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NI 43-101に関する補足通達について(かん水プロジェクト、予備的経済性評価、外国専門家協会)
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カナダの鉱物資源プロジェクト情報開示基準であるNI 43-101は改訂版が2011年6月30日に発効し、JOGMECバンクーバー事務所ではその詳細について2011年4月にカレント・トピックス11-16号にて報告した。改訂版の発効以降、既に新しいNI 43-101に準拠した技術レポートを始めとする数多くの情報開示がなされており、改訂版NI 43-101は広く認知されたものになったといえよう。 |
1. かん水プロジェクトに関する補足通達(OSC Staff Notice 43-704)
リチウムなどのかん水プロジェクトに関しては、NI 43-101をはじめ既存の情報開示基準をそのまま適用することには無理があると指摘されており(Houston, et al., 2011)、新たな基準もしくはガイドラインの策定が求められていた。
このような背景から、オンタリオ証券委員会(Ontario Securities Commission; OSC)は、2011年7月22日、NI 43-101では取り扱いが明確でなかったかん水プロジェクトに関するガイダンスを定めたOSC Staff Notice 43-704を発表した。
本通達では、かん水プロジェクトはNI 43-101における鉱物資源プロジェクトであり、NI 43-101の情報開示基準に従わなければならないと明確化している。
(1) 資源量・埋蔵量の定義
NI 43-101では、資源量(Resource)及び埋蔵量(Reserve)をカナダ鉱業冶金石油協会(Canadian Institute of Mining, Metallurgy and Petroleum; CIM)が定める定義(CIM Definition Standards on Mineral Resources and Mineral Reserves)に依拠している。また、CIMでは、ラテライト鉱床、漂砂鉱床、ウラン鉱床など一般的な硬岩鉱床と異なる鉱床タイプに対しては、別途ガイドラインを示している。しかし、現時点ではかん水プロジェクトに対するガイドラインは存在しないことから、本通達では、かん水プロジェクトにCIMの資源量・埋蔵量の定義がそのまま適用できるかどうかは不明確であるとし、開示企業もしくは有資格者(Qualified Person)がCIM定義に準拠するかどうかを判断しなければならないとしている。
情報開示にあたっては、CIM定義準拠/非準拠に関わらず、その判断の基となった科学的・技術的データを開示しなければならず、さらにCIM定義非準拠の場合には、CIM定義に依拠しているNI 43-101のその他必要要件に対して、CIM定義を用いずに如何にしてその要件を満足させるかを明らかにしなければならないとしている。
(2) 技術情報の開示
かん水プロジェクトに関する技術情報の開示においてもNI 43-101に準拠することが求められ、技術レポートの様式はForm 43-101F1に従うこととされる。しかし、情報開示にあたって有資格者は、かん水プロジェクト特有の事項について十分に検討しなければならないとしている。また、かん水プロジェクトと硬岩型プロジェクトとの違いを強調する注意喚起の文言を含めなければならない。技術レポート開示にあたり、かん水プロジェクト特有の考慮すべき事項を表 1に示す。
表 1 かん水プロジェクト情報開示の際の検討事項
| 検討事項 | 技術レポートでの該当項目 | かん水プロジェクトでの検討事項 |
| 鉱区 |
Item 4: Property Description and Location |
鉱区状況、かん水所有権に関する潜在的リスク及び不確実性 |
| 気候 |
Item 5: Accessibility, Climate, Local Resources, Infrastructure and Physiography |
太陽放射、降雨、風等の気象データ |
| 地質・鉱化作用 |
Item 7: Geological Setting and Mineralization |
地表水、地下水、水収支、帯水層の地質などの水理学的性状や形状、化学成分、変動性、品位等のかん水層の性質 |
