や資本調達にとっての競争的な市場としての地位を維持する。

3.見直しの論題

 ASX及びJORCの見直しの論題は以下の通り。
(1)ASX

① 探査結果の開示

② 探査目標の開示

③ 鉱物資源量及び鉱石埋蔵量を評価する上での鍵となる前提の開示

④ 初回の鉱石埋蔵量の公表に必要な調査のレベルの定義

⑤ 生産目標値の開示

⑥ 年次報告、及び、前年の鉱物資源量と鉱石埋蔵量との比較照合

(2)JORC

① 探査結果の開示

② 探査目標の開示

③ 鉱物資源量の評価における“将来的に経済的に採掘できるという合理的な見込み”に関するガイダンス

④ 鉱物資源量及び鉱石埋蔵量を評価する上での鍵となる前提の開示

⑤ 初回の鉱石埋蔵量の評価及び報告に必要最低限とされる調査

⑥ 生産量目標値の開示

⑦ 鉱物資源量及び鉱石埋蔵量の年次報告及び前年との比較

⑧ 資格保有者のアカウンタビリティー(報告責任)

⑨ JORC規定2004の制定以降にASX企業アップデート(ASX Companies Updates)に発表されたJORCとの共同記事をJORC規定に記載

⑩ 国際埋蔵量報告合同委員会(CRIRSCO)の定義との統一

⑪ その他の論題

(3)両論議書の共通論題
 ASX及びJORC両論議書の論題をまとめると以下の通り。

論題 ASX論議書の
論題の番号
JORC論議書の
論題の番号
探査結果(追加情報の開示)  ①  ①
探査目標(開示のガイダンスの明確化)  ②  ②
鉱物資源量及び鉱石埋蔵量を評価する上での鍵とな
る前提の開示
 ③  ③、④
初回の鉱石埋蔵量の発表に必要最低限とされる調査  ④  ⑤
生産目標値の報告  ⑤  ⑥
鉱物資源量及び鉱石埋蔵量の年次報告  ⑥  ⑦

 なお、JORC規定に関する論題の⑧~⑪に関しては、第34回IGCにおいてJORCのPeter Stoker会長がJORC規程を国際埋蔵量報告合同委員会(CRIRSCO)レベルへ移行するための修正、と説明していた。

4.ASX及びJORC共通の各論題の概要とそれぞれの取組み

(1)探査結果の開示(ASX論題①、JORC論題①)

<探査結果の開示の意義>

探査結果の地質学的信頼性は、プロジェクトの経済価値を評定するには十分ではないが、投資家が探査結果の意義及び今後の探鉱における可能性を評価する上で有用。

<現状>

● 「“透明性と具体性の原則”の下、JORC規定の表1(探査結果、鉱物資源量及び鉱石埋蔵量の報告をする上でのチェックリスト及びガイドラインを示す)で定められる基準により、試錐孔及び捕捉された鉱化帯の情報が報告されるべき」とJORC規定で定められているが、何を記載すべきかとの具体的な情報については、特に指定されていない。

● 具体的なガイダンスの不足、JORC規定の要件に対する一部での解釈の誤りなどにより、統制的な情報開示ができていない。

<JORC規定の関連条項>
 第16条、第17条、表1
<論題への取り組み>

ASX: カナダでの要件に倣い、主要試錐孔及び捕捉された鉱化帯の情報開示を義務付ける。
JORC:探査結果の報告書の透明性を高めるためには、表1にどのような情報を加えるべきかを検討する。

(2)探査目標の開示(ASX論題②、JORC論題②)

<探査目標の定義>

JORC規定第18条では、「探査目標はあくまでも概念的な性質のものであり、後に発表される探査結果で確定あるいは修正される」と記されている。

<第18条の意図>

プロジェクトの初期段階に定められる探査目標(鉱量や品位)の開示を(絶対的な数値ではなく)範囲で行うよう定めるもので、予測鉱物資源量の報告に十分なデータや信頼性が得らないうちに、信頼性の著しく低い鉱量や品位の報告を行うことを奨励するものではない。

<現状>

● 探査目標の開示は、多くの企業がJORC規定の第18条や探査目標の開示方法を誤って解釈していることから、初期的な試錐の結果や過去の目的の異なる掘削の結果に基づく信頼性の低いものとなっている。

● JORC規定の第18条では探査目標の開示において、以下を義務付けている。
① “resource(s)(資源)”または“reserve(s)(埋蔵量)”という言葉を使用していないこと。
② 探査目標の鉱量及び品位のいかなる予想も範囲で示され、かつ、以下を含むこと。
  - 鉱量/品位予想の根拠についての説明。