| 鉱床タイプ |
Item 8: Deposit Types |
塩湖、水理地質、帯水層境界、物性等の特徴 |
| サンプリング |
Item 11: Sample Preparation, Analyses and Security |
かん水サンプリング方法及びサンプル保存方法と手順、間隙率、比算出率、透水率等のパラメータの決定方法 |
| 資源量推定 |
Item 14: Mineral Resource Estimates |
かん水の体積・品位、帯水層の形状、有効間隙率、比算出率、流量、回収性等の鍵となるパラメータ |
| 埋蔵量推定 |
Item 15: Mineral Reserve Estimates |
透水係数、回収率、かん水挙動と品位変動等の鍵となるパラメータと流体の流動シミュレーション |
| 採掘方法 |
Item 16: Mining Methods |
抽出井区域の設計、インフラ、ポンプ流量、抽出時のかん水層応答等に関する情報 |
(出典:OSC Staff Notice 43-704)
なお、CIMでは現在、CIM Estimation Best Practice Guidelines Committeeの小委員会においてリチウムかん水プロジェクトに適合した資源量・埋蔵量算出ガイドラインを策定中である。
2. 予備的経済性評価に関する補足通達(CSA Staff Notice 43-307)
カナダ証券局(Canadian Securities Administrators; CSA)は、2012年8月16日、NI 43-101における予備的経済性評価(Preliminary Economic Assessment; PEA)の取り扱いについて注意喚起を促したCSA Staff Notice 43-307を公表した。
改訂版NI 43-101では、開示企業の要望に応え、PEAの定義を拡充し、柔軟性を高めたところ、本来の意図とは異なるPEA開示を行う企業が多数認められることとなったため、本通達においてCSAとしての立場を明確化している。
(1) プレFSの代替としてのPEA
公開されているPEAの中には、プレFS相当、もしくはそれに近いレベルのものがあり、極端な例では、予測資源量を含んだプレFS相当をPEAと称しているものがある1。NI 43-101の定義では、PEAは資源量の「潜在的(potential)な」経済性を示すものであり、プレFSやFSとは異なるものとされている(NI 43-101第1.1条)。一方で、プレFSやFSはプロジェクトの技術面や経済性を包括的に評価したものとされる(CIM Definition Standards on Mineral Resources and Mineral Reserves)。
本通達においてCSAは、PEAの一部または全部をプレFSレベルにて実施していると表明している企業、すなわちプレFSとPEAの差異が明瞭でない経済性評価を実施している企業に対して、
● 当該調査がPEAの定義に明確に合致しない場合、当該調査がPEAであるとは記載しない
● 当該調査が予測資源量を含む場合、そのPEA(もしくはその一部)をプレFSと比較しない
ことを推奨している。
また、PEAは資源量の「潜在的な」経済性を評価するための概念的な調査であることから、NI 43-101の第3.4条(e)に基づき、当該経済性調査の結果は実証(demonstrate)されたものではないことを明示しなければならない。したがってCSAでは、この注意喚起の明示がない場合、企業がPEAを実質的にプレFSとして扱っているとみなすとしている。同様に、企業がPEAを実質的にプレFSとして扱っているとCSAによりみなされる場合として以下を挙げている。
● PEAをFS開始や生産決定の根拠とする場合
● 採掘可能資源量(mining or mineable mineral resources)の開示もしくは鉱石(ore)という用語を使用している場合。これらは本質的に資源量を埋蔵量として扱っているためである
● 資源量の経済性が実証されたものであると記載あるいは暗示している場合
PEAの結果開示においては、適切な注意喚起文言やリスクの明示で、投資家に対してPEA結果の重要性またはその制限について十分に理解させ、誤解を生じさせないよう努めなければならないとしている。
1 NI 43-101の第2.3条(3)ではPEAの経済性評価に予測資源量を含めることを認めているが、第2.3条(1)(b)ではプレFSやFSの経済性評価に予測資源量を含めることを認めていない
(2) プレFSまたはFSと同時実施されるPEA
改訂版NI 43-101では、プレFSやFS公開後に、その前段階であるPEAを公開することを認めている。これは企業からの要望に応えて、PEA公開の柔軟性を高めたものであり、その意図は、一度プレFSやFSが完成したプロジェクトにおいて、新たな情報や異なる操業シナリオなどプロジェクトに重大な変更が生じた場合、再度PEAレベルでの経済性を検討することを可能とするものである。
しかし、公開されているPEAの中には、プレFSやFSと同時実施されているものや、プレFSやFSに対する追加・更新の形で、予測資源量を含めたPEAを公開しているものが存在している。
CSAの見解としては、プレFSやFSとほぼ同時に実施されるPEAは、実質上、プレFSやFSと同じものとしてみなし、以下に該当する経済性調査はPEAではないとしている。
● プレFSもしくはFSに予測資源量を盛り込んだ結果を有するもの
● 当初の経済性調査による裏づけのない楽観的な仮定やパラメータを用いたプレFSもしくはFSの更新、修正、追加の形となっているもの
● 名称以外、すべての面においてプレFSやFSであるもの
(3) PEA開示と技術レポート
一部の企業には、技術レポートの裏付けなしにプロジェクトの経済性評価の結果を公表しているものがある。
プロジェクトの経済性評価の結果は、投資家が投資を行う際の判断基準であり、重要な要素の一つであることから、その裏付けとなる技術レポートの開示が必要となる。本通達では、PEAの結果が企業のウェブサイト上にあるプレゼンテーションやファクトシートなどの文書に含まれている場合、第三者のレポート等に結果がリンクされている場合、NI 43-101の第4.2条(1)(j)に基づき技術レポートを開示しなければならないとしている。
(4) 潜在的に誤解を与えるPEA
PEAの中には、過度に楽観的な仮定やきわめて強引な仮定に基づいたものが散見されるとしている。また、鉱業界で一般的に採用されている指針とはかけ離れた方法を用いているものも見受けられるとしている。
これらは投資家に対して誤解を生じさせるとして、本通達では、PEAの結果は、継続開示義務を定めたNI 51-102 Continuous Disclosure ObligationsのPart 4Aの要件を満たす将来予測情報(forward-looking information)に基づかなければならないとしている。
また有資格者は、NI 43-101の補足文書である43-101CPに明示してある通り、鉱業界で認められた業界基準を採用することが一般的であるが、もし採用手法・仮定が業界基準と重大な差異を有する場合、企業はその手法・仮定に基づく開示が投資家に誤解を生じさせないよう、その根拠を開示すべきとしている。
(5) 副産物を含むPEA開示
推定された資源量には含まれていない副産物に対する予測キャッシュフローを掲載しているPEAが存在している。本通達では、資源量に含まれていない副産物は、PEAの定義であるところの「資源量の潜在的な経済性」の「資源量」に含まれないことから定義に矛盾しており、誤解を生むものとし、予測資源量等の資源量カテゴリに対象副産物が分類されるまではPEAには含めてはならないとしている。
(6) 有資格者
PEAの結果を裏付ける技術レポートに対して責任を有する者の中には、NI 43-101が求める有資格者の要件に合致しないものが認められることがあるとしている。
本通達では、有資格者が適切な経験等を有しないとCSAが懸念を抱いた場合、CSAは有資格者に対して自らの経験等を説明するよう要求するとともに、万が一その説明がなされない場合は、有資格者を追加して技術レポートを修正するよう要求することもあるとしている。
CSAは、開示情報にNI 43-101上の不備が認められた場合、再提出などの修正を要求するが、もし企業がその要求に応じられず、不備が修正されなかった場合、CSAは不履行企業リストに掲載するとともに、再提出を命じる委員会命令や、修正が施されるまで取引停止命令を発することもあり得るとしている。また、不備が修正された場合においても、場合によっては、当初の不備に対してなんらかの行政処分を下す可能性があるとしている。
技術レポート等の不備に対する修正や有資格者を別途雇用しなければならない事態は、コスト増加やプロジェクト遅延を招くことから、最初の段階でこれらのリスクを回避すべく、慎重を期すべきである。