– 「鉱量及び品位の予想はあくまで概念的なもので、鉱物資源量を決定付けるには不十分であること」、「今後の探鉱によって鉱物資源量が決定付けられるかについては不確かであること」等の注意書きを開示の隣に記述。

<論題への取り組み>

ASX: 探査結果の報告に関し、新たな開示要件を設ける。これらには、カナダや南アフリカでの要件に倣い、注意書きの記述箇所(開示記述のすぐ後ろまたは同パラグラフ内)及び書式(同フォント)に関する決まりを細かく定める。

JORC: JORC規定第18条の廃止を検討する。

(3)鉱物資源量及び鉱石埋蔵量を評価する上での鍵となる前提の開示
(ASX論題③、JORC論題③及び④)

<鉱物資源量の定義と公開報告>

● JORC規定の第19条による鉱物資源量の定義:「“将来的に経済的に採掘できるという合理的見込み”があると判断される、地殻中ないし地殻表面においてある程度の形、質及び量を確保でき、それ自体本質的に経済的な価値をもつ濃縮物もしくは産出物である」

● 鉱物資源量の公開報告においては、“将来的に経済的に採掘できるという合理的見込み”を実証するような前提(具体的な経済ファクター及び技術ファクター)の開示が必要。

<鉱物資源量及び鉱石埋蔵量予想の公開報告における現状>

● 鉱物資源量及び鉱石埋蔵量予想の公開報告における前提の開示は、統一されていない。これは、JORC規定が原則ベースであるため、どのようなデータや前提が開示に重要であるかの判断が、公開報告を作成及び承認する資格保有者に委ねられているためである。

● 鉱物資源量及び鉱石埋蔵量予想を実証するような前提や技術的情報の開示の促進のためにも、カナダで義務付けられるような技術報告の開示を検討するべきとの声が、一部の関係者から上がっている。

● 前提の開示及びこれに関する新しい要件の検討にあたっては、投資決断にとってどのような情報が有用であるか、及び、企業の準拠コストについての配慮が重要。

● JORC規定の第19条では、「“将来的に経済的に採掘できるという合理的見込み”を判断する上で使用された前提は全て、公開報告に明記されること」とのガイダンスが記されている。

● JORC規定の第26条及び第35条では、「探査結果や鉱物資源量及び鉱石埋蔵量予想の報告書を作成する際には、JORC規定表1に記される基準を考慮すべきであるが、鉱石埋蔵量の予想または分類に著しい影響を与えるものではない基準は公開報告に含める必要はない」とし、どの前提を開示すべきかに関しては、「不十分または不確かなデータ、非常に不利な予想結果は開示すべき」との他には、具体的なガイダンスを定めていない。

<論題への取り組み>

ASX:

① 鉱物資源量及び鉱石埋蔵量予想の公開報告において、JORC規定の表1に記される一部の基準に関する情報の開示を義務付ける。

② 鉱物資源量及び鉱石埋蔵量予想の公開報告において、これらに使用された調査の全ての前提条件の開示を義務付ける。

– 開示が必要とされる情報が、調査に既に含まれている情報の概要であるとの点で、企業の準拠コストが安く抑えられるといったメリット。

③ 鉱物資源量/鉱石埋蔵量予想の公開報告において、JORC規定の表1の基準のうち報告されないものがあれば、その理由を述べることを義務付ける。

– JORC規定の表1の基準に関する情報の開示を更に促進させるとのメリット。

– 理由を説明するよりも開示を行う方が簡単であるといった点から、投資家にとって重要でない情報まで開示されてしまうといった恐れを含むとのデメリット。

④ カナダで適用されているような、技術報告の発表を義務付ける。

– 技術報告の開示時期は、公開報告から45日以内とする。これは、鉱物資源量/鉱石埋蔵量予想が遅延なく報告され、ASX上場規則第3.1条「継続的な開示の要件(上場企業は、重要かつ価格変動に敏感な情報の開示を直ちに行うこと)」に準拠するものとなるため。

JORC: 鉱物資源量及び鉱石埋蔵量予想の公開報告において、JORC規定の表1に記される一部の基準に関する情報の開示を義務付ける。

(4)初回の鉱石埋蔵量の発表に必要最低限とされる調査(ASX論題④、JORC論題⑤)

<プレFSの義務化>

● 近年では、「鉱石埋蔵量の報告の実証としては、プレFSの完了がその役割を果たす」との見方が一般的。

● 豪州と同様の鉱物資源量及び鉱石埋蔵量規定を設ける国々では、鉱石埋蔵量の報告にはその実証としてプレFSの完了が必要との要件が定められている。

<現状>

● JORC規定では、鉱物資源量から鉱石埋蔵量に換算する際に必要とされる調査のレベルは特に定められていないが、第28条では「最終的なFSの段階である必要はない」「技術的及び経済的に実現可能な採鉱プランが、調査において作成されていること」とのガイダンスが記されている。

<論題への取り組み>
 ASX:

① 鉱物資源量から鉱石埋蔵量への換算においては、プレFSの完了を義務付ける。

② スコーピング・スタディー、プレFS、FSを定義付ける。これらの定義は、CRIRSCOの重要基準に整合するものとする。

 JORC:

① スコーピング・スタディー、プレFS、FSを定義付ける。

② 鉱物資源量から鉱石埋蔵量への換算に必要とされる最低限レベルの調査を定義付ける。

(5)生産目標値の開示(ASX論題⑤、JORC論題⑥)

<生産目標値>

生産目標値等予見的な情報を含む報告は、投資家の誤解や会社法(Corporation Act)への抵触を招かないためにも、正当な根拠に基づくものでなければならない。

<現状>

● 過去12ヵ月間、豪州証券取投資引委員会(ASIC)は、信頼性の低い生産目標値を含む鉱物資源量の報告に対し、度々実証的な情報の開示を要請している。これからも見て取れるように、企業の投資家に対する予見的情報(生産目標値やそれに基づく財務予想など)の開示は十分でない。

● ASX上場規則やJORC規定では、生産目標値や財務予想に直接関わるような要件は定められていないが、前者では、地質学的な信頼面をもとに、どの鉱物資源量カテゴリ(予測鉱物資源量・概測鉱物資源量・精測鉱物資源量)に経済パラメーターを適用させるべきかについての重要定義やガイダンスが記され、生産目標値の妥当な開示時期を検討する上でのファクターとなっている。

<論題への取り組み>
 ASX:

① 生産目標値や財務予想の開示に関する要件を設ける。

・ これらを実証するような前提条件の開示

・ 鉱物資源量→鉱石埋蔵量への換算の際や実際に生産の際に起こり得る不測事態とリスクを開示

・ 予測鉱物資源量の信頼性の低さ及び将来性の不確かさを強調した注意書きを開示箇所の隣に記述

・ 探査目標のみから算定された生産目標値や財務予想の開示の禁止等

– 投資家の誤解や混乱を防ぐといった点で、メリット。

② カナダや南アフリカでの規定に倣い、探査目標を含む生産目標値やこれに基づく財務予想の開示を禁ずる。

– 企業が、「生産目標値や財務予想の報告は“正当な根拠”に基づくもの」との判断のもとに行う正当な開示が阻まれ、投資家の混乱や誤を招く恐れといった、デメリット。

③ カナダでの規定に倣い、新規プロジェクトの予測鉱物資源量を含む生産目標値や財務予想の開示を、特別の例(企業に特定の採掘実績がある場合)を除き、禁じる。

– 企業が、「生産目標値や財務予想の報告は“正当な根拠”に基づくもの」との判断のもとに行う正当な開示が阻まれ、投資家の混乱や誤解を招く恐れといった、デメリット。

①~③の取り組みのうちでは、①が最も好ましいものと考えられる。

 JORC:

① 鉱物資源量の目標値や予想の実現に伴うリスクの開示を検討。

② 生産目標値や財務予想が、探査目標の予想鉱量/品位を含む場合は、これらの開示を全て禁止することを検討。

③ 企業の生産目標値や財務予想の開示を行う企業に対し、「鉱石埋蔵量の報告を既に行っている、あるいは保有資産が概測鉱物資源量または精測鉱物資源量でありかつ実績を持つ生産業者であること」との条件を設けることを検討。但し上記の条件を満たしていなくとも、「生産目標値の開示には妥当な根拠がある」、「情報が開示されれば、より質の高い情報が市場に提供される」との理由で開示可能となる場合もあるということについても考慮する。

④ 予測鉱物資源量、概測鉱物資源量、精測鉱物資源量の混合から算定された生産目標値やこれに基づく財務予想の開示の禁止は、鉱物資源量が具体性のある情報であることからも、ASXの上場規則3.1で定められる「継続的な開示の要件」に抵触するのではないかを検討。