3. 有資格者の専門家協会追加に関する補足通達(CSA Staff Notice 43-308)
改訂版NI 43-101では、有資格者(Qualified Person)が所属していなければならない専門家協会のうち、外国の専門家協会については、補足資料である43-101CPのAppendix Aにその一覧を掲げている。改定前のNI 43-101では、外国の専門家協会は補足資料ではなくNI 43-101本体に規定されていたため、新たな協会・団体を追加することは事実上不可能であったが、改訂版によって新たな外国の協会・団体を追加することが可能となっていた。
このような中、2012年8月16日にCSAが公表したStaff Notice 43-308では、新たに豪州技術士協会(The Institute of Engineers Australia)に所属するChartered Professional Engineerの資格を有する技術士がNI 43-101の有資格者として認められることとなった。
ブリティッシュ・コロンビア州証券委員会(British Columbia Securities Commission; BCSC)に聞き取り調査を行ったところ、新たな協会・団体の追加手順として正式な規則は存在しないものの、概略の流れとして以下の手順が示された。
① NI 43-101認定を希望する協会・団体は、CSAもしくは各州いずれかの証券委員会に対して、NI 43-101認定の要件を満たしていることや認定を申請する理由を記載した事前申請書を提出。BCSC及びOSCには地質技師も在籍していることから、両委員会が提出先として最も適切と考えられている
② 事前申請書の提出を受けた証券委員会は、非公式にCSAや他州証券委員会と協議し、その内容や懸念事項を検討
③ 証券委員会からのフィードバックを受けて、認定を希望する協会・団体は、CSAに対して正式な申請書を提出。申請書には、当該協会・団体が要件を満たしていることを証明する文書を付属。この段階では申請料が発生する
④ CSAは、公式に各州証券委員会にコメント提出の機会を与えるとともに、認定の是非を検討
おわりに
改訂版NI 43-101が発効した2011年6月以降、実際の運用にあたってのノウハウがまだ十分には蓄積されておらず、一部混乱が認められるようである。事実、有資格者が技術レポートを執筆する際には、その記述に対して、情報開示規則に精通した弁護士の助言・確認が欠かせないと聞く。PEAに関する通達は、開示企業や有資格者の混乱が顕在化した一例と言える。
豪州技術士協会がNI 43-101専門家協会として新たに認定されたことを受けて、我々日本側としては、NI 43-101の外国専門家協会に日本の協会・団体が認められる可能性があるかどうかに関心が向くであろう。今回の豪州技術士協会の追加認定で、CSA側にもある程度の指針が形成されたものと思われる。外国の協会・団体がNI 43-101専門家協会として認定されるためには複数の要件があり、BCSCによれば、その中でも最も重要な要件は「十分に信頼できる専門家協会として国際的に鉱業界に認められていること」としている。「国際的に鉱業界に認められていること」の具体的な中身としては、NI 43-101で相互認証しているような鉱物資源プロジェクト情報開示基準・用語基準の策定に参画していること(例えば、豪州JORC参画の大洋州鉱業冶金協会(The Australasian Institute of Mining and Metallurgy; AusIMM)や米国の鉱業情報開示基準改定に参画中の鉱業冶金探鉱学会(Society for Mining, Metallurgy and Exploration; SME)など)を挙げており、日本の協会・団体が本分野に積極的に関与できていない状況では、NI 43-101認定協会となるには現状ではやや困難が伴うと考えられる。
参考文献
鉱物資源プロジェクト情報開示基準NI 43-101の主要変更点について; カレント・トピックス11-16号; 片山弘行, 2011.
The Evaluation of Brine Prospects and the Requirement for Modifications to Filing Standards; Houston, J., Butcher, A., Ehren, P., Evans, K. and Godfrey, L.; Economic Geology, v. 106, pp. 1225-1239, 2011.