(6)鉱物資源量及び鉱石埋蔵量の年次報告(ASX論題⑥、JORC論題⑦)

<現状>

● JORC規定の第14条は、少なくとも年に1回の鉱物資源量及び鉱石埋蔵量の見直しを企業に義務付けているが、これを年次報告書に含めることは義務付けていない。

● 鉱物資源量及び鉱石埋蔵量の見直しを年次報告書に含める企業は、少ない。

● 年次見直しにおいて、鉱物資源量及び鉱石埋蔵量予想に著しい変化が生じた場合(及びその理由が市場に開示されていない場合)、上場規則3.1の下、直ちにその旨を報告することが、企業には義務付けられている。

<鉱物資源量及び鉱石埋蔵量の年次報告を行うことの利点>

鉱物資源量及び鉱石埋蔵量の年次見直しを報告し、かつこれを年次報告書に含めることによって企業の鉱物資源量及び鉱石埋蔵量の透明性が増す上、投資家の情報取得の幅も広がる。

<論題への取り組み>
 ASX:
   ① 鉱物資源量及び鉱石埋蔵量の報告を年次報告に含めることを、企業に義務付ける。
   ② 鉱物資源量及び鉱石埋蔵量予想の年次比較照合を企業に義務付ける。

JORC: 「鉱物資源量及び鉱石埋蔵量の年次見直しの結果や現在の予想量を開示し、かつこれを年次報告に含める」との要件を定める。(準拠コストを増加させることにならないか、及び、その記載形式を指定すべきか任意のものとすべきかを考慮)

5.論議書に対する意見及び今後のスケジュール

 JORCのPeter Stoker会長は2012年8月9日、第34回IGCで講演し、公開された論議書に対する反応について以下のように説明した。

○ ASXは上場規則見直しについて、2011年11月から2012年1月にかけてパース、アデレード、メルボルン、シドニー及びブリスベンにて54回の円卓会議及び説明会を実施。それらの会議出席者も含めて、122通の意見書を受領した(うち92通は鉱業分野、8通は鉱業及び石油ガス共通、12通は石油ガスを対象)。

○ 意見書は、埋蔵量及び資源量の報告について国際基準のベストプラクティスに揃え改訂することを支持している。また、それらの報告に関して整合性及び透明性を促すことを期待しており、整合性及び透明性の確保によって市場の品性が確保されることを認識している。

○ JORCは114通の意見書を受領した。ASXに対するものと同様、報告の透明性を高めることが重要な問題として提示されている。また、多くの意見に、JORC規定の必要条件を適切に監視するASXもしくはそれに替わる専門的な組織の必要性があげられている。

 Stoker会長は、ASX及びJORCに対して寄せられたフィードバックを参考に、特に以下の項目についてJORC規定を見直し中とした。

○ 探査結果及び探査目標の報告。

○ 鉱物資源量及び鉱石埋蔵量を評価する際の前提条件に関する透明性の確保。

○ 初回の鉱石埋蔵量の発表に必要最低限とされる調査の提示。

○ 資格者による署名の合理化。

 最後にStoker会長は今後の予定について、2012年9月に改訂JORC規定及びASX上場規則のドラフト版を発表し、さらに意見を受け付けた後に、2012年12月には最終版を発表する予定と説明した。最終版発表後、1年間の移行期間を経て、実際に適用されるのは2014年からのようである。

おわりに

 2011年10月にASXが上場規則見直しの論議書を公開した際は、JORCとの協議もなくやや唐突な印象もあったため、見直し後にはJORC規定の準拠を取りやめるのではとの憶測も流れた。しかし、第34回IGCではASX及びJORC両者から双方補間するような講演があり、さらに、ASXもJORCと共同でJORC規定を改訂する、と発表していることから、今後もJORC規定は豪州資源業界の基準を担っていくと思われる。
 IGCという場でありながら豪州というお国柄のせいか、講演会場は(比較的狭いため)立ち見も出る盛況ぶりで、資源関係者のASX上場規則及びJORC規定に対する関心の高さを再認識した。

参考
 ASX Listing Rules Review Issues Paper
http://www.asxgroup.com.au/media/PDFs/ASX_LRs_Review_Issues_Paper_mining_and_oil_gas_reserve_and_resource_reporting_
20111005.pdf

 2011 JORC Code Review Issues Paper
http://www.jorc.org/pdf/2011_JORC_issues_paper.pdf

ページトップへ